雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

二度目のロンドン26 気軽にいける大英博物館②

2024-03-31 11:21:37 | Weblog
大英博物館近くのお店。大英博物館の「マンガ展」のポスターや萩尾望都が描く表紙の「月刊flowers」、「となりのトトロ」のトトロと「千と千尋の神隠し」のカオナシが一つの絵になった原画風のものなどが浮世絵とともに売られていた。

【日本ギャラリー】
中国や日本のものの展示には目を見張るような展示はありません。日本だとやはり浮世絵などの紙が中心となるのか退色を心配してるのでしょうか。せいぜい漆器や陶器が目を引く程度です。しかもアジアの一部としてざっくりと。

軽い失望を感じつつ日本などの展示の上階に向かって古めかしい石の階段で上がると、「三菱商事日本ギャラリー」というポスターが目に入りました。やはり無料の展示室で、三菱商事が出資している部屋とのこと。ずいぶんと落とした照明のなか、戦国時代の甲冑や喜多川歌麿の遊女をモチーフにした肉筆画などが展示されていました。いかにも欧米人が思い浮かべる「ザ・日本」の部屋。解説もほとんどなく、やはりざっくりとしています。

【(日本の)マンガ展】
 ただ、ちょうど日本のマンガを取り上げた「The Citi exhibition Mangaマンガ」展が開催中でこちらが大いににぎわっていました。特別展会場は有料で、この展示会は19.5ポンド、とウインブルドンの入場券15ポンドよりお高めでしたが、入ってみました。入口のポスターはゴールデンカムイのヒロイン・アシリパが毅然と遠くを見つけている絵。

当時はゴールデンカムイのマンガを私自身読んでいなかったので、アシリパの絵を見て「新しいマンガが中心なのかな」くらいしか感慨はありません(帰国後しっかりと見ました。アイヌ文化の部分がおもしろくて、いまや小学生も「熊とは食べるんだぜ。ゴールデンカムイでみた」などと食育にも役立つマンガになっています。)

展示は暗い照明の中、日本の有名マンガが展示され、文化としてわかりやすく流れを追った展示となっていました。コマ割りをどの順番で読むか、といったマンガに慣れ親しんだ人には空気のような作法に英語で解説がされていると、なんだかくすぐったいような気持ちに。

手塚治虫『新宝島』『鉄腕アトム』、鳥山明『ドラゴンボール』、石森(石ノ森)章太郎『サイボーグ009』などおもに少年マンガを中心に構成。さらに浮世絵(春画含む)の展示や圧巻は河鍋暁斎の作品《新富座妖怪引幕》(1880年)。デフォルメされた妖怪が決め顔でこちらを向くカラーの筆画で、妖怪らは当時、活躍していた歌舞伎役者がモデルとなったいかにもマンガ的な芝居小屋の幕の絵です。いろんな関連からルーツを探ってくるなアと面白くみました。
マンガから派生した文化として、コスプレやガンプラなどのプラモデル、ポケモンゲームなどもきちんと展示されていました。

2019年というタイミングでのこの展覧会は日本のマンガの爛熟期をあらわすにはちょうどいい時期の展覧会だったと今は思います。
(つづく)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二度目のロンドン25 大英博物館①

2024-03-24 12:00:37 | Weblog
大英博物館の入り口では、厳格な荷物検査が行われていた。大英図書館でもあったが、入場者数が多いので入るまでに時間がかかる。

【寄付で運営される博物館】
 かつて(30年ほど前)ロンドンに寄った時のこと。地下鉄を降りて、予備知識もなくふらりと寄った大英博物館。
 するといきなり目の前に、かの有名なロゼッタストーンが。そのほか、中東の石像の数々が高い天井が特徴的な建物の一階に、ずらりと並んでいました。解説はほとんどなく、開放的な空間に戸惑う私。
 これら本物の風情を醸す物体を横目に、チケット売り場を探したのですが、どこにも見当たりません。日本では一流美術品はとにかくチケット買わないとみられないという常識に完全に毒されていて、まさか無料とは考えもつきませんでした。そのため、本物を探し求めて大英博物館の一角だけをさまよって、立ち去ったのでした。

 以来30年。入場料を払って来日する大英博物館展を見ては、ため息をつく日々。

それが今日、終わるのです。

 朝10時に行くと、私の記憶とは異なっていて、入口では厳格な荷物検査のテントがあり、そこを通過するために行列ができていました。
相変わらず入場料はなし。ただ、寄付ボックスがそっと置かれていて、「気持ちをいれて」と書かれていました。

 寄付で社会を回す文化と知らなかったかつての私が気づかなかったボックスに、気持ちのお金を投じて、ようやく周りを見渡す気分になれました。

かつてのようにスーッと道を歩くようには博物館に入ることはもはや治安が許さず。文化が囲い込まれた空間に、かつてを知る人は違和感を覚えることでしょう。が、悲しいことに日本の常識にどっぷりつかった私には入場を意識することが、館内の価値を高める大切なセレモニーなのだと自覚しました。
博物館は思った以上に巨大でした。今日のうちに全部を見るのは不可能なので、まずはアジア系の部屋に絞ってみることにしました。
     (つづく)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二度目のロンドン24 ウインブルドン選手権へ④

2024-03-17 09:45:50 | Weblog
写真は主要コート下の休みどころ。ここの草花をバックに国営放送BBCは中継を行い、今日の天気予報のバックなどにも使われていた。私もリポーターになりきって記念撮影をして楽しんだ。

【ウインブルドン点景】
今回、センターコートなどには入れなかったものの十分楽しむことができました。テレビで見ていた光景が目の前にあったことに興奮したり、スター選手に会えたり。
ほか、書ききれなかった数々の楽しかったポイントを挙げてみます。

1.美しい草花
また、会場にとりどりの花で飾られていたのがいかにもイングリッシュガーデンの国らしくてなごみました。青系統が基調なのがいかにも高緯度で光の淡い国らしくて異国情緒を感じます。



2.警備員
有料会場の要所要所の非常階段口では警備員が目を光られていたのも印象深いものがありました。女性警備員も多く、仁王立ちの周辺は一種のバリアが張り詰めたような緊張感が漂っていました。


3.きびきびとした子供たち
また、やはり際立っていたのがボールボーイ、ボールガールたちの動作がきびきびとしていたことです。選手を尊敬して、失礼のないように動いているのがよくわかります。
彼らの統一された服装はラルフローレン製で、彼らは13歳から16歳の子供たち。ウインブルドン選手権を主催する協会と提携している28校の子どもたちが学校の主催する協会の教育プログラムを受講し、応募者1000人以上の中から170人が新規に選ばれて、2月からさらに厳しい訓練を積んで、当日にのぞんでいるのだとか。
一流の大会で、きちんとした礼儀も身に付けられ、しかも真剣勝負にのぞむ選手をまじかに見ることができ、きちんと仕事としての対応も求められる。長い伝統に基づいたプログラムなのでしょう。私もテニス好きの子供だったなら、参加したい光景でした。

4.気の利いたみやげ物
あとでなにより喜ばれたのがウインブルドンの会場で売られている公式グッズの数々。帽子や折り畳み傘、ワッペン、ボールペンなど数々が売られていて、大英図書館のグッズよりも安いぐらいで、品質もよいものでした。何より色が落ち着いた紫と緑と白のテイストなのが素敵。テニス好きの友人がいるかたはぜひ。

※次回は大英博物館です。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二度目のロンドン23 ウインブルドン選手権へ③

2024-03-10 10:39:51 | Weblog
写真はウインブルドンにて。国枝選手とオルソン選手の試合開始の光景。ここからはシャッターを切らずに静かに観戦した。

【車いすテニス】
ちょっと時間を巻き戻します。
大型コートから聞こえる歓声を聞きながら、知っている選手で私のチケットで見られる試合はないかな? と対戦ボードを見ていると、国枝慎吾選手の試合が17番コートで11時からあると書かれていました。対戦相手はスウェーデンのステファン・オルソン選手。世界ランキング2位の選手です。つまり世界ランキング1,2位が激突です。

さっそく行ってみると緑色のビニールシートで周囲の通路から仕切られただけの独立した一面のコートがありました。

これが17番コートです。

コートの横に固定式の座席が数列並んでいます。試合開始の10分前なのに席は選び放題。一番前だとボールが飛んできそうなので、前から2列目の真ん中あたりの席に座りました。それでも選手に手が届きそうな近さです。

すでに国枝選手はコートに来ていました。ボールボーイ、ボールガールたちもすでにコート上にいて、おそろいの紺のポロシャツと半ズボン、キャップに白のスニーカー姿でキビキビとした動作で選手のお世話をしていました。

国枝選手がボールボーイに水とバナナをお願いすると、彼はすぐに走っていき、コートの真ん中にあるそびえ立つような審判席の下側に手を伸ばしました。そこにはバナナと水が常備されているのです。そして、また走って国枝選手のもとへ。国枝選手は笑顔ながら「もっと傷んでないものを。」と要求していました。

選手もボールボーイもたいへんな緊張感です。そんなやりとりをじかに見られるのもコートの真横に陣取っただいご味でしょう。

さて、ようやく納得のいくバナナを受け取った国枝選手は、次にゆっくりと自分のバックから水、栄養ドリンクのような黄色いのみもの、チョココーティングのグミ、10秒チャージのような栄養系のたべものを取り出して、手慣れた様子でコート横のイスの上に並べました。
 それからそれをちょっとずつ食べては、自分でメモしたノートを広げて、最終確認をするように目を通していました。
 これが彼のルーティーンなのでしょう。こちらにも緊張感がさざなみのように伝わってきます。

2時間の試合中、ピシッと立ち続けるボールボーイ、ボールガールたち。ボールが来たら、走って取りにいく姿がまたすごい。

試合は湖に手漕ぎボートを漕ぎだすように静かに始まりました。次第に熱を帯びてきます。白熱すると国枝選手の「ウンっ」という、うなるような声がスマッシュとともに響きわたりました。車いすが激しく動き、ギャワっときしむ音。恐ろしい勢いで走り、打つ。すべて腕だけで動いています。

試合は激戦で2時間にも及びました。最初は国枝選手が劣勢でしたが、やがてギリギリでかわし続け、最後に勝ちをもぎとりました。横綱相撲ではなく、すごくどきどきさせられた、見ごたえのある試合でした。

プロの試合をこんなにもまじかで見たのも初めてなら、車いすテニスを見たのもはじめてのこと。すっかりこちらも熱くなってしまいました。

また、見ていて感じたのは本人の技量もさることながら、車いすの性能や細かな調整も大きなウェートを占めている気がすること。冬と夏でも伸びる部材、断裂しやすい部材は変わり、調整も変わってくるはずです。そういった国枝選手をささえるチームが観客席の一角にいて、いろいろとアドバイスを飛ばしている光景も、まるで地元の地区予選のようで面白い光景でした。

帰国後、NHKBSのウインブルドン中継のダイジェストニュースを見ていたら、なんと我々が国枝選手の試合を観戦している模様がばっちり映っていました。ボールが目の前を通り過ぎるたびにせわしなく首を右に左にと動かす私。いやあ、夢中だったんですね。

しかし、世界一位、二位の選手の試合で準決勝だというのに、ギャラリーの多くが報道陣という不思議さ。パラスポーツは一流でもなかなかたいへんなのだな。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする