まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

ザ・ブランド

2009-10-30 23:35:56 | お仕事のオキテ
仕事をするうえでブランドが大事という話を前にしました。
さて、数あるブランドのなかでも最も強力な、
「ザ」 をつけて呼ぶことのできるようなブランドがいくつかあることをご存じでしょうか。
それは、その分野のパイオニア (=開拓者) で、
登録商標である固有名詞があたかも一般名詞であるかのように、
あちこちで使われてしまっているブランドのことです。

有名なところでは、ホチキスがあります。
皆さんたぶん一般名詞のように使っていることと思いますが、
あれは特定の会社の特定の製品名にすぎません。
あの、カチャッとやってコの字型の針で複数枚の紙を1つに留める機械のことは、
正しくはステイプラーと呼ばなくてはなりません。
それが一般的な呼称なのです。
しかしステイプラーなんていう言葉を知っている人のほうが珍しいですよね。
たいていみんなホチキスと言ってしまいます。
しかしそれは、ステイプラーを最初に開発したホチキス社が作っているステイプラー
のことだけを指す固有名詞なのです。
こういうザ・ブランドの地位を築き上げられると強いですね。
もうほとんど一人勝ちの世界です。
だってステイプラーを買いたいお客さんが、
ほっといてもお店で 「ホチキスください」 って指定してくれるのですから。

さて、ホチキスほどグローバルな通用性があるかはわかりませんが、
日本国内でならザ・ブランドの地位を築き上げている日本製品がいくつかあります。
「ウォシュレット」 などはその1つでしょう。
これはTOTOの登録商標です。
一般的には 「温水洗浄便座」 と呼ぶのが正しい呼称です。
製品とは言えないかもしれませんが、
「宅急便」 というのもパイオニアとしての地位を確立していますね。
これも本来、宅急便と呼べるのは 「クロネコヤマトの宅急便」 だけです。
一般名称は 「宅配便」 です。
しかし一般名称ができる前に 「宅急便」 が一世を風靡してしまっていたのですから、
映画のタイトルにする際もやはり 『魔女の宅急便』 であって、
『魔女の宅配便』 では間の抜けた感じが否めません。
先に論じたことがある 「シッカロール」 なんかはどうなんでしょうか。
私の世代ではたぶん一般名詞として通用しているように思いますが、
若い方々はご存じでしょうか。
シッカロールは和光堂の登録商標であり、一般的名称は 「ベビーパウダー」 です。
まあベビーパウダーのほうは、ステイプラーや宅配便に比べたら
比較的よく聞く名詞かもしれません。

むろん、ザ・ブランドの地位をいったん築き上げればそれで一生安泰かというと、そうはいかず、
時の流れとともにザ・ブランドの地位を追われてしまう、ということもありえます。
例えば、「ファミコン」(任天堂) というのは一昔前まではザ・ブランドとして、
一般名詞のように使われていましたが、最近はすっかり廃れてしまいました。
とはいえ後発の 「プレステ」 はあくまでもソニーのプレイステーションのことであって、
家庭用ゲーム機のことを何でもかんでもプレステと呼ぶような文化は形成されませんでしたし、
今後もどこかの機種名が業界を席捲するという事態は考えられませんので、
「ファミコン」 はやはり当時としては別格の強さがあったのだろうと考えられます。
ソニーの 「ウォークマン」 は日本発のブランドとしては数少ない、
世界を席捲したザ・ブランドであったということができるでしょう。
しかし、携帯用カセットテーププレイヤーから携帯用CDプレイヤー、
MDプレイヤーぐらいまでの間は、業界をリードし続けていましたが、
残念ながら、その次の世代の携帯型音楽再生機器の開発で負けてしまい、
ザ・ブランドの地位を 「iPod」 にさらわれてしまいました。
ちなみに私は今、ソニーの iPod (その名もウォークマン)を使っています。
やはりホチキスのように新製品の開発のしようがない分野ではザ・ブランドは長生きしますが、
家電やパソコン関係など日進月歩の分野では、ザ・ブランドがそのカテゴリーごと没落して、
別種の製品に取って代わられてしまうということが起こりやすいのでしょう。

さて、これからの資本主義の闘いは、ザ・ブランド確立競争だろうと思っています。
日本発のグローバルなザ・ブランドをどんどん発信していけないかぎり、
日本資本主義は行き詰まりを迎えることになってしまうでしょう。
日本人というのは世界でも稀にみる、ブランドに弱い民族だと私は思いますが、
ブランドのなかでも、とりわけ外来ブランドに弱く、
ローカル・ブランド (つまり日本発のブランド) に冷淡なところがあるので、
私としては若干、日本経済の先行きを心配しています。
みんなで日本発のブランドを応援していこうではありませんか。
とりあえずは、ウォシュレットが世界中の空港やホテルに標準装備される日が来ることを
私は切に願っています。


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