リチャード・L・アーミテージ ジョセフ・S・ナイJr 春原剛 『日米同盟 vs. 中国・北朝鮮』 ( p.122 )
世間では「BRICs」などという言葉が使われているが、ロシアは衰退国家である。したがって「BRICs」という括り方は間違っている、と書かれています。
ナイ教授が「ロシアは衰退しつつある」という根拠は、
ロシアの人口構成について、
「社会実情データ図録」の「ロシアの人口ピラミッド(2001年推計)」
を見ると、たしかにいびつです。しかし、それは日本も似たり寄ったりではないでしょうか。
また、資源価格の上昇が予想されている現状では、「ロシア経済は資源頼みである」といわれても、それが「ロシアの衰退」とどう結びつくのか、私には疑問なしとしません。それどころか、逆に資源を輸入している日本のほうが「資源価格の上昇がもたらす交易条件の悪化」という問題を抱えています。
したがってこの要素についていえば、「ロシアは成長国家であり、日本は衰退国家である」と考えるのが自然であるようにも思われます。
しかし全体として、ナイ教授の考えかたも成り立ちうると思います。
したがって、あまり「BRICs、BRICs」などと言わないほうがよいのかもしれません。
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「天然資源は成長の限界となるか」
ナイ 付け加えれば、「BRICs」という括り方は間違っていると思います。なぜなら、中国、ブラジル、インドという興隆中の国々の中に唯一、衰退しつつある国、ロシアを入れているからです。
春原 一見すると、資源大国として世界で存在感を再び増しているはずのロシアを「衰退国家」だと断定される理由は何ですか?
ナイ ロシアに関する多くの統計を見て下さい。彼らの経済は資源頼みです。そして、人口構成も健康問題もひどい有様です。ロシア人男性の平均寿命は五十九歳ですよ。ほかの先進国では考えられません。日本人男性の平均寿命は七十八歳とか、それぐらいでしょう? それ一つとっても、ロシアの惨状がわかるではありませんか。
春原 そうした状況に危機感を覚えたメドベージェフ大統領は経済の質的転換に取り組んでいるわけですが。
ナイ 確かにメドベージェフ大統領は近代化を口にしていますが、政治的な腐敗があまりにも進んでいて、彼の目指す近代化を受け付けないでしょう。ですから、ロシアが自ら大転換を決断しない限り、ロシアの没落は今後も続きます。だから、私は「BRICs」という言葉に意味はないと言うのです。
春原 つまり、ロシアは大胆な国家再構築に踏み出さない限り、国際社会の中では「衰退国家」として位置付けられる、と見ているわけですね?
ナイ その通りです。エネルギー資源と中央政府の統制に乗っかり過ぎています。たとえば、メドベージェフ大統領は「(ロシアで)シリコン・バレーをやろう(ハイテク産業地帯を創出するという意味)」と声を上げていますが、彼はそれを政府主導でできると思っている。しかし、(米国の連邦政府による干渉を一切、受けないで自律的に発展した)シリコン・バレーの生い立ちはそんなものとはかけ離れたものなのです。
世間では「BRICs」などという言葉が使われているが、ロシアは衰退国家である。したがって「BRICs」という括り方は間違っている、と書かれています。
ナイ教授が「ロシアは衰退しつつある」という根拠は、
- ロシア経済は資源頼みである。
- ロシアの人口構成はいびつである。
- ロシアの健康問題もひどい有様である。ロシア人男性の平均寿命は五十九歳であり、これはほかの先進国では考えられない。
- ロシアでは政治的な腐敗があまりにも進んでいて、近代化が困難である。
- ロシア経済は「政府主導」である。
ロシアの人口構成について、
「社会実情データ図録」の「ロシアの人口ピラミッド(2001年推計)」
を見ると、たしかにいびつです。しかし、それは日本も似たり寄ったりではないでしょうか。
また、資源価格の上昇が予想されている現状では、「ロシア経済は資源頼みである」といわれても、それが「ロシアの衰退」とどう結びつくのか、私には疑問なしとしません。それどころか、逆に資源を輸入している日本のほうが「資源価格の上昇がもたらす交易条件の悪化」という問題を抱えています。
したがってこの要素についていえば、「ロシアは成長国家であり、日本は衰退国家である」と考えるのが自然であるようにも思われます。
しかし全体として、ナイ教授の考えかたも成り立ちうると思います。
したがって、あまり「BRICs、BRICs」などと言わないほうがよいのかもしれません。
■関連記事
「交易条件の悪化がもたらす所得の低下」
「天然資源は成長の限界となるか」