雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

魚料理2・ 身がよじれるほどうまい魚・レン魚 下

2008-01-25 21:34:51 | Weblog
写真は西安の街角にあった湖北料理の店で食べたレン魚。頭部が全体の3分の1ほどをしめるのが特徴。皿の上は巨大な魚の頭部だけでいっぱいだ。頭部の開きの白身の部分はぷりぷりしていて、かめばかむほど深い味わいとなった。

【美味すぎる魚・レン魚】
 濃い醤油味のその魚は、プルンとしたゼラチン質。はじめは淡泊な癖のない味だと食べ続けていると、次第に深い味わいに変わっていく。絶品だ。
 やがて、このもっちりとした食感はどこかで食べたことがある、と気がづいた。スッポンにそっくりなのだ。

 じつは私はスッポンが苦手だった。大好物なのだが、体が受け付けないのだ。今までに3度、食べたが、いずれも脂汗と激しい腹痛に見舞われてダウンしてしまった。(3度目にようやく激痛の原因に思い至った、鈍くさいワタクシ。ちなみに国立健康・栄養研究所というサイトによると、さまざまな言い伝えられている効用は実験では確認されない。が、唯一、雌のうさぎにスッポンのエキスを与えたところ、「用量依存的に子宮への収縮作用が強く、また子宮の収縮頻度や張力もある程度増加する。」とあった。どうやらそのような内臓への働きかけが体に悪影響を及ぼす人もいる、ということなのだろう。)

 気づくのが遅すぎた。皿をカラにした後だった。案の定、店を出て数分後にはじわじわと体をむしばみ始めた。体の血流がよくなりすぎて、どこかのコリで止まって鬱血しているような感じなのだ。どうにもままならなくなり徒歩20分の道のためにタクシーを捕まえてホテルにたどり着いた。

 ちなみに中国で盛んに養殖されている「四大家魚」といえば草魚、青魚、白レン、黒レンである。いずれも淡水魚系の大型の魚で、日本でも戦前、中国から輸入されたものが利根川水系に残って、わずかに繁殖を続けているという。

 釣り人にとっては一メートル以上の巨大魚に出会える可能性もあることから、人気の魚たちで、なかでもコクレンは数が少ないことから「幻の魚」としてあがめられているそうだ。(検索していると「コクレン倶楽部」という釣り人倶楽部を見つけた)。これらは昆明のテン池でも盛んに養殖されている。次回はそのお話を。 (つづく)
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魚料理2・レン魚  上

2008-01-19 00:07:36 | Weblog
写真は西安の人材市場、つまり「打工(日雇い人夫)」の仕事待ち場にて。彼らはスキや鍬を持って日がな一日、道路にたたずむ。多くの人が、あきらめ顔で沈んだ午前10時すぎ。バイクで客と仕事待ちをするこのお兄ちゃんの周辺だけが、明るかった。カメラを構えて「撮っていい?」と尋ねるとこの張り切りよう。底を知る人だけがもつ明るさが、感じられた。

【レン(魚へん+連)魚】
雲南とは少し、外れてしまうが、桂魚ほどではないにせよ、美味な魚として主に南方で愛されている淡水魚系の魚に「レン魚」がある。春節前のお料理番組で料理研究家が「今日は特別に、レン魚の料理をつくりましょう」と大業な京劇の型でみえを切ってうれしそうに調理していたのも、この魚だった。

 現在では一般にレン魚というと、体が白い白レンか、体が黒い黒レンを指す。地域によって、呼び名がバラバラなのだ。解説書のなかには両者を混同して書いているものもあるほど、よく似ている。だが古来にさかのぼるとレン魚は白レンを指し、黒レンは「魚へん+庸」魚と書かれていた。

 明(日本の室町時代から江戸時代初期のころ)代に李時珍によって著された『本草綱目』には
 「レン(魚へん+連)之魚在腹、ヨン(魚へん+庸)之美在頭」
 (ハクレンの旨さは腹にあり、コクレンの旨さは頭にある)

とあるようにコクレンは頭が全体の三分の一を占めるほどに巨大化する。体長も40キロ、1メートル以上になる。また『本草綱目』には、いずれの魚も「胃によい」とされている。台湾では味がよいことから、コクレンがさかんに養殖されているそうだ。

 今回はこのコクレンの話。

 西安をぶらぶらしていたら、たまたま湖南省料理の店が目に入った。さっそく食べてみようとなかに入ると、おすすめは「レン魚」という。ふと、メニューの脇にかかれている説明を見ると、清末に太平天国を破ったことで有名な湖南省の英雄・曽国藩にちなんだ料理だとでていた。彼がストレスで体調を崩して何も食べられなくなったとき、レン魚を食したところ、胃から回復した、と書かれていた。すごい料理だ。さっそく、その「開胃魚頭」を注文。出てきた料理はナポレオンフィッシュと鯉を掛け合わせたような巨大な魚の頭の煮付け、といったものだった。
(つづく)
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淡水魚の女王・桂魚2

2008-01-11 21:11:45 | Weblog
天津の中級レストランで出された「清蒸桂魚」。昆明のものと違い、身を薄切りしてから、炒められていた。接客の女性に「蒸でしょ」というと、「油通ししてから蒸しました」とのこと。手が込んでいる。昆明より安かったというのに。味も見た目より脂っこくなく、甘みがあった。

【魚の重さで決まる値段】
高級品と位置づけられている魚料理の価格は、外国人も通う上流レストランをのぞくと、一皿いくらではなく、魚の種類と重さで決まる。だからメニューには一斤(500グラムのこと)○○元、と表示されていることが多い。

まず、客は魚を注文すると生け簀場か厨房へと案内される。生け簀が多いのは冷蔵庫がまだ発達していないせいだろう。そこから網で引き上げ、吟味に吟味を重ねた後に料理人が重さを量って値段が決まる。客が納得して、ようやく調理開始となる。

雲南では魚料理というと蒸す、揚げる、煮る、刺身(日本の影響だと思うが、少数民族のなかには危険を承知で刺身を食べる文化はある)程度なので、調理法では値段の決めようがないのかもしれない。

 7年ほど前、北海道のみやげもの屋で、中国語を話す観光客の団体を見かけた。(当時、雪世界にあこがれる台湾からの観光客が大勢きていた。たぶん、その団。ちなみに台湾の人は、席を譲られたときにさりげなく「謝謝」といってほほえむなど、日本人が忘れてしまったような礼儀が身についた人を見かける頻度が高い。)

彼らは、水槽で展示されている活きた蟹や海老を見ると、迷うことなく自らの手を生け簀につっこみ、水から引き上げてはよくよく吟味して買い求めていた。店の人は驚いていたが、彼らの国の習慣としては、買う前の当然の儀式のようなものだったのだろう。

値段を聞いて手を引っ込める人も相当いたが、それでも、日本人よりも豪快に買い求める人が多かった。一度さわったものだから、という仁義よりも、そのおいしそうな食材を放っておくことができなかったように、私には見えた。このような彼らの食に対するあくなき探求心が、世界に冠たる中華料理を生み育てたのだろう。

 ところで桂魚の値段は昆明で、30センチほどの大きさのものが40~50元(約700円。)。他の料理が一皿20元以下なので、驚きの高級食材だ。北京に近く、物価も昆明よりは高い天津で同サイズの桂魚が30元以下だったので、昆明の桂魚が、ことのほか高いことがわかる。

ちなみに現在、魚は富裕層向けの高級食材として人気を高めており、川魚から海魚まで、価格が高騰し、ますます高級化の道をたどっている。(つづく)
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淡水魚の王

2008-01-04 22:45:51 | Weblog
写真は桂魚の姿蒸し。さっぱりとしたくせのない味わいが日本人好み。宴会でこの魚が供されれば、相手方に非常に歓待されている証拠ともいえる高級魚だ。

【新年を迎えて】
2008年となりました。今年は雲南のおいしい食をテーマに、できるだけ掘り下げていくつもりです。どうぞ、今年もよろしくお願いします。ご意見、ご要望等もお気軽にお寄せください。

お正月、ということで、中国のめでたい食材「魚」を取り上げてみました。(ちなみに中国ではお正月のお祝いは旧暦なので2月ごろ。新暦の正月は平日とほぼ同じです。)

魚料理1・桂魚
【多くの異名をもつ魚】
 日本で華燭の宴にかかせない魚といったら鯛(タイ)。「めでタイ」という語呂合わせのよさや、刺し身や酒蒸しなどいかなる調理法を用いても、深い味わいとなるのが魚の「王」たるゆえんだろう。

 一方、中国で日本の「タイ」並に安定的な美味を誇る魚といえば、淡水魚の「桂魚(クイ ユイ -)」である。正式名は「ケツ魚」。料理名としては「桂花魚」「石桂魚」「季花魚」「繁花魚」、豚に顔が似ているところから「水豚」、日本のサケにつかう「鮭」の字が当てられることもある。これほどの異名を持つのも広範囲で愛されている証拠だろう。

 全長は大きいもので30センチほど。身は白く、肉質はやわらかい。蒸すとタイよりも透明感のある輝きを帯び、かむと上品な旨味と適度の脂がジュワっと口の中いっぱいに広がる。淡水魚にありがちな臭みがないのも特徴だ。

 中国料理研究家の柴田孝子さんが「魚に試みられる調理法を全部もっているといっても過言ではなく、このような川魚はケツギョのほかには身当たらないと思う」(『中国料理素材事典』柴田書店)と述べておられるほど鯛に劣らぬほど多様な料理法を持つ。

 なかで、その旨味を存分に味あわせてくれるのが「清蒸桂魚(チンジュンクイ ユイ )」だ。「清蒸」は文字通り、濃い味付けなどをせずに蒸しただけのもの。桂魚の本来の味を堪能できる。    (つづく)
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