伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

行政経営、地方政治、そのほか人生にプラスの楽しいこと eメールアドレスkucctada@mail.goo.ne.jp

「自治体改革の突破口」~公共サービス改革と担い手~

2013-10-03 18:00:45 | 行政経営
シンポジウムの報告です。(まとめるのに3日かかりました)
期日 2013年9月29日(日) 
場所 ウインクあいち(名古屋市)
主催 市民フォーラム21・NPOセンター
基調講演は先進自治体の3名。その後パネルディスカッション。
報告内容は、シンポジウムの全てではありません。
私が気になった部分をご報告します。
詳しくは各自治体のホームページや書籍で確認してください。


Ⅰ 基調講演


1 「日本一の村からの日本一の超優良企業へ」柳村純一 前村長
(ここがスゴイ)
柳村氏は94年に滝沢村長に就任。職員の意識改革と行政改革を推進。
特に優れた企業しか受賞していない日本経営品質賞を
2006年に自治体として初めて受賞
。どうやってこれほどすばらしい組織に
高めていったのかが聴き所。

(2-6―2の法則)
どんな組織でも、2割の職員が優秀で、6割は付いていくタイプ、
残りの2割は足をひっぱるといわれています。
私が村長に就任した時は、1-6-3だった。
当時の村職員は勉強しない、情報収集もしない。県や国の指示まち。
職場は暗い雰囲気。仕事の有るなしに関わらずに毎年予算要求し、
手当て欲しさに仕事もせずに居るだけの「残業し放題」が横行していた。

(組織改革)
縦割りとセクショナリズムが強く、余分な仕事は増やしたくないので
会議を何回やっても何も決まらない。同じ課でもよその係りの仕事は手伝わないし、
課や部が違えばもっとひどい。公務員はその中に長く居るだけで年功序列で偉くなり、
給料も上がっていった。環境を変えなければ意識を変えられないと思った。

小さな役場でも細かい役職がいっぱいあり、決裁まで時間がかかった。
組織をフラット化するために、係長と課長補佐を廃止した。
このように縦割りで横の連絡が悪かったがそれだけではなかった。
住民からの苦情や問題があっても、職員にとって都合の悪い話は村長まで届かず、
課長、部長の途中で止まってしまう。しかし村なので住民から村長へ直接話が来る。
役所は横の連携も悪いが縦もダメ。

7人の部長は村長ぬきで、毎朝就業時間前に集まって
「経営会議」として村の行政全体について話し合っていた。
他の部のことであっても熱心に意見を言い合い情報を共有した。
自分は3期12年村長をしたが、10年目からは経営会議がしっかり機能していたので
部長たちに安心して任せられるようになった。

(課長投票)
役場の職員は決定的にコミュニケーションに欠けていた。
住民や職員同士も顔を合わせた対話がない。
非常に特異なやり方だが、課長は職員の投票で決めた。
それまでは人事異動の希望を職員から取っていたが、ダメな課長のところは
ほとんどの職員が異動希望をだしていたので、いっそ職員に課長を選ばせようと考えた。
能力があり、普段から他の職員の相談に乗りアドバイスしてくれるような人物が
年齢にかかわらず課長に選ばれている。職員の満足度は高まった。

(住民協働)
住民は、行政がなんでもやってくれると思っていた。
ある地区の道路が狭く、10年来広げてくれと言われていた。
予算の制約などの問題があり、行政としては実施できないのだが、
あんまり言うので頭にきて「お前たちならできるべ」とホラ吹いた。

その地区は大農家が多く、大型車両や機材を持っていた。
言われた住民はビックリしていた。
すると住民たちの力だけで用地交渉まで行って1600mの道路を
4mの幅から、8mへ広げてしまった。用地は全て無償で提供された。
村は砕石などを提供した。道路に立っていたNTTと東北電力の電柱は、
それぞれの会社が無償で移設してくれた。
住民から提案を出してもらい審査して補助金を出し、
このやり方が他の地域へ伝播した。
村長は「できねぇものはできねぇ」とはっきり言うし、
住民も何でも要求ではなくなった。

(組織文化)
暗くてやる気のなかった組織文化から、
ヤル気と笑い声と元気がいっぱいの組織文化へ変えていった。
就任当初の職員意識は1-6-3というほどひどかったが、
最後は4-5-1になった。この4は今までの枠外、の上のほう。
5が従来の1の部分。1は従来の6の部分



300人程度の役場なので、全職員と酒を飲んで人柄を知った。
改革するには抵抗がある。「失敗したら元にもどればいいべ」という考えでやった。
抵抗して辞めた人もいる。トップは抵抗があってもやるのが仕事。
時には緩衝材を入れたり、時期を調節したりした。
ISOを導入したとき、全職員に直接プレゼンをしてトップの意思が伝わった

(大過なくは、バカ野郎)
課長は職員の投票だが、部長は村長が選んだ。
基本は年齢で無く能力主義で選んだが、どうしても一人を年齢で部長にした。
ところがその人物は部長になると60人の部下を集めて
「俺はあと2年で退職だから、その間何も問題起こすな」と指示した。
それを聞いて私は頭にきた。何も問題を起こすなということは、
なにも新しい取り組みをするなと言っていることだ。
これでは職員はやる気をなくす。

(議員の反対は?)
研修費などに対して議員の反対はいっぱいあった。
職員研修には12年間で3千万円かけた。
人間の意識はころっと変わるもんじゃない。何年もかかる。
全国を見て回ったが、改革セクション作ってもそれは形だけで
組織文化は変わらない。トップがやる気を持って取り組まないとダメ。

(多田感想)
「2-6-2」の法則の進化の先が、
2を超えたところにあったとは。

ここまで到達しなければ、日本経営品質賞の受賞はないのでしょう。
現在、日本の行政でこの賞を受賞できたのは滝沢村が最初で最後です。
政府機関も都道府県庁もありません。

私も行政改革を進める上での最大の課題は職員の意識改革だと考えています。
柳村さんは「環境を変えなければダメ」「やってみてダメならもどせばいい」と
とにかくやってみるという姿勢です。
頭の中でいくら考えていたって実際に行動に移さなければ何も変わりません。
「変えることを恐れるな」。これは未来工業の山田昭男会長の考え方に通じます。

柳村さんは特別な知識や経験があるわけではありません。
その人がなぜ、これほどの改革を進め、日本一の行政経営を実現できたのか。
それは村長としての真摯な姿勢にほかならないと感じました。
だとすれば、日本中どこの自治体のどんな首長でも、
滝沢村のような組織文化、行政組織を作り上げることができるはずです。
このことに気づき勇気をもらうと同時に、他の自治体は
「いったい何やってんだ」と感じました。
これは人への批判ではなく、私自身への喝です。

(参考)
滝沢村HP
日本経営品質賞
・「「日本一の村」を超優良会社に変えた男」溝上憲文(講談社)



2 「日本一公務員の少ない自治体」大野城市 見城俊昭 教育部長
(ここがスゴイ)
まず、人口に対する役所の職員数が日本一少ない。98,000人に対して363名。
これは行政改革、効率経営の成果ですが、私が一番驚いたのは
会場の質問に対する見城氏の答え。
首長が変わっても行政改革の流れは後退しない。なぜなら推進する公約を掲げないと
 大野城市では当選できないから
」。
政治家を選ぶ住民自治のレベルがこれほど高い自治体が日本に実在したとは!

(まちづくりは市民参画型)
行政サービス(公助):法による義務、営利性が薄い、行政でなければ解決しない
市民サービス(自助):住民相互、自治会活動、行政よりも適している場合
行政と市民(共助):市の財政支援、市と地域が設立した組織、他では解決できない

(公民館は自治会が運営管理)
自治会が指定管理者、公民館長は区長、自治会が利用料を決定、
光熱費やスタッフ人件費を負担。

(コミュニティーセンター)
市内に4ヶ所のコミュニティーセンターがある。
市と地域が共同で設置したNPO法人が指定管理者。
コミュニティ委員会を設置し、スポーツ行事等は財源を含めて委員会へ移譲。
公平・公正だけでは住民は満足しない。
同じ市内でも地域によって必要なニーズは異なる。

(時間に対する認識)
行政改革を進めるにあたって、法的問題をクリアするやり方もあるが、
それには時間がかかるのでしない。
大野城市は今の条件でできることを行っている。

(予算)
 <やることを先に決める>
・これまでは毎年増える予算をどこへ配分するかが予算作成だった。
どんぶり勘定で足りた。これからは税収は減っていくので「経営」の視点が必要。
「公共サービスDOCK事業」(後述)の審査結果を重視。
・予算は積み上げでなく部局への「枠配分方式」。
 枠は数年間の決算をベースにしている。
 枠の中で収まるように各部局自身で調整する。
・世の中では「スクラップ&ビルド」というが、スクラップはなかなか進まない。
 大野城市の予算作成では、「今行政としてやるべきこと」を先に決めるので、
 各課は財政課が予算をつけないことを事業を実施しない言い訳にできない。
 限られた財源の中で予算を組まなくてはならないので、
 優先順位を考え、必然的にスクラップが進む。
 <一時借り入れ制度>
枠配分予算額で、予算編成が困難な場合、行革を担保に基金から融資する。
 <インセンティブ予算>
決算剰余金の2分の1を、各課長が自由に使途を決められる。
 <減価償却費等>
ビッグプロジェクトは、事業前に基金に積み立てる。公共施設等は、
減価償却費を財政調整基金に積み立てている。

公共サービスDOCK事業
この事業は、従来の「フルコスト計算書診断」に加え、
「民間活用のあり方診断」「システム最適化診断」「初期診断」を
新たに導入して、多角的に行政評価(診断)を行うシステム。
(D=誰でも、O=オープンに、C=チェックできる、K=環境づくり)
●フルコスト計算書診断
 3年以上継続して実施している事務事業の、決算データを基に
 収支をまとめた「フルコスト計算書」を作成し、どれだけの税金や
 人員などの資源を利用して事業を実施しているか把握することで、
 事務事業の効率性や必要性の検証を行う。
●民間活用のあり方診断
 公共サービスの担い手(実施主体)について、事務事業の性質などを
 勘案しながら、その公共サービス提供の実態に関しての評価検討を行い、
 直営と民間活用の、どちらの形態が最も「市民対効果(実施事業がいかに
 市民に還元されているか)」の向上につながるかを充分に踏まえた上で、
 最適な担い手のあり方及び選定を行う。
●システム最適化診断
 市が実施している事務事業の内容および実施方法を簡潔に表記した
 「業務フロー」を作成し、公共サービス改革委員会の意見を取り入れながら、
 重複する事業の見直しおよびOA化による事業の簡素化を計画的に推進し、
 全庁的な「業務改善」に取り組む。
●初期診断
 フルコスト計算書診断が3年以上継続して実施している事務事業を
 対象としているのに対して、実施計画事業(市長のマニフェストや
 総合計画に記載されている事業などの政策的な事業など)を対象にしています。
 「市民満足度の視点」から、事業の成果目標、市民ニーズ、
 事業効果などの検証を行う。

(民間委託の工夫)
一連の業務をそのまま民間委託しようとすると、その中に
「公権力の行使」部分があるので、民間委託できない。
そこで業務を輪切りにし、民間委託可能な部分は委託して、
公務員が直接行うべき部分は直営で残している。
窓口の受付、入力などは委託できる。審査・照合作業は行政職員が行い、
発行・交付作業は委託できる。

(コールセンター)
自治体でコールセンターを持っているところは多いが、
当市は代表電話がそのままコールセンターになっている。
よくある質問(FAQ)は、データベースに入っているので、
オペレーターは直ぐに回答できる。どこの市も業務内容は同じなので、
このFAQはホームページにあるので使ってください

(委託と職員の関係)
民間委託が増えれば職員数が減ることについて、当初職員から抵抗があった。
委託すれば、その分仕事が減って楽になる。そうすればこれまで
手が回らなかった仕事に取り組めるだろうと説得した。
今の時代はいくら職員の増員を要求しても無理。
それよりは委託によって身軽になった方が、職員増員と同様の効果が得られる。

(多田感想)
見城さんは、もと財政課長なので、予算に関する改革がたくさんありました。
他の自治体も直ぐに取り入れることが可能な手法ばかりです。
この後出てくる足立区の定野さんも、財政課長を経験しています。
自治体において、いかに行財政改革のキーとなる人物を財政課長に
据えられるかが実現の成否を分けると実感しました。

行財政改革は、抵抗がたくさんある中で進めなければならない仕事ですから、
キーマンはやる気と能力の両方が必要です。自治体の要のポジションに、
適切な人物を置くことができれば、これほど生き生きと自治体が生まれ変われるのか。
「何をやるかではなく、誰とやるかだ」という言葉があります。
組織や首長の目指す世界を本気で信じ、行動を共にできる人を
自分の右腕に選ぶことが、組織経営においていかに重要なことなのか。

大野城市の実践例は、他の自治体にとって、感嘆し、眺めるものではなく、
簡単に手が届くところにあり、やる気になれば実現可能なのだと感じました。
まずは首長の理解と決断からです。

100年後の日本の人口は現在の3分の1に激減すると国は予測しています。
だとすれば、自治体の予算も3分の1にしていかなければ、
一人当たりの税金が何倍にもなってしまいます。
今やっている仕事の3分の2を無くしていくのですから
大変困難な作業の連続です。

注意しなければならないのは、業務委託や指定管理は
人件費という面でお金の節約にはなりますが、それは業務の縮減ではありません。
行政がお金を負担している限り、行政の仕事に変わりないからです。
社会的に不要な仕事はもちろん廃止。行政がやる必要のない仕事ももちろんやめて、
民間にやってもらいましょう。

問題は、社会的に必要だけれども、財政的に行政で行えないような
仕事の処置です。行政の仕事の3分の2を削っていくためには、
NPOや、企業の社会貢献活動などに引き継いでいくしか道はないと
私は考えています。大野城市は「まちづくりは市民参画型」と方針を定め、
自助、共助を推進しています。長期的視点に立った正しい方向だと思います。

「公共サービスDOCK事業」では、4つの診断書を使って
事業の評価をしています。住民の人口当たり、日本一少ない職員数を達成
している市ですので、この診断ツールはかなり強力で有効なのでしょう。
全国の自治体へ展開する価値があるかもしれません。
市のHPに掲載されていますので、詳しく研究してみたいと思います。



3 「公共サービス改革の第2ステージへ」 定野司 足立区総務部長
(ここがスゴイ)
効率的な行政経営を追求し「民間でできることは民間へ」という自治体は多い。
しかし足立区の場合、さらにその先を行く。「民間でできないことも民間へ」。
でも、いったいどうやって?
「受けられる団体が無いならば作る。」他の自治体と連携して、
受け皿となる民間団体を作ろうとしています。


(人的資源の最適配分)
足立区は職員削減を続けてきたが、減少したのは主に技能系職員であり、
事務系職員は横ばい。委託の内容は「単純定型業務」「技能系業務」が中心。
今までの考え方では、これ以上委託できる余地はなくなりつつある。
今後委託の対象となるのは「専門定型業務」の分野。



(新たなアウトソーシング・専門定型業務)
従来行政職員が直接やっていた仕事でも、民間に受け皿となるプラットフォーム
があれば委託できるのではないかと考え、100自治体が連携して
日本公共サービス研究会を立ち上げた。
その目的は「民間でできないことを民間でできるようにする」。
足立区を実験場として、戸籍、住民記録などの業務の一部を委託する予定。
自治体から公務員を出向させ、教育・マネジメントを行い、専門スキルを移転する。

(予算査定)
従来の予算査定は、切りやすい所から切った。財政課としては
収入と支出の数字がおっつけば、政策の優先順位などはあまり考慮しなかった。
しかしこのやり方だと現場の職員がやる気を無くすので、
各部に予算枠を割り当てる方式にした。
財政課職員は各部に散らばって業務支援している。
各部では部長が予算査定して区長に説明しなければならない。
その能力が必要なので、単なる年功序列では部長になれない人もいる


(多田感想)
足立区の印象は「アウトソーシングの鬼」。民間にくらべ割高な公務員が
直接やる必要のない仕事を徹底的に切り分けて外注を進めています。
簡単に民間へ委託できる業務はすでに出尽くしました。しかしここで手綱を緩めず、
いま公務員が行っている業務の中に更にアウトソーシングできるものが
含まれているのではないかと分析し、新たに見つけた業務ドメインが
専門的定型業務」なのです。

しかしなぜ「専門的定型業務」の民間委託がこれまで進まなかったのかというと、
いくら定型の業務であっても、民間には税や戸籍などの業務は存在しないので、
それを受託できる民間企業や団体がいなかったからです。
ならばそれを作ってしまおうというのが、100の自治体が連携して取り組む
「日本公共サービス研究会」の意義なのです。一自治体だけで受け皿団体を作り
スキルの移転を行うのは負担が大きい。しかし受託の対象となるのは
全自治体なのだから、複数の自治体で協力して受け皿づくりをしましょう
というのがこの研究会なのです。



アメリカのサンディ・スプリングス市は、
市長と議会、及びその信託を受けたシティ・マネージャーの監督の下に、
警察と消防を除いたほぼ全ての業務を民間会社に委託しています。
足立区の分類では、政策や企画を考える業務は公務員とされていますが、
企画提案型の入札もありますし、
調査企画業務ををコンサルタントに現在でも発注しています。

単純な専門定型業務に税理士や公認会計士を大勢雇っても
コストが高いのでそれは無駄ですが、臨時職員を指揮する立場に
専門家を一人配置すれば、その人だけのコストは高くても、
全体の作業能率や費用対効果がプラスなら、その手法もアリです。
専門業務の中にも、まだまだ委託可能な部分があると思います。



Ⅱ部 パネルディスカッション
コーディネーター 後房雄 名古屋大学教授
パネリスト 柳村潤一、見城俊昭、定野司
(発言内容は整理してまとめてあります)

(後)NPOがなぜこのようなシンポジウムを開いたかというと、
行政がしっかりしてくれないとNPOも困るから
行政改革と市民協働を進めた究極の自治体の姿は、穂坂市長の時代の志木市。
これからは人口も税収も減っていくので、①公的資金を使うべき仕事なのか、
②誰がやるべきか(直営、委託、補助など)をよく吟味する必要がある

民間委託でもお遊びNPOでは困る。


(柳村)滝沢村の改革はとにかく部長と議論した。
全職員は年間2週間は研修している。課長以上の職員は3日連続の研修も受ける。
職員研修にはカネと時間をかけてきたが、首長の質によっては行政改革が
後戻りしてしまう。首長がダメだと先進的な意識を持って取り組んできた職員ほど
ヤル気を失ってしまう。


なぜ行革に取り組んだかというと、村長就任時は、
物や金を大事にしないバカな職員が大勢いたので頭にきた。
自分は動きながら学んできた。
任せると人は育つ。トップは部下が失敗するかもしれないリスクを負っても
任せるべき。首長はボランティア。職員には役場を辞めて公的な仕事を請ける
会社を作れと言った。住民の自立心を高めたい。


(見城)大野城市では、首長が4人代わったが
行政改革はぶれずにステップアップしてきた。
市長候補者は、行政改革の推進を公約に掲げないと当選しない土壌。
市役所は市民と一緒に取り組んでいるので、それを否定できない。

首長が交代するとカラーが出るが、
それは自分の時代の方が推進したという違い。

大野城市では市民の代表が入っている会議では机の上に
ポストイットメモを置いておく。会議では有識者や声の大きい人が発言すると、
一般の市民は発言しにくい。それなので言いたいことがあったら、
ポストイットに書いて机に張って帰ってもらうようにしている。
そのメモは会議での正式な発言として取り扱っている。

事業評価や診断、第三者評価などで原案に反対する場合は、
必ずコストも含めた対案を提示してもらう。
枠予算のプレゼン資料は担当が作り係長が発表する。
経営推進会議では部長は政策的なプレゼンを行い、課長は数字を入れて
もう少し細かいプレゼンを行う。プレゼンには市長が判断するためのデータや
根拠資料を入れて作る。枠予算方式では、部の予算を決めるのは部長だが、
決裁権はあくまで市長。予算編成という作業を財政課から
各部局に移したにすぎない。業務診断の結果と予算はリンクしている。

職員を育てるために新規採用後3年のうちに40時間は地域へ派遣している。
大野城市の公民館には行政職員は置いていないので、
そこへ出して地域と人脈をつくる。
住民のニーズは多様化している。全部に行政が対応するのは無理。
大野城市では民間の受け皿を育てることまでは考えていない。
市内に4つあるコミュニティーセンターは365日営業し、
ほとんどの手続きができる。これだけで市役所の役割が済めば究極の姿。


(定野)足立区はゴミ有料化の流れに逆行し、粗大ゴミの持込を無料化した。
なぜならば粗大ゴミを回収するためにトラックを巡回させる費用よりも、
トラックを廃止して持ち込み費用を無料化した方が安いから。
無料になって市民も行政も喜んだ。

区長への手紙(メール)は年間2千通来るが区長は全て読み、
付箋をつけて担当課へ渡している。そのことにより、区長の考え方、
運営方針が組織に広がって共有される


足立区には「30分ルール」というものがある。
事件・事故・悪い情報は30分以内に区長に連絡することになっている
対策が決定してなくても、とにかく第一報を入れることになっている。
(悪い情報がトップまで届かない組織は経営がおかしくなります)

よりよい職場を作っていくには職員がお互いを理解する必要がある。
そのためには話しやすい雰囲気を作ることが重要。仕事以外のことでもいいから、
できるだけおしゃべりしながら仕事をしろと言っている。
職員としては笑顔で人に接するように心がけている。

(多田感想)
コーディネーターの後さんの発言「行政がしっかりしてくれないとNPOも困る」は、
そのとおりなのです。行政のあまりのだらしなさに、民間が迷惑しているのです。
世界的コンサルタントのゴールド・ラットは、
企業から高い料金をもらって活動をしていますが、
日本では行政職員対象に全体最適の行政マネジメント研究会を作り、
なんと無料で全体最適理論を伝授してくれています。
私も会員として学ばせて頂いています

第1回目のワークショップで質問しました。
TOC理論で個別の企業や組織の全体最適を図っても、
それはその組織内だけの最適状態であって、
1000兆円の借金を抱えた日本が財政破綻したら、
全体最適を図っていることにならないのでは?

主催の岸良(きしら)さんが答えてくれました。
「だから行政向けの無料のワークショップを始めたのです」。
民間は行政への危機感を持っているのです。

同じく後さんの「①公的資金を使うべき仕事なのか、
②誰がやるべきか(直営、委託、補助など)をよく吟味する必要がある」
という発言は、事業仕分けの考え方に通じます
事業仕分けでは、①そもそも社会にこの仕事は必要か否か、
という観点で議論します。不要であれば、そこで終了。
②次に、社会に必要と判断されたあと実施主体は、
税金を使って行政がやるべきか民間が実施すべきかを議論します。
ここで民間となれば、終了。
行政がやるべしということになったら、
国・県・市町村のいずれが適切か議論します。
ここで仕分けを実施手いる自治体が実施すべしとなった場合、
初めて内容を審査し、廃止、要改善、
ゼロベースで見直し、現行どおり、拡充、などの判定を行います。

昔は有効でも時代の変化で必要なくなる事業もあります。
事業評価に当たっては、効率性などを評価する前に、
そもそも行政が税金でやるべき仕事なのか否かをきちんと議論すべきです。

滝沢村の柳村さんは、3期12年、村長を務め村役場の組織文化が
しっかり変わったのでもう誰が村長になっても大丈夫と思い勇退されました。
しかしダメな首長だと、やる気のある職員ほどやる気を失ってしまう
というのは危機的状況です。
志木市の穂坂市長も続けて頂きたかったですが勇退されました。
穂坂さんに引退のわけを聞くと、首長交代後のゆり戻しも含めて
市の行政改革の歴史の一部なのだと大きな視野で考えられているようでした。

それにひきかえ大野城市のすばらしいこと。
首長が何人変わってもぶれずにステップアップを続けているとは
理想的な状態です。それを支えているのは
市民と一体になった行政経営なので、
反対する候補者は当選できない風土なのだとか。
住民自治の原点を見ました。

職員採用にあたっての足立区長の言葉の一部をご紹介します。
 「皆さんには、まちづくり、福祉、少子高齢化対策、教育など、
  その他挑戦してみたい分野や仕事がたくさんあると思います。
  ぜひ果敢にチャレンジし、『夢を形にする』プロセスを
  大いに楽しんでください。それを通して、たくましく成長する
  自分を実感することでしょう。足立区は変化に伴う痛みを恐れず、
  常に前向きに挑戦する組織ではありますが、同時に
  家庭的な温かみを大切にする職場でもあります。
  ともに足立の未来を切り拓いていきましょう。」

とても前向きでチャレンジ精神にあふれた組織文化が感じられます。
E・H・シャインの研究によれば、組織に属する個人の意識は
単独では存在しえず、「組織文化」から強い影響を受けています。

したがって「職員の意識改革」を図るには、同時に「組織文化」の現状把握と
その変容に取り組まなくてはなりません。

足立区は人材に3つの「そうぞう力」を求めています。
・区民の視点に立ってものごとを考えることができる「想像力」のある人
・数十年後の足立区を見据えた政策を提言できる「想像力」のある人
・足立区の持っている良さを活かしたまちづくりを展開できる「創造力」のある人

言われたことしかできない人ならば臨時職員で十分です。
自ら気づき、考え、行動を起こせる人こそ正職員の価値があります。
足立区の1~3年目の人材育成プログラムは実践的です。



私は組織文化を変えるには、一人ひとりが自分の職業観を持って
主体的に仕事に取り組むこと、すなわち「キャリアデザイン」の意識が
とても重要だと考えています。足立区の場合はなんと1年目から
キャリアデザインの研修があります。

そして行政職員に一番欠けている能力は「コミュニケーション能力」だと
日頃感じていますが、しっかり組み込まれています。

また事務職として課題を発見・解決する能力は一番基本の能力です。
ダイヤモンド社の「問題解決プロフェッショナル」と
「問題発見プロフェッショナル」などは、ビジネスマン必読の本だと
私は推薦していますが、足立区では1年目でしっかりその研修が組まれています。

2年目には「ロジカルシンキング」の研修。いいですね~。
3年目には自らが立案する「政策形成入門セミナー」。
足立区職員になれば3年間でしっかりしたビジネススキルを
身につけられることと感じます。

私のヒアリング調査(2006)において横浜市の担当者は、
「市職員においても最近の若い世代は、『その組織に勤めることで、
エンプロイアビリティがどう高まるか、キャリアにどうプラスに働くか』
を考える傾向が強い。」と語っていました。
組織の側がキャリア・デザインの概念を教えるというより、
すでに若い世代は「キャリア・デザイン」に基づいた行動をとっているのです。
若い世代の「キャリア・ディベロップメント」に対する期待に
早急に応えていかなくては「キャリア意識」の高い人材ほど
組織外へ流出してしまう恐れがあります。
足立区は人材を求めると同時に、その要求にこたえています。


以上、シンポジウムのご報告です。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 竜巻の予報 | トップ | 地方議員の存在意義 ボラン... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (英ちゃん)
2013-10-03 19:10:52
毎回ブログ見ています。
処で、
滝沢村・柳村純一でしょう。
返信する
コメントありがとうございます  (多田稔@伊勢崎市議 )
2013-10-04 09:42:24
英ちゃんさん、コメントありがとうございます。
柳村「じゅんいち」さんのお名前を
間違ってしまったので、早速訂正しました。

 「潤」→「純」
 
ご指摘頂きまして大変ありがとうございます。
すぐに気がつかれるとは、さすがですね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

行政経営」カテゴリの最新記事