万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

「パラダイス文書」の謎-中国共産党幹部の名がない

2017年11月07日 16時08分38秒 | 国際政治
今月5日、国際調査報道ジャーナリス連盟によって公表された「パラダイス文書」には、英国のエリザベス女王もその名を連ねており、第二の「パナマ文書」の衝撃が世界を走ることとなりました。租税回避地におけるオフショア投資に関する同文書には、著名な王族、政治家、企業家、芸能人などの名が確認されているそうです。

 「パラダイス文書」をめぐる謎の一つは、現在報道されている情報を見る限り、中国の共産党幹部の名前が見当たらないことです。今や世界第二位の経済大国と化し、かつ、その活動もグローバル化した今日の中国の“実力”からしますと、どこか不自然なのです。習政権が推進してきた反腐敗運動の成果と見る向きもあるかもしれませんが、同文書には、現下に限らず、過去に遡った情報も含まれております。

 もっとも、政治家ではないものの、中国人女優の名が挙がっていたのに加えて、日本国の鳩山元首相の関連の件において、中国系企業の名が登場しています。同企業とは、香港で上場している「凱富能源集団」という資源関連の企業であり、中国国有の石油企業と共同で油田やガス田の開発事業等に携わっているそうです。鳩山元首相の“東シナ海を友愛の海にしよう”とする呼びかけも、東シナ海が石油や天然ガス等の資源の宝庫なだけに、この発言の裏には、自らへの利益誘導が疑われるのですが、資源・エネルギー開発の分野には多額の資金を要することに加えて、政治的利権、即ち、汚職の温床ともなりがちです。利権と結びついた汚職が半ば政治文化と化してきた中国の企業が、「パラダイス文書」において同社一社に留まるとは思えないのです。

 「パナマ文書」の公表に際しては、習近平国家主席をはじめ、共産党幹部やその親族の名があったことから、中国国内では、同文書関連の情報は徹底的に統制されました。反腐敗運動を展開していた最中でもあり、腐敗撲滅の旗振り役であったトップ自身が腐敗していたのでは、共産党一党独裁体制をも揺るがしかねない権威の失墜ともなります。そこで、共産党幹部は、「パナマ文書」は、国民には知られてはならない情報として封印しようとしたのでしょう。

 今般公表されたのは、「パラダイス文書」の極一部に過ぎず、中国共産党幹部やその親族の有無を確認するには、後日、全情報が公表されるのを待たねばなりません。しかしながら、チャイナ・マネーの影響が強いとされるマスメディアが、敢えて中国に関心が向くことを避けようとしている様子から推測しますと、最も「パラダイス文書」の全情報公開を恐れて、マスコミに圧力をかけ、戦々恐々としているのは、習近平国家主席を含む、中国共産党幹部なのではないかと思うのです。

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