研修の報告パート1です。
分量がありますので、何回かに分けて報告します。
「地方自治体のための予算編成と予算管理のすすめ方」
日時 平成25年7月18~19日
場所 関西学院大学東京キャンパス
講師 関西学院大学教授 石原俊彦
1 CFO(chief financial officer)最高財務責任者
企業では、最高財務責任者CFOを置いている。
自治体ならば財務部長や総務部長に相当する。
イギリスでは、自治体の財務部長になれる資格を法律で規定している。
英国公認会計士など6つの資格のいずれかを持っていることが必要。
一方、日本では専門知識の無い人や、財務事務の経験の無い人が
財務部長や総務部長などに就くことがある。
仲良し人事や、年功序列の順送り人事ではこのような茶番が起こる。
日本の自治体ではCFOに不適格な人が多いので、新しいやり方を理解・判断できず、
財務改革が進まないのではないか。
自治体の財政課職員の中には、他の部門よりも財政が上だという匂いを
プンプン出しているたちの悪い人がいる。
財政課の仕事は、いかに組織の職員にヤル気を持たせるかが仕事。
予算のつけ方一つで現場やヤル気を失ってしまうことがある。
自治体は市民との協働ということを呼びかけているが、
そもそも財政課と予算要求してくる部門との間に信頼関係があるのか。
予算要求する側は、査定で削られることを見越して初めから多めに予算要求している。
財政課は削るのが仕事と思っている。役所の中に信頼関係がない。
イギリスの小さい自治体では、職員も足りず、専門性も足りないので
複数の自治体が事務処理機関を協働で設置して業務をアウトソーシングしている。
予算作成などを行う間接業務の財政課業務などは類似性が高いので、
アウトソーシングに適している。
(多田感想)
日本の自治体では、
財政の最高責任者に不適格な人が多いという指摘は耳が痛いです。
重要なポストなので停滞の影響は大きいことでしょう。
群馬県庁では総務事務などアウトソーシングしていますが、
人事や財政など間接業務は類似性が高いので
アウトソーシングに適しているとの指摘は目からウロコでした。
事務組合などを協働設置するばかりでなく、
民間企業に委託するのも筋が良いかもしれません。
2 森を見よ
行政改革などで、極めてミクロな部分(木)にばかり目を奪われてはいけない。
大きな問題(森)にも目を向けよ。
FMファシリティ・マネジメントはミクロな問題。
特定の施設の効率的な運営を考える前に、そもそもその施設は必要なのか?
の議論から始めなければならない。
AMアセット・マネジメントは、自治体の保有するインフラ資産全体を議論するので有効。
自治体が貸借対照表をホームページに掲載しているが、
一番大事な情報を99%の自治体が掲載していない。
それは純資産額の内訳。
下関市の表では、純資産の内訳が書かれている。
自治体のホームページでは純資産の合計金額しか書かれていないことが多いが、
これでは役に立たない。
企業会計ではお金に色はついていないが、
「お金に色がついている」ことが公会計の本質。
公債費の残額だけ見て「子どもにツケを残さない」と主張するのはズレている。
それは対症療法にしかならない。問題の本質を捉えていない。
公共投資を行った場合、借金と共に資産が残るので、
借金の大きさと受け取った資産価値を比較する必要がある。
例えば、耐用年数10年の建物をたてるために借金し、
ちょうど10年で返済が終われば使用価値と費用負担はつりあっている。
10年よりも早く借金の返済が終われば、残りの期間は便益だけ残り、
子どもたちは財産を受け取ることになる。
逆に、10年で耐用年数がきているのに、借金の返済が20年も続くようだと、
10年より後の世代は、使用する便益は得られないのに借金だけ払い続けることになる。
(多田感想)
純資産について考える場合、国からの補助金と異なり
自治体が自分で負担する「一般財源」の負担に注目する必要がある。
石原教授の意見では、便益に相当する純資産の部の
「2公共資産等整備一般財源等」の金額と、
借金に相当する「3その他一般財源等」の金額を比較し、
プラスならば一概に子どもたちにツケを押し付けているとは言えないとのことでした。
しかしこの場合問題なのは、
「残されたインフラが子どもたちの時代に、はたして役に立つ資産なのか?」
という点です。
ほとんど利用されない高速道路をつくられても、その建設費を後世の人たちが
有無を言わさず借金として押し付けられるとしたら、
便益がプラスだから我慢しろとは言えません。
分量がありますので、何回かに分けて報告します。
「地方自治体のための予算編成と予算管理のすすめ方」
日時 平成25年7月18~19日
場所 関西学院大学東京キャンパス
講師 関西学院大学教授 石原俊彦
1 CFO(chief financial officer)最高財務責任者
企業では、最高財務責任者CFOを置いている。
自治体ならば財務部長や総務部長に相当する。
イギリスでは、自治体の財務部長になれる資格を法律で規定している。
英国公認会計士など6つの資格のいずれかを持っていることが必要。
一方、日本では専門知識の無い人や、財務事務の経験の無い人が
財務部長や総務部長などに就くことがある。
仲良し人事や、年功序列の順送り人事ではこのような茶番が起こる。
日本の自治体ではCFOに不適格な人が多いので、新しいやり方を理解・判断できず、
財務改革が進まないのではないか。
自治体の財政課職員の中には、他の部門よりも財政が上だという匂いを
プンプン出しているたちの悪い人がいる。
財政課の仕事は、いかに組織の職員にヤル気を持たせるかが仕事。
予算のつけ方一つで現場やヤル気を失ってしまうことがある。
自治体は市民との協働ということを呼びかけているが、
そもそも財政課と予算要求してくる部門との間に信頼関係があるのか。
予算要求する側は、査定で削られることを見越して初めから多めに予算要求している。
財政課は削るのが仕事と思っている。役所の中に信頼関係がない。
イギリスの小さい自治体では、職員も足りず、専門性も足りないので
複数の自治体が事務処理機関を協働で設置して業務をアウトソーシングしている。
予算作成などを行う間接業務の財政課業務などは類似性が高いので、
アウトソーシングに適している。
(多田感想)
日本の自治体では、
財政の最高責任者に不適格な人が多いという指摘は耳が痛いです。
重要なポストなので停滞の影響は大きいことでしょう。
群馬県庁では総務事務などアウトソーシングしていますが、
人事や財政など間接業務は類似性が高いので
アウトソーシングに適しているとの指摘は目からウロコでした。
事務組合などを協働設置するばかりでなく、
民間企業に委託するのも筋が良いかもしれません。
2 森を見よ
行政改革などで、極めてミクロな部分(木)にばかり目を奪われてはいけない。
大きな問題(森)にも目を向けよ。
FMファシリティ・マネジメントはミクロな問題。
特定の施設の効率的な運営を考える前に、そもそもその施設は必要なのか?
の議論から始めなければならない。
AMアセット・マネジメントは、自治体の保有するインフラ資産全体を議論するので有効。
自治体が貸借対照表をホームページに掲載しているが、
一番大事な情報を99%の自治体が掲載していない。
それは純資産額の内訳。
下関市の表では、純資産の内訳が書かれている。
自治体のホームページでは純資産の合計金額しか書かれていないことが多いが、
これでは役に立たない。
企業会計ではお金に色はついていないが、
「お金に色がついている」ことが公会計の本質。
公債費の残額だけ見て「子どもにツケを残さない」と主張するのはズレている。
それは対症療法にしかならない。問題の本質を捉えていない。
公共投資を行った場合、借金と共に資産が残るので、
借金の大きさと受け取った資産価値を比較する必要がある。
例えば、耐用年数10年の建物をたてるために借金し、
ちょうど10年で返済が終われば使用価値と費用負担はつりあっている。
10年よりも早く借金の返済が終われば、残りの期間は便益だけ残り、
子どもたちは財産を受け取ることになる。
逆に、10年で耐用年数がきているのに、借金の返済が20年も続くようだと、
10年より後の世代は、使用する便益は得られないのに借金だけ払い続けることになる。
(多田感想)
純資産について考える場合、国からの補助金と異なり
自治体が自分で負担する「一般財源」の負担に注目する必要がある。
石原教授の意見では、便益に相当する純資産の部の
「2公共資産等整備一般財源等」の金額と、
借金に相当する「3その他一般財源等」の金額を比較し、
プラスならば一概に子どもたちにツケを押し付けているとは言えないとのことでした。
しかしこの場合問題なのは、
「残されたインフラが子どもたちの時代に、はたして役に立つ資産なのか?」
という点です。
ほとんど利用されない高速道路をつくられても、その建設費を後世の人たちが
有無を言わさず借金として押し付けられるとしたら、
便益がプラスだから我慢しろとは言えません。