言語空間+備忘録

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司法修習生の給費制は打ち切り、貸与制にすべき

2011-09-01 | 日記
日本経済新聞」の「司法修習生「貸与制にすべき」 法曹養成フォーラム」( 2011/8/31 22:19 )

 裁判官、検察官、弁護士の法曹三者の養成制度の在り方などを検討する「法曹の養成に関するフォーラム」(座長・佐々木毅学習院大教授)は31日、司法修習生に国が給与を支払う「給費制」から、「貸与制」に移行すべきだとの検討結果をまとめた。財政難などを背景に昨年11月、貸与制へ移行が決まっていたが、日弁連などの反対で給費制を1年延長していた。

 今年10月末で延長期間が切れるため継続の是非を議論。「低所得者が法曹になれない」との日弁連などの反対について、返還猶予期間を設けることなどで合意した。

 月23万円を基本に、扶養家族の有無などに応じて最大28万円まで選択できる。修習終了後5年間は返還が不要で、6年目から10年かけて無利息で返還する。原則年収300万円以下の給与所得者らを対象に、最大でさらに5年間返還を猶予するとした。


 司法修習生の給費制(…の延長)は今年かぎりとし、当初の決定に沿って貸与側に移行すべきである、という検討結果を「法曹の養成に関するフォーラム」がまとめた、と報じられています。



産経ニュース」の「貸与制移行で最終合意 司法修習生の給費制打ち切り」( 2011.8.31 21:49 )

 政府が設置した省庁横断の検討会議「法曹の養成に関するフォーラム」(座長・佐々木毅学習院大教授)は31日、司法修習生の給与を国が支給する「給費制」を打ち切り、生活資金を貸す「貸与制」に移行することで最終合意した。

 1年間の実務研修を行う司法修習生にはこれまで給費制を採用。司法制度改革の一環で貸与制への移行が決定したが、昨年11月、議員立法で1年限りの給費制存続が決まっていた。

 貸与制は、月23万円の基本額を無利子で貸し、修習終了5年後から10年で返済する制度。フォーラムでは低所得者の負担を軽減するため、返済を最長5年間猶予することも合意した。

 一方、民主党のプロジェクトチームは8月、給費制を当面延長すべきだとの意見書をまとめていて、貸与制に移行するかは最終的には新政権が判断する。佐々木座長は「政府には結論を真摯(しんし)に受け止めてもらいたい」と話している。


 政府が設置した省庁横断の検討会議「法曹の養成に関するフォーラム」とは異なり、民主党のプロジェクトチームは先月、給費制を当面延長すべきであるとの意見書をまとめている、と報じられています。



 日弁連(日本弁護士連合会)は司法修習生への給費制の継続を望み、貸与制への移行に反対しています。

 給費制、貸与制などというと「わかりにくい」ですが、要するに

   給費制 = 給与を支給する制度
   貸与制 = 奨学金を貸与する制度

です。つまり日弁連は、裁判官や検察官、弁護士になるために「勉強している学生」に「給与を支給しろ」と主張しているわけです。

 これは常識的に考えて、「おかしい」のではないでしょうか。日弁連の主張が認められるなら、医学部の学生にも給与を支給しろ、工学部の大学院生にも給与を支給しろ、という主張も認められることになってしまいます。



 日弁連は、「低所得者が法曹になれない」ことを根拠として給与支給制を維持しろ、と主張しているのですが、

 貸与制(すなわち奨学金制)とはいっても、「無利子」で「月額23万円」を借りられるうえに、「5年間は返済不要、6年目から10年かけて」返済するという、かなり好条件な奨学金です。そのうえ、さらに「原則年収300万円以下の給与所得者らを対象に、最大でさらに5年間返還を猶予する」ということになれば、貸与制(奨学金制)で問題なし、と考えてよいのではないかと思います。



 もっとも、日弁連の「低所得者が法曹になれない」という主張の背景には、法科大学院に通うときにもお金がかかる、したがって、

   法科大学院に通うときの奨学金(司法試験合格前)
   司法修習を受けるときの奨学金(司法試験合格後)

という、2重の費用がかかる、したがって奨学金の総額(=借金の総額)が多くなる、という事情があります。このような事情を考えれば、たしかに日弁連の主張も「一見、もっともらしく」感じられます。

 しかし、日弁連が「低所得者が法曹になれない」と世間に向けて給費制継続を訴えるキャンペーンを行う際に、(おそらく)「わざと言わない」事実があります。

 予備試験制度の存在です。じつはこの予備試験に合格すれば、法科大学院に行かなくても司法試験を受けられるのです。とすれば、
2重の費用がかかり、奨学金(=借金)の総額が多くなるので、「お金持ちしか法律家になれない」
という日弁連の主張は「破綻している」と考えられます。

 しかも上述のように、司法修習生に対する貸与制(奨学金)は「きわめて有利な条件」の奨学金です。

 とすれば、給費制(給与支給制)はやめて、貸与制(奨学金制)に移行する、という当初の予定をそのまま実施することに、とくに問題はないと思います。つまり私は、給費制廃止・貸与制への移行を支持しています。



 なお、裁判官・検察官になろうとする者(なった者)については、その職務の公共性に鑑み、返済免除を認めてよいのではないかと思います。また、弁護士になろうとする者(なった者)についても、一定の「公益活動」をすることを条件として、返済免除を認める余地があるのではないかと思います。

 これについては、「司法修習生に対する貸与の返済免除制度について」に記載しています。よろしければ御参照ください。



■関連記事
 「日弁連の「司法修習生に対する給費制維持」論について
 「なぜ司法修習生に給与を支払う必要があるのか
 「司法修習生の労働者性
 「司法修習生の給費制、一年延長の見通し

14 コメント

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司法修習生の呼び方がそもそも間違え (海外)
2011-09-13 09:42:04
Hi

「君が代欄」から卒業でございます。これもまたおかしなもので「司法修習生」って呼び名からして変、まだこれらは資格が取れてない立場なら、通常の社会同様に見習い期間でしょ、調理師も資格保持者ですけど、見習いコックというように、教師にしても国家資格ですわよね。仰々しく司法修習生なんて呼ぶから、国がサラリーを出してあげるなんて何様なのよって感じ。それにその研修期間が終わり合格しなかったら?それも一般社会と同じで、再度見習いをし、と、、警察官も法律は知っていて当たり前の職業ですわよね。待遇されてますの?

なぜゆえ法律家を目指す立場だけ優遇されるのか? ひくせもふたくせもありそうな日本国制度ですわね。
 
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資格修得までの見習い期間 (海外)
2011-09-14 08:14:49
Hi

資格が必要な職業とは、美容師、理容師、調理師、栄養士、教師、保育士、介護士、看護士、医者、計理士、会計士、弁理士、弁護士などですわよね。法律を目指す立場だけが、司法修習生と呼び、他の資格とは違うを意識し給料に関しても、、奨学金と称して、国が面倒を見るなんていうのも変のこっちょう。

どの分野でも資格を得るためには勉強に勉強を重ね、生活費を得るために同じ道で見習いをしながら、、それは当たり前の世界。それを法律家だけは特別扱いなんて、職業差別もはなはだしい。たとえ弁護士になれたとしても社会に利益をもたらせる弁護士なんてほんの一握り、後は名誉欲や高額依頼費用を得るために系が、弁護士ですなんて恥ずかしげも無く主張し、無能を絵に描いたようなひとくせもふたくせもある
)0(.

わたくしなら、職業差別を主張しそんな体制を崩すしにかかりますわよ。日本国民ならば、、。国民がそれに対して異論を唱えないほうがおかしいし、摩訶不思議、、
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Unknown (Unknown)
2011-09-23 09:53:09
司法修習生が他の国家資格者の見習いと同様であることは確かにその通りです。
 しかし、司法修習生は特別国家公務員という立場に強制的にならされるために、アルバイトができません。アルバイトすると罷免されることになります。その代わりに見習いでも給与を支払うというものだったのです。
 ですので、多くの人の主張は貸与にするなら、アルバイトをすることを許せ。というものです。
 他の国家資格者も見習い期間中に、職場から全く給料が出ないものはないので、その点は、多くの貸与支持者が間違っているところでもあります。アルバイトだって、見習い期間中は額は減らされますが、給料は出ます。
 あと、医学部生に給料は支払われませんが、研修医には給料は支払われます。司法修習生は、医学部生ではなく、研究医に相当する身分なので、この点については、memo26さんの記述は間違っていると思いますよ。
 結局のところ、司法修習を避けて、法曹になることは無理なので、給料は出さないでも、バイトは許さないでは、借金を強制することになるので、それがおかしいということですね。
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Unknown (memo26)
2011-09-23 13:07:23
 コメントありがとうございます。

 上記記事には書いていませんが、私は、アルバイトを認めてよい、と考えています。つまり私の考えかたは「貸与制移行 + アルバイト容認」です。

 次に、「他の国家資格者も見習い期間中に、職場から全く給料が出ないものはない」という指摘については、裁判官や検察官になる場合はともかく、弁護士になる場合にもその論理をあてはめてよいのか、という疑問があります。司法修習生のうち、裁判官や検察官になる人の数と、弁護士になる人の数とを比べれば、弁護士になる人の数が「圧倒的に多い」ことから、私は「貸与制に移行し、裁判官・検察官については返済免除とする」という制度がよいと考えているのです。

 なお、「司法修習生は、医学部生ではなく、研究医に相当する身分」であるというご意見には、賛成いたしかねます。研究医は医師ですが、司法修習生は法曹ではありません。研究医は研修医の誤記ではないかとも思いますが、研修医であっても、医師であることにはかわりありません。つまり、研究医・研修医は医師資格保有者であるのに対し、司法修習生は法曹資格を有していないので、司法修習生は研修医と同列には考えられない、どちらかといえば、司法修習生は医学部学生に相当する(司法修習は医学部学生の臨床実習に相当する)と考えるべきである、というのが私の考えかたです。

 関連記事のところに書くのを忘れていましたが、これについては、下記(↓)に私の考えかたを示しています。

「司法修習生は研修医にはあたらない」
http://blog.goo.ne.jp/memo26/e/a7af1610cfb376ba63b810b97cc122b1
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司法修習生は経済的に恵まれないと、、 (海外)
2011-09-23 13:16:58
Hi.

ふむふむ、特別国家公務員、、でも弁護士は民間人であり自営業ですよね。修習生の間だけ特別国家公務員というのがまた不思議なところ。
となると「弁護士」になるまでは経済的に不安定な状況に立たされますでしょ、となれば生きていくためにはお金は絶対的に必要。経済的に裕福な子息なら問題はないでしょうけど、裕福とは違い努力のたまもので法学部を卒業した修習生にとっては、それこそ修習生いじめにでもあっているようなもの。

その特別国家公務員の制度を取るのであれば、経済的に裕福な子息も、そうでない子息も一律して、同じ金額をお国から受けるだけで、司法修習生時代を終わらせることが本来の「特別」な意味でしょ。アルバイトも禁止ならなおさら、。アメリカでも医者や弁護士になる立場とは経済的に恵まれた子息が多く、経済的苦労してまで医者や弁護士になる人はめったに見かけませんしね。

なにもそんな差別待遇まで受ける必要はどこにもないですけど、バイトOK、その代わり修習生の役割を果たさなければ単位をあげないぞと、でいいわけで、、一人前の弁護士立場で無ければなおさら、と思いますけど。
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何時代の発想 (海外)
2011-09-24 00:58:28
Hi

その特別国家公務員をお決めたのは何時代?
日本の法律や刑法事態、今には通じないようなものが多いでしょ。法律は改正していかないとね。それには市民が立ち上がることが先決、アメリカですと市民運動の重要さで法律は改正されます。日本国民は立ち上がる姿勢はないのかしら?その法律を従う以上は、そこは変でしょと疑問を持てば、、「特別」の意味もしらないようですし、
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Unknown (memo26)
2011-09-25 11:27:47
 海外さん、このコメント欄は責任能力・強制わいせつについて意見を述べる場所ではありません。無関係なコメントが書き込まれると、あとでコメント欄を読む人が困ります。したがって海外さんのコメント4件のうち、2件を削除しました。

 なお、弁護士は刑法の専門家ではありません。

 刑法(理論)の解説が必要であれば、弁護士が書いた本ではなく、刑法学者の本を読まれるのが一番だと思いますよ。

 刑事事件に関する実務問題の解説が必要であれば、弁護士が書いた本ではなく、検察官または警察関係者が書いた本のほうが有益かもしれません (弁護士の仕事のなかで刑事事件の占める割合はわずかです) 。
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good for you (海外)
2011-09-25 14:11:25
Hi

どなたにも公平にお願いしますわよ。ですからここでよろしいですか?と前置きしてますでしょ。

●なお、弁護士は刑法の専門家では、、って何? わたくしは紀藤正樹のHP内の刑法項目から引用という意味で書き込みをしただけですけど。わたくしがいつ紀藤が刑法の専門家だからと書きました? ここの管理人さんはわたくしにもすばやく反応し今度は紀藤名にもすばやく、、、(--:).

仮にも紀藤は弁護士であり法範囲に嘘などは書きませんでしょ、それに紀藤の本ではなくHP内の情報の一貫。検察官や警察関係者でも弁護士でも同じでしょ、法に携わる立場ですから、それにわたくし、検察官の知り合いなどはいませんし、わざわざその関連のBlogを探すよりは、紀藤のHPを見れば、「法」に関することが載ってますから。

●弁護士の仕事のなかで刑事事件の占める割合
今、紀藤は刑事事件をいくつも抱えてますけど、また紀藤に賛同するお仲間も刑事事件をかかえてますけど、弁護団メンバーとなれば、刑事事件の多さをご存知ないのかしら?ライブドア、神世界、あくら牧場、L&G,統一教会、近未来通信、弁護団メンバーは一人や二人ではありませんから、刑事事件を扱う弁護士は少なくないでしょ。

今度は紀藤に何かご不満がございます?(^^:))
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弁護士の刑法 (海外)
2011-09-25 14:43:52
Hi

紀藤の記述してある刑法はこちらから。弁護士でも警察官、検察官、法学部の教授でも同じ内容になる刑法のはず。

http://homepage1.nifty.com/kito/law-keihou.htm

この刑法って明治40年4月23日に、どうりで現在には当てはまらないものがあり、「内乱」昔の方はお国のために命をささげたでしょうけど、今の人は自分が大事で人のためになにかをするなんてひとはめったにいませんものね。明治、大正、昭和、平成、平静ではいられませんでしょこんな古めかしい項目が残っている以上は、、
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Unknown (memo26)
2011-09-25 18:50:20
> どなたにも公平にお願いしますわよ。ですからここでよろしいですか?と前置きしてますでしょ。

 公平にしていますよ。コメントを削除したのは、「それは困ります=よろしくないです」という意味です。

 なお、刑法の話は「司法修習生の給費制維持、または貸与制への変更」とは関係のない話ですので、(話は)終わりにしたいと思います。
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