碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

【気まぐれ写真館】 ご近所で、紅葉狩り

2018年11月30日 | 気まぐれ写真館



「ハラスメントゲーム」は社会派エンタメの佳作

2018年11月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


「ハラスメントゲーム」は
起伏に富んだ社会派エンタメの佳作だ

唐沢寿明主演「ハラスメントゲーム」(テレビ東京系)は、社会派エンタメの佳作と言っていい。主人公の秋津渉(唐沢)は、大手スーパー「マルオーホールディングス」のコンプライアンス室長だ。パワハラ疑惑で地方に左遷されて7年目、いきなり本社に呼び戻されて室長となった。

これまで、社内で発生した「パワハラ」「セクハラ」はもちろん、リストラにまつわる「リスハラ」や精神的な暴力にあたる「モラハラ(モラルハラスメント)」などの問題を解決してきた。しかも正攻法だけではない。時には危ない橋も渡るし、清濁併せのむことも辞さない。会社や組織の理不尽さも知り尽くしているし、単純な「正義の人」でもない。そんな秋津を、唐沢がアクセントの効いた演技できっちりと具現化している。

背景にあるのは丸尾社長(滝藤賢一)と脇田常務(高嶋政宏)の権力闘争だ。コンプラ室は社長直轄の部署であり、秋津は脇田のスキャンダルを探る密命を帯びている。また脇田は、出世のために上司だった秋津を左遷へと追い込んだ男だ。

この辺り、同名の原作小説も手がけた、井上由美子の脚本がうまい。パワハラやセクハラが一筋縄では対処できないことを踏まえ、毎回リアルで起伏に富んだストーリーを編んでいる。個々の事案をどう解決していくかと同時に、秋津と脇田の静かな戦いにも注目だ。

(日刊ゲンダイ 2018年11月28日)



週刊新潮で、広瀬すず「紅白」司会について解説

2018年11月29日 | メディアでのコメント・論評


紅白司会に抜擢の広瀬すず、
ノルマは“39・4+3”%

NHKもずいぶん露骨なことをおやりになる。

大晦日の紅白歌合戦の紅組の司会に、来春の連続テレビ小説「なつぞら」主演の広瀬すずを持ってきたのだ。

このパターンはそう、2年前の有村架純がやはり朝ドラの「ひよっこ」主演を控えて、紅白司会に抜擢されたのと同様だ。

有村は23歳だったが、広瀬すずは20歳。1996年の松たか子19歳に次ぐ、史上2番目の若さでの抜擢となる。

まぁ、新ドラマのお披露目をしながら、昨年39・4%の歴代ワースト3まで落ちた紅白視聴率を、V字回復させようという“商魂”なのだろう。

40%超えが最低ライン、ここ5年で最も高い42・2%に並ぶには、あとざっと“3%”――。

この上乗せが広瀬すずの双肩にかかる。

もちろん、総合司会は昨年に引き続き内村光良と桑子真帆アナ、白組はこちらも「嵐」から今回は櫻井翔など、心強い面々が広瀬のフォローをする。

上智大学教授(メディア文化論)の碓井広義氏はいう。

「かつて紅組は、江利チエミや美空ひばり、水前寺清子など、司会を大物歌手が務めることが多かった。歌手が唄うだけで数字が取れた時代でした。でも今は、そうはいかない。NHKは紅白の視聴率にだけは異様に拘ります。その結果、バラエティ色が強くなり、若手女優を起用するようになっていったんです。でも視聴者が大晦日、紅白にチャンネルを合わせるのは、今年一年の音楽シーンを振り返りたいと思うから。もっと“原点”に立ち返ってほしいですね」


いくら演技派とはいえ、まだ弱冠20歳の広瀬、ある程度トークが稚拙なのも仕方ないだろう。

ただ変に媚びたりせず、のびのびと“すず”らしさを出してほしいもの。平成最後の大晦日が楽しみだ。

(週刊新潮 2018年11月22日号)

「視聴覚教育」収録リハーサル

2018年11月28日 | 大学






異色の設定が光る弁護士ドラマ「リーガルV」

2018年11月27日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評


異色の設定が光る弁護士ドラマ

米倉涼子主演「リーガルV~元弁護士・小鳥遊(たかなし)翔子~」(テレビ朝日系)が始まった時、ドクターXこと大門未知子先生が、副業で弁護士事務所を開いたのかと思った。手術続きで、さすがの天才外科医も疲れたのか。それとも同じ役を続けてイメージが固まることを主演女優が嫌ったか。

そこで制作側が提案する。今度は医者ではなく弁護士。ただし手術室ならぬ法廷に立つ必要はない。なぜならヒロインの小鳥遊(米倉)は弁護士資格をはく奪されているから。弁護士ドラマの主人公が弁護士として活躍できない。この一見矛盾した異色の設定こそが「リーガルV」の魅力だ。

本人は「管理人」という立場で、法律事務所のメンバーを集める。それもクセのある人物ばかりだ。

所長の京極(高橋英樹)は法学部教授で法廷の経験はない。大鷹(勝村政信)は大失敗をして検事を辞めたヤメ検弁護士。そして若手の青島(林遣都)はまだ半分素人だ。パラリーガルも現役ホスト(三浦翔平)や元ストーカー(荒川良々)といった問題児たちだが、小鳥遊は彼らをコキ使って事実を洗い直していく。

このドラマは、「チーム小鳥遊」とでも呼ぶべき集団の活躍を見せる群像劇になっているのだ。そこにはスーパーヒーロー型の「ドクターX」や、バディー型の「相棒」との差別化を図る効果も織り込まれている。
 
また、大門の神技的外科手術と組織内の権力闘争が見せ場だった「ドクターX」と異なり、「リーガルV」では訴えた側、訴えられた側、それぞれの人間模様が描かれる。まさに人間ドラマとしての見応えがあるのだ。

たとえば第3話では、裁判の行方を左右する重要証人、被告の恩師(岡本信人)の偽証を見事に覆した。夫の浮気に気がついていた妻(原日出子)の応援を得たのだ。

そして第4話では亡くなった資産家(竜雷太)の莫大な遺産をめぐって、死の直前に入籍した若い女(島崎遥香、好演)と一人息子(袴田吉彦)が対立する。遺産目当てと思われた結婚の背後には意外な真相があった。

大事な局面では直感と独断でしっかり存在感を示すヒロイン。小鳥遊はドクターXの不在を埋める、“もう一人の大門”と言っていい。

(しんぶん赤旗「波動」2018.11.26)

「an」CMの浜辺美波さん

2018年11月27日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム



パーソナルキャリア「an」
アルバイトに挑戦
浜辺さん八変化

学生時代、アルバイトが途切れたことはない。当時、情報誌『日刊アルバイトニュース』に随分お世話になったからだ。やがて『an』と改題され、現在は完全にWebサービスとなっている。

スマホがあれば、浜辺美波さんのようなバイト初心者も簡単に仕事を探すことができる。なんて便利な世の中になったものだろう。CMでは、お寿司屋さんから巫女さんまで、様々なバイトにチャレンジする姿が八変化で楽しめる。

さらに、「経験なくても」と歌って踊る彼女の背後で身をくねらす、いやバックダンサーを務めているのはアンガールズのお2人ではないか。3人合わせて、「anガールズ」なる笑撃のユニットだ。

昨年の夏、映画『君の膵臓をたべたい』を観た。難病を抱えたヒロインの少女、桜良を明るく演じていた浜辺さん。その笑顔が鮮烈だった。CMを眺めていると、元気になった桜良が、切望していた青春を謳歌しているような気がする。

(日経MJ「CM裏表」2018.11.26)

書評した本:『笠原和夫傑作選 仁義なき戦い 実録映画篇』

2018年11月26日 | 書評した本たち


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


「実録」の世界を生んだ脚本に込められた気迫

笠原和夫
『笠原和夫傑作選 仁義なき戦い  
実録映画篇』

国書刊行会 5,400円

脚本は映画の設計図であり海図だ。制作側も出演者も、そこに書かれた物語と人物像を掘り下げ、肉付けしながら完成というゴールを目指す。

1973年に公開された映画『仁義なき戦い』は脚本家・笠原和夫の代表作だが、監督した深作欣二、俳優の菅原文太や松方弘樹にとっての代表作でもある。それまで約10年にわたって人気を得ていた「任侠映画」に代わる、「実録やくざ映画」という新ジャンルの出現だった。

本書には『仁義なき戦い』『同・広島死闘篇』『同・代理戦争』『同・頂上作戦』のシリーズ4作をはじめ、名作『県警対組織暴力』や未映画化作品の『沖縄進撃作戦』『実録・共産党』などが収められている。

特に第1作の『仁義なき戦い』は脚本で読んでもスクリーンの熱気が伝わってくる。いや、逆だ。脚本に込めた笠原の気迫が熱い作品を生んだのだ。テンポのいい場面展開。人物たちの動きがよくわかる簡潔な「ト書き」。そして強い印象を残した名セリフがそこにある。

若衆頭の坂井鉄也(松方)が、ふがいないくせに威厳だけは保とうとする組長、山守義雄(金子信雄)を叱りつける。「あんたは初めからわしらが担いどる神輿じゃないの。組がここまでなるのに、誰が血流しとるんや。神輿が勝手に歩けるいうんなら歩いてみないや、のう!」

また映画のラスト。坂井の葬儀に現われた主人公の広能昌三(菅原)が、祭壇に向かって銃弾を放つ。意地で一喝する山守に、拳銃を持ったまま振りかえった広能が静かに言うのだ。「山守さん……弾はまだ残っとるがよう……」

公開の翌年、作家の小林信彦が『キネマ旬報』に寄稿した、「『仁義なき戦い』スクラップブック」という文章がある。その中で「実録とは人間喜劇」という笠原の言葉通り、この映画の面白い部分は「裏切りが続出し、だれがどっち側か分からぬ」ところにあると喝破していた。

(週刊新潮 2018年11月8日号)

【気まぐれ写真館】 「三島由紀夫」命日

2018年11月25日 | 気まぐれ写真館

防衛省(旧・市ヶ谷駐屯地)方面に、合掌

【気まぐれ写真館】 日曜日だけど、本日も「入試」

2018年11月25日 | 気まぐれ写真館



2018.11.25

【気まぐれ写真館】 土曜日だけど、終日「入試」

2018年11月24日 | 気まぐれ写真館



2018.11.24

【気まぐれ写真館】 「勤労感謝の日」だけど、授業日

2018年11月23日 | 気まぐれ写真館
2018.11.23

小野莉奈&吉田羊が好演 「中学聖日記」支える“裏ヒロイン”

2018年11月22日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



TBS系「中学聖日記」
ドラマを支える裏ヒロイン

有村架純主演「中学聖日記」(TBS系)が、ようやく落ち着いて見られる内容になってきた。物語が「3年後」へと移ったからだ。

何しろ、これまでは設定にやや無理があった上に、「禁断の恋」だ、「純愛」だと宣伝した分、「淫行か?」などと予想以上の反発をくらった。

結局、ヒロインの聖(有村)は中学校を辞め、生徒の晶(岡田健史)とも、また婚約者だった勝太郎(町田啓太)とも離れることになった。

そして3年後、聖は小学校の先生になっている。このあたり、なかなかしぶとい。

さっそく聖に思いを寄せる若手教師(渡辺大)がいたり、勝太郎が現れたりと大忙しの聖。だが、町で高校3年生になった晶を見て逃げ出してしまう。うーん、まだ気持ちがあるわけだ。

それにしても聖という女性は自分の意思があまりないのか、恋愛における“受け身体質”は相当なものだ。それがさまざまなトラブルの遠因となっている。まあ、そういうヒロインのドラマだと思うしかないのだが。

一方、ずっとブレていないのが、中学時代から晶を思い続けてきた、るな(小野莉奈、好演)だ。

ぼやけたキャラクターの聖と比べ、いじらしさが半端じゃなく、見ている側もせつなくなってくる。るなこそは、勝太郎の上司・原口(吉田羊)と共にこのドラマを下支えしている、大事な“裏ヒロイン”かもしれない。

(日刊ゲンダイ 2018.11.21)



【気まぐれ写真館】 ホーム

2018年11月21日 | 気まぐれ写真館
JR四ツ谷駅

書評した本: 中川右介 『1968年』

2018年11月20日 | 書評した本たち


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


新たな切り口で「1968年」を再構築する一冊

中川右介『1968年』
朝日新書 983円

中川右介『1968年』は、新たな切り口で68年を再構築する試みである。

世界的な「闘争の年」と呼ばれたが、仏の五月革命も日本の学生運動も敗北していく。一方、現在の状況から見て、この頃に勃興したサブカルは「革命」として成就したと著者は言う。

本書では漫画を扱っているが「ガロ」系ではない。演劇も「アングラ」系ではない。多くの人に支持されたヒット作品が中心だ。それは支配的な「68世代史観」に対する反発であり、異議申し立てでもある。

音楽では、ザ・タイガース『君だけに愛を』やザ・フォーク・クルセダーズ『帰って来たヨッパライ』が流れる世間と、佐世保闘争や成田空港反対闘争に揺れる社会を交差させる。

またプロ野球では、現実のペナントレースと、漫画『巨人の星』の主人公・星飛雄馬の活躍が同時進行していったことに注目。1位巨人と2位阪神の死闘が、飛雄馬と花形満の「大リーグボール1号」対決と重ねられていく。

さらに映画でスポットを当てたのが『黒部の太陽』だ。最初の1年で733万人を動員し、配給収入は約8億円。石原裕次郎と三船敏郎は主演俳優であり製作者だったが、完成までの過程は俳優や監督を縛っていた「五社協定」との戦い、旧態依然たる映画界との闘争でもあった。

68年当時の著者は、学生運動とも前衛芸術とも無縁の8歳の少年だ。いや、だからこそ生まれた独自の評価軸が本書を支えている。

(週刊新潮 2018年11月1日号)

【気まぐれ写真館】 千歳市・柳ばしで、新「むかわ応援」定食

2018年11月19日 | 気まぐれ写真館

むかわ応援の新メニュー「きゅうり魚フライ定食」