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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

東日本大震災 何をもたらす漁業復興特区

2011-06-30 22:39:14 | 震災・災害・復興・地震&災害対策など
東日本大震災 何をもたらす漁業復興特区

 東日本大震災で沿岸漁業が壊滅的打撃を受けているなか、村井嘉浩宮城県知事が打ち出した「水産業復興特区」構想は、震災からの復興のあり方をめぐる重大な争点の一つになっています。

1、地元漁民優先を放棄

民間参入促進

 民間企業にも漁業権を与えよ村井知事は一貫してこう主張しています。漁業権とは、一定の水面で特定の漁業を一定期闇、排他的に営むことができる権利のことです。
 沿岸海域で養殖漁業や定置漁業などに参入するには、それに応じた漁業権の免許が必要になります。漁業法では申請者が複数の場合、その免許は、漁協、地元漁民が多数の会社、その他の法人という優先順位で交付されることになっています。
 村井知事はこの優先順位を取り払い、民間企業と漁協を同等に扱うべきだ、それにより養殖業などへの民間参入を促進するというのです。
 民間企業の漁業参入についていえば、漁協の組合員になる、漁業者と共同経営を行う、などで現行でも可能であり、実績もあります。しかし、村井知事は、「それで結構という企業ばかりならいいが、漁業権を持てないことが参入をためらう要因」(河北新報5月29日付)と言い、漁業権を与えることに固執してきました。
 そして、政府の復興構想会議で現行制度の枠にとらわれない「特区の創設」を強硬に主張し、その第1次提言に盛り込ませるまでに至りました。
 漁業権の優先順位など沿岸漁業にかかわる現行の制度は、沿岸の資源は地元に住み、漁業労働に従事する多数の漁業者に利用されるべきであり、その配分や権利の調整は、地元漁業者のほとんどが参加する組織によって損われるのが妥当という考え方に立ったものです。
 この理念は、沿岸漁業の長い歴史の中で形づくられ、法制化されたものですが、漁業資源を維持し、漁場環境を保全するうえでも、地域循環型の持続可能な社会をめざすという点でも、今日ますます重要になっています。
 村井知事の提案は、沿岸漁業を根本で支えてきた地元漁業者優先の原則を、震災からの復興を口実に放棄するものです。

漁業者を支配
 村井知事は、「担い手が減る中で、経営効率を上げるため」(河北新報5月12日付)といいます。また、高齢化や近代化の遅れなど県内の水産業をめぐる困難を挙げ、「民間の力を借りなければ」とも強調します。
 しかし、「効率」優先の民間企業が、高齢化がすすみ、本来もっとも支援の必要とされる離島などの条件不利地域に進出するでしょうか。関心を示すのは恵まれた条件の利益が見込める漁場だけでしょう。そして資本力のある企業が参入すれば、漁業者の多くがその支配下におかれるか締め出され、一部が雇用されることになりかねません。
 「効率的」な経営によって仮に生産量は維持できたとしても、利益の多くが参入企業によって地域外に持ち去られてしまいます。さらに、もうからないとなれば簡単に撤退してしまうのも、利益優先の民闇企業です。
 20年前に宮城県女川町で銀ザケの養殖業に進出した大手水産会社が、販売価格が下落したとたん撤退して、漁業者の多くを廃業に追い込んだのは、その典型といえます。
 もともと沿岸漁業は地元に居住する人々の生業(なりわい)としてなりたってきました。そして海岸・海底などの清掃や汚染防止、魚付林の整備など漁場環境の整備なども漁協を中心に地元漁業者、地域住民が一体で取り組んできたのです。漁場を投資の対象としか見ない民間企業に、こうした営みを期待することはできません。
(つづく)(日本共産党東日本大震災現地対策本部 橋本正一)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年6月26日付



2、財界の意向を代弁

 わが国の沿岸漁業が大きな困難に直面してきたのは確かです。しかしその大きな原因は、大型開発による漁場の減少や環境悪化、近年の燃油・資材の高騰、魚価の低迷などにあります。自然の生産力を生かす漁業に効率だけを求めることは実態にあいません。

壊滅的な打撃
 漁業全体でみれば、遠洋・沖合漁業が減少を続けているのと比べ、沿岸漁業は減少幅が小さく、国内の漁業生産を支えています。とりわけ、宮城県の養殖漁業はワカメ、カキ、ホヤ、ホタテなどの生産を発展させ、三陸ブランドを定着させてきました。高齢化が進み、経営困難ななかでも、浜で暮らし、海で生きる漁業者が、水産加工業者とも共同して漁場や地域を守ってきた結果です。
 その沿岸漁業は今回の大震災で漁船や養殖施設を失い、壊滅的な打撃を受けました。それでもいま、多くの漁業者は「海がある限り海で」と立ち上がり、再建への道を模索しています。
 村井知事は、その漁業者に「もう無理だから民間企業に委ね、労働者になればいい」というのです。浜を守ってきた漁業者の意欲や誇りを完全に踏みにじる行為です。宮城県漁協の代表が21日、村井知事に漁業者1万4000人の署名を提出し、「特区」の撤回を迫ったのは当然でしょう。
 財界団体の「日本経済調査協議会」は4年前、漁業への民間参入や市場原理の導入を迫る水産業改革の提言を発表し、今回の大震災でも同様の提言をおこなっています。
 村井知事の「水産特区」構想は、財界提言と同じであり、沿岸漁業の現実ではなく、財界や大企業の利益を代弁するところから出発したものといわなければなりません。

生活基盤再建
 大震災であきらかになったのは、小泉内閣以降の効率一辺倒の「構造改革」が、農漁村を疲弊させ、災害への対抗力が弱くなった地方の姿です。
 沿岸地域の復興というなら、住宅やライフラインの復旧とあわせて、地元で暮らし、漁業や水産業に携わる人々の生活基盤の再建にこそ最大限の力を注ぐべきです。
 そのために、被災した漁船や養殖施設、水産加工施設の復旧、漁業者の「二重ローン」の解消、生活墓盤の回復などに国と県が全面的な支援を行うことが急務です。
(おわり)(日本共産党東日本大震災現地対策本部 橋本正一)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年6月27日付



沖合漁業に比べて頑張ってきた沿岸漁業、その担い手は三陸沿岸の中小の漁業者です。その水揚げの消費者はおもに首都圏の人々です。

気仙沼では今期、カツオの水揚げがありました。
鮎川ではミンククジラも揚がります。


鮎川港 ミンククジラ解体1
鮎川港 ミンククジラ解体1 posted by (C)きんちゃん

鮎川港 ミンククジラ解体2
鮎川港 ミンククジラ解体2 posted by (C)きんちゃん
1985年5月撮影


豊かな水の資源を生み出す中小の水産漁業者を国を挙げて応援しなければいけないでしょうね。
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