碓井広義ブログ

<上智大学教授のメディア時評> 見たり、読んだり、書いたり、話したり、時々考えてみたり・・・

書評した本: 酒井順子・高橋 源一郎・内田 樹 『枕草子/方丈記/徒然草』ほか

2017年01月20日 | 今週の「書評した本」



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

酒井順子・高橋 源一郎・内田 樹
『枕草子/方丈記/徒然草 日本文学全集07』

河出書房新社 3024円

古文の教科書とは別物の新鮮な現代語訳だ。酒井本人のエッセイを思わせる枕草子。高橋の小説だと信じてしまいそうな方丈記。「勢いのあるものを当てにしてはならない。強いものからまず滅ぶ」(211段)も、まさに内田の文章だ。古典再読への誘導路となる。


重松 清ほか 『ノスタルジー1972』
講談社 1620円

1972年、札幌五輪で笠谷選手が金メダルを獲得し、連合赤軍のあさま山荘事件が起き、川端康成がガス自殺を遂げ、田中角栄首相が中国を訪問し、NASAのアポロ計画が終了した。6人の作家が描くのは、時代の“節目”をそれと知らず生きていた私たちの姿だ。


コロナ・ブックス編集部:編 『作家のお菓子』
平凡社 1278円

作家たちが愛した酒、住まい、珈琲などが並ぶ「作家シリーズ」の最新刊。谷崎潤一郎は熱海の洋菓子店のリーフパイを常備していた。ナンシー関がテレビを観ながら口に入れていたのは好物のいもようかんだ。その人らしい納得の一品も、意外な逸品も共に味わい深い。


(週刊新潮 2017.01.19号)


新ドラマ「就活家族」 三浦友和が見せる男の強さともろさ

2017年01月19日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今回は、ドラマ「就活家族」について書きました。


テレビ朝日系「就活家族~きっと、うまくいく~」
三浦友和の演技が抜群

それなりに安定していたはずの家庭が、ふとしたきっかけで危機に陥っていく。

舞台は、家族4人の富川家だ。夫の洋輔(三浦友和)は大手企業の人事部長。妻の水希(黒木瞳)は中学教師。娘の栞(前田敦子)はOL。そして弟の光(工藤阿須加)は就活中だ。

顔見世興行だった第1回では、役員への就任が目前だった洋輔にトラブルが発生する。新人採用の際に叱りつけたモンスター就活生が、実は取引先である銀行の頭取の息子だったのだ。慌てて取り入ろうとするが、見事にはね返されてしまう。

また、リストラの通告を受けた女性社員(木村多江、怪演)が逆恨み。洋輔のセクハラ疑惑(でっち上げだが)を会社に訴えた。このままでは洋輔自身がリストラの憂き目に遭いそうな事態だ。

しかも今後は洋輔だけでなく、難航している光の就職問題、水希の再雇用問題、さらに栞が会社で受けているセクハラ問題など、まさに問題山積みの展開が予想される。

作りは堂々の社会派ホームドラマだ。リストラも就活もリアルなエピソードで、見ていて息苦しいほどだが、もう少しユーモアがあるとありがたい。

とはいえ、この年代の男の強さともろさの両面を見せる、三浦友和の演技が抜群だ。これだけで一見の価値がある。そうそう、「毒島ゆり子のせきらら日記」で開眼した前田敦子にも注目したい。

(日刊ゲンダイ 2017.01.18)

植草さんとコーシン先生

2017年01月18日 | 本・新聞・雑誌・活字



本のサイト「シミルボン」に、以下のレビューを寄稿しました。

https://shimirubon.jp/reviews/1677649


植草さんとコーシン先生

書庫のどこかにあるはずなのに、見つからなくて困っていた本を、古本屋さんで入手しました。

『植草甚一 ぼくたちの大好きなおじさん―J・J100th Anniversary Book』(晶文社)です。

嬉しかったのは、「植草さんの声が聞けるCD」という涙モノの付録も、ちゃんと付いていたこと。このCDには、75年~76年に行われたインタビュー3本が収録されていて、その中の一つが鍵谷幸信さんによるものでした。

当時、鍵谷さんはジャズファンの間ではよく知られたジャズ評論家でしたが、あの西脇順三郎の弟子であり、現代詩人でした。

また現代英米詩が専門の慶大教授でもあり、私たちが学生の頃は、日吉の教養課程で英語の授業も担当されていました。

幸信という名前は、本当は「ゆきのぶ」だと思うのですが、みんな「コーシン」と呼んでいました。「カギヤ・コーシン・センセー」と。

そして、鍵谷先生が英語の授業をやっている教室からは、大音量のジャズが聴こえてくるという伝説があり・・・・いや、実際そうでした。

それだけで、鍵谷先生の授業を受けたかった。

でも、必修科目だった英語は担当が決められていて、学生は選べなかったのだ。

一度、教室をのぞきに行ったら、本当にジャズのレコード(CDじゃない)をかけたりしていて、鍵谷先生は教壇の上でタバコをふかしながら授業をしていました。

いい時代だよねえ。

そのコーシン先生も、89年に亡くなっています。まだ58歳の若さでした。

植草さんと鍵谷先生には、2人で出した、植草甚一・鍵谷幸信:編『コルトレーンの世界』(白水社)という本もあります。

ちなみに、私の日吉時代には、まだ、この『コルトレーンの世界』は出版されていません。

日吉から三田に移って、今度は、ようやく植草甚一さんを知ることになります。

「A LIFE~愛しき人~」は、キムタクドラマの延長か、それとも新・木村拓哉ドラマか

2017年01月18日 | 「ヤフー!ニュース」での連載



TBS日曜劇場「A LIFE~愛しき人~」の第1回が放送され、雑誌の取材を受けました。感想を、とのことでしたので、ざっと以下のような話をしました。

「スーパードクター」ではなく、「職人外科医」?

TBSのフレコミでは、いわゆる「スーパードクター」ではなく、「職人外科医」だそうですが、まあ、これは、「ドクターXとは違うので、比べたりしないでね」という予防線みたいなものだと思います。

「心臓血管と小児外科が専門の職人外科医」といわれても、あまりピンときませんが、第1回では、明らかに「海外仕込みの凄腕外科医」として登場してきました。

で、外科医として活躍するドラマなのだろうと、いわば、お手並み拝見ということで、“その時”を待ちました。

栄えある最初の患者さんは、かつての上司であり、かつての恋人(竹内結子)の父親でもある病院長(柄本明)。「ナンだ、ずいぶん内向きの話だなあ」という、肩すかし感もなんのその、同じ回の中で、柄本サンに2回も手術しちゃいます。

これもTBSのフレコミですが、「リアルな手術シーン」に力を入れたそうで、確かに、その形跡は見えました。

「見せ場」感に欠ける手術シーン

ただ、残念ながら、そのリアルが、あまり効果を発揮していません。沖田を演じる木村拓哉が、練習を重ねて臨んだとのことですが、手術シーン全体に、緊張感とか、緊迫感とかが希薄でした。3~4分のシーンなのに、どこか間延びしたというか、いたずらに長く感じられました。

また手術を終えても、「やったね!」という達成感とか、勝利感とか、爽快感とかが、ほとんどない。ドラマにおける「見せ場」が与えてくれる高揚感もありませんでした。

これはなぜだろうと考えてみたら、沖田が行った「手術のスゴさ」、もっと言えば「沖田のスゴさ」が、視聴者にはよく分からなかった。「どこかの国の王様の親戚の命を救った」とか言われても(笑)。

もちろん、沖田医師から、ひとしきり説明はありました。しかし、医学用語をただ並べるだけでは、聞いていても頭に描けないし、手術法みたいなものをテロップで文字表示されても、多くの視聴者にはピンときません。

そういう意味では、「ドクターX」は上手いですね。ストーリー展開でハードルの高さに目を向けさせるだけでなく、図解やCGなんかも挿入して、「なんだかスゴい」感を、ちゃんと伝えています。決して米倉涼子のお手柄だけではないのです。

ドラマは、シナリオと演出と役者の相乗効果です。視聴者は、医療ドラマに、まんまの医療的リアルとか、医学的正確さばかりを求めているわけではありません。「ドラマ的それらしさ」「ドラマ的リアル」があればいいのです。その上でエンターテインメントに仕立ててくれたら、十分楽しめる。

「A LIFE~愛しき人~」の手術シーンは、リアルチックなのかもしれませんが、ドラマチックではなかったのです。今後は、撮り方や構図といった映像面、そしてテンポのいい編集なども工夫してみるといいかと思います。

中年ラブストーリーなのか?

それから、今度はドラマ全体、もしくは物語全体についてですが、「木村拓哉―竹内結子―浅野忠信」による、10年越しの三角関係(笑)みたいなものを、どこまで描こうとするのか、気になります。

あまり、そちらの方向に流れると、「A LIFE(命)」を救う男の話というより、サブタイトルの「愛しき人」が強調された、半端な中年ラブストーリーになりそうで。

何しろ、“顔見世興行”としての第1回を見る限り、人間関係が結構ドロドロしている印象(笑)。まあ、そういうものを見たい人もいるでしょうが、これって、そうなんだっけ?

竹内結子、浅野忠信、松山ケンイチ、及川光博、木村文乃など、脇を固める役者は、いずれも主役級です。いい俳優たちです。だからこそ、単に主演の木村拓哉を引き立てるためにのみ、使われていかないことを願います。

この「A LIFE~愛しき人~」が、旧来の「キムタクドラマ」の延長にあるのか、それとも「新・木村拓哉ドラマ」の構築を目指すのか。第1回だけでは判断しかねますが、「やや微妙な内容と出来」であることは確かなのではないでしょうか。

もちろん、「裏を返す」という意味で、第2回も見る予定です。

週刊新潮で、「紅白歌合戦」についてコメント

2017年01月17日 | メディアでのコメント・論評



週刊新潮で、「紅白歌合戦」についてコメントしました。


「紅白歌合戦」全舞台裏 
視聴者置いてけぼりだった「紅組勝利」のカラクリ

「紅白歌合戦」全舞台裏(上)


賑やかな話題は多くても、話題になる歌は少なかった2016年。しかも、あのグループも出ないとあって、紅白歌合戦はさまざまな仕かけで視聴者をつなぎ止めようと試みたが、肝心の「歌合戦」の勝敗でとんだミソがついてしまった。その全舞台裏をここに。

お世辞にもこなれているといえない司会ぶりに「すいません」を連発した白組司会の相葉雅紀(34)。どうにかエンディングにまでたどり着き、白組が視聴者と会場の圧倒的な支持を得ると、感極まった相葉の目に涙がこみ上げてきたそのときである。紅組司会の有村架純(23)が慌てて、

「えっ、えっ、どういうこと? えっ、ありがとうございます。ちょっとびっくりしました。てっきり白が勝つかと思っていたので」

狐につままれたような紅組の勝利に、相葉の目にたまった涙は落ちる機会を逸してしまった。

台本の棒読みが精いっぱいだった有村が思わず“アドリブ”で戸惑いをあらわにし、視聴者は意味不明のまま置いてけぼりにされたこのラストシーンが生じた原因は、「『紅白歌合戦』全舞台裏(下)」で明らかにしよう。まずはリハーサルの様子ともくらべながら紅白を振り返るが、その際、意識しておいたほうがいいキーワードがある。それは、

「SMAPですね。彼らの不在の穴を少しでも埋めようと、数々の演出を盛り込んだのですが、結果的に時間が押してしまった面もあります」(NHK関係者)

事実、リハーサルでも取材陣から出演者に、SMAPに関する質問が頻繁に投げられたが、リハーサル初日は、「ス」と発せられただけでNHKのスタッフが止めに入るという異常なピリピリムード。ともあれ、その場にいない人たちが大きく影響をおよぼすという不思議な紅白は、関ジャニ∞とPUFFYをトップバッターに幕を開けた。

■余裕のない司会者

2日前は奇抜な私服で現れ、記者が「ピコ太郎さんを意識した服装ですか」と聞くと、「おかあさんにも言われた~」とゆるいムードを醸し出していたPUFFYだが、本番では、入場券を忘れた審査員夫妻を装ったタモリ(71)とマツコデラックス(44)の場面挿入で、すでに時間は押せ押せ。ちなみに、少し先でもタモリとマツコの場面の前に、市川由紀乃(40)が他界した兄からもらった手紙を、相葉と有村が読み上げる場面がカットされた。

さて、リハから無気力全開で、その場にいたNHK職員が「こんなんでいいのかね」と嘆いたAAAの登場でも時間は取り戻せない。割愛されるセリフが増えるにつれ、リハでは緊張のあまり顔面蒼白で、オリンピックを「カラリンピック」と読むなど“噛みって”ばかりの有村に加え、相葉にも余裕が失われる。E-girlsの歌のあと、副音声の紹介では「バナナマン」が「バババマン」に。

有村も負けじと噛む。少し先で椎名林檎(38)の都庁前からの中継の際、「五輪のフラッグハンドオーバーセレモニーの音楽監督を務めた椎名林檎」と紹介すべきを、「フラッグハングオーバー」だって。これ、二日酔いって意味ですけど。

余裕がないと、自ずとアドリブも少なくなる。天童よしみ(62)が歌う前、ピコ太郎(43)とRADIO FISHの中田敦彦(34)が楽屋裏で“喧嘩する”場面が中継され、映像が会場に戻ると、司会の2人は慌てた体で「はいっ、というわけで紅組、次は」。会場で司会者が“予想外”のことに慌てる場面は、みな台本通り。もちろん、SEKAI NO OWARIの歌の前に、相葉から茨城弁を求められた有村が、「恥ずかしいな」と言って照れるのも、すべて台本通りなのであった。

リハではバックダンサー2人が衝撃を与えた。香西かおり(53)の後ろで踊った橋本マナミ(32)は、足を前に出すたびに太ももが露わになり、中年カメラマンの視線は橋本だけに注がれることに。本人もそれがわかってか、本番では台本を無視して「妖艶な踊りを披露します」と挑発。もっともマナミ嬢、リハでは紅白パネルの前で写真を撮るなど“お上りさん感”も披露していたが。

少し間を置いて、郷ひろみ(61)の歌に合わせて踊った土屋太鳳(21)。白いドレスに素足で一心不乱に踊り狂う姿に、取材陣は狂気を感じた。なにかが憑依しているのではないかと。友人でもある有村に「キャー! 元気?」と嬌声をあげるのを聞いて初めて、取材陣はホッとしたのである。

■アクシデントも台本通り

相葉とメンバーの間で、長野博(44)の結婚をめぐる内輪感満載の寸劇を繰り広げたV6。リハから長野が坂本昌行(45)に浣腸するマネをしたりと、妙に明るい。「自分たちの時代がきた」と思う理由でもあったということだろうか。

続いて水森かおり(43)が、小林幸子のお株を奪う巨大衣装で登場した。リハでは「また来年に向けても、いい励みにさせていただいて」。“巨大衣装枠”は渡さないという意欲を口にしたが、ライターの吉田潮さんに言わせれば、

「タモリが“水森亜土”と言ったりしたのは、まさにその通り。水森かおりって巨大衣装にばかり目がいくので、いつまでたっても顔が覚えられないんです」

相葉や有村に負けず劣らず緊張していたのが、ゆずの岩沢厚治(40)だ。リハでもだれとも言葉を交わさず、舞台袖の鏡に自分の姿を映し、直立不動で見ていた。本番が終わり、胸に手を当ててホッとした仕草をしたが、相葉と有村の緊張は続き、押せ押せのあまりのアクシデントが――。

前半最後のハーフタイムショーで、ピコ太郎が「PPAP」のあとに新曲「ポンポコリンポンペン」を歌う途中で、映像が切れてニュースに切り替わってしまった。スポーツ報知もスポーツニッポンも、「進行が遅れており」「無念」と報じたが、実はこの“アクシデント”はリハ通りである。NHKとスポーツ紙が手を組んで、こんなヤラセをしていいものなのか。

「紅白歌合戦」全舞台裏(下)


ここから後半である。RADWIMPSが映画「君の名は。」の主題歌を歌うところでは、新海誠監督に話を聞くことになっていたが、カット。調整がつかなかったようだ。

福山雅治の中継では、引退した広島の黒田博樹投手がVTRで登場。「広島の土砂災害の惨状を見て、MLBを蹴って広島に復帰」と紹介されたが、

「野村前監督が退任したうえ、契約面で合意があったからにすぎません」(スポーツ紙記者)

とまれ今回の紅白、被災地への配慮が目立った。総合司会の武田真一アナ(49)が熊本出身なら、途中で歌われる「ふるさと」は、くまモンをプロデュースした熊本出身の小山薫堂氏が作詞。そして福山の次に歌った演歌の島津亜矢(45)も熊本出身で、本人いわく「コンサートでもあまり歌ったことがない」、ふるさとが描かれた「川の流れのように」を“歌わされ”た。

西野カナ(27)の場面ではレスリングの吉田沙保里、伊調馨、登坂絵莉がステージへ上がった。時間短縮のためかセリフが大幅にカットされたが、台本通りなら大炎上しただろう。リハでは「どんな相手が理想ですか」と聞く紅組司会の有村架純(23)に、吉田役のNHK職員が「男らしく私を守ってくれる人です」と答えると、白組司会の相葉雅紀(34)が「吉田さんを守る人は大変そうですね」と返す、シュールなやりとりだったのだ。

auのCMで話題になった桐谷健太(36)の曲。…企業名は出したくないNHKもやむをえず、有村に「浦ちゃん、がんばって!」と声をかけさせた。これ、スポーツ紙は有村のアドリブであるかのように報じていたが、台本通りなのである。

■審査員席がステージ上で

AKB48は、リハで目立ったのが“卒業”する“ぱるる”こと島崎遥香(22)のやる気のなさ。一人腕組みをして突っ立っている姿は悪目立ちしていた。

有村のボケっぷりもさらに目立ってきた。AI(35)が歌う前、ゲスト審査員で昨夏のパラリンピックに出場した辻沙絵に話を聞くと、仕事が終わったと思ったのか、固まってしまう。Perfumeの紹介でも、ボーッとして相葉に「紅組の番ですよ」と促され、「さあ、続いては」。架純ちゃん、緊張による疲れがピークに達してきたのか。

一方、話題の星野源(35)がリハで見せたのは、緊張ではなく神経質な一面。音合わせは、若手は短時間ですませるのが暗黙の了解なのに、「音ちょっと下げてください」「もう一つ下げてください」。結局、17分を要して、すでに大物の風格であった。

大竹しのぶ(59)は熱のこもった歌を聴かせ、その表情は「理科室に置いてある人形のよう」(吉田潮さん)。感極まって涙がこぼれそうだったが、曲を紹介した嵐の松本潤(33)もなぜかガチガチで、「演技者の先輩として、いつも、ひ、非常に尊敬している大竹さん」と声も手も震わせていたが、なにか“感極まる”理由でもあったのだろうか。

相葉も疲れがピークに達してきたか。TOKIOの中継では、パラリンピックに出た陸上の山本篤に話を振るのを忘れてしまい、「失礼しました!」と繰り返しながら、取ってつけたように質問した。

今回の紅白、タモリとマツコなどのほかに、ゴジラ来襲というフィクションが挿入された。松田聖子(54)の歌のあと、渋谷に来襲したゴジラを止めるには良質な音楽が必要だ、というVTRが流され、聖子の伴奏も務めたYOSHIKI(51)が、今度はX JAPANとして演奏する前に「僕たちが止めます」。実は、YOSHIKIは31日午前までのリハをすべて欠席。したがって、彼の返答はほとんどアドリブのはずだが、Toshl(51)の絶叫に押され、ゴジラは“無事に”凍結したのだった。

■評価の声も

ケチばかりつけているようだが、昨年の紅白を評価する声を紹介しておこう。

「前回の紅白は、『スター・ウォーズ』やディズニーのキャラクターが客寄せパンダのように登場していた。今回はバラエティ要素にも工夫があり、映画『君の名は。』やドラマ『逃げ恥』など、2016年のポピュラーカルチャーを反映したものだという点で、音楽で1年を振り返るという、紅白本来の趣旨にも合致していたと思います」(上智大学の碓井広義教授)

さて、大トリは嵐である。本番中に「すいません」を20回、「ごめんなさい」を7回繰り返した相葉も、ホッとしたのか、歌いながらすでに涙をためていた。そして視聴者と会場の投票結果を受け、白組優勝を確信して優勝旗を受け取りに行きかけたそのとき、まさかの紅組優勝に。どうしてこうなったのか。

「今回の勝敗は、視聴者と会場が2票ずつ、ゲスト審査員10票、ふるさと審査員1票の計15票で決められました。視聴者と会場の票はすべて白組に入りましたが、残り11票のうち9票が紅組に入った。今回は舞台を前方に広げたため、以前は客席の最前列にあった審査員席をステージ上にもってきた。だから、審査員たちは白組が圧倒的に優勢なのをステージ上から眺めることになり、せめて自分ぐらいは紅組に入れよう、と思ってしまったようです」とNHK関係者。しかも押せ押せで採点方法さえ視聴者に説明できず、司会者も混乱。こればかりは台本になかったようだ。

(週刊新潮」2017年1月12日号)

【気まぐれ写真館】 気温4度の夕暮れ  2017.01.15

2017年01月16日 | 気まぐれ写真館

書評した本:司馬遼太郎 『ビジネスエリートの新論語』ほか

2017年01月15日 | 今週の「書評した本」



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

ヤング司馬遼太郎の名言エッセイ集
司馬遼太郎 『ビジネスエリートの新論語』
 
文春新書 929円

弘兼憲史の漫画『課長島耕作』シリーズの一つに、『ヤング島耕作』がある。主人公が新入社員だった頃から主任時代まで、その成長の日々を描いている。司馬遼太郎『ビジネスエリートの新論語』(文春新書)で読者が出会うのは、いわばヤング司馬遼太郎だ。

元本である『名言随筆サラリーマン』が出版されたのは1955(昭和30)年。著者は産経新聞文化部記者、32歳の福田定一だった。司馬遼太郎という筆名の作家が登場する直前のことだ。

本書は司馬本人が「昭和の論語を編むというオソルベキ考えはサラサラない」と書くように、ざっくばらんな口調による、肩の凝らない名言エッセイである。

たとえば、「明日のことを思い煩うな」という新約聖書の言葉を引きながら、若いサラリーマンは定年後の生活や資本主義の将来を心配するより、今日を充実させるのが賢明な生き方だと説く。「どうせ三十年後は社会保障ぐらいは仕上がっているだろうとタカをくくっておればよい」といった乱暴なもの言いが、ヤング司馬の魅力だ。

また、鍍金(めっき)を金に見せる苦労より真鍮(しんちゅう)相当の侮蔑を我慢するほうが楽だとする夏目漱石に対し、真鍮は真鍮なりの光があると主張。「その光の尊さをみつけた人が、平安期の名僧最澄だった」と、後の司馬作品に繋がる抵抗ぶりが頼もしい。

加えて本書は、実用的処世術から職場恋愛まで、約60年前のサラリーマン社会を垣間見せてくれる、貴重な同時代記録でもある。


長 新太 『これが好きなのよ 長新太マンガ集』
亜紀書房 3024円

ナンセンス絵本の巨匠が亡くなって11年。初の本格的マンガ作品集である。登場するのはトンカチおじさん、怪人タマネギ男、ガニマタ博士など、まさに長新太ワールドの住人たちだ。時空を超えたユーモア。じわりとくる不条理。単行本未収録作品も含むベスト版だ。


小谷野敦 『文章読本X』
中央公論新社 1620円

かつて中央公論社から、谷崎潤一郎や丸谷才一が同名の書を上梓している。著者はそれらも踏まえ、文章は美しさより論理的で正確であることが必要だと言う。「『細雪』の美しさは事実の美しさ」「美しい出来事に遭遇するというのも才能」などの指摘が刺激的だ。


吉村英夫 『愛の不等辺三角形~漱石小説論』
大月書店 1944円

今年が没後100年、来年は生誕150年の漱石。著者によれば、その作品の多くが「愛の形を男女三人の関係に凝縮」したものだ。『三四郎』や『それから』はもちろん、『坊ちゃん』でさえ該当する。揺れる三角形を解読し、漱石が企てた「無限ノ波乱」を味わう。

(新潮書評 2017.01.12号)


“リアル普段着”で突破した中学受験「親子面接」

2017年01月14日 | 日々

”男女共学”の中等部


毎年、この時期になると、息子の中学受験の時の「親子面接」が話題になることがあります。

今思えば、まさに笑い話なのですが・・・・


そもそも我が家の中学受験は変則的でした。

息子は「お父さんの後輩になる」と、親を泣かせるセリフを吐いて(笑)、私の出身大学の付属中学を3校受験。

というか、その3校しか受けていません。

落ちたら、近所の公立中学へ、という予定でした。

実は、姉である娘も大学受験で、やはり私と同じ大学を目指していました。

中学、大学のダブル受験、しかも第一志望が同じ(笑)。


さて、弟のほうは、運よく3つの付属のうち、2校の1次試験を通過します。

今度は、それぞれの2次試験ですが、どちらも「親子面接」有り、でした。

で、2校のうちの1校での出来事です。

「親子面接」の日の朝、ちょっと慌てました。思ったより、時間が切迫していたのです。

それは面接の順番が早かったためで、「現地に着いてから着替えよう」ということにして、親子3人、大急ぎでクルマに乗り込みました。

都内へ向かって高速を順調に進んでいき、家と学校の真ん中あたりまで来たところで、ふと家内が私に聞きました。

「私のスーツ、どこかな?」

え、何のこと?

私は家内に頼まれた通り、二人のスーツをクローゼットから取り出して、家内のものは「ここに置くよ」と声をかけながら、わかるところに置いて、出てきました。

当然、家内は自分のスーツを持ってクルマに乗ったはず、です。

ところが、家内によれば、「ここに置くよ」と言われた記憶はなく、家内のスーツも私がクルマに持ち込んであると信じていた!というのです。

さあ、大変。

家内は、コートは着ていますが、現地で着替える予定でしたから、その下はセーターにジーンズという“リアル普段着”のままです。

でも、家に引き返していると、面接に間に合いません。

怒る家内。

弁明する私。

困惑する息子。

3人を乗せたクルマは、もう学校のすぐ近くまで来ています。

「私は面接に出ません。二人でやってきて下さい」と家内。

それもどーかなあ、と思案する私。

走る車内で緊急家族会議(笑)が行われ、家内は“セーターにジーンズ”という完全な普段着で、親子面接に臨むことにしたのです。

待合室というか、親の控室は最悪でした。

何しろ、家内はコートを脱げない(笑)。

他のお母さま方は、もちろん、きちんとした“身なり”をしています。

ひと目で“高級ブランド”と分かるスーツ姿も、あちこちに。

やがて、呼び出しがあり、廊下へ。

そこで待つ間も、コートを脱がない(脱げない)家内。

我が家の番が回ってきました。

部屋に入ります。

そして、面接の先生方が何かを言い出す直前に、私が声を発しました。

「すみません。実は・・・」。

必死のお詫びと説明。

すると、先生方は笑顔で「構いませんよ」とおっしゃる。

まさに救われたような気持ちです。

家内は恥ずかしかったと思いますが、覚悟を決めたのか、その後は落ち着いて話に加わりました。

もう怖いものはないというか、文字通り“素で勝負”(笑)するしかなかったわけです。

気がつけば、面接終了。

やるだけは、やった。これで落ちても仕方ないじゃないの、と外に出ました。


そして、合格発表の日(上の写真)。

驚くべし、掲示板には、ちゃんと息子の番号がありました。

セーターにジーンズの“ふだん着”でも合格したのです(笑)。

親の服装なんて関係なかった。そんなものを見ているのではなかった。

なんて度量の大きい学校なんだろう、と感激しました。

結局、付属3校のうち、2校から合格をいただき、息子が自分で選んだほうに入学しました。

しかも、それは「ふだん着合格」ではないほうの学校でした(笑)。

家内は「せっかくなのに、モッタイナイ」と惜しんでいましたが、まあ、本人の選択ですから。

不合格だった1校は、付属3校の中で唯一の“男子校”。

ずっと「共学じゃなきゃ(女子がいなきゃ)、やだ」と言っていた息子の気持ちは、男である私には何となく分かりますが、母親からは“手抜き受験”を疑われました。

真相は、今も藪の中です(笑)。


ちなみに、娘も無事、第一志望の大学・学部に合格できました。

この年の4月は、大学とその付属中学、ダブルで入学式に参加。

以後4年間、姉と弟は、同じキャンパスに通い続けました。

特に息子は、中学、高校、大学と、トータルで10年間、このキャンパスのお世話になり、ついにこの春、卒業です。

あの「ふだん着面接」は、我が家の大きな試練、そして転機だったのかもしれません。



【気まぐれ写真館】 フエキくんプリン  2017.01.13

2017年01月14日 | 気まぐれ写真館

1月12日は、村上春樹さんの「お誕生日」

2017年01月13日 | 本・新聞・雑誌・活字



1月12日は、村上春樹さんの誕生日でした。

誕生日、おめでとうございます。

1949年生まれのはずだから、えーと、68歳になったわけですね。

この日、朝日新聞の朝刊に、新作『騎士団長殺し』の広告が掲載されました。

お誕生祝いの広告でしょうか(笑)。

2月24日の発売も、何か意味があるのかもしれません。

1月12日の倍?とか(笑)

まずは、楽しみに待つことにします。

黒澤明監督と黒澤映画を“読む”楽しみ(その2)

2017年01月13日 | 本・新聞・雑誌・活字


本のサイト「シミルボン」に、以下のコラムを寄稿しました。

https://shimirubon.jp/columns/1677525


黒澤明監督と黒澤映画を“読む”楽しみ(その2)

正月休みに、黒澤明監督の『天国と地獄』を観直した。個人的には、黒澤作品の中で最も好きな1本だ。

元々は調べたいことがあって、「冒頭部分だけ観よう」なんて思っていたのに、いやあ、権藤邸でのオープニングから、もう目が離せない。ついつい最後まで観てしまった。映画は(ドラマもそうだけど)、まず脚本だなあ、とあらためて実感する。

原作としてクレジットされている、エド・マクベイン『キングの身代金』も面白いけれど、こうなると完全な“別物”だ。

演出も役者も素晴らしいが、モノクロで映しだされる当時の横浜の風景がいい。映画の中の“風景”は、そのままフリーズドライというか、いわば保存されているわけで、昭和30年代の空気を体感できるのが嬉しいのだ。

また、「こだま号」の車内から、外を撮影する際の邪魔になるからと、線路沿いの民家の二階をバラした(撤去した)話は、何度聞いても(読んでも)「いかにも黒澤監督!」というエピソードであり、この作品を観るたび、ニヤリとしてしまう。

浜野保樹:編・解説『大系 黒澤明』全5巻(講談社)

浜野保樹:編・解説『大系 黒澤明』(講談社)の第2巻を開いてみる。

このシリーズは時間順で構成されているが、第2巻は1952年から73年までを扱っている。それは、「東宝への復帰」から「時代劇三部作」を経て「黒澤プロダクション」へと、ダイナミックな時代に当たる。

嬉しいのは、この時期に生み出されたのが『七人の侍』『用心棒』『天国と地獄』などで、私の好きな作品が多いことだ。中でも、11両編成の「特急こだま」を借り切って行われた『天国と地獄』の撮影裏話は、読んでいてもわくわくする。

また、撮った作品だけでなく、実現しなかった企画や作品に関する文章や発言を読めるのも有難い。

たとえば、1964年に開催された「東京オリンピック」の記録映画についてなど、とても興味深かった。黒澤側が提示した予算と、組織委員会のそれとが大きく食い違い、結局、この仕事から降りてしまうのだ。代わりに撮ったのが、市川崑監督だった。

そういえば、黒澤監督は『トラ・トラ・トラ!』も降りたが、その辺りの内幕というか、事情も出てきて、飽きさせない。

この『大系 黒澤明』全5巻、黒澤監督の「全著述・全発言を集大成」という堂々のフレコミに嘘はない。

雑誌に載った小さな文章や、埋もれていた座談会もしっかり収められているし、初めて見る写真も満載だ。浜野保樹さん(東大教授)のまさに労作である。

上島春彦 『血の玉座~黒澤明と三船敏郎の映画世界』(作品社)

上島春彦 『血の玉座~黒澤明と三船敏郎の映画世界』(作品社)は、黒澤明に関する出版物の中でも異色の一冊。俳優・三船敏郎に注目し、黒澤映画を「三船が主演した16本から解読する」挑戦的な試みだ。

例えば「ボディ・ダブル~黒澤的分身の成り立ち」は、主人公と敵対者や師との関係を「分身」という概念で捉える論考。著者によれば、『野良犬』とは三船を指すだけでなく先輩刑事の志村喬も同様。そして木村功が演じる犯人は狂犬。いずれも“青二才”三船の分身なのである。

また「血の玉座~『蜘蛛巣城』論」では、内と外を隔てる「門」に着目する。『羅生門』や『赤ひげ』に登場する門とも比較しながら、一見建造物に過ぎない門が登場人物たちの関係性を伝えていることを明かす。

ある意味で黒澤の分身でもあった三船が“青二才”でなくなった時、二人に長い別れが訪れた。

都築政昭 『黒澤明~全作品と全生涯』(東京書籍)

元NHKカメラマンで、その後大学の教壇に立ってきた都築政昭さんにとって、10冊目の黒澤本である。評伝と作品研究はもちろん、黒澤のシナリオ作法やカメラワークに関しての解説が出色だ。「何を描くか」「いかに描くか」にこだわり続けた黒澤の真髄がここにある。

ステュアート・ガルブレイス4世:著、櫻井英里子:訳 『黒澤明と三船敏郎』(亜紀書房)

著者はアメリカ人映画評論家。黒澤と三船の生涯を一冊の伝記とすることを目指し、厚さ5㌢の大部にまとめ上げた。特色は映画公開当時の欧米の評論が多数引用されていることだ。また関係者たちへのインタビュー取材も資料的価値が高い。

佐藤忠男 『喜劇映画論~チャップリンから北野武まで』(桜雲社)

「お笑い芸の範囲にとどまらない演技術の歴史を書きたいと思っていた」と佐藤さん。本書には小津安二郎のギャグから黒澤明作品における道化、さらにウッディ・アレンが生み出す笑いの解読までが並ぶ。かつて低俗文化と呼ばれた喜劇が持っている豊かさと鋭さを知る。

野上照代 『もう一度 天気待ち~監督・黒澤明とともに』(草思社)

野上照代さんは、黒澤明監督作品には不可欠だったスクリプター。身近で見てきた監督と俳優、制作現場の秘話までを開陳している。以前出た回想記に、新たな書き下ろしを加えた復刊だ。三船敏郎や仲代達矢はいかに黒澤と切り結んだか。監督の執念の凄さもリアルに描かれる。

ひと味違う超能力ドラマ「増山超能力師事務所」

2017年01月12日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今回は、ドラマ「増山超能力師事務所」について書きました。


日本テレビ系「増山超能力師事務所」
過去の超能力ドラマとひと味違う理由

先週、早々と“開店”した新ドラマ「増山超能力師事務所」(日本テレビ系)。舞台は近未来で、読心や透視や物体念動などの超能力が、社会的に認知され始めたという設定だ。「日本超能力師協会」なるものが出来たり、超能力師に「1級」「2級」といった認定資格が与えられたりしている。

主人公の増山圭太郎(ココリコ・田中直樹)は1級の超能力師だ。勤務していた会社を辞めて、探偵事務所を開く。所員として集めたのは篤志(浅香航大)、悦子(中村ゆり)、健(柄本時生)ら若手超能力師たちだ。

実際の探偵活動は今週の第2回からとなる。このドラマが過去の超能力物とひと味違うのは、超能力の持ち主たちが、自らの能力を「面倒くさいもの」「はた迷惑なもの」として持て余し気味であることだ。侵入してくる他人の声に悩まされたり、イジメの対象になったりと、ちっともヒーローっぽくない。この出発点がドラマのキモだ。

注目は3年ぶりの連ドラ主演となるココリコ田中である。NHK「LIFE!~人生に捧げるコント~」の仲間・星野源がブレークしたが、俳優業では田中も負けてはいない。昨年は「砂の塔――」(TBS系)や「家政夫のミタゾノ」(テレビ朝日系)などで好演。今回の“座長”も堂々たるものだ。最も超能力者らしくない超能力者を、楽しく魅力的に演じている。

(日刊ゲンダイ 2017.01.11)

アルペンCM  今もスキー場には“ロマンスの神様”がいる!?

2017年01月11日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム



日経MJ(流通新聞)に連載しているコラム「CM裏表」。

今回は、アルペンのCM、『青い冬、はじまる「バイト先にて」編』について書きました。
 

アルペン 
青い冬、はじまる「バイト先にて」編
スキー場の恋心 いつの時代にも

“スキー場=恋の舞台”というイメージが一般化したのは、いつのことだろう。まず、1987年に公開された原田知世主演の映画『私をスキーに連れてって』の存在は外せない。

そして、この映画以上に影響を与えたのが、89年に登場したアルペンのCMだ。特に93年のCMソング、広瀬香美さんが歌った『ロマンスの神様』は衝撃的だった。

あれから23年。懐かしいあの曲を口ずさみながら、スキー場でバイトをしているのは永野芽郁(めい)さんだ。

そこへ90年代スタイルのおじさん(「ホリイのずんずん調査」で知られるコラムニスト・堀井憲一郎さん)が現われ、「スキーに連れてってあげる」と誘う。芽郁さん、ソッコーで「やだ!」と返事。実はこれ、一瞬の幻想だったというのがオチだ。

時代は変わっても、スキー場が持つ非日常的ワクワク感は変わらない。この冬も、あちこちで “ゲレンデがとけるほどの恋”が誕生しているかもしれない。

(日経MJ 2017.01.09)





【気まぐれ写真館】 睦月の夕景  2017.01.09

2017年01月10日 | 気まぐれ写真館

60~70年代サブカルチャーへのタイムトラベル

2017年01月09日 | 本・新聞・雑誌・活字


本のサイト「シミルボン」に、以下のレビューを寄稿しました。

https://shimirubon.jp/reviews/1677404


60~70年代サブカルチャーへのタイムトラベル

自伝や回顧録を読む楽しさは、書き手が「どう生きてきたのか」を知るのはもちろん、背景となる「時代そのもの」に触れられることだ。

津野海太郎『おかしな時代~「ワンダーランド」と黒テントへの日々』(本の雑誌社)は、まさにそんな一冊である。 『本の雑誌』に連載中だった頃も、毎月、楽しみに読んできた。

1960年代のはじめ、早大生だった津野さんは、劇団「独立劇場」を仲間と立ち上げ、演劇の世界に入っていく。同時に、雑誌『新日本文学』で編集者としても歩み出す。

その結果、演劇人として、また編集者として、60~70年代のサブカルチャーを創出する一員となった。

この自伝の最大の魅力は、著者である津野さんを通じて、この時代を熱く生きた有名・無名の人たちと出会えることだ。とはいえ、圧倒的に有名人が多い。

演劇青年だった唐十郎、岸田森、草野大吾、蜷川幸雄。文学界では花田清輝、大西巨人。デザインの杉浦康平、若き日の池田満州夫。さらに編集者・小野二郎や装丁家の平野甲賀もいる。

津野さんは小野が興した晶文社に入社。ポール・ニザンや植草甚一の本を手がける。そして、やがて幻の雑誌『ワンダーランド』を創刊するが、それが後の『宝島』へとつながっていく。

私が大学生になったのは1973年で、その頃、初めて<晶文社の本>を目にした。あの犀のマークの背表紙だ。ぴちっと装着された、ビニールのカバーの感触も忘れていない。

晶文社の本は、いずれも学生にとって少し高めの値段だった。こまめに古本なども探して、植草さんの著作などを、バイト代で一冊、また一冊と手に入れていった。そうそう、渋谷の古書店では、ときどき植草さん本人に遭遇したりして、ドキドキしたものだ。

津野さんは当時の自分を振り返って、「腰のすわらない、ごくあたりまえの、混乱したガキのひとりだった」と書いている。自らを伝説化せず、時代を俯瞰することを忘れない冷静な目が、この傑作自伝を生んだのだと思う。