碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

日刊ゲンダイで「10.31選挙特番」キャスターについて解説

2021年10月31日 | メディアでのコメント・論評

 

 

民放各局「10.31選挙特番」

メインキャスター

“NHK出身”だらけのふがいなさ

 

衆院選の投開票日(10月31日)が目前に迫る中、テレビ各局も当日は「選挙特番」の特別編成で挑むが、その布陣も明らかになっている。

選挙特番は各区の「当確情報」をもとに、陣営からの中継や党関係者へのインタビュー、有識者による解説などで構成される。放送はおおむね投票終了の夜8時から一斉にスタート。

NHK(衆院選開票速報2021)は、瀧川剛史アナ(40)、上原光紀アナ(30)以下、同局の記者、アナウンサーがフル稼働。放送ジャーナリストの小田桐誠氏はこう話す。

「やはりNHKは、民放に比べて選挙報道に圧倒的なお金をかけている。出口調査や取材する記者の数などに大きな差があります。陣営によっては民放で『当確』が出ても、NHKで『当確』が出るまではバンザイしないところもある」

“横綱相撲”のNHKに対して、民放各局はというと、日本テレビ系は有働由美子(zero選挙)、テレビ朝日系は大越健介(選挙ステーション2021)、TBS系は爆笑問題・太田光(選挙の日2021 太田光と問う! 私たちのミライ)、フジテレビ系は宮根誠司と加藤綾子(Live選挙サンデー)、そしてテレビ東京系は池上彰(池上彰の総選挙ライブ)。なんとメインに座っているのは、5局中3局が“NHK出身者”なのである。

■「安全運転の安心感」

「『ニュースステーション』の久米(宏)さんにしろ、『NEWS23』の筑紫(哲也)さんにしろ、昔は民放も局ごとのカラーがハッキリしていました。安倍政権の頃から、自民党が選挙報道に“公正中立”を要請するなどプレッシャーをかけることが顕著になる中、メインにNHK出身者を据えることは、局にとっては、安全運転で番組を進められるという安心感があるのだと思います。しかし民放にとっては、人材不足は否めません」(小田桐誠氏)

こうした“安全パイ”起用が増えてきた背景についてメディア文化評論家の碓井広義氏はこう話す。

「確かに半数以上がNHK出身者というのは、初めてのケースだと思います。はたして民放は、自前のキャスターを『育ててこなかった』のか、『育てられなかった』のか。しかしその実、『育てる気はなかった』のではないかと思います。そもそも『報道』も、視聴率を取るという放送ビジネスの一環であることは否定できず、顔と名前が売れていて、お客さんが付いている人を引っ張ってくる方が手っ取り早いからです。しかしそこには、『局としての報道ジャーナリズムの責任をどう担保するか』という課題は歴然と残ります」

碓井氏は続ける。

「各局は、NHK出身の有働さん、大越さん、池上さんの3人に対して、“舌禍事件”にならない範囲で、世間の耳目を集める突っ込んだ発言をして欲しいという思惑があるでしょう。一方、『選挙特番』は3人にとっても格好のアピールの機会で、自らの今後を占う“選挙”の場でもあるんです。また、TBSは太田さんがメインで初登板となりましたが“他と違うことをやってくれるのではないか”という期待感がある。党首へのインタビューなどで、どんな突っ込みや揺さぶりを繰り出すのかに注目です」

前出の小田桐氏も、「ズバリ直球で切り込む池上さんと、太田さんがどんな変化球を投げるのかに注目したい」と話す。

民放のNHK頼みはみっともないし、情けない限りだが、その中でどう結果を出すのか。キャスター陣も腕の見せどころだが。

(日刊ゲンダイ 2021.10.30)


言葉の備忘録245 成功する・・・

2021年10月30日 | 言葉の備忘録

 

 

 

成功するために

やるんじゃ

ないのよ、

納得するために

やるのよ、

人生は。

 

 

原作・燃え殻×漫画・おかざき真里

「あなたに聴かせたい歌があるんだ」#5

 


【気まぐれ写真館】 我が家の「もみじ」も紅葉中

2021年10月29日 | 気まぐれ写真館


「ドクターX」第7シーズンは中園ミホの脚本が実にうまい

2021年10月28日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「ドクターX」第7シーズン

中園ミホの脚本が実にうまい

 

第7シーズンを迎えた、米倉涼子主演「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)。

第1話の終わりで、なんと大門自身が感染症に陥ったので驚いた。「え、どうするの?」と思っていたら、第2話は「3ヶ月後」の設定。大門もほぼ復活していた。このスピード感がいい。

とはいえ、なかなか手術をさせてもらえない大門はじりじりする。そんな時、外科分院長の蛭間(西田敏行)が通う銀座のクラブのママ(夏川結衣)が入院。手術のチャンスが訪れる。

しかし、院長代理の蜂須賀(野村萬斎)が執刀を命じたのは、スーパー脳外科医の興梠(こうろぎ、要潤)だった。   

新たな敵、そして新たなライバルの出現。シリーズ物の視聴者を飽きさせない仕掛けだが、脚本の中園ミホが実にうまい。

しかも患者の状態を正確に把握していなかった興梠は、手術の手が止まってしまう。そこに登場するのが大門だ。リリーフエースのようなその姿はやはりカッコイイ。

また手術シーンでは、以前よりも大門の手元や患部を多く見せる工夫がなされ、臨場感がアップした。

一方、海老名(遠藤憲一)も加地(勝村政信)も相変わらず蛭間の腰巾着で、「御意!」を連発。

大門が所属する名医紹介所の「あきらさん」こと神原(岸部一徳)のメロンと請求書と一人ダンスもいつも通りだ。変化と定番の絶妙なバランスがこのドラマを支えている。

(日刊ゲンダイ 「TV見るべきものは!!」2021.10.27)


【気まぐれ写真館】 みちまるくんソーラーライト

2021年10月27日 | 気まぐれ写真館

NEXCO中日本のキャラクター「みちまるくん


【気まぐれ写真館】 ふるさとにて

2021年10月26日 | 気まぐれ写真館

信州2021秋


大胆アレンジ「日本沈没」  国民を守る 主人公の信念

2021年10月25日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評

 

 

<週刊テレビ評>

大胆アレンジ「日本沈没」 

国民を守る 主人公の信念

日曜劇場「日本沈没-希望のひと-」(TBS系)は大胆なドラマだ。何より主人公が環境省の役人、天海啓示(小栗旬)であることに驚いた。深海潜水艇の操縦士、小野寺俊夫ではないのだ。

1973年に出た小松左京の原作小説はもちろん、映画やドラマも主人公は当然のように小野寺だった。ちなみに小野寺役は、73年の映画が藤岡弘(当時)。74年のドラマ(TBS系)は村野武範。そして2006年の2度目の映画化では草なぎ剛が演じていた。

原作のある映画やドラマが、ストーリーや登場人物についてさまざまなアレンジを行うのは普通のことかもしれない。しかし、主人公を原作とは全く別の人物にしてしまうのは異例の処置である。なぜなら、主人公の人物像は物語全体の構造に関わるからだ。

つまり主人公の変更は、原作通りでは描けない物語に挑む決断ということになる。見えてくるのは国家的危機に際して「誰が国民を守るのか?」というテーマだ。

ドラマの設定は小説から約50年後の2023年。田所博士(香川照之)はいるものの、丹波哲郎が演じた篤実な首相も、島田正吾が扮(ふん)した政財界の黒幕もいない。

脅威のタイプは異なるが、同様のテーマを描いた作品に映画「シン・ゴジラ」(16年)がある。主人公は政権党の衆議院議員で内閣官房副長官だった矢口蘭堂(長谷川博己)。抜群の統率力を発揮してゴジラに対処していった。

一方、天海は環境省所属の官僚だ。矢口のように直接、国を動かすことはできない。可能な限りの手段を使って為政者たちに働きかけていくが、そこに「もどかしさ」を感じるのは天海だけではない。見る側も同じだ。

しかし、このドラマ独特の現実感がそこにある。国と国民の間に立つ者としての天海。

未曽有の危機の到来を隠そうとする人たちに向かって言う。「確かに関東沈没はこの国にとって不都合極まりない話だ。だからといって、その議論に蓋(ふた)をしていいわけがない!」。

また、そんな天海を抑え込もうとする者にも、「私は今、日本の未来の話をしてるんです!」と一歩も引かない。

この場面を見ていて、18年3月に森友学園問題の公文書改ざんを苦に自死した、近畿財務局職員・赤木俊夫さんの言葉を思い出した。

妻・雅子さんの手記によれば、生前の俊夫さんは「私の雇用主は日本国民なんですよ。その国民のために仕事ができる国家公務員に誇りを持っています」と知人に語っていたそうだ。

守るべきは「国」ではなく「国民」。そう信じて動こうとする天海を応援したくなってくる。

(毎日新聞 2021.10.23 東京夕刊)


【気まぐれ写真館】 10月の多摩川夕景

2021年10月24日 | 気まぐれ写真館


紀伊國屋書店「玉川高島屋店」にて

2021年10月23日 | 本・新聞・雑誌・活字

「『北の国から』黒板五郎の言葉」平積み、感謝です!

 

さらに棚差し、感謝です!

 

文庫コーナーの「少しぐらいの嘘は大目に」も、感謝です!

 


サンデー毎日に、「名バイプレーヤー女優」について寄稿

2021年10月22日 | メディアでのコメント・論評

サンデー毎日 2021.10.31号

 


2021年10月21日の合掌

2021年10月21日 | 日々雑感


【気まぐれ写真館】 ほぼ中秋の名月

2021年10月21日 | 気まぐれ写真館

2021.10.20


江口のりこ 「SUPER RICH」でゴールデン・プライム帯の連続ドラマ初主演

2021年10月21日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

江口のりこ「SUPER RICH」

ゴールデン・プライム帯の連続ドラマ初主演

座長の経験は大きな財産となる

 

今年4月、深夜の「ソロ活女子のススメ」(テレビ東京系)で、民放ドラマ初主演を果たしたばかりの江口のりこ。

この秋は「SUPER RICH」(フジテレビ系)で、ゴールデン・プライム帯の連続ドラマ初主演である。

江口が演じる氷河衛は電子出版がメインのベンチャー企業経営者だ。資産家の両親を早くに失ったが、これまでお金に困った経験はなかった。

ところが、学生時代からの友人であり、共同経営者でもある一ノ瀬亮(戸次重幸)が原因で、会社は倒産の危機に陥る。そんな時に出会ったのがインターン志望の苦学生、春野優(赤楚衛二)だ。

衛はどうやって会社を守るのか。優とはどんな関係になっていくのか。期待感十分の初回だった。

何より江口の堂々たる演技に感心した。たたずまいも表情も主演女優のそれになっているのだ。

今回の主演が実現した背景に、予定されていた他の女優の辞退があったという。しかし、懐かしの小島よしお風に言えば、そんなの関係ねぇ!

江口だからこそ、多くの人が「見てみよう」と思ったし、そこに「江口ならでは」の個性的なヒロインが現出していた。降板した女優が、このドラマを見て悔しがればいいだけのことだ。

主演はゴールではないが、主演でなければ見えない風景もある。ドラマ全体を牽引する座長の経験は、江口にとって大きな財産となるはずだ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.10.20)


「北の国から」幻の新作

2021年10月20日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評

 

 

「北の国から」幻の新作

 

連続ドラマ「北の国から」(フジテレビ系)が始まったのは1981年10月9日。翌年3月に全24話が終了した後も、スペシャル形式で2002年まで続いた。今年は放送開始40周年に当たる。

約20年の間に、壮年だった黒板五郎(田中邦衛)は60代後半を迎えた。また小学生だった純(吉岡秀隆)や螢(中嶋朋子)は大人になっていき、仕事、恋愛、結婚、さらに不倫までもが描かれた。

ドラマの中の人物なのに、見る側はまるで親戚か隣人のような気持ちで黒板一家を見守った。この「時間の共有」と「並走感」は、「北の国から」の大きな魅力だ。

最後の「2002遺言」から、さらに20年の歳月が流れた。だが、多くの人にとって、物語は今も続いているのではないだろうか。

思えば、確かに五郎は遺言を書いていた。しかし亡くなったわけではなかった。純や螢もこの遺言書を目にしていない。

あれからずっと五郎は富良野で、そして子どもたちはそれぞれの場所で元気に暮らしている。見る側はそんなふうに想像しながら20年を過ごすことが出来たのだ。

実は今年、倉本聰は「北の国から2021」にあたるシナリオを書き上げていた。読ませてもらうと、そこでは黒板一家が東日本大震災をどのように体験し、昨年からのコロナ禍とどう向き合っているのかが明かされている。

札幌で医療廃棄物の処理を担っている純。福島で看護師として働いている螢。2人の仕事場はコロナ対応の最前線だ。

その一方で、五郎は自身の「最期」を考え始めていた。望んでいるのは「自然に還ること」だ。今年3月、五郎を演じてきた田中邦衛が亡くなった。主演俳優の不在を承知の上で、新たな「五郎の物語」の構築に挑んだ倉本に敬意を表したい。

この新作を倉本はフジテレビに渡したが、最終的にドラマ化は実現しなかった。もちろん様々な事情が存在したのだろうが、視聴者にとっても、フジテレビにとっても残念な判断だったと思う。

ドラマは時代を映す鏡だ。「北の国から2021」が見せてくれるはずだった、この国の過去20年と現在。黒板五郎という国民的おやじが選択した「人生の終(しま)い方」。幻の新作がドラマとして流される日を待ちたい。

(しんぶん赤旗「波動」2021.10.18)

 


柳楽優弥主演『二月の勝者』は、小学生版『ドラゴン桜』ではない!

2021年10月19日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

柳楽優弥主演『二月の勝者』は、

小学生版『ドラゴン桜』ではない!

 

『二月の勝者―絶対合格の教室―』(日本テレビ系、土曜よる10時)の第1話。
 
その冒頭を見て、「やるなあ」と思いました。
 
なぜなら、ファーストシーンが「入塾説明会」だったからです。
 
「桜花ゼミナール」吉祥寺校の校長に抜擢された黒木蔵人(柳楽優弥)が、親たちに向って言いました。
 
「中学受験は甘くありません!」
 
そして、
 
「覚悟は出来ていますか?」
 
これは親の「覚悟」を指しています。
 
何しろ中学受験は、高校受験や大学受験とは大きく異なるものです。
 
本人がまだ小学生ということもあり、いろんな意味で、親が深く関わっていく。
 
もっと言えば、親の価値観や考え方が大きく影響するのが中学受験です。まさに、親の「覚悟」が必要になる。
 
中学受験を成功させるのに不可欠なものは、
 
「父親の経済力と母親の狂気」
 
であると黒木。なかなか強烈です。
 
このドラマは、大学受験を扱っていた『ドラゴン桜』(TBS系)のように、生徒たちを軸に展開されるだけではありません。
 
複数の「家庭」、そして「親と子の関係」に踏み込んだ物語にならざるを得ない。いや、だからこそ面白いドラマになりそうなのです。
 
ポイントは、「静かな狂気」といった雰囲気の主人公、黒木のキャラクターにあります。発想と言葉が刺激的なのです。
 
受験塾と学校との違いを指して、
 
「(塾は)子どもの将来を売る場所です!」
 
そのうえで、
 
「凡人こそ中学受験をすべきでなんです!」
 
という言葉も説得力がありました。
 
息子をサッカー選手にしたいと夢見る父親に対して、小学生のサッカー人口とプロの新人選手の人数を示し、その実現の確率と志望校に入れる確率を比較していったのです。
 
ちなみに、この「凡人こそ中学受験」では、『ドラゴン桜』(TBS系)で桜木(阿部寛)が言っていた、「バカとブスこそ東大に行け!」を思い出しました。
 
また黒木は、「不可能を可能にする、それが中学受験」とも言っています。
 
実際の中学受験では、子どもたちが「予想を超える飛躍」を見せることがあるのも事実です。
 
おそらくドラマでは、その「きっかけ」も描かれたりするはずで、特に高学年の小学生を持つ親は見逃せないかもしれません。
 
黒木のちょっと露悪的でシビアな「もの言い」は、さらに続きます。
 
「親は金脈(スポンサー)」
 
「父親はATM(現金自動支払機)」
 
元中学教師で新任塾講師の佐倉麻衣(井上真央)に向って、
 
「(塾講師は)教育者ではなく、サービス業です!」
 
予告では、「塾は営利目的の企業」とも言い放っていました。
 
黒木はなぜ、そこまで断言するのか。逆に、心の中とは裏腹の、何か目的があっての自己演出なのか。そのあたりも興味深いところです。
 
中学受験をする小学6年生は、関東全体で約2割。そのうち第1志望の中学校に合格できるのは、約3割。確かに、甘くない競争です。
 
このドラマ、「中学受験」や「受験産業」の是非や功罪を論じる作品ではありません。
 
しかし、物語の進展とともに、その「見えざる実相(リアル)」も徐々に明かされていくのではないでしょうか。
 
柳楽優弥さん、井上真央さんはもちろん、塾の社長を演じる岸部一徳さんも役柄にピタッとはまっており、この稀有な「中学受験ドラマ」を駆動させています。
 
原作は高瀬志帆さんの同名漫画。柳楽さん、漫画の黒木に激似です。
 
脚本は日曜劇場『小さな巨人』(TBS系)などの成瀬活雄さん。前述の「入塾説明会」の見せ方も含め、見事な構成です。
 
『二月の勝者』は、単なる小学生版『ドラゴン桜』ではありません。
 
この秋、話題の大作やヒットシリーズが並ぶ中で、大化けするかもしれない1本です。