雲南、見たり聞いたり感じたり

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スペインとポルトガル60 美しきポルト10 コックバーンズワイナリーへ

2022-06-25 16:13:12 | Weblog
コックバーンズの蔵の中にて。天井や壁にフワフワのカビがびっしり。代々受け継がれたこれらのカビがポートワインをよりおいしくしている。

【多い、スコットランド出身の創業者】
ワイナリーの名前は「コックバーンズ(COCKBURN’S)」。一人、15ユーロという、なかなかな金額を払い、すでに待っている若者二人と観光客の夫婦らとともに案内人が現れるのをしばし待つことになりました。

待合室にある展示スペースでは5分程度のビデオが繰り返し流れていました。
ドロワ川上流域の傾斜地で栽培されたぶどう畑の映像やそこから絞り出したブドウ液を樽詰めし、一冬を越した後にその樽を小舟(ラベーロ)に積んでポルトへと運ぶ白黒の映像です。リフティングに最適なんじゃないかと思われるような急流を、水しぶきを全身に浴びながら大岩にぶつからないように上手に操船する屈強な男たちの光景は迫力満点。昔の映像がよくぞ残っていたものだと感心しました。

こうしてドロワ川を下ってポルト南岸域につくとワイナリーへと運ばれます。そこで発酵中のワインにブランデーを注いで酒精強化ワインにして(アルコール度数を高めて発酵を止めるので、甘味が残る)さらに寝かせまろやかにして、17世紀以降海上輸送しても開封しても品質が保たれるお酒となってイギリスへと大量に輸出されていったという解説。さらに映像ではポートワインともに笑顔で食事をとるイギリスの中・上流階級のだんらんを描いた絵や、蔵の歴史などが流れていました。

この蔵は1815年にスコットランドからきたコックバーン兄弟が始めたのだとか。当時、イギリスからポートワイン造りにポルトに来る人々は多かったようで、ポルトではスコットランド出身の創業者を持つ蔵が多く存在します。
何回目かの映像を見ていると、ようやく案内人が現れました。

待合室横の大きな扉を開けると、ひんやりとした空気が流れ、あっという間にワイナリーの中です。どうせ英語の解説だし、と距離をおいていると、客が少ないせいか案内の人は全員の目をちゃんと見て話しだすので、否応なく、きちんと聞かざるを得ない状況に。

樽は、ここで修理します、といって、作業部屋を見せたり(木の樽づくりの道具が置かれ、たがで固定する前の製作中の樽が置かれていた。日曜のためなのか、誰も作業員はいなかった)、温度管理には細心の注意を払っています、と蔵の中で温度計を指したり、と、とても丁寧に解説してくれます。
 立ち姿も美しく、きまじめそうな青年。コックバーン一族の末裔らしいこの人は、若いながらもひげをたくわえ、ハンサムな顔は紅潮し、誇りに満ちていて、まるで今日、初めて語ってるんじゃないか、と思われるような真剣さ。

日本の工場見学とは一線を画する雰囲気に、ちょっと驚きました。

 最後に3種類のワインの試飲がついていました。
ポートワイン独特のアルコール度数の高さと甘味、香りを放っていたのですが、お昼にレストランのオーナーからいただいたフェレイラのワインがあまりに別格すぎて、そのことしか記憶に残っていないのが残念。ちなみにフェレイラはポルトでも最古参の地元出身者が創業のワインセラー。午前中にフェレイラに寄った時「2時から見学できますよ」と伝えられていたのですが、お昼を食べてから戻るつもりが別の蔵に寄り道してしまい・・・。コックバーンの熱意が感じられてよい見学となりました。こういうきままさが、また旅の楽しみなのです。
ワイナリー出口にて。
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スペインとポルトガル59 美しきポルト9 ポートワインの集積地

2022-06-19 12:41:31 | Weblog
写真は、ともにポルト川南岸域のワイナリーを囲う壁に書かれていたポルトガルタイル・アズレージョ。ドロワ川南岸域のポートワイン工場のごくごく普通の古い壁に様様なタイルが貼られていて、楽しい。

【ドロワ川南岸はポルトワイナリーの集積地】
さて、食事のあとは、旅行ガイドの地図には出ていないこのあたりを散歩することにしました(世界遺産に登録されているポルト歴史地区から外れているからのようです。)

人通りのめったにない道は、高い塀に囲われていて、塀が途切れると従業員用の門がありました。入口からは種々の花咲く木々が見え、その奥に朱色の屋根に白い壁の細長い建物がウナギの寝床のように並んでいます。

高台から望むと蛇行するドロワ川に合わせて、直角に建物が置かれていることがわかりました。区画ごとに建築主が違うのか、はたまた建てられた年代が違うのか、レンガ色の工場の屋根の色合いが微妙に違っていて、まるで気ままなパッチワークのようです。そして川から一番離れた南には銀色に光る巨大なタンクが聳えていました。

入口の看板を見ると、それはワイナリーの工場でした。ドロワ川の南側は「ポートワイン工場」の集積地だったのです。あとで調べると30以上のワイナリーが集まっていて、川から船積みしているとのことでした。

歩いていると、不思議なことに幼少期がよみがえってきました。そのころ私の住まいはしょうゆ工場に隣接した社宅でした。社宅は瀬戸内海にほど近い川沿いにあり、高い塀で囲われていて、それは播磨臨海工業地帯の一角でした。海に近い明るい陽射しと働く空間に横溢する整然とした空気と静けさ、発酵臭などがそのころの景色が、日本の田舎とポルトでは全然、違うはずなのにだぶってきたのです。

ドロワ川南岸を散策すると、ワイン工場の気配が満ちている。

しばらくのんびりと進むと、入口に設置された守衛室で若者2人が何かを訪ねて、入っていくのが見えました。もしや、と、私も守衛室に顔を出すと
「ビジター?」と聞くので、素早くうなずくと、「下へどうぞ。」と一言。


言われた通りに行くと「見学コース」と英語で書かれた看板がありました。ドンピシャ! ようやく見つけた。ワイン倉庫を見学できるぞ。

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スペインとポルトガル58 美しきポルト8 おもてなしの国

2022-06-11 11:24:17 | Weblog
写真は、「レストラン ポンテ・ド・ペドラガイア(Ponte de Pedra Gaia)」の入口に掲げられていた壁飾り。この下に、たくさんのワインが置かれていた。

【素焼きのおちょこでカンパイ!】
頼んでみてわかったのが、何を頼んでも大皿で量が多いことと、値段の安さです。

一皿目に頼んだ「サルシッシャ・アリエマsalsicha alema」は、ごくごく普通のゆがいたソーセージの温野菜載せ。ポルトガル語で意味はドイツ製ソーセージなので、そのまんまの料理です。ただ、皿にはたっぷりのチキンライスとフライドポテト、ニンジンが(メニューには書かれていないのに)盛り合せてあるのは、さすがポルトガル! ポテトがサクッとしていておいしい。


感動したのが「メダヨイシュ・ペスカーダMedalhões de pescada」。白身魚のフライの上にホワイトソースが載ってグリルしたものなのですが、ホワイトソースが苦手な私でも、ほどよい酸味と深みがあって、食べやすいのです。

 ホワイトソースにピクルスのペーストが混ぜ込まれて、それがアクセントになっているようです。おかげで一見するとこってり系に見える料理なのに、さっぱりと口に溶け込んでいくようでした。

ワインは、先ほど行ったご近所の「フェレイラ」のもの。香り高くて料理によく合います。

このように一皿一皿をおいしくいただき、デザートまでゆっくりと口に運んでいると、思いがけないことが起きました。突然、

「オーナーからのプレゼントです」

 といって、ウェイターが素焼きのぐい飲みを人数分と白とロゼ、2種類のポートワインのデカンタを持って現れたのです。
 驚きつつも、注がれたワインをクイッと飲み干すと、いままでに味わったことのない、そしてそのあともこれほどのものは体験していない豊潤さ。香りが鼻を抜け、口がさっぱりとし、さらにデザートとの相性も抜群です。フルーツのエキスのようところだけを集めて、えぐみや鋭いすっぱさといったマイナス要因を丁寧に取り除いたところにあらわれたような、あらたな風味です。それが口に残ってすがすがしさをアップしてくれるのです。


 なんというワインなのかを聞こうとしていたところ、中高年の精悍な男性オーナーが現れて、突然、ハグされました。びっくりしたけど、みなでニコニコ。さらにオーナーたっての願いで一緒に写真に納まることになりました。今、見返してもピカピカの笑顔です。どうやら我々は気に入られたらしい。食べっぷりがよかったのか、いかにもおいしそうに食べていたから? もしかするとお客さん(おそらく)全員が地元の人、という雰囲気のなか、我々だけが外国人で珍しかったのかもしれません。

 英語のメニューはありませんが、スマホの翻訳機を使えば、たいていのものは頼めるし、隣のテーブルを指して「同じものを」と言えば、だいたいはずれはありません。

 絵画の中に飛び込んだような楽しいお昼でした。

http://www.pontedepedragaia.com/menus/1
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スペインとポルトガル57 美しきポルト7 

2022-06-04 15:07:28 | Weblog
写真はドロワ川の岸辺の歩行者天国で、なぜかバイクの貸し出しを行う風景。よくみると、似たようながっしりとした体形の男性陣がつなぎの服を着て同じ方向を見ている。テントに書かれた「スーパーボック」はポルトガルの有名ビールメーカー。何かのイベントだったのだろうか? それとも週末の日常なのか?

【丘の上のレストラン】
さて、お昼の時間です。
せっかくドロワ川の対岸にきたというのに、岸辺が排ガスくさい。というのも「フェレイラ」の手前からドン・ルイス一世橋まで歩行者天国となっていて、のんびりとした風景の中、なぜかバイク屋に人だかりが。貸し出し用なのか不明なのですが、そこに集うおじさまたちがやたらと「ブン、ブウン、ブブーン」と空ぶかしをして気勢をあげています。せっかくの環境なのにもったいない・・。

そこで岸辺から離れて「フェレイラ」の裏手を進むことにしました。するととたんに鳥の鳴き声だけの世界に。でも、見わたす限りにおいては店はなく、観光客向けの情報はほぼ皆無になります。

 でも、いまは便利な世の中でポルトガル語のサイトも日本語で読むことが可能。娘がネット検索してヒットした店に「グーグル」先生の地図案内で行くことにしました。


フェレイラの奥の道を進むと、緑が増えて、
空気も清浄に。

 壁沿いの小道をくねくねと登っていくこと30分。突然、視界が開けて小高い丘に出ました。その丘の向こうに一軒家のレストランが風に吹かれて立っていました。

「レストラン ポンテ・ド・ペドラガイア(Ponte de Pedra Gaia)」。
車が店の前に止まっては、楽しみ、という風情の人々が、続々となかに入っていきます。

私も入ると、愛想のいいウェイターが
「予約でいっぱいだけど、20分待てば席が空きますよ。」と声をかけてくれました。そこで籐のイスに腰かけて待つことに。



店内は、ゴッホの絵にかかれた南仏プロヴァンスのレストランのように広々としていて、明るい光が降り注いでいます。お客は地元の人ばかり。みんなちょっとおめかしして、日曜の午後のひとときを楽しんでいるようです。外の芝生席もいっぱいで、木々にはレモンがたわわに実り、ジューシーな香りが風にのって運ばれてきます。

おおぜいの従業員が厨房から現れては、お盆を持ってくるくると動きまわり、たいへんな活気でした。

大皿が通り過ぎるたびにニンニクとオリーブの香りがたなびくので、私のおなかもグー。皿は大家族の前に運ばれていき、テーブルに置かれると、みんな笑顔で一つの大皿をシェアして、食べるのでした。

そういえばイタリアやドイツなどでは、小さな子供でも容赦なく一人一皿でした。どんなにボリュームがあっても一人で食べなければならず、胃の小さい私にはつらいものがありました。

 ところがポルトガルではシェアが普通なので、苦痛を感じたことが一度もありません。この違いは、日本人にとって大きい。
(つづく)
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