言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

「朋友」 は 「友達」 ではない

2009-12-08 | 日記
田代秀敏 『中国に人民元はない』 ( p.16 )

 日本人は、「朋友」 を親友のような頼りになる存在として位置づけるが、中国では違う。
 実は、中国で 「朋友」 を見つけるのは、日本で 「友達」 を見つけるよりも簡単である。たとえば、一度紹介された人は 「朋友」 である。日本だったら 「知り合い」 くらいの感じである。
 知り合いでなくても、「朋友」 と言う時がある。それは 「争いがない」 関係である。北京でタクシーの運転手と料金のことで口論になったことがある。最終的には運転手の方が妥協して ( というよりも、無理な要求を引っ込めて ) くれたが、そのとき、不機嫌な顔で私に 「朋友になりましょう」 と言って、しぶしぶ規定の料金を受け取った。
 単なる知り合いではなく 「友達」 としてお付き合いしましょうと言いたいときは、「あなたを私の 『老朋友』 と呼んでいいですか?」 と言うのが普通である。ここで 「老」 は、「年寄り」 という意味ではなくて、「昔からの」 という意味である。「老朋友」 になるには、少なくとも一度は一緒に食事をして、互いの器量と人格とを認め合わなければならない。
 そうした食事の際には、あなたの人物をじっくりと評価しているから油断してはならない。どんなに酒を呑まされても、酔っぱらったらアウトである。泣いたり喚いたりしたら、二度と相手にしてもらえない。また、二次会に誘うのも禁物である。支払いは自分が全額払うか、相手が全額払うかの、二者択一である。割り勘を提案するのは最悪の結果を招く。
 ところで、「友達」 と 「朋友」 と ( あるいは 「親友」 と 「老朋友」 と ) の決定的な違いは、「友達」 の 「友達」 は原則として 「友達」 だが、「朋友」 の 「朋友」 は原則として 「赤の他人」 であることである。だから、中国には、「友達の輪」 というものが、原則としてない。
 このことが、日本の企業の現地法人で責任者が交替するときに、問題となる。前任者が中国人の信望を集め、どんなに豊かな人脈を築いても、前任者の 「老朋友」 たちにとって、後任者は 「赤の他人」 である。前任者が後任者をちゃんと紹介しても、「朋友」 の関係になるのがせいぜいで、それを 「老朋友」 の関係にできるかどうかは、後任者の努力にかかっている。
 これが日本だったら、取引先が前任者のことを直ぐに忘れて、後任者との関係を緊密にしようとしてくれるかもしれない。しかし、中国では、そうしたことは期待できない。
 要するに、中国では、人と人との関係が、徹底して具体的なのである。日本では、人ではなく名詞の肩書きと付き合っていることがよくあるが、そうした感覚は中国ではどうも希薄である。付き合う相手は、抽象的な会社ではなく、具体的な人に限られる。

(中略)

 友達の友達が自分にとって赤の他人であるなら、敵の友達が自分にとって赤の他人でも不思議はない。だからこそ、胡錦濤総書記は、小泉純一郎前総理の靖国神社参拝で面子を何度もつぶされたが、その小泉前総理の忠実な部下であり、小泉前総理から後継者として指名された安倍晋三現総理と、すぐに会見したのだろう。


 「朋友」 という言葉は、( 日本では ) 「友達」 と捉えられているが、「朋友」 は 「友達」 ではない。たんなる 「知り合い」 といった程度である、と書かれています。



 「朋友」 は 「友達」 である、という誤解が生じるのは、中国語の辞書などに、「友達」 と書かれているからだと思います。また、「朋友」 に、「友」 という字が含まれていることも、原因になっていると思います。



 さて、中国の 「朋友」 概念、そして、そこから派生する 「朋友の朋友は赤の他人」 という状況をもとに考えると、中国では組織を維持するのが大変ではないか、と思われます。また、終身雇用を望む人はほとんどいないのではないか、と思われます。

 組織を維持するのが大変ではないか、という観点でいえば、中国では大企業はほとんど生まれないだろう、企業の成長は中小企業の段階で止まることが多いだろう、と予想されます。

 終身雇用を望む人はほとんどいないのではないか、という観点でいえば、独立・起業が活発に続き、中国経済は簡単には衰えない、と予想されます。

 したがって、中国は、中小企業が中心となり、経済成長を続ける ( 止まらない ) のではないかと思います。



 組織を維持するのが大変な中国社会で、広大な中国を統治している共産党が、現在の統治方法をなかなか変えないのも、そこには、ある種の必然があるのではないかと思います。



 中国の政治・経済・軍事などを分析・予想するうえで、「朋友」 概念は重要な基礎になるものと思われます。



 なお、余談ですが、親密さの程度が、

  1. 男「朋友」 ・ 女「朋友」
  2. 「友達」 ( 男「友達」 ・ 女「友達」 )
  3. 「朋友」

と、「入れ子状になっている」 のはなぜなのか、不思議ではあります。

1 コメント

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どうも (Daigo05)
2017-07-23 01:08:15
ありがとう、勉強になりましたね。

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