まさおさまの 何でも倫理学

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2010年の脳死・臓器移植

2011-02-02 18:16:47 | 生老病死の倫理学
2010年は改正・臓器移植法が施行され、家族の同意だけで脳死・臓器移植が可能となり、
日本の脳死・臓器移植にとって画期的な年となりました。
8月9日に改正臓器移植法の下で初めての脳死・臓器移植が行われて以来、
私もしばらくのあいだはケースが増えるたびにお伝えしていましたが、
予想通り、あっという間にニュースバリューはなくなって、
マスコミで大々的に取り上げられることも少なくなっていきました。
それくらい改正後は多くの脳死・臓器移植が日常的に行われるようになっていったのです。

臓器移植ネットワークのサイトで調べてみると、
2010年には32例の臓器移植が行われたようです。
1997年に臓器移植法が制定されて、昨年改正されるまでのあいだ、
脳死・臓器移植の実施件数がどれくらいだったかについては以前に書きましたが、
もう一度載せておきましょう。

1997年  0件
1998年  0件
1999年  4件
2000年  5件
2001年  8件
2002年  6件
2003年  3件
2004年  5件
2005年  9件
2006年 10件
2007年 13件
2008年 13件
2009年  7件
2010年  3件 (改正前まで)

トータルで86件です。
13年間でたったの86件。
それが、改正後ほんの半年足らずのあいだに29件も行われたのです。
13年もかけて達成した実施数の約3分の1の数をたった半年で稼いでしまったのです。
やはり本人の書面による意思表示 (いわゆるドナーカード) というのが、
どれほどネックになっていたかというのがわかると思います。
家族の同意だけでいいとなると、こんなにできてしまうんですね。
この調子で一年間着々と脳死・臓器移植が行われていくすると、
2011年はいったい何件になってしまうのでしょうか?

私は今回の改正に賛成ではありません。
本人の意思確認なしに臓器摘出すべきではないと思うのです。
改正後も、というよりもドナーカードが不要となった今こそ、
あらかじめ家族で互いの意思を確認し合っておくことが必要だと思っています。
また、改正の一番のポイントであった、15歳未満での臓器提供はいまだ行われていません。
読売新聞によると、昨年末までに脳死していたのではないかと思われる子どもは11人いて、
そのうち6人については臓器提供に関する打診が行われたのだそうですが、
いずれも家族が同意しなかったのだそうです。
残りの5名のなかには虐待の疑いのある子どももいて、
そのような場合は移植をしてはいけないことになっていますから、
打診自体されなかったとのことです。
15歳未満の子どもについては特に慎重な運用が必要と思われますので、
未だ行われていないということはむしろ誇るべきことだろうと思います。
とはいえ、いずれ15歳未満での移植も実施されるでしょうし、
そのときはしばらくはニュースにも取り上げられるでしょうから、
この制度が今後どう運用されていくのか、注意深くウォッチしておく必要があるでしょう。


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