言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

司法修習生に対する貸与の返済免除制度について

2010-11-11 | 日記
夜明け前の独り言 弁護士 水口洋介」の「裁判所と司法修習給費制

■給費制維持の論拠

私は、司法修習生給費制維持の唯一の論拠は、経済的にめぐまれない階層(階級)の出身者が法律家になる道を狭められることは不合理だ、という点だと考えています。

給費制があるから、人権擁護をするとか、公益活動をするとかというのは自らを貶めることでしかないと思いますし、実態にも反しています。もっと人間の思想的というか、人間的なものであり、国からもらう金のことではありえまえん。

(追加)給費制があるから、人権擁護活動するとか公益活動する、借金が多くなれば弱者相手の実入りの悪い仕事は市内と発言する修習生の声を聞いたことがありますが、こういう発言をする人は、給費制が維持されようとされまいと、実入りの悪い仕事はしないものです。

■とすれば

日弁連が最低限獲得すべきは、貧困階層が法律家になるための障害をできるだけ取り除くということです。

今後は、給費制の維持か廃止かのオール・オア・ナッシングではなく、最低限、貧困階層出身者の負担を軽減する免除制度を早期に確立する道筋をつけることを望みます。

(中略)

ロースクール卒業時点で、例えば200万円以上の債務を負っている者については、貸与金の返還を免除するという制度は、最低限、実現してほしいものです。この点は、自民党から共産党、そして、生き残りをはかる泡沫ロースクールまで一致するところでしょう。


 給費制維持の「唯一の論拠」は、「経済的にめぐまれない階層(階級)の出身者が法律家になる道を狭められることは不合理だ、という点」だと考えている。したがって、免除制度を早期に確立する道筋をつけることを望む、と書かれています。



 要は、給費制維持の論拠は、日弁連のキャッチフレーズ「お金持ちしか法律家になれなくなる」に尽きる、ということです。

 もっとも、「なぜ、それが唯一の論拠なのか」「なぜ、ほかの論拠は成り立たないのか」が書かれていないので、それしか論拠がありえないのか、判断しかねるところはあります。

 このところ、私のブログに、司法修習生の給費制をめぐって、(ある意味で) 執拗にコメントされている青龍さんにしてみれば (「司法修習生の労働者性」「日弁連の「司法修習生に対する給費制維持」論について」など参照 ) 、水口弁護士の主張は「粗雑すぎる」のでしょうが、私としては、水口弁護士のような書きかたもあってよいと思います。批判することそのものが目的ではありませんので、ここは問題なしと考えて、先に進みます (この根拠であれば給費制が認められると述べているのではありません) 。



 上記記事で重要だと私が考えるのは、
給費制があるから、人権擁護をするとか、公益活動をするとかというのは自らを貶めることでしかないと思いますし、実態にも反しています。もっと人間の思想的というか、人間的なものであり、国からもらう金のことではありえまえん。

(追加)給費制があるから、人権擁護活動するとか公益活動する、借金が多くなれば弱者相手の実入りの悪い仕事は市内と発言する修習生の声を聞いたことがありますが、こういう発言をする人は、給費制が維持されようとされまいと、実入りの悪い仕事はしないものです。
という部分です。

 これは私の経験からいっても、そのとおりだと思います。「なぜ、そうなのか」の説明は難しいですが、誰しも、社会生活上の経験というものがありますよね? 私も、人間とはそのようなものであると感じているので、この点についての水口弁護士の主張は「正しい」と思います。



 ここで、水口弁護士の結論 (主張) 、すなわち「貸与金の返還を免除する制度」について考えると、

 貸与金返還免除の条件として、たんに「ロースクール卒業時点で、例えば200万円以上の債務を負っている者については、貸与金の返還を免除するという制度」にとどまらず、「将来の公益活動を条件に貸与金の返済を免除する制度」についても、成り立つ余地があるのではないかと思います。

 「将来の公益活動を条件に」返済免除とする制度については、免除の対価として「貧しい人 (弁護士) のみが公益活動をしろというのか」という批判があります。

 しかし、給費制維持論者にとって「公益活動」が給費制の根拠たりうるとすれば、「給与 (給費) を受け取った対価として、公益活動をする」ということです。とすれば、「将来の公益活動を条件に」返済免除とすることに問題はないと思います。なぜなら、両者は公益活動を対価とみている点で、「ほとんど同じ」だからです。

 また、「将来の公益活動を条件に」返済免除とする場合であっても、水口弁護士が主張されているように、「返済を免除されない人 (お金持ち) も、公益活動をする」と考えられます。

 したがって、条件つき返済免除制度も、認める余地があるのではないかと思います。



 最後に、「将来の公益活動を条件に貸与金の返済を免除する制度」について言及している新聞記事を引用します。



東京新聞」の「司法修習生 納得できぬ給費継続」( 2010年10月20日 )

 司法修習生に給与を払う制度の継続は納税者の納得を得られないだろう。法律家の特別扱い存続では司法改革の歯車が逆転しかねない。情緒的な貧困キャンペーンに惑わされずに考えたい。

 法律家の卵である司法修習生には国庫から給与、手当などが支給されてきたが、修習生の増員や財政事情を踏まえ、来月から廃止されることになっている。そのかわり希望者には「無利子、五年据え置き、十年返済」の好条件でこれまでと同額が貸し出される。

 これに対して日弁連は給費継続運動を展開してきた。「修習生は法科大学院で学ぶため多額の奨学金などを借りており、給費がなくなると金持ちしか法律家になれない」という主張だ。

 日弁連の強い働きかけで国会議員の間にも同調者が増え、民主党内にはねじれ国会で野党の協力を得るための取引材料にする動きも出てきた。

 最高裁によれば、給費制を維持すると年間百億円が必要になる。これだけの税金を使うのなら、低すぎる国選弁護報酬の増額、貧困者の裁判費用を援助する法律扶助の予算増額など、もっと有意義な使途があるはずだ。

 本当に困っている修習生への支援は誰も反対しないが、困窮していない人、弁護士事務所で高給を得る人にまで一律支給では納税者は納得できない。各種資格のなかで法律家だけをなぜ特別扱いするのか、説得力ある説明もない。

 貧しい人については、将来の公益活動を条件に貸与金の返済を免除する制度を設ければいい。「五年間据え置き」だから検討する時間はたっぷりある。

 給費制廃止は弁護士増員と一体となった司法改革の柱だが、日弁連は修習生の就職難を理由に増員を抑制しようともしている。「弁護士の生活が安定しなければ人権活動が鈍る」などの声もある。給費継続で財源を理由にした増員抑制論も強まるのは必至だ。

 だが、獲得した資格が生かせない例は多いのに、弁護士だけはなぜその資格で生活できるよう人口制限が許されるのか。これも合理的説明がない。

 司法改革は、弁護士が特別な存在ではなく、普通の隣人として身近にいる社会を目指している。

 人権活動を“人質”に自分たちの利益を守ろうとするかのように聞こえる主張は、「人権擁護と社会正義の実現」を使命とする弁護士にふさわしくない。


14 コメント

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Unknown (水口)
2010-11-14 02:44:12
確かに、私の意見は粗雑すぎますが、ご紹介とコメントをありがとうございます。

私も、弁護士の公益性を論拠にその養成に国費をかけるという論拠も否定をしているわけではありません。

また、貸与免除制度につき、国選事件や扶助事件などの公益活動を行うことで免除する制度も否定しません。また、法テラスの低い給与のスタッフ弁護士らについて貸与を免除することも異論はありません。

問題は、裁判官や検察官について貸与制免除をどうするかですが、200万円以上の借金を負った者については弁護士でも免除するという制度が導入されるのであれば、まあ良いのではないかと思います(できれば、任官者も弁護士も200万円以上の借金があれば平等に免除するという制が望ましいと思いますが)。なお、昔の育英会奨学金が教師になれば免除されたのと同じですから、それほご違和感はありません。ただ、任官者らだけを免除する制度は、修習の公平性に反すると思います。

ちなみに、司法修習生の労働者性についてですが、修習生は司法研修所や実務修習機関の指揮命令に服しているとはいえます。しかし、労務の対価として報酬(給与)を得ているかは大いに疑問ですね。修習生の提供する「労務」は対価(給与)の対象でなく、あくまで研修のための「履修行為」にしかすぎません(少なくとも、私の修習時代の起案は、「対価」に値する内容ではなかったことは間違いありません。)。

修習生が法律業務をした対価(給与)を得ているということになると、法曹資格のない者が対価を得ることになって、非弁(違法行為)になります(まあ、半分冗談ですが)。修習生の「給与」は修習に専念するための所得補償のようなものです。ただ、私の事務所の弁護士の中には、あくまで労働の対価だと主張する人もいます。でも私は同意できません。

私の司法修習時代は、司法修習生が検察修習で取り調べを行うことは、「権限がない者が権力を行使することで違法となる」との主張が少数ながら有力でした。それを根拠に、取り調べ修習を拒否する修習生もいたものです。今は過去の話しなんでしょうね。(ちなみに、修習生の取り調べも検察官の監督指導がきっちりなされれば、適法になるという見解が多数説でした)





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Unknown (memo26)
2010-11-14 15:15:37
 「粗雑すぎる」と言っているのは私ではありません。

 裁判官・検察官に任官する人に対する免除には、異論は少ないのではないかと思います。反対意見があるとすればそれは弁護士になった (なろうとする) 人に対してだと思います。私としては、「公益活動」を条件に加えることで、社会の同意が得やすくなるのではないかと思います。

 ほぼすべての弁護士は「公益活動」をしている、という批判もあり得るとは思いますが、金儲けに走っている弁護士がいるのは確かだと思います。

 司法修習生の労働者性について、解説、ありがとうございます。取り調べ修習を拒否した修習生の話は聞いたことがあります (忘れていました) 。私の素人感覚による意見も、完全に的外れだったわけではなく、有力たりうる程度には的を得ていたわけですね。

 なお、私が思いますに、修習生の給費制維持 (いまとなっては復活) を主張する根拠としては、「貧しい人は法律家になれなくなる」という根拠か、「公益性」という根拠かの、どちらかしかあり得ないと思います。このどちらかであれば、給費制が「認められる余地がある」と思います (注記するまでもないとは思いますが、「余地がある」=「認めるべき」ではありません) 。
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Unknown (青龍)
2010-11-14 18:11:23
>「粗雑すぎる」と言っているのは私ではありません。

 では誰ですか?
 私は水口弁護士の見解について一度も言及したことはありません。この書き方だと私がそのように評価したと誤解されかねません。誰が水口弁護士の見解を「粗雑すぎる」と評価したのか明らかにして下さい。



 

 
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Unknown (memo26)
2010-11-14 18:48:28
たしかに、あなたは水口弁護士の主張に対して「粗雑すぎる」と述べたことはありませんが、「粗雑すぎる」という「評価基準」を連呼しているのは青龍さんですね。私の見解は、

「青龍さんにしてみれば、水口弁護士の主張は「粗雑すぎる」のでしょうが、私としては、水口弁護士のような書きかたもあってよいと思います」

に尽きます。
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Unknown (青龍)
2010-11-14 19:41:27
>「青龍さんにしてみれば、水口弁護士の主張は「粗雑すぎる」のでしょうが、私としては、水口弁護士のような書きかたもあってよいと思います」

 私が粗雑すぎると評価したのは、徹頭徹尾、あなたの主張に対してです。あなたの主張を粗雑すぎると評価したことが、なぜ、私からすると「水口弁護士の主張は『粗雑すぎる』のでしょうが、」ということになるのですか。
 ろくに根拠も示さず私の考えを忖度するのはやめて下さい。はっきり言って迷惑です。
 
 
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Unknown (memo26)
2010-11-15 16:15:49
>  ろくに根拠も示さず私の考えを忖度するのはやめて下さい。はっきり言って迷惑です。

 記事の本文中において、すでに根拠は明示しています。ろくに私の文章も読まずに批判するのはやめて下さい。私のほうこそ、はっきり言って迷惑です。
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Unknown (青龍)
2010-11-15 16:42:58
 私があなたのことを「粗雑すぎる」と評価した部分を見れば、あなたが本文で挙げたようなことは、私から見て「水口弁護士の意見が粗雑である」と判断する理由と鳴らないことは明らかです。
 すなわち、私が粗雑だと指摘しているのは、全て、あなたの推論過程に関する部分であって、給費制賛成の根拠を一つしかあげていないことではありません。
 水口弁護士をあなたと同レベルに粗雑であると評価するだけでも十分失礼ですが、よりによってその評価に私の名前を出し、しかもその根拠が的外れであることは、私にとって迷惑極まりないです。
 もう一度私があなたの主張を「粗雑すぎる」と評価した部分とその理由を読み直して、それが水口弁護士の見解についてもあてはまるかを検討して下さい。
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Unknown (memo26)
2010-11-15 18:35:37
 あなたのコメントは、私の記事に対するあなたの批判が、「粗雑すぎる」ことを示しています。低レベルな反論、しかも反論のための反論と取られてもしかたのないコメントは、いいかげんにやめたらどうですか?

 また、水口弁護士も、あなたの基準によれば「粗雑すぎる」といえることは、認められていますよ?

 あなたの執拗な「粗雑すぎる」という「抽象的な印象論」は、私に対して十分失礼ですし、誹謗中傷になりかねません。あなたは以前、弁護士会に登録されていたそうですから、子供ではないのでしょう? すこしは常識を弁えたらいかがですか?
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Unknown (青龍)
2010-11-15 19:32:12
>あなたのコメントは、私の記事に対するあなたの批判が、「粗雑すぎる」ことを示しています。低レベルな反論、しかも反論のための反論と取られてもしかたのないコメントは、いいかげんにやめたらどうですか?

 無茶苦茶です。
 私は、あなたの主張がなぜ成り立たないのか具体例を挙げて説明していますが、今回に限らず、あなたの反論はそれには全く答えず、「粗雑すぎる」との結論しか言っていません。こんなもの低レベルかどうか以前に反論と呼ぶに値しません。
 これまでと同様に、あなたのやっている反論は、全て私の書いている内容を全く見なくても書ける無内容なものでしかありません。

>また、水口弁護士も、あなたの基準によれば「粗雑すぎる」といえることは、認められていますよ?

 水口弁護士は「確かに、私の意見は粗雑すぎますが、ご紹介とコメントをありがとうございます。」としか書いていません。どこに私の基準によればと書いてあるのですか?
 しかもこの水口弁護士の記述自体あなたが書いた「粗雑すぎる」という部分に対応しているだけで、本文に記載されていない(しかも他の記事のコメント欄でもあなたの推論過程に対する評価として用いられているだけの)「粗雑すぎる」という評価から、水口弁護士が自分の主張に多する私の評価基準を読み取ることは困難です。読み取ることが困難な基準に当てはめることはそもそもできません。
 これは私がこれまでの議論であなたに対して「粗雑すぎる」と評価した対象を見ればすぐ分かることです(私はこのコメントを書くにあたってこれまで「粗雑」と評価した対象を確認していますが全て推論過程についてのもので、給費制の根拠が一つであるという主張に対して「粗雑」と評価したことはありません)。

>あなたの執拗な「粗雑すぎる」という「抽象的な印象論」は、私に対して十分失礼ですし、誹謗中傷になりかねません。あなたは以前、弁護士会に登録されていたそうですから、子供ではないのでしょう? すこしは常識を弁えたらいかがですか?

 あなたの主張がなぜ「粗雑」といえるのかは、今回に限らず全て具体的な理由を示しています。あなたはこれまでその具体的な指摘に答えることなく「粗雑」という評価のみを取り出して印象論であるといっているだけです。
 違うというのであれば、これまでの議論の中で私が「粗雑」過ぎると評価した対象を摘示した上で、その基準が水口弁護士の主張にあてはまることを論証してみて下さい(このように書いても多分、抽象的な反論で終わらせるのでしょうが)。

 また、私はこれまで一度も「以前、弁護士会に登録」していたと書いたことはありませんが、何か勘違いしているのではないですか。
 常識云々については、その言葉をそのままお返しします。
 


 


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Unknown (memo26)
2010-11-16 00:46:00
 あなたの意見はわかりました。

 私は、あなたの批判は「粗雑すぎる」と思っているので、あなたと議論しようとは思っていません。つまり、いまの私は、あなたに反論しようとは思っていません。

 あなたの意見は、すでに読者のかたも知っているので、あなたはこれ以上、あなたの意見をコメント欄に書く必要はないのではありませんか?
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