今日のうた

思いつくままに書いています

人間

2020-08-25 11:52:02 | ④映画、テレビ、ラジオ、動画
1962年公開、近代映画協会製作「人間」を観る。
「裸の島」と同じく、脚本・監督は新藤兼人、主演の殿山泰司、乙羽信子の
二人に佐藤慶、山本圭が加わり、濃密な人間ドラマが繰り広げられる。
内容を表わすのに登場人物の名前ではなく、役者の名前を
使わせてもらいます。

伊豆大島を行き来している魚船の船長・殿山泰司は、1泊2日で荷を運ぶ
予定だった。それに甥の山本圭と、隣の島にアワビを売りに行く乙羽信子、
小遣い稼ぎに船を手伝うことになった佐藤慶の4人が乗るが、急な嵐に巻き
込まれる。燃料は流出し、舵取りも出来なくなり、漂流することになる。
自分たちの位置すら分からず、行き交う船も見当たらない。
わずかな食料でいつ終わるともしれない4人の漂流生活が始まる。

食料はたちどころに無くなる。どこかにこっそり隠しているのではないか
との疑心暗鬼から、殿山・山本、乙羽・佐藤との間に諍いが生じる。
漂流して30日が経ち、空腹は極限に達する。そして
佐藤が乙羽に、若い山本を殺して喰うことを提案する。

戦争を描いた映画、「ゆきゆきて、神軍」や「野火」は人肉食を扱っている。
南方で亡くなった太平洋戦争の戦死者は、戦いで亡くなるよりも
飢餓や病気で亡くなる人の方が多かったのだ。
この映画は戦争を描いたものではないが、やはりこのことを扱っている。
極限まで追い詰められると、人間はなんだってする。

殿山泰司扮する船長はあまりの空腹に、戦時中に見た兵士が人肉を食らう
場面を思い出す。
こうした人間の本質を描くために、新藤兼人は極限の状況を作り出した
のではないだろうか。
飢餓の恐ろしさを嫌というほど見せつけられた。

乙羽が太ももを露わに、男勝りの海の女を見事に演じている。
2組に分かれての諍いの後に、甲板の方には殿山と山本が、そして
佐藤と乙羽は船底へと棲み分けするようになる。
暗い船底に血気盛んな男女がいて、一度は拒絶されたものの、その後は
何も起きない、というのが私にはどうにも不自然に思えた。
こうした極限状態でも、極限状態だからこそ、
人間は本能を抑えられるのだろうか。

最後に殺人を犯した二人は、罪の呵責から命を落とすことになる。
重い内容で、タイトルが「人間」というのも分かる気がした。  (敬称略)



(画像はお借りしました)



コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 歌手 友川カズキ | トップ | これからの政治に望むこと »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

④映画、テレビ、ラジオ、動画」カテゴリの最新記事