8月は毎日、蟬、黄金虫を掃いた。
1階は地に近く蜘蛛が多いが2階以上の廊下は蟬と黄金虫を掃いた。
どちらかというと黄金虫が多い。
ぼくの清掃するアパート、その廊下は外へ開かれていて風雨にさらされている。雨が降れば濡れ、晴れると砂塵が舞い込む。
濡れた雨は自然に乾くが砂塵はたまる。
砂塵に地に棲む蜘蛛の巣がからまって綿埃のような面妖な状態になる。これは掃くと箒にまつわりついて難渋する。
埃関係は実体がうろんで掃き掃除はとても厄介。
これに比べて蟬と黄金虫はころころしていて死んでも好ましい。個体はとてもいい。
地にいる彼らは半分ほどまだ命があって掃くと飛んだりする。
塵取の中でもぞもぞする。
台風の雨の夜の出来事だろう。
朝アパートへ行くと廊下に白い蛾が来ていた。はじめての白いお客さまである。
濡れもせで白蛾飛び来し夜の雨
箒を近づけると一間ほど飛んだ。面倒なのでそのままにしておいたら翌日そこにいた。
手で翅にさわっても動かなくなっていた。
みごとに翅の張った屍であった。
十全に翅をひらいて白蛾死す
死んでから翅の色に碧が加わったような気がする。
白蛾が死んで8月が終わった。