碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

平成最後の年の「ドラマ界」を振り返る

2018年12月31日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


平成最後の年の「ドラマ界」を振り返る

何にでも「平成最後」の冠が付くのが今年の歳末風景ですが、まさに平成時代最後の年のドラマ界を振り返ってみると、各クールに注目すべきドラマが存在したことがわかります。


1月クール:「アンナチュラル」

1月クールには、広瀬すずさん主演「anone(あのね)」(日本テレビ系)がありました。脚本の坂元裕二さんが、親子や家族の本質を問いかける異色作でしたが、石原さとみさん主演「アンナチュラル」(TBS系)のインパクトに食われた感があります。こちらの脚本は「逃げ恥」などの野木亜希子さんでした。

まず、「不自然な死」というテーマと、「不自然死究明研究所(UDIラボ)」という架空の設定自体が斬新でした。沢口靖子さんの「科捜研」は警察組織の一部ですが、「UDIラボ」は民間組織。ヒロインのミコト(石原)をはじめとする法医解剖医たちには、捜査権も逮捕権もありません。検査や調査を徹底的に行い、真相に近づいていくわけです。

物語の内容には高度な医学的専門知識が織り込まれていましたが、説明不足だったり、逆に説明過多でうるさいこともありません。脚本の野木さんと演出の塚原あゆ子さんの呼吸がピタリと合い、予測のつかない新感覚サスペンスを生み出していました。


4月クール:「おっさんずラブ」

次に4月クールはもちろん、今年最大の話題作となったのが「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)です。主人公は女性にモテない33歳の男(田中圭)。ところが55歳の上司(吉田鋼太郎)と25歳の後輩(林遣都)から、まさかの求愛。脚本は徳尾浩司さんで、同性間恋愛と男たちの“可愛げ”を正面から描いて新鮮でした。

このドラマ、深夜にわずか7話の放送ながら、SNSなどソーシャルメディアを通じて支持が広がっていきました。「リアルタイム視聴率」だけを評価する時代から、ようやく録画などの「タイムシフト視聴率」を加味する「総合視聴率」の時代へと転換が始まった今年を象徴する1本となったのです。


7月クール:「義母と娘のブルース」

7月クールでは、森下佳子さん脚本「義母と娘のブルース」(TBS系)が熱かったですね。際立っていたのがヒロイン、亜希子(綾瀬はるか)のキャラクターです。

家でも外でもビジネスウーマンの姿勢を崩さない。何事にも戦略的に取り組むバイタリティーと、他者の気持ちを思いやる優しさを併せ持つ。笑わせたり泣かせたりのストーリーを通じて、夫婦とは、親子とは何かを考えさせてくれる、出色の家族ドラマになっていました。

同時期には石原さとみさん主演「高嶺の花」(日テレ系)もありましたね。野島伸司さんの脚本ということで期待しましたが、華道家元のお嬢様(石原)と自転車店店主(峯田和伸)の格差恋愛で本当は何が描きたかったのか、やや意味不明のままでした。


10月クール:「大恋愛~僕を忘れる君と」

賑やかだったのが10月クールです。「下町ロケット」(TBS系)や「リーガルV」(テレ朝系)といった“大砲”だけでなく、多彩な作品が並んだからです。

内容が賛否両論となり、注目を集めたのが、金子ありささん脚本の「中学聖日記」(日テレ系)でした。中学校の女性教師(有村架純)と生徒(岡田健史)の恋愛。たとえタブーと呼ばれても、人の気持ちは止められません。しかし有村さんが演じるヒロインに、視聴者の共感を得るだけの覚悟が希薄で、ドラマ全体が迷走しているように見えたことが残念です。

一方、ベテランの大石静さんが脚本を書いた「大恋愛~僕を忘れる君と」(TBS系)は、単なる“重い病気モノ”を超えた秀作でした。若年アルツハイマーのヒロイン(戸田恵梨香)と、それを支える男(ムロツヨシ)の覚悟には、最後まで見届けたいと思わせる現代性と切実感があったのです。また戸田さんとムロさんの予想を超える好演も功を奏していました。

また、生き辛さを抱える人たちへの静かな応援歌だった、高橋一生さん主演「僕らは奇跡でできている」(フジテレビ系)。社会派エンタメの佳作である唐沢寿明さん主演「ハラスメントゲーム」(テレビ東京系)なども記憶に残っています。

「僕ら」の脚本は橋部敦子さん。「ハラスメント」は井上由美子さん。どちらも見事なオリジナル脚本でした。

そうそう、爆笑の”福田雄一(脚本・演出)ワールド”となっていた、賀来賢人さん主演の「今日から俺は!!」(日テレ系)も楽しませてくれましたよね。


女性脚本家の活躍と“おっさん”旋風

さらに、この10月クール。「アンナチュラル」の脚本家である野木さんは、新垣結衣さんと松田龍平さんの「獣になれない私たち」(日テレ系)と、10月の北川景子さんのNHK土曜ドラマ「フェイクニュース」前後編を手掛けていました。

前者のヒロインである深海晶(新垣)は、仕事とも恋愛とも、しっかり向き合ってたはずなのに、どこか手詰まり状態に陥って、肉体的にも精神的にも、ちょっと疲れ気味の30歳独身女性。こういうキャラクターを書かせたら、やはり野木さんはうまいです。

また「フェイクニュース」では、ネット社会における情報の作られ方、伝わり方をテーマに、私たちがすでに踏み込んでいる世界の危うさを描いて、見応えがありました。

平成最後の年のドラマ界は、女性脚本家たちの大活躍と、“おっさん”が旋風を巻き起こした1年でした。

さて、2019年は、どんなドラマが見られるのか。もうすぐ始まる、新たな1月クールを待ちましょう。

皆さんも、どうぞ良いお年を!

日本人はなぜ「松本清張ドラマ」が好きなのか!?

2018年12月30日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


来年は米倉涼子×黒木華の『疑惑』 
日本人はなぜ
「松本清張ドラマ」が好きなのか!?


制作が続く「清張ドラマ」

昨年(2017年)放送された松本清張原作のドラマは、『黒革の手帖』など、なんと4本もありました。そして来年(2019年)には、『疑惑』(テレビ朝日系)が放送されます。

主演は、『黒革の手帖』(2004)、『けものみち』(2006)、『わるいやつら』(2007)、『強き蟻』(2014)といった清張作品に参加してきた、“平成の清張女優”とも言うべき米倉涼子さん。

ドラマスペシャル 松本清張『疑惑』では、これまで清張ドラマで悪女を演じることの多かった米倉さんが弁護士となり、黒木華さん演じる悪女と対峙していきます。黒木さんの悪女というのも期待大ですね。

松本清張さんが亡くなったのは1992年。すでに四半世紀が過ぎています。では、なぜ今も、清張作品は広く受け入れられているのでしょう。

清張作品の魅力とは?

今年上梓された、高橋敏夫さんの『松本清張「隠蔽と暴露」の作家』(集英社新書)を読むと、その答えの一端が見えてきます。

早大教授である高橋さんは、清張の怒涛のような表現活動の核に「隠蔽と暴露」という方法があったと言います。同時に、これは「隠蔽を暴露する」ではないことを強調しています。圧倒的な勢力による巨大な秘密の「隠蔽」と、それに対する個々の小さな「暴露」という対比を重視しているんですね。

その上で、清張が作品を通じて暴露してきたものを浮かび上がらせていきます。『球形の荒野』『黒地の絵』では、戦後も続いていた「戦争」を暴露していました。『ゼロの焦点』『砂の器』は、暗い戦後をなかったかのように覆い隠した「明るい戦後」の欺瞞を暴露した作品です。

そして『点と線』『けものみち』が暴いたのは「政界、官界、経済界」の癒着や汚職でした。さらに、「オキュパイドジャパン(占領下の日本)」という、現在まで影響を与え続けている巨大な密室をこじ開けようとしたのが、『小説帝銀事件』や『日本の黒い霧』だったのです。

清張作品は途切れることなく書店の棚に並んでいます。そして今後も、ドラマや映画などの映像化は続くはずです。高橋さんは、そんな清張ブーム再燃の背景に、「ふたたび姿をあらわしはじめた秘密と戦争の薄暗い時代」としての現代(いま)を見ています。

その意味では、清張の生活史を踏まえ、作品群に新たなスポットを当てた本書もまた、現代社会の“隠蔽”する力に抗う、一つの試みかもしれません。

ドラマスペシャル 松本清張『疑惑』

今回、『疑惑』の脚本を手がけるのは、大ベテランの竹山洋さんです。これまで、『点と線』(2007)、『砂の器』(2011)、『三億円事件』(2014)、『鬼畜』(2017)など、数々の清張ドラマを書いてきただけでなく、田村正和さんが主演した2009年の『疑惑』も担当していました。

また演出は、『ドクターX~外科医・大門未知子~』シリーズや、米倉さんの清張ドラマで知られる、熟練の松田秀知さんです。

この制作陣とキャストが、一体どんな「隠蔽」と「暴露」を見せてくれるのか。大いに楽しみです。

実相寺昭雄メモリアル・コンサート

2018年12月29日 | 舞台・音楽・アート

































日本生命CM「見守るということ。」篇の清原果耶さん 

2018年12月29日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム



日本生命 
亡き父のエール
前向く娘の感謝

今年、印象に残った秀作ドラマに「透明なゆりかご」(NHK)がある。舞台は地方の小さな産婦人科医院。看護師見習いとしてやって来たのが青田アオイ(清原果耶)だ。

このドラマは死産や中絶といった重いテーマも果敢に取り込んでいた。アオイは悩んだり傷ついたりする妊婦や家族に静かに寄り添っていく。16歳の果耶さんはドラマ初主演ながら、アオイが憑依したかのような熱演を見せてくれた。

そんな果耶さんが、日本生命のCMで父親を亡くした女子高生を演じている。頑張った受験勉強。入試本番では、天国にいる父との思い出がよみがえる。

「父は、何があってもキミの父です。」というメッセージは、大切な人を見守り続けたいという思いそのものだ。そして嬉しい合格。「大学いけるよ。ありがとね」と父に感謝する姿がいじらしい。全国にいるはずの“果耶さん”たちを、そっと勇気づける言葉でもある。

(日経MJ「CM裏表」2018.12.28)

言葉の備忘録 73 道々・・・

2018年12月29日 | 言葉の備忘録

富良野



道々 決めればいい


映画「スリー・ビルボード」

最新CMに見る、来年さらなる活躍が必至の新進女優たち

2018年12月28日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


最新CMに見る、
来年さらなる活躍が必至の新進女優たち

現在放映中のCMに登場している新進女優の中で、来年、さらなる活躍が必至と思われる2人に注目です。

浜辺美波さん
パーソル「どーもー、anガールズです」篇

学生時代、東京での一人暮らしに、アルバイトは必須でした。当時の情報誌『日刊アルバイトニュース』には随分お世話になったものです。やがて『日刊アルバイトニュース』は『an(アン)』と改題され、現在は完全にWebサービスとなっています。

スマホがあれば、浜辺美波さんのようなバイト初心者も簡単に仕事を探すことができる。なんて便利な世の中になったものだろう。このCMでは、お寿司屋さんから巫女さんまで、様々なバイトにチャレンジする姿が八変化で楽しめます。

さらに、「♪経験なくても~」と歌って踊る彼女の背後で身をくねらす、いやバックダンサーを務めているのはアンガールズのお2人ではありませんか。3人合わせて、「anガールズ」なる笑撃のユニットです。

私が初めて浜辺さんに注目したのは、2016年の『咲―Saki―』(TBS系)でした。小林立さんの麻雀漫画が原作のドラマです。

主人公の宮永咲(浜辺)は、一見ごく普通のおとなしい女子高生ですが、麻雀では誰にも負けない天才的な勝負勘と強運を発揮します。高校の麻雀部に入り、個性的な仲間たちと一緒に県大会、そして全国を目指していきます。セーラー服の雀士は、かなり鮮烈でした。

そして昨年の夏、映画『君の膵臓をたべたい』を観ました。重い膵臓の病を抱えたヒロインの少女、桜良を明るく演じていたのが美波さんです。その笑顔がなんとも切ない。CMを眺めていると、元気になった桜良が、切望していた青春を謳歌しているような気がしてくるのです。


清原果耶さん
日本生命「見守るということ。」篇

今年、印象に残った秀作ドラマに『透明なゆりかご』(NHK)があります。舞台は地方の小さな産婦人科医院。看護師見習いとしてやって来たのが青田アオイ(清原果耶)でした。

このドラマは死産や中絶といった重いテーマも果敢に取り込んでいました。アオイは悩んだり傷ついたりする妊婦さんや家族に、静かに寄り添っていきます。16歳の果耶さんは、ドラマ初主演ながら、アオイが憑依したかのような熱演を見せてくれました。

そんな果耶さんが、日本生命のCMで、父親を亡くした女子高生を演じています。頑張った受験勉強。入試本番では、一瞬のうちに天国にいる父との思い出がよみがえります。

「父は、何があってもキミの父です。」というメッセージは、大切な人を見守り続けたいという思いそのものです。

そして嬉しい合格。「大学いけるよ。ありがとね」と、お父さんに感謝する姿がいじらしい。全国にいるはずの“果耶さん”たちを、そっと勇気づける言葉でもあります。


言葉の備忘録 72 生きているうちに・・・

2018年12月27日 | 言葉の備忘録

富良野



あたかも
一万年も生きるかのように
行動するな。

不可避のものが
君の上にかかっている。

生きているうちに、
許されている間に、
善き人たれ。




マルクス・アウレーリウス「自省録」

小さな話題で振り返る、2018年の「テレビ界」

2018年12月26日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


小さな話題で振り返る、
2018年の「テレビ界」

今年も残りわずかとなりました。「あんなこと」や「こんなこと」があった2018年のテレビ界を、小さな話題で振り返ってみたいと思います。ということで、7月から12月までの「下半期編」です。

テレ朝が放送を見送った、朝日放送制作「幸色のワンルーム」

このドラマでは青年と女子中学生、それぞれの複雑な心理や葛藤が描かれていました。2人の関係性も含め、一般的な意味での『誘拐』と呼べるかどうかも見どころであり、単純に犯罪を美化するとはいえない内容でした。

自己規制で放送中止した場合、視聴者はこうした判断を行うことさえできません。さらにこのドラマは動画配信されており、全国で視聴可能です。期せずして、系列体制の意味も問われることになりました。

“章立てドラマ”の増加

連続ドラマの場合、第1回放送時には大きく宣伝できますが、それ以降なかなか告知することができません。しかし、“第2章スタート”などと銘打つことができれば、視聴者に対する注意喚起になりますよね。

視聴者も新しい物語が始まるとなれば、『ここから見始めてもいいんだ』と考える人も出てくるでしょう。また、制作サイドに対する刺激にもなります。不調のドラマが途中からでも巻き返すことに、多少なりとも寄与するのではないかと思います。

さくらももこさん逝去

まる子は、決して品行方正なわけではなく、成績優秀でもありません。妬んだりひがんだりするなど、素直ではない部分もあります。ある種のズルさや嫉妬心といった毒も持ち、煩悩のような人間のダメな部分を体現しているのが、まる子です。

一方で、友だちを大事にし、家族が大好き。一面ではなく、人間が持っているウラオモテ両面がエピソードとして盛り込まれる。だからこそ、時代を超え、人間の普遍性がしっかりと表現されています。それが「ちびまる子ちゃん」が広く受け入れらてきた要因でしょう。

女優・柏木由紀、「西郷どん」に出演

柏木由紀さん、初めての登場シーンから、インパクトがありました。貧乏な西郷家の嫁ということでスッピン顔のボロ着姿。しかも妊婦で産気づき出産の場面まであった。とてもアイドルとは思えない役回りです。

セリフは棒読みで演技が上手いとはいえませんが、一所懸命さは伝わってきました。これまでもドラマに何本か出ていますが、今回はAKBの柏木由紀としてでなく一人の女優として挑戦しているのを感じました。

芦田愛菜、朝ドラ「まんぷく」の語り

芦田愛菜ちゃんは、2011年から、日清の『チキンラーメン』のCMに出演していました。ひよこの着ぐるみのかわいらしい姿が好評でしたが、今年はチキンラーメン誕生60周年。

しかも、そのCMキャラ『ひよこちゃん』は、ひよこの世界と人間界をつなぐ存在でもありました。まさにドラマの世界と視聴者をつなぐ存在の語りと同じ。この二重、三重のリンクに、すごいな、NHK大阪放送局と感じました。

さらに彼女は、11年の『江』で大河ドラマに出演。同年には『マル・マル・モリ・モリ!』で、『紅白歌合戦』にも鈴木福くんと一緒に出ました。14歳にして、NHKの3大看板番組を経験した女優さんになったとも言えます。

「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」芳根京子が助演女優賞

芳根京子さんは、純真な女性が“愛すること”を知ったことで、みるみる豹変していく様を好演しました。前半と後半とで別人のような印象を与えたほどです。

石原さとみさん演じる姉と差別化しながら、自分の立ち位置、役割を果たしながら、芳根さんらしいところもしっかりと見せてくれました。

日テレの3冠王陥落

日テレは90年代、当時トップを走っていたフジから王座を奪いました。その頃の日テレはフジを熱心に研究していましたが、いざトップに立つと、研究してまで乗り越えようとする目標がなくなってしまった。

現状維持が求められる中、視聴者も日テレの番組に慣れてしまい、刺激的でなくなってしまったのではないか。そんな中で、他局が日テレの番組作りや編成を研究し、追い付いてきたのでしょう。

「イッテQ」疑惑とバラエティーの演出

視聴者からみれば、エンドロールに名を連ねる以上、『現地』も番組制作陣の一員です。人気番組だからこそきちんと検証し、視聴者が納得できるように説明する責任を日テレは負っていたのですが・・・。

NHK受信料値下げ35円と「チコちゃんグッズ」

今年のビッグヒット「チコちゃんに叱られる!」。大人は知っていて子供が知らないという通常の構図を逆転させ、子供が大人をタジタジにさせる。設問が絶妙で、たしかに……と視聴者も考え始めてしまう仕組みをうまく作っています。

そして、私も欲しくなるもんなあ(笑)、チコちゃんグッズ。大ヒット間違いないと思います。商売が上手いですね、NHKは。

しかし、こと受信料となると、まったく視聴者のことを考えていません。数十円の値下げなら、ありがた感は全く無いし、むしろ番組の中身の向上に使ってもらってかまいません。

約400億円もの視聴者還元が月に数十円にしかならないのなら、テレビ草創期の街頭テレビじゃありませんが、4K・8Kがどれだけすごいのか、駅前にでも設置して見せてほしい。

もしくは、シールでもいいから「チコちゃんグッズ」を配布したほうが、視聴者はよっぽどありがたいかもしれません。

2018年のテレビ界を振り返る(上半期編)

2018年12月25日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


「あんなこと」や「こんなこと」があった
2018年のテレビ界(上半期編)

今年も残りわずかになりました。「あんなこと」や「こんなこと」があった2018年のテレビ界を、細かな話題で振り返ってみたいと思います。ということで、まずは1月から6月までの「上半期編」です。


「小室哲哉」不倫報道

2016年1月のベッキーさんの騒動以来、不倫報道が急増したのは、週刊誌という活字メディアがネタを作り、テレビはそれを追いかけるだけでラクに視聴率が取れたからです。

一昔前なら“不倫は下世話”と躊躇したはずですが、視聴率を稼げるコンテンツと見たテレビはワイドショーのみならず、報道番組でも扱うようになりました。この2年間は、いわば“不倫報道バブル”といえる状況が続きました。しかし、小室さんの件で、このバブルも天井にさしかかり、冷静になっていったように思います。


有料動画配信オリジナル番組に「吉本興業」も参戦

自主規制が進み、テレビ番組が「窮屈になった」と評される昨今。<臆病なテレビ>と<大胆な動画>という対比で、若い人たちを中心に「ネットでは面白いことをやっているらしい」という認識がすっかり広がりました。

『わろてんか』(創業者の吉本せいをモチーフにした朝ドラ)で描かれていた創業の時代から、吉本興業にとって、面白いものに木戸銭を払ってもらうのは当たり前。受け取り手とダイレクトにつながる動画配信事業は親和性が高いはずです。


「松岡修造」平昌五輪で大活躍!?

引退後もタレントとして活躍されていましたが、注目されたきっかけは、松岡さんのテニス教室の映像がテレビで結構流れた時ではないでしょうか。子供たち相手に真剣にぶつかっていく姿に、メディアが“松岡修造”という逸材を再発見したんだと思います。ゲ

ストや司会というプレイヤーとして立つ時の“松岡修造”を。東宝の元社長の父親と宝塚歌劇団のスターだった母親を持ち、ある種、究極のお坊ちゃんですが、嫌味がない。品がある。視聴者は、金持ちの嫌味な部分が少しでもあれば敏感に反応するのですが、松岡さんにはそれがない。逆に子供たちに厳しい言葉を浴びせようが、消せない品の良さを感じさせる。そして、松岡修造がここにいるという贅沢感さえ生まれて、五輪では旬の人になっていました。


「石田ゆり子」ブーム!?

フォトエッセー『Lily─日々のカケラ─』(文藝春秋)はベストセラー。インスタグラムのフォロワー数も開始直後に100万を突破した、石田ゆり子さん。『逃げ恥』以前の出演作で、親友の夫との不倫を描く『さよなら私』や、夫を死なせた男性との恋を描く『コントレール~罪と恋~』でも注目してきました。

石田さんは“清純さとエロスを併せ持つ稀有な存在”。男性は完敗です。彼女は自分の魅力をわかりながら、それを強調することなく自然に醸し出す。そこがまたいいんでしょうけど(笑)。


「有働由美子」NHKを飛び出す

『NHKの有働アナ』は唯一無二の存在でした。明るさ、親しみやすさ、また等身大の自分を見せる潔さで広く受け入れられてきました。たとえば「わき汗」の話題でも、取り繕わず視聴者に伝えていましたよね。決して上から目線にならず、「皆さんと同じ一人の女性ですから」というスタンスが見事でした。

アナウンサー出身の女性が、組織運営に関わる理事などのポジションに就いてもいい時代です。正直言って、有働さんには、NHKで働く女性のロールモデルとして道を切り開いてほしかったですね。


「財務次官セクハラ問題」でのテレ朝「初期対応」

記者クラブのような組織に属し、会社の看板を背負うからこそ取材ができるのです。そういったなかで自らが属する媒体で被害を報じれば、同僚が取材現場でなんらかのリミットをかけられることは火を見るより明らか。

福田次官の件がそんな相手の立場の弱みを巧みに利用した、卑怯な手口だったといっても、彼女たちもセクハラを受けて、そこで帰ってしまえば、会社から「なにやってんだ」と言われてしまう。女性社員は上司の判断に「(セクハラを)かわしてうまくやれ」というニュアンスを受け取ってしまった可能性があります。本来なら、テレ朝は女性社員とともに闘うべきでしたが、訴えがあった時点でそのような判断ができなかったのは残念でした。


上智大を中退した、Hey! Say! JUMP「岡本圭人

岡本さんが在籍していた国際教養学部に限りませんが、上智大学は他の大学に比べると規模はそれほど大きくありません。これは校風でもありますが、各定員が少なく、何百人もの学生が入れる大教室もありません。多くても100人、通常は30~40人ほどの教室で、学生それぞれの顔が見える授業を行うことが多いんです。出欠を取る授業も多く、代返など効きません。芸能活動をしながら、というのは、厳しいでしょうね。

また最近は特に、出欠には厳しくなってきています。それは国際教養学部ばかりではありません。都心にある大学なので、通いやすいメリットはあるでしょうけど、上智大学には芸能人枠があるわけでもありませんから、仕事との両立はなかなか厳しかったと思います。


カトパンこと加藤綾子アナの「ドラマ進出」

加藤綾子アナ、『半分、青い。』や『ブラックペアン』など人気ドラマへの立て続けの出演で順風満帆に見えましたが、視聴者は滑っても転んでも、どこから見ても「フジテレビの看板を背負っていたカトパン」として見ています。

もしこれで女優としての自信を深めて、本格的な“転身”を考えているとしたら、びっくりな勘違いですね。主要キャストではなく、“限定された”役だからこそ許されているわけで、演技が多少ひどいとしても、ゲスト出演的な露出なら視聴者は笑って見ていられます。同世代の女優さんはいくらでもいるわけで、彼女である必要はないんです。あくまで話題作りでにぎやかし。朝ドラではアナウンサー役でしたし、極端に言ってしまえば、演技を求められていなかったわけですから。


ドラマ『ブラックペアン』に臨床薬理学会が抗議

大学病院を舞台にしたTBS日曜劇場『ブラックペアン』に対し、日本臨床薬理学会が抗議しました。劇中に登場する「治験コーディネーター」が患者に多額の負担軽減費を支払う描写などについて、「現実と乖離(かいり)している」というのが主な理由でした。

あのドラマは、手術成功率100%の超人的技能と秘めたる野望を持つ天才外科医が主人公。不可能を可能にする手術場面などダイナミックな展開で楽しませるエンターテインメント作品でした。

(元フジテレビアナウンサーの)加藤綾子さん演じる治験コーディネーターは原作小説にはなかった脇役の一人。そのキャラクターや仕事ぶりに、他の登場人物と同様、ドラマ的な演出や味付けがなされていたのは当然のことです。物語全体がドラマというフィクションであり、現実に沿った内容に終始するのであれば、医療ドラマだけでなく、刑事ドラマも弁護士ドラマも成立しなくなります。


・・・以上、細かな話題で振り返る、2018年上半期の「テレビ界」でした。

【気まぐれ写真館】 沖縄・ヘリオス酒造「サンタビール」到着!

2018年12月24日 | 気まぐれ写真館







一年に一度しか出会えないビールです。
苦味控えめでほんのり甘い
「レッドエール」タイプ。
一見琥珀色。
キャンドルライトの下では赤く見えるという
クリスマスにぴったりのロマンティックなビールです。

(ヘリオス酒造webサイトより)

言葉の備忘録 71 幸運は・・・

2018年12月24日 | 言葉の備忘録





幸運は勇者に味方する。


映画「ボヘミアン・ラプソディ」

『今日から俺は!!』 2つの「ゴールデントリオ」に拍手!

2018年12月23日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


最終回を迎えた『今日から俺は!!』 
2つの「ゴールデントリオ」に拍手!

今期のドラマも、続々と最終回を迎えています。作品としての評価はそれぞれあるでしょうが、3ヶ月、つき合ってきた登場人物たちとの別れは、大団円の盛り上がりとは別に、かすかな寂しさを伴います。賀来賢人主演『今日から俺は!!』も、そんな1本になりました。

賀来賢人、伊藤健太郎、清野菜名の最強トリオ!

日曜夜10時30分の『今日から俺は!!』(日本テレビ系)は、16日(日)が最終回でした。

このドラマの背景は80年代で(ネットもスマホも出てきません)、舞台は千葉にある軟葉高校。脚本・演出は、『勇者ヨシヒコ』シリーズなどの福田雄一監督です。

主人公は、軟高への転校を機に、「金髪のツッパリ」へとキャラ変した三橋貴志(賀来賢人)。

三橋が、同じツッパリ転校生でトゲトゲ頭の伊藤真司(伊藤健太郎)や、マドンナ的存在の赤坂理子(清野菜名)らと繰り広げるケンカ上等のおバカな毎日は・・・といったストーリーなど、実はどうでもよろしい(笑)。

随所で展開されるコントなのかギャグなのか、どーにもバカバカしく、なんともおかしい福田演出をひたすら楽しむドラマでした。

三橋は確かに強い。でも、腕力だけじゃなく、セコイとか、卑怯とか言われるような手口を考え出す頭脳ももっています。

16日の最終回では、身の危険を感じた三橋が、トレードマークの金髪を黒髪に変え、ツッパリもやめて優等生になり、「東大を目指す」と宣言。

そんなの、誰が見たって偽装じゃん(笑)。でも、敵だけでなく仲間たちもこれに欺かれ、ここぞというところで三橋は大暴れすることができました。


ムロツヨシ、吉田鋼太郎、佐藤二朗の最笑トリオ!

毎回、そんな苦笑・失笑ものの作戦や小ネタが満載で、それは三橋が伊藤や理子といる時、敵と向かい合った時はもちろん、他の登場人物たちが出てくる場面も同様です。

何しろ、三橋たちのクラス担任がムロツヨシさんですから。三橋の父親は吉田鋼太郎さん。さらに理子の父親が佐藤二朗さんですから。彼らのシーンだけでも十分見る価値がありました。

たとえば、第6回の冒頭はソープランドの待合室でした。客のムロさんが、わくわくしながら嬢を待っていると、そこに同じく客として吉田さんが現れる。

大慌てのムロさんは、さっきまで「俺のバズーカは暴発寸前だぜ!」とか騒いでいたくせに、「生徒指導の見回りだ」などと言い張ります。

しかも店の黒服がゲスト出演の山田孝之さんで、ムロさんが高校の先生であることをバラしちゃいます。もうそこからのムロさん、吉田さん、山田さんの掛け合いは、爆笑と苦笑の集中砲火でした。

毎回、何が飛び出すのかわからない“ビックリ箱仕様”が楽しかった。1週間を笑って終わりたい人、日曜の夜に思い切り脱力したい人には、福音のようなドラマでした。

特に賀来さんの三橋貴志、伊藤さんの伊藤真司、そして清野さんの赤坂理子という軟高トリオのマッチングが素敵で、日テレには、彼らがテーマ曲「男の勲章」を歌うオープニングタイトルもそのままに、今後のシリーズ化をお願いをしておきます。

書評した本: 小林信彦 『名人』ほか

2018年12月22日 | 書評した本たち


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


小林信彦 『名人』
朝日新聞出版 713円

古今亭志ん生と志ん朝。不世出の落語家の肖像が甦る、2度目の文庫化だ。しかし単行本にも既刊の文庫版にも収録されていない、志ん朝と著者の対談を楽しむことができる。また著者の「あとがき」の新作も読める。それだけで本書を手にする価値は十分なのだ。


バードマン幸田 『JazzSpot Jの物語』
駒草出版 2,700円

著者がオーナーの「J」は今年40周年のジャズハウスだ。高校でアルト・サックスを始め、早大“ダンモ研”で鈴木良雄(ベース)、増尾好秋(ギター)とコンボを組む。タモリは1年後輩だった。チェット・ベイカーやジョージ・ベンソンも登場する贅沢な回想記だ。


井上 由美子 『ハラスメントゲーム』
河出書房新社 1,620円

現在、唐沢寿明主演の同名ドラマが放送されている。本書は脚本を手がけた著者による原作小説だ。主人公は大手スーパーのコンプライアンス室長。パワハラやセクハラはもちろん、育児時短制度を利用して副業に精を出す悪質社員などとも、したたかに向き合っていく。

(週刊新潮 2018年12月13日号)



片岡義男 『あとがき』
晶文社 2,916円

70年代の『ぼくはプレスリーが大好き』から、近著『珈琲が呼ぶ』までの「あとがき」が並ぶ。自称“あとがき好き”の著者だから、長いものも多い。それぞれの文章に時代と心象が刻印されていて、良質なエッセイ集のような味わいがある。まさに企画の勝利だ。


川澄浩平 『探偵は教室にいない』
東京創元社 1,620円

第28回鮎川哲也賞受賞作。舞台は札幌の中学校だが、殺人事件があるわけでも、名探偵が登場するわけでもない。だが、中学生たちにとっては確かに「事件」であり、「探偵」の存在感も際立っている。ミステリーというジャンルの奥深さを感じさせる連作集だ。

(週刊新潮 2018年12月6日号)




言葉の備忘録 70 何を恥と思うかで・・・

2018年12月21日 | 言葉の備忘録

富良野



「いいか長谷川。
何を恥と思うかで、
人間の価値が決まるんだからな」




長谷川康夫「つかこうへい正伝 1968-1982」






つかこうへい正伝 1968-1982
長谷川康夫
新潮社

高畑充希「忘却のサチコ」食事シーンの美しさ

2018年12月20日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


「忘却のサチコ」の高畑充希は
食べる様子がひたすら美しい

うまいなあ、高畑充希。あらためてその演技力に感心してしまう。ドラマ24「忘却のサチコ」(テレビ東京系)のヒロイン、佐々木幸子のことだ。

幸子は出版社の文芸編集部所属。クセの強い作家を担当しても、編集者としての仕事は完璧だ。次は完璧な結婚を目指していたが、なんと結婚式当日に夫となるはずの俊吾(早乙女太一)に逃げられてしまう。

そんな傷心の幸子を癒やしてくれるのが美食だ。おいしいものを食べてさえいれば、俊吾を忘れられる。そう、忘却のサチコになれるのだ。

というわけで、このドラマの見どころは一にも二にも幸子の食事シーンである。たとえば、ロシア料理店でのビーフストロガノフ。幸子は心の中で「一口食べるたびに発見がある。まるで味のマトリョーシカ!」と感動する。またジンギスカンの肉をほお張れば、「ありがとう、羊さん! モンゴルの大平原が私を祝福してくれている」と今にも泣き出しそうだ。

この“心の声”ってスタイル、「孤独のグルメ」を思わせるものの、淡々とした井之頭五郎(松重豊)とはまた異なる味わい。何よりアップで撮られているにもかかわらず、高畑の食べる様子がひたすら美しいのだ。

しかも、しっかり「おいしそう」に見える。演技を超え、もはやアートの領域。高畑の新たな魅力発見で、忘却どころか目に焼き付きそうだ。

(日刊ゲンダイ 2018年12月19日)