碓井広義ブログ

<上智大学教授のメディア時評> 見たり、読んだり、書いたり、話したり、時々考えてみたり・・・

NEWS ポストセブンで、芸能人の「報道番組起用」について解説

2017年02月27日 | メディアでのコメント・論評


ディーン・フジオカも 
芸能人の報道番組起用の狙いと課題

 4月にスタートするテレビ朝日の新番組『サタデーステーション』(毎週土曜20:54~)への出演が決まった俳優のディーン・フジオカ(36)。国際派俳優として鳴らしてきた彼がMCの高島彩(37)とともにどんな番組を作っていくのか注目されるところだが、さまざまな疑問も湧いてくる。彼に与えられた「インフルエンサー」(世の中に影響力を持つ人)という肩書きもその一つ。

 元テレビプロデューサーであり上智大学教授(メディア論)の碓井広義さんも、「報道番組でインフルエンサーという肩書きは聞いたことがない」という。

「おそらく取材に出たりコメントを述べたりしながら番組に関わっていくのでしょうが、そもそもディーンさんが影響力を持つインフルエンサーなのか、という疑問があります。ディーンさんが時事問題について何かを発言して社会的な反響を呼んだことがあるかというと、ない。番組側が彼をインフルエンサーにしたいという思惑が秘められているのかもしれませんね」(碓井広義さん、以下「」内同)


 ディーン自身は公式ホームページで次のように発信している。

<私は報道に関わる分野にて何かの専門家でも特殊な技能がある訳でもありませんが、インフルエンサーという役目を頂いたからには少しでも番組進行のお役に立てるよう、より良い未来に繋がる変化や気付きのきっかけを作る問いかけや提案をしていければと考えております>

 当の本人も、たまたまそういう肩書きをもらっただけで、自分がインフルエンサーだという自覚はなさそうだ。なぜテレビ朝日は、報道番組に馴染みのない席を用意してまで“報道初心者”のディーンを起用したかったのだろうか。

「テレ朝としては、朝ドラの『あさが来た』(NHK)のイメージのままのディーンさんを使いたかったのだと思います。素のディーンさんはインフルエンサーでなくても、ディーンさんが演じた五代友厚はヤリ手の男でインフルエンサーと呼べる人物。

 朝ドラ後、ディーンさんは何本かのドラマに出演していますが、まだそれを上回る役に出会えていないので、今も五代のイメージと重ねてディーンさんを見ている人もいるでしょう。高島彩さんでおじさんたちを捕まえて、ディーンさんで30代、40代の女性を捕まえようとしているのかもしれませんね」


 言ってしまえば客寄せパンダということか。しかしそれならばディーンでなくとも他にたくさんいるはずだ。それこそタレントや芸人でも務まってしまうが……。

「タレントだと番組全体が軽くなってしまいます。でも役者なら、タレントよりは重さがある。レポートだってタレントよりもうまくやるでしょう。役者ですから、それをしている自分を演じればいいんです。本質的にインフルエンサーになるかどうかは別として、『インフルエンサーのディーン・フジオカ』を演じていれば番組の進行上は問題ないはずです」

 確かに「何にでもなれる」という役者の強みを活かせば、報道初挑戦とはいえうまく順応しそうだ。過去に報道番組に出演していた俳優としては、たとえば1997年4月から『スーパーJチャンネル』のMCを勤めた石田純一(63)がいる。不倫問題によりわずか1年での降板となってしまったが、純粋に司会者として見た場合、どうだっただろうか。

「石田さんは人がよく、周りの雰囲気を明るくできるので、番組自体はうまく回っていたと思います。ただ、特別な見識があるわけではないので、そこから何かを問いかけるというところまではいかなかった。言ってみれば座持ちのいいホストでしょうね」

 2006年から『NEWS ZERO』(日本テレビ系)にキャスターの一人として出演している櫻井翔(35)も、アイドルでありながら俳優の一人。いつの間にかキャスター歴も10年を越えているが……。

「櫻井さんは頭のいい青年としてとてもうまく立ち回っているように思います。あえて強い意見を言わずに、一つひとつの話題を上手にさばいています。同じジャニーズで『news every.』(日本テレビ系)に出演するNEWSの小山慶一郎(32)さんも、それに似たところがあります」

 どの人物も報道番組に抜擢されるだけあって、一定水準はクリアしている。しかし碓井さんはある違和感を払拭できないのだという。

「タレントや俳優が報道番組でニュースを扱うというのはおそらく日本独自の文化だと思います。海外でたとえばクリント・イーストウッドやジョージ・クルーニーが何かの機会に政治や社会問題に対するメッセージを表明することはあっても、俳優自身が毎日のニュースについて語ることはありません。

 嵐の櫻井さんが『NEWS ZERO』のキャスターに決まった時、多くの人が『どうして彼からニュースを聞かないといけないの?』と戸惑ったと思います。慶應大学を出ているといってもそういう人は世の中にたくさんいるし、櫻井さんがなぜ報道キャスターをするのか、今ひとつ理解しきれなかった。同じく『NEWS ZERO』キャスターの桐谷美玲(27)さんもスタジオの華になってはいるけれど、『そもそも報道にそういうものって必要なの?』とも思います。いつの間にか慣れてしまいましたが、よくよく考えると私たちは、俳優やタレントがニュースを伝えるという不思議な光景を目にしているのです」


 報道番組の本来の使命は、世の中の出来事や関心事を公平・公正に伝えることにある。しかしテレビビジネスがシビアになる中で、「報道といえども視聴率を取らなくてはいけない時代になっている」と碓井さんは指摘する。視聴者の呼び込み策として、俳優やタレントを起用するケースが今後ますます増える流れは止まりそうにない。

『サタデーステーション』もまた、そのような番組の一つになるのかもしれないが、ディーン個人に関していえば「俳優としての株を上げるチャンスでもある」と碓井さんは言う。そのためのヒントとなるのが、すでに芸能界にいない意外な二人だ。

「『サンデープロジェクト』(テレビ朝日系)の司会を務めた島田紳助さんは、リアルさを見せてくれました。それができたのは、紳助さんが芸人である部分をその番組では捨てていたからです。決して笑いを取ろうとはしていなかった。ディーンさんも、報道の仕事をサブの仕事とは考えずに、俳優である自分を捨てて本業のつもりでやりきる覚悟が必要だと思います。原稿をただ読むだけでなく自分の言葉で語るディーン・フジオカの姿を見せられれば、ファン以外の人も『なかなかやるな』と評価を上げるでしょう」
 
もう一人の人物は、経歴詐称疑惑により番組MCのスタートラインにも立てなかったショーンKだ。

「彼はああいう形でテレビから消えてしまいましたが、ラジオ番組では内実のある印象的なコメントを出していました。だからこそ多くのリスナーに支持されていた。ショーンKを通して見える社会や政治を見せてくれていたわけです。ポイントを押さえて、『これって変じゃないですか』と提示する力は確かに持っていました。ディーンさんも、答えがなくてもいいから自分なりのクエスチョンを見つけてそれをぶつけられれば、それだけでも報道番組に出る意味はあったといえるでしょうね」


 ブレイクも一段落したディーンの新たな挑戦に注目したい。

(NEWS ポストセブン 2017.02.25)

【気まぐれ写真館】 2017年2月25日の新千歳空港

2017年02月26日 | 気まぐれ写真館

【気まぐれ写真館】 今月も、北海道千歳市「柳ばし」で絶品昼食

2017年02月26日 | 気まぐれ写真館

おかあさん特製「ホッキ貝のバターいため定食」
(メニューにはありません)

HTB北海道テレビ「イチオシ!モーニング」 2017.02.25

2017年02月26日 | テレビ・ラジオ・メディア
MCの依田アナウンサー、愛里さんをはじめ、モーニングのメンバー
ひとあし早い「誕生祝い」をしていただきました




スポーツ担当の五十幡アナウンサー


お天気キャスターの吉田晴香さん


オクラホマ藤尾さんとニュースの柳田アナウンサー


今週の木村愛里さん


HTB北海道テレビ「イチオシ!」 2017.02.24

2017年02月25日 | テレビ・ラジオ・メディア


高橋春花画伯!?


オクラホマ藤尾さん




ヒロ福地さん



今週の高橋春花アナウンサー










【気まぐれ写真館】 札幌 気温マイナス2度  2017.02.24

2017年02月25日 | 気まぐれ写真館

書評した本: 大下英治 『高倉健の背中~監督・降旗康男に遺した男の立ち姿』ほか

2017年02月24日 | 今週の「書評した本」



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

大下英治 
『高倉健の背中
~監督・降旗康男に遺した男の立ち姿』

朝日新聞出版 1944円

高倉健が主演したテレビドラマは、わずか4本しかない。『あにき』(TBS系、77年)はその中の1本で、ドラマ初主演作でもある。何代も続くとび職「神山組」の頭、神山栄次を演じた。この時、脚本の倉本聰は、高倉健という俳優がセリフで感情を表現するタイプではなく、セリフをしゃべらなくてもいろいろなものを表現できる人だとわかった。

主演・高倉健、監督・降旗康男という組み合わせでの第一作が、映画『冬の華』(78年)だ。その脚本を、倉本は高倉への私的ラブレターのつもりで書いた。その後、高倉と降旗は何本もの作品を生み出していく。

同じ倉本脚本の『駅 STATION』(81年)。山口瞳原作の『居酒屋兆治』(83年)。俳優・ビートたけしが光った『夜叉』(85年)。元野球選手の板東英二を起用した『あ・うん』(89年)。「日本アカデミー賞」最優秀主演男優賞、「ブルーリボン賞」主演男優賞を受賞した『鉄道員(ぽっぽや)』(99年)。田中裕子と共演した『ホタル』(01年)。そして、最後の主演作品となった『あなたへ』(12年)である。

著者はこれらの作品の制作過程を追いながら、関係者への取材をもとに“全身俳優”の実像を探っていく。たとえば、高倉は本番で何をやるかわからない。テストもやらない。段取りの確認はしても、本気の芝居は本番まで見せない。撮影の木村大作が、その一発勝負を撮り逃さないことを知っていたからだ。

また役柄であっても、自分自身が許せないキャラクターを演じることを拒否した。脚本、もしくは原作にあるキャラクターが「自分のなかにストンと入ってこないと駄目」なのだ。映画の残像や映像、演じた人間性などが年輪のように積み重なり、「高倉健」が出来上がったのかもしれないと著者は言う。

タイトルの「立ち姿」は、いわば高倉の象徴だ。立っている後ろ姿だけで、今も観る者を引きつける。


寺崎 央 
『伝説の編集者H・テラサキのショーワの常識』

エンジェルパサー 1944円

著者は12年末に亡くなったが、その博識と洒脱が甦る一冊だ。「ま、聞けや」という懐かしい説教スタイル。“尻取り雑報”を自称する文章は、たとえばディラン・トマスに始まり、田口トモロヲ、葛飾立石のトリ屋を経て映画『リトル・ダンサー』へと至る贅沢三昧だ。


根木正孝 
『ビートルズ原論~ロックンロールからロックへ』

水曜社 1944円

来日から半世紀。なぜビートルズは世界的な存在となり得たのか。その出現以前からの歴史を踏まえ、音楽の流れ、ベビーブーマーをはじめとする社会的背景、レコードプレーヤーの普及など多角的視点で検証している。60年代という時代と文化を再認識させる一冊。


穂村 弘 『野良猫を尊敬した日』
講談社 1512円

北海道生まれの歌人が地元紙に寄せたエッセイが並ぶ。高校時代は天文部。北大ではワンダーフォーゲル部。勤めた会社で遭遇したセクハラ大王。そしてインターネット未接続の自宅。どのページも、伊藤整文学賞受賞者のやわらかな“生活と意見”に満ちている。


小山慶太:編著『漱石と「學鐙」』
丸善出版 1728円

丸善が発行する「學鐙」の創刊は明治30年。120年の歴史をもつ日本最古の広報誌だ。夏目漱石は大量の洋書を購入する上客であり、寄稿者でもあった。本書ではこの雑誌に掲載された漱石の「カーライル博物館」、そして小宮豊隆などによる漱石論25編が読める。

(週刊新潮 2017年2月23日号)

堤真一「左江内氏」の深夜っぽさと贅沢感

2017年02月23日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、堤真一主演「スーパーサラリーマン左江内氏」を取り上げました。


日本テレビ系「スーパーサラリーマン左江内氏」
福田ワールド全開!

堤真一主演「スーパーサラリーマン左江内氏」は、今期ドラマで最も笑える一本である。ただし誰もが笑えるかどうかは微妙。何しろ脚本・演出が「勇者ヨシヒコ」シリーズ(テレビ東京系)の福田雄一監督なのだ。あのテイストが好きな人なら、とことん楽しめる。

地味なサラリーマン・左江内(堤)が、ひょんなことからスーパーマンになった。会社ではほぼ戦力外で、家庭では鬼嫁・円子(小泉今日子)に支配されている左江内だが、遭難しかけたトレジャーボートを助けたり、遊園地の爆弾事件を解決したりと大忙しだ。

しかし、そんな活躍よりも、このドラマのキモは左江内と円子の家庭内バトルにある。特に円子に関しては、演じる小泉の愛すべきヤンキー性をフル活用すべく、藤子・F・不二雄先生の原作より強烈なキャラに変更され、バトルというより一方的な勝負。一度言い出したら誰も止められない円子と、無駄と知りつつ抵抗する左江内のやりとりが毎回、苦笑いを誘う。

さらに「勇者ヨシヒコ」から出張してきたかのような刑事役のムロツヨシ、占い師や回転寿司の店員など神出鬼没の佐藤二朗もいて、例によってマイペースで自由な芝居を繰り広げる。深夜ドラマのトンガリ感と週末ゴールデンのゼイタク感。その無理やりなハイブリッドで推進する、福田ワールド全開のドラマだ。

(日刊ゲンダイ 2017.02.22)

【気まぐれ写真館】 四谷荒木町界隈

2017年02月22日 | 気まぐれ写真館

毎日新聞で、「ニュース女子」BPO審議入りについて解説

2017年02月21日 | メディアでのコメント・論評



MX沖縄報告 BPO審議入り 
放送局の考査、機能したか

沖縄県の米軍基地反対運動を取り上げた東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の放送番組に「事実関係が誤っている」と批判が出ている問題で、「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会(委員長・川端和治弁護士)は審議に入ることを決めた。

今後、局の倫理上の問題の有無を判断し、意見書をまとめる。番組はスポンサーによるいわゆる「持ち込み番組」で、局がどこまでコントロールできていたかが審議の焦点になりそうだ。

対象は、情報番組「ニュース女子」の1月2日放送分。番組では米軍ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設への抗議活動を現地報告。「過激デモで危険」「大多数の人は米軍基地に反対とは聞かない」などと紹介した。放送後、視聴者らから「事実関係が間違っている」などと批判が相次いだ。

MXは番組を大手化粧品会社「DHC」(東京都港区)の1社提供で放送し、同社の100%子会社「DHCシアター」(同)と番組制作会社「ボーイズ」(大阪市北区)が制作している。またMXの有価証券報告書(2015年度)によると、DHCがMXの売上額の14・3%を占める最大の取引先となっている。

審議入りを決めた10日、川端委員長は記者団に「事実と違うということが、いろいろ言われていて、どれだけきちんとした裏取りがされているのかが問題になる。今回は(制作会社の作った)番組の持ち込みなので、局の考査でどれだけ(裏取りの確認が)できたかチェックしなければならない。(審議に)必要なら制作会社の協力を求める可能性はある」と述べた。

弁護士や映画監督らでつくる委員会は今後、月1回の審議を続ける。MXは「真摯(しんし)に受け止め、今後も誠意をもって審議に協力してまいります」とコメントした。

MXが加盟する日本民間放送連盟(民放連)には、持ち込み番組について内部規定がある。「留意事項」として「持ち込み番組といえども、番組である以上、内容についての責任は放送局にあるので、放送基準や関係法令に反するものは認められない。また個人的売名や一方的な意見表明の場として利用されないよう注意しなければならない」と定めている。

1社提供番組でスポンサーの子会社が番組制作も担っていることを問題視する声もある。碓井広義・上智大教授(メディア論)は「子会社といえども深層部では番組のスポンサーと作り手が合致している。1社提供番組自体に問題があるのではなく、スポンサーそのものが番組を作っているところに問題がある。自分たちが思うままに作って、それをそのまま放送できてしまう。放送に責任を持つMXがどのように考査のシステムを働かせたのか。そこが審議のポイントになる」との見方を示した。

BPOはNHKを含む放送局でつくる第三者機関で、放送倫理検証委員会のほか二つの委員会がある。先月、同じ番組内で中傷されて人権を侵害されたとして人材育成コンサルタントの辛淑玉(シンスゴ)さんが放送人権委員会(委員長・坂井真弁護士)に申し立てた。同委員会は放送倫理検証委員会とは別に今後の対応を検討する。審理入りを決めた場合は、同時進行する見通しだ。【須藤唯哉、丸山進】

(毎日新聞 2017年2月20日)

週刊ポストで、「男性限定と女性限定」についてコメント

2017年02月19日 | メディアでのコメント・論評



なぜ「男性限定」だと叩かれて
「女性限定」なら許されるのか?

東京五輪のゴルフ会場となった「霞ヶ関カンツリー倶楽部」(埼玉県川越市)が槍玉にあがっている。

1929年にオープンした名門ゴルフクラブだが、正会員の資格を持てるのは男性だけ。それに小池百合子都知事が「違和感がある」と言えば、丸川珠代五輪相も「男女平等が原則」として会員規約の変更を促し、「オリンピック憲章が禁じた“差別”に抵触する」として大会組織委員会などが要望書を送付する事態にまでなっている。

世間では完全に悪者扱いの霞ヶ関カンツリーだが、ゴルフ関係者からは同情の声も上がっている。元『月刊パーゴルフ』編集長でスポーツジャーナリストの角田満弘氏はこう言う。

「五輪会場だから問題になっているだけで、ゴルフ場が男性限定であることはおかしくない。そもそも霞ヶ関カンツリーは同好の士の集まりであるプライベートクラブで、メンバーの人選について第三者が口を出すのはおかしい。女性を受け入れるも受け入れないも、クラブの自由のはずです」

五輪会場に選ばれたばかりに霞ヶ関カンツリーはとばっちりを受けたようにも見えるが、こうした“意見”は表に出しにくい。「男女平等」が錦の御旗となった現代では表立って異論を唱えると“女性差別主義者”のレッテルを貼られかねないからだ。

上智大学の碓井広義教授(メディア論)はこう言う。

「特にテレビの視聴率を支えているのが女性というのもあって、日本のマスコミは『男性限定』を批判の対象にしがちで『女性差別』の事例として取り上げるところがあります。私も『女性専用車両』が登場した時は“なんじゃこりゃ”と思いましたし、痴漢冤罪防止用の男性専用車両だってあっていいじゃないかと思うのですが(笑い)。そうした意見は憚られてしまう」


こうして男性限定だけが叩かれている間に、世の中には映画館の「レディースデイ」や飲食店での「レディースセット」「女子割」など、「女性限定」のサービスが増え続けているのだ。もちろんこれらもサービス提供者の自由である。

(週刊ポスト2017年2月24日号)

見る側を飽きさせない、草彅剛主演「嘘の戦争」

2017年02月18日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、草彅剛主演のドラマ「嘘の戦争」について書きました。


フジテレビ系「嘘の戦争」
「他人をだますには自分をだますんだ」

初めて草彅剛の演技に注目したのは、97年のドラマ「いいひと。」だ。その後、03年から06年にかけて放送された、「僕の生きる道」「僕と彼女と彼女の生きる道」「僕の歩く道」で、その評価は一気に高まっていった。

最近では、15年の「銭の戦争」だ。連帯保証人になったことから、金も仕事も婚約者も失った男の復讐劇。一見おだやかで優しそうな草彅が演じるからこそ、主人公の執念が際立っていた。

この「嘘の戦争」もまた復讐劇だ。30年前に家族を殺された男が詐欺師となり、事件の関係者を次々と破滅させていく。その過程で見せる草彅の“変身”が見ものだ。気弱な失業者も、精悍なパイロットも、いかにもそれらしい。「他人(ひと)をだますには自分をだますんだ」のセリフが草彅の演技論に聞こえる。

事件の黒幕であり、最大の敵でもある実業家(市村正親)。その長男(安田顕)を取り込み、跡継ぎである次男(藤木直人)の追及をかわし、彼らの妹(山本美月)を凋落する草彅。連ドラながら、毎回のエピソードにきちんと決着がつくため、見る側を飽きさせない。このメリハリは、「銭の戦争」と同じ後藤法子の脚本のお手柄だ。

ちなみに、「僕」シリーズの脚本を書いた橋部敦子が現在手掛けているのは、木村拓哉の「A LIFE~愛しき人~」。こちらもまた因縁の勝負である。

(日刊ゲンダイ 2017.02.15)

書評した本: 池澤夏樹 『知の仕事術』ほか

2017年02月17日 | 今週の「書評した本」


「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

旺盛な知力の源泉が明かされる!
池澤夏樹 『知の仕事術』 

インターナショナル新書 799円

完結した個人編集の世界文学全集に続いて、日本文学全集を編んでいる池澤夏樹。

しかも刊行中の『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』全30巻(河出書房新社)では、現代作家による古典の新訳という試みを行っている。たとえば江國香織「更級日記」、古川日出男「平家物語」、そして堀江敏幸「土左日記」といった“キャスティング”は、池澤氏ならではのものだ。

小説や書評などの仕事と並行しながら、これだけの取り組みを展開する知力は、いかにして維持されるのか。そんな疑問に答えたのが、新著『知の仕事術』である。

軸となるのは、本をめぐる具体的なノウハウだ。生きていく上で必要なものとして、著者は「情報」「知識」「思想」の3つを挙げ、それらの「源泉」として本を重視する。

「本の探しかた」では書評の有効性を示し、「本の読みかた」では速読と精読の使い分けから、“知的労力の投資”と呼ぶ古典との付き合いかたまでを語っていく。

また、「モノとしての本の扱いかた」として、6Bの鉛筆による書き込みや小さな付箋の使いかたなどを公開。そして本好きが誰でも直面する、蔵書とスペースの問題についても、「本の手放しかた」の章で詳述している。中でも自分と本の関係を、ストックとフローの2種類で考える方法が興味深い。「いま」必要な本を書棚に置く覚悟だ。

さらに本以外でも、独自の時間管理法やアイデア整理術などが、実践的技術論として大いに参考となる。


東谷 暁 『予言者 梅棹忠夫』
文春新書 1015円

高度成長から情報化社会まで、梅棹は戦後日本社会に関する予言をいくつも的中させてきた。著者は言論人、思想家、文化行政プランナーとしての軌跡を精査し、「あるがままに見定める」ことへの集中が可能にしたとする。師・今西錦司との確執も実に人間くさい。


笠井 潔 『テロルとゴジラ』
作品社 2376円

『テロルの現象学』で知られる著者の最新評論集。中でも表題作がゴジラ級の迫力だ。新旧ゴジラを核爆弾の化身、原発事故の化身、そして戦死者の御霊という3つの観点で解読しながら、この国の社会と政治を撃つ。トランプのアメリカと「本土決戦」も辞さずの覚悟だ。


高山 宏 『見て読んで書いて、死ぬ』
青土社 3456円

「ひとつの本をそれが置かれた環境の中において評するのが、書評家の仕事」だと著者は言う。一冊突破の全面展開。古今東西の書物との連環は、立体的な知の見取り図を思わせる。また監督・俳優北野武を「アートに運慶の果たした役割」とする映画評も深く鋭い。

(週刊新潮 2017年2月9日号)

【気まぐれ写真館】 代々木から見た夕陽 2017.02.16

2017年02月17日 | 気まぐれ写真館

産経新聞で、放送倫理・番組向上機構(BPO)についてコメント

2017年02月16日 | メディアでのコメント・論評


【ZOOM】
BPOが問う報道姿勢…現場に広がる困惑 
Nスペ「人権侵害」 選挙報道にも注文

放送倫理・番組向上機構(BPO)の動向に注目が集まっている。10日に理化学研究所の元研究員、小保方晴子氏らによるSTAP細胞の論文不正問題を特集したNHKの番組を「人権侵害」と断じ、7日には選挙報道のあり方にも注文を付けた。ともに報道の姿勢を問う踏み込んだ決定で、放送界に疑問を投げかけた。番組制作の現場には困惑も広がっている。(放送取材班)

制作への介入不安

BPO放送人権委員会は10日、NHKが平成26年7月に放送したドキュメンタリー番組「NHKスペシャル 調査報告 STAP細胞 不正の深層」に、小保方氏に対する「人権侵害」があったことを認め、同局に再発防止を求める勧告を行った。

NHKスペシャルは調査報道に定評があり、同局の看板番組の一つ。勧告は、取材結果をつなぎ合わせ、視聴者への“メッセージ”に仕上げる「編集」に落ち度があったと指摘、慎重な姿勢を求めた。

その背景には報道の過熱もある。勧告では「若き女性研究者として、不正疑惑の浮上後も世間の注目を集めていたという点に引きずられ、不正の犯人として追及するという姿勢があったのではないか」と指摘している。

立教大の服部孝章名誉教授(メディア法)は「(勧告は)妥当な判断。丁寧な編集が必要ということは、(放送界に)警告を発するものといえる」と話す。

一方、制作の現場に目を向けると、「人権侵害」の指摘は、筆先を鈍らせかねない重みを持つものである。上智大の碓井広義教授(メディア論)は「番組制作の現場の萎縮が危惧される」と懸念する。

実際、同局のある番組関係者は「編集内容に上層部からの介入が多くなりそう。番組制作に支障が出るのではないかと心配している」と不安を口にした。

見解に具体性なく

7日にBPO放送倫理検証委員会が公表した、昨夏の参院選と東京都知事選のテレビ報道をめぐる意見書も制作現場を戸惑わせている。

意見書は、「公平性を欠いている」という視聴者の意見を受け委員会で審議した上でまとめられたもの。BPOはここでもNHKと民放各社の番組制作の手法に反省を促した。選挙報道について、ストップウオッチなどを使い出演時間を管理したり、発言の回数を数えたりする現状の「量的公平性」を批判し、「質的公平性」への転換を求めたのだ。しかし、その「質」について意見書は、「取材した事実を偏りなく報道し、明確な論拠に基づく評論をする」と曖昧な表現にとどめている。

「『質』とはいったい何なのか。もう少し具体的に言及してほしかった」。民放の番組関係者はこう明かす。

求められる役割は

「放送界の自浄作用を促してきた」。BPOの放送倫理検証委の川端和治委員長は繰り返しこう強調してきた。BPOの役割は法律家など有識者らによる放送界の第三者機関として、番組による人権侵害などの被害救済が中心。近年、「やらせ」など過剰な演出に反感を持つ視聴者は多く、番組への厳しい姿勢は避けられない風潮がある。こうした中、「取材対象や出演者の権利」と「表現や報道の自由」をてんびんにかける「裁判所」のような役割がクローズアップされている。

10日には、沖縄の米軍基地反対運動を扱った放送に批判が出た東京MXテレビの「ニュース女子」の審議入りを発表するなど、さらに関心は高まりそうだ。

BPOが置かれた現状について、上智大の碓井教授は「メッセージが抽象的すぎると制作現場には伝わりにくく、具体的すぎると表現の幅を狭めてしまうため、より慎重なバランス感覚が求められる。委員が現場の放送関係者らと日常的に意見交換できる場を増やすなど工夫が必要だ」と指摘している。

                   ◇

【用語解説】放送倫理・番組向上機構(BPO)
NHKと民放連が平成15年に設立した放送界の第三者機関。視聴者から苦情を受け、それぞれ7~9人の有識者で構成する3つの委員会で検証し、放送局に対して再発防止などを勧告する。放送倫理検証委で取材手法など、放送人権委で人権侵害の有無など、青少年委で未成年の出演者の扱いなどを検証する。

(産経新聞 2017年2月14日)