オーディオ機器を買いかえ、アナログレコード蒐集に火が付いた直木賞作家の音楽鑑賞歴の話。
「わたしは基本的に学校が嫌いなのである。同じ服を着せられ、整列させられる、
それだけのことに屈辱を覚え、反抗したくなる。自由を規制し、単一の価値観を植え付ける、
そういった権力の支配を心から憎んでいる。だから、わたしとロックの相性のよさは必然と言えたのかもしれない。
ロックがなかったら、わたしの十代はどうなっていたことやら。
ロックは世界中でたくさんの人間の青春を救ったのではないかと、そんなことを考える、そろそろ人生の黄昏どきなのでありました。」
同年代(著者は1959年生、オラは58年)故に、凄く共感したり、自分の場合はどうか考えさせられる好著。
月1枚を買うのが精一杯の小遣い状況で、雑誌の評価だけを頼りに勝負をかけてレコードを買い、一喜一憂していたなんて話はもう頷きまくり。
「自分が十代の頃に聴いたロックやポップスを、いい音で再び辿るというのは、
大人ならではの密やかな楽しみである。わたしはもう新しい音楽を受け付けない。
現役ではないのだ。懐古趣味と言われようと、人の受け皿には許容量というものがある。
それが満ちてしまった人間は、その中で静かに遊ぶのがある種の慎みなのではないか。
いい大人が、流行など追ってはいけません。」
オラも確かにもう”定量”なのかもしれないけど、ジャズをかろうじてリアルタイムで体験できた幸運な世代なのかもしれない。
ロックも似たようなものだし・・