雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

スペインとポルトガル13 ハモン・イベリコ・ベジョータを日本で食す

2021-06-27 15:43:37 | Weblog
写真はポルトガル南東部アレンテージョ地方にあるエヴォラ郊外にて。スペイン国境からはまだ遠いが、地続きの林が広がっている。ワインのコルクに使用されるコルク樫などがまばらに広がり、その下に羊や豚、牛などを放牧している。2月下旬に行ったのだが、鉄塔の上にはコウノトリが巣を作っていて、のんびりとした風景が広がっていた。 

今回は日本の話です。
【ハモン・イベリコ・ベジョータを探して】
前回絶賛した最高級生ハムのハモン・イベリコ・ベジョータ(JAMON IBERICO BELLOTA)。ベジョータとはスペイン語でどんぐりのこと。スペインとポルトガル国境沿いに広大に広がるオーク林(スペインの里山)に放牧し、そこのどんぐりを食べて育ったイベリコ豚を3年以上熟成させたもので、風味が格別だと珍重されています。放牧の有無や血統などによって色分けしたラベルがあるようです。

書いているうちに食べたくなってきました。

日本で生ハムなら「KALDI」や「成城石井」だと出向くと、置かれているのはスペイン産なら「ハモン・セラーノ」まで。圧倒的に多いのはイタリア産でした。「KALDI」の生ハム切り落としに至っては120グラム268円で、普通に豚肉スライスに匹敵する価格にまでなっていました(※)。

これらの生ハムもクセがなくておいしいのですが(娘はむしろこちらのほうが好み)、スペインの、あのハムは見当たりません。そこでネットを見ると高級料理店や通販にありました。あのマンドリンのような大きさの骨付き生ハムが一本で10万円。高いのか、安いのか。
●参考
https://shop.spainclub.jp/shopdetail/014000000006/
森の話 スペイン王国 Kingdom of Spain (kikori.org)
【おいしく食べるには常温で】

次に手軽な薄切りタイプを求めて東京銀座の月島スペインクラブ「イ・ボテカ」に行ってみました。

店の左側にはワインがずらりと壁を多い尽くすように置かれていて壮観です。一方、右側の小さな冷蔵スペースにはスペイン直輸入の最高級食材がちょこっと並んでいます。メインはレストランで、その脇で食材をお分けするという雰囲気。ラフな恰好で出向いたので、しまった!と後悔するほど、おしゃれな空間でした。

目当ての生ハム「ハモン・イベリコ・ベジョータ」は最高級品マークがついて100グラムの薄切り真空パックが3240円。これを一見、何の迷いのない風情で買うと、店の人が軽く驚いているのがわかりました。

スペインであまりにおいしかったので、ネットで探してきました、と正直に話すと、

「以前は大手百貨店さんにも置いていましたが、この値段でしょ。なかなか売れませんから、なくなってしまったのです」と話してくれました。

コツも教えてくれました。

「食べる1時間前に常温においてください。香りがあふれてきますよ」

やはり脂身部分の溶けぐあいがポイントなのです。
現地との価格差は相当あるので、現地で食べればお得感が増すし、日本で食べればアニバーサリー感はいや増すことでしょう。味が濃い目なのでワインとぜひ!

※生ハムの関税は8.4%でしたが、2019年2月に締結された日欧EPA(経済連携協定)によって徐々に引き下げられ、10年後には0%になります(ちなみにオリーブオイルは最初から0%。)。生ハムが身近になるわけです。
(ハモン・イベリコ・ベジョータの回、おわり)
※次回はマドリードで、大航海時代の日本にからんだ場所をご紹介できればと思います。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スペインとポルトガル12 本場の生ハム・チーズ

2021-06-20 11:53:58 | Weblog
写真は生ハムとチーズとワインの店「ロス・アンデス」。生ハムの塊がずらりと並ぶさまは壮観。店主に頼むとグラム単位で切り分けて売ってくれる。

【フェルパルとロスアンデス】
マドリードの繁華街・老舗デパートも立つマヨール広場には老舗の様々な店舗がひしめいていました。広場の脇道からは高級ハムを切ったばかりのような高雅な香りが漂ってきました。
 見ると豚の太ももをそのまま燻製・熟成させたマンドリンのような形の骨付きハムが間接照明に照らされて天井からぶら下がっています。店員の前にあるガラスのショーケースのなかには、固まりのままのチーズと適度に切られたハムやサラミが並んでいます。見るからにおいしそう。

ほかにサンドイッチ用のパンやワインも売られていて、一巡りすると楽しい食事が出来上がるというわけ。

店の名は「FERPAL(フェルパル)」。1971年創業。隣にはカフェバーも併設されていました。
夕飯はここで適当に見繕って、ホテルで食べることにしました。BOTINで食べきれなかったパンも持っていたのでちょうどいい感じです。

100グラム0.72ユーロ(当時100円程度)のミックスチーズ(MEZCLA SEMICURADO:牛乳半分とヤギ、ヒツジをそれぞれ4分の1以下のチーズ)と黄色味を帯びた100グラム0.97ユーロの塩気のあるヤギのチーズ(CABRA BAJO SAL)、
生ハムはせっかくだから最高級な価格のものと一番お手頃価格のものを選びました。(100グラム6.5ユーロのJAMON IBERICO BELLOTAと100グラム1.85ユーロのPALETA SERANA)。
グラム単位で注文すると手早く薄くカットして真空パックにしてくれました。

中心街からスーパーマーケットへと下っていくごとに普段着の人が増え、混みあっていきます。ホテルへの帰り道、「LOS ANDES(ロス・アンデス)」という看板を掲げた、庶民的なハム、チーズ、ワインなどを扱う店では「スライスチーズ入りサラダ」(シーザーサラダ)などを買いました。他に、スーパーでいちごやヨーグルトを足しました。

さて、ホテルの鏡台をテーブルにして夕食です。チーズは比較的安い金額に限定したためか、食べやすいクリーミーな味でした。もう少し臭みがあってもよかった。
(かつて日本の高級フランス料理店で、普段みないような高級そうなものをいただいたら、なんと一周回って古漬けのたくわんのような味でびっくり! 発酵食品というものは熟成が進むほど、行きつくところは同じだと感じ入り、以来、チーズにはそれほど値を張らないようになりました。)

【脂身の上品な甘さ】
生ハムは違いました。

日本では味わえない、スペインならではのなんともいえない奥深さにすっかりトリコになりました。肉が違うのか、熟成が違うのか、塩が違うのか。漬物は漬け樽から出した直後が一番おいしいように、生ハムも固まりであっても熟成小屋から出荷した瞬間から少しずつ味が変わっていくのかもしれません。
 
生ハムは実験的に食べ比べたのですが、値段が高いほうが明らかにすばらしい。脂身が違います。口に含んだ時のうまみとなんともいえない上品な甘さ。赤ワインにぴったりと寄り添ってくれました。

買ったイチゴは、深紅色で大きさも子供のこぶしくらいの大きさ。口に入れると、かつての日本の地物のような酸っぱさがあり、少しえぐみも。野生味がありました。


※パンデミックの影響を受けて「フェルパル」は今年2月に廃業してしまったようです。ただホームページは動いていて、電話注文だけ受け付ける、と書かれています。パンデミックが終わったら、復活してくれるといいのですが。(https://ferpalmadrid.com/)https://www.timeout.es/madrid/es/noticias/cierra-ferpal-otro-negocio-mitico-de-madrid-que-echaremos-de-menos-020921
「ロス・アンデス」は営業中の様子です。「フェルパル」より地価も安そうで購買層もほぼ地元オンリーだったことが功を奏しているのかもしれません。(マヨール広場からトレド門のほうに下って左側にあります。)
Los Andes - Madrid - Calle Toledo, 75 | ALIMENTACION Páginas Amarillas (paginasamarillas.es)
(つづく)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スペインとポルトガル11 《日はまた昇る》2 

2021-06-13 12:10:39 | Weblog
写真はレストランBOTIN の外壁に打ち付けられていた銅板。マドリード随一の名所だということがわかる。

※今回は旅行に行ったときの参考になる話ではなく、小説の感想です。

【閑話休題・いまこそ『日はまた昇る』】
 ボティンゆかりの小説ということで手にとったヘミングウェイの『日はまた昇る』。何気なく読みだしたのですが、気が付くと最終頁に。ノーベル文学賞受賞に大きく貢献したといわれる『老人と海』は数ページで挫折したのですが、同じ作家か? と思うほどの読みやすさです。

 1926年発売当時、アメリカでセンセーションを巻き起こしたとか(この本片手に旅行ブーム、登場人物になりきる人が続出。)。それから100年近くたつというのに、驚くほど今、なのです。スペインに行った後ではなおさら、説得力を感じました。バル(食事処)の雰囲気、闘牛士への尊敬と哀れ、ウエイターの態度などなど。主人公が旅行者で、視点が同じせいもあるのでしょう。

バブル期に流行った日本の小説、村上龍や田中康夫の源泉はこれなのでは、と思ってしまいました。若者社会を冷めた目線で活写することで、見事にある時代の気分を浮かび上がらせている。分析する目線が確かなのでそこに普遍性が出てくる………。

文体も会話中心で簡潔なので、英語の勉強になるかな、と原文をネットで調べてみました。けれど無料では一切、出てきません。版権が切れていないのです。そこで見つけたのが「講談社英語文庫」シリーズ。図書館にありました。紙質がやや茶色で目にやさしく、フォントも見やすく、難しい単語には日本語で解説までついています。値段も1000円しない。

これはいいと さっそく買い求めようとしたのですが、英語文庫シリーズは存続しているのに、この本は絶版でした。古書市場でも皆無。どころか古書店がプレミア値段で探し求めているほど人気です。10数年前は気軽に買えたようなので、残念。

結局、外国のペーパーバックを入手したのですが、案の定、紙質が悪く、字がかすれていて、読みにくい。それでもがんばって読んでみました(数ページで挫折)。わからない熟語を英和辞典でひも解くと、まんま「日はまた昇る」の文が例文に出てきます。それも何度も。驚きました。それだけ価値がある英文なのでしょう。
 2000年代の日本の出版技術は本当にすごいと思います。出版社様、ぜひとも再販をお願いします。

※次回は、食べ物の話です。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スペインとポルトガル10 BOTIN 2  〈日はまた昇る〉

2021-06-05 17:57:35 | Weblog
ヘミングウェイの通いつめた(彼が座った席がちゃんと今も認識されています。)100年前と変わらぬ風情と味を守り続けるボティンの外装。有名店だけあって、大通りから一歩入ったこの店の前はツアーガイドが立ち止まって説明をしていたり、記念写真を撮ったりする人が引きも切らず訪れていた。
店名を掲げた看板やまるで板チョコのような分厚い木の扉など、特徴ある古めかしさも必見。

【働き者の店】
昔ながらの建物は落ち着いた雰囲気ながら、老舗のもったいぶった感じがなく、居心地よし。白い背広に蝶ネクタイのウエーターたちは、たとえば、こちらの様子を見てメニューをさっと出すなど、プロとしての気概十分。キビキビと動いて小気味いいほどです。なんというか人との距離の取り方が絶妙というか。

ヘミングウェイの初めての長編『日はまた昇る』にボディンがでていると知り、家に帰ってから読みました。そして、驚きました。この小説はやたらと実名のレストランが数多く出てくるのですが、小説の最も重要な、最後の最後に選んだレストランだったのです。

一人の女性と複数の男性が絡み合う恋模様がパリからスペインへと舞台を移して展開していくのですが、その最終章がマドリード。その町で再びあった主人公の男性と傷心のヒロインが二人で話しながら場所を次々と移動し、最後に男性がとっておきの場所としてエスコートする店でした。

「ぼくらは“ボティン”の2階で昼食をたべた。ここは世界で最良のレストランの一つだ。子豚の照焼を食べて、ナヴァール地方のワイン、“リオハ・アルタ”を飲んだ。」
(高見浩訳、新潮文庫、2003年)

そして二人はウェイターにタクシーを呼びに行ってもらい、乗るときにそのウェイターにチップを渡して、タクシーに乗り、社内で会話しながら小説は終わります。

ウェイターの動きのよさもしっかりと書かれています。当時も今もそれは変わらないのでしょう。ヘミングウェイが、どれだけこの店にほれ込んでいたのかがよくわかります。
(つづく)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする