碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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Nスぺ「未解決事件/下山事件」歴史の闇に光を当てた秀作

2024年04月03日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

NHKスペシャル

「未解決事件 File.10 下山事件」

現在につながる歴史の闇に光を当てた秀作

 

3月30日の夜、NHKスペシャル「未解決事件File.10 下山事件」が放送された。これまでに「グリコ・森永事件」や「地下鉄サリン事件」などを扱ってきたシリーズの最新作である。

下山事件に関しては、松本清張「日本の黒い霧」をはじめ、長年様々な考察が行われてきた。現時点で、新たな視点や知られざる事実の提示は可能なのか。それが注目ポイントだった。

大きな軸の一つが、下山事件を担当した主任検事・布施健たちが残した極秘資料だ。

15年におよぶ捜査の内容が記された、700ページの膨大な資料を4年かけて解析し、取材を進めていく。浮かび上がってきたのは、GHQ直轄の秘密情報組織「キャノン機関」がソ連に送り込んだ、韓国人二重スパイの存在だ。

さらに制作陣は、キャノン機関に所属していた人物をアメリカで見つけ出す。二重スパイの写真を見せると、面識があったと証言した。

またGHQの下部機関であるCIC(対敵情報部隊)にいた人物の遺族とも面談し、本人が「あれは米軍の力による殺人だ」と語っていたことを聞き出す。事件はアメリカの反共工作の中で起きていたのだ。

番組は森山未來が布施検事を演じるドラマ編と、ドキュメンタリー編の2部構成。両者は合わせ鏡のように補完しあいながら、現在の日本社会に繋がる歴史の闇に光を当てており、見応えがあった。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2024.04.02)


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