岩田規久男 『デフレと超円高』 ( p.12 )
デフレを止めれば、円高も止まる。デフレを止めれば、成長戦略も効果を上げる。デフレを止められる唯一の機関は、日本銀行である。日銀の金融政策が決定的に重要である、と書かれています。
最近、日本銀行の金融政策が微妙に変わり、日本の経済状況は好転しつつあると思われますが、
その理論的背景を把握しておくことは大切なので、以後、この本を引用しつつ、考えていきたいと思います。
とはいえ、いまでは重要性は低下しつつあると思われるテーマなので、なるべく早く次のテーマに移りたいと思います。
なお、今回の引用部分を読むかぎり、現行日銀法は、「日銀に目的達成の手段だけでなく、政策目標の決定についても政府からの独立を認めて」いる、と理解してよいようです。
しかし、この部分の要点は、法解釈ではなく、現行法の問題点の指摘だと思います。つまり、学問的には、政策目標の決定については中央銀行に自由はない、とすべきだという考えかたが主流である、という部分が重要だと思います。
日本は少子・高齢化が急速に進み、生産年齢人口が減少する時代に入った。そうであれば、本来、労働市場は人手不足で、「売り手市場」になるはずである。ところが、実際に起きているのは、就職氷河期に象徴される「買い手市場」で、大量の就職浪人の発生である。一体、どうしてこんな馬鹿げたことが起きるのであろうか。
たまたま、高校や大学を卒業したときが不景気のために、正社員になれなかった人の多くは、セカンド・チャンスがほとんどないため、一生、非正社員として働かなければならない。正社員と非正社員の生涯所得には約二・五倍もの格差がつく(〇九年度年次経済財政報告による)。
以上のような雇用状況では、多くの人が将来不安から、財布の紐を締めて、支出を控える。その支出の抑制がデフレを促進する。とくに、若い人には希望がなく、かれらが内向きになるのも当然である。
菅直人首相は「一に雇用、二に雇用、三に雇用」といって首相になった。しかし、政府には雇用を増やす手段はほとんどない。なぜならば、雇用が悪化しているのは、デフレと超円高のためだからである。そして、超円高の原因はデフレである。
政府にできることは、税金を使って、デフレと超円高で悪化する雇用の痛みを和らげることくらいしかない。経済界は政府に成長戦略を求めているが、デフレと超円高のままでは、どんな成長戦略をとってもその成果は望めない。それは、成長戦略とは、規制緩和などによって供給能力を増強する政策だからである。日本経済はデフレと超円高で、大幅な需要不足である。需要が大幅に不足しているときに、供給増強政策をとれば、ますます、需要が供給に対して不足するようになり、雇用が悪化するだけである。
成長戦略が成果を上げるためには、まず、デフレを止めなければならない。デフレを止めれば、円高も止まる。
デフレと超円高を止めることができる唯一の機関は、政府ではなく、日本銀行である。これを逆に言えば、デフレと超円高をもたらしている真犯人は、日銀だということである。
本来、政府が日銀の政策目標を決め、その目標達成を日銀に義務付けなければならない。つまり、本来、日銀には金融政策の目標を決定する自由はなく、あるのは、目標を達成するための手段を選ぶ自由である。これが、政府からの日銀の独立の本来の意味である。すなわち、右の意味で、日銀は政府の子会社であり、親会社の政府の目的に従わなければ、国家経営は成り立たないのである。
ところが、一九九八年から施行された「新日銀法」は日銀に目的達成の手段だけでなく、政策目標の決定についても政府からの独立を認めてしまった。そのため、それ以後、日銀はなんらの責任も取ることなく、「いいたい放題、やりたい放題」の独善的機関になってしまい、子会社の日銀が多少とも「デフレ脱却」のポーズをとると、親会社の社長や取締役段「ご協力いただいて、感謝します」という始末である。親会社が子会社をコントロールできない会社がまともな経営をできるはずがない。
(中略)
本書は、日銀の金融政策をどのように変えれば、デフレと超円高から脱却して、雇用も、財政も、年金も大きく改善できるかを明らかにしようとするものである。
とくに、本書で強調していることは、デフレ下の金融政策とは、人々の間におだやかなインフレ予想の形成を促すことによって、デフレと超円高から脱却する政策である、という点である。
デフレを止めれば、円高も止まる。デフレを止めれば、成長戦略も効果を上げる。デフレを止められる唯一の機関は、日本銀行である。日銀の金融政策が決定的に重要である、と書かれています。
最近、日本銀行の金融政策が微妙に変わり、日本の経済状況は好転しつつあると思われますが、
その理論的背景を把握しておくことは大切なので、以後、この本を引用しつつ、考えていきたいと思います。
とはいえ、いまでは重要性は低下しつつあると思われるテーマなので、なるべく早く次のテーマに移りたいと思います。
なお、今回の引用部分を読むかぎり、現行日銀法は、「日銀に目的達成の手段だけでなく、政策目標の決定についても政府からの独立を認めて」いる、と理解してよいようです。
しかし、この部分の要点は、法解釈ではなく、現行法の問題点の指摘だと思います。つまり、学問的には、政策目標の決定については中央銀行に自由はない、とすべきだという考えかたが主流である、という部分が重要だと思います。