実務家弁護士の法解釈のギモン

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債権法改正-錯誤(1)

2014-10-21 10:51:52 | 民法総則
 錯誤の改正は、表面的には何となく分かるのだが、かなり難しい問題を含んでいる。そのため、聞くところによると、錯誤の改正は大変に紛糾したらしい。

 まず、第1の改正点は、錯誤を無効原因ではなく取消原因とした点である。錯誤の規定が表意者保護規定であり、従前から取消的無効というようないわれ方をするほど、取消に近づけて解釈をしてきていただけあり、おそらくあまり異論はないのであろう。

 第2の改正点として、動機の錯誤をどう取り込んでいるか。この点が大問題なのである。
 要綱仮案では、錯誤取消となる場合として2類型を規定し、その1は、意思表示に対応する意思を欠くものであり、その2が、表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反するものである。
 その1は従来の錯誤と同様に効果意思に欠ける場合であり、その2が動機の錯誤の場合である。ただし、動機の錯誤による意思表示の取消は、当該事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができるとされる。
 以上の改正を見ると、おおざっぱには、教科書レベルでよく最高裁の判例の立場といわれる内容を立法化した改正といえそうではある。