碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

書評した本: 大沢在昌 『爆身』ほか

2018年07月31日 | 書評した本たち


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


大沢在昌 『爆身』
徳間書店 2052円

主人公の名はキリ。フリーのボディガードだ。仕事の依頼人と待ち合わせたが、相手は目前で爆死してしまう。被害者にキリを紹介した大物フィクサーから、ことの真相を探るよう依頼を受ける。謎の古武術。宗教集団。「呪い」をめぐって水面下での死闘が始まる。


楠木 新 
『定年準備~人生後半戦の助走と実践』

中公新書 886円

昨年話題となった『定年後』の続編。人はいきなり変わることはできない。だから定年前の助走が必要だと著者は言う。魅力的な先人に学びながら、「もう一人の自分」を見つけるのだ。同時に地域と家族にも目を向けておくべし。人生の時間を大切にしたくなる。


穂村 弘 『水中翼船炎上中』
講談社 2484円

なんと17年ぶりの最新歌集。SMAPの曲を思い出させる「夜ごとに語り続けた未来とは今と思えばふわふわとする」。記憶の中で昭和の家庭がよみがえる「ちちははが微笑みあってお互いをサランラップにくるみはじめる」。想像力を刺激する328首が並んでいる。

(週刊新潮 2018年7月12日号)


【気まぐれ写真館】 パイロットのピカチュウだ!

2018年07月31日 | 気まぐれ写真館
新千歳空港限定バージョン

札幌で「キュードリームジャンボリー 2018」

2018年07月31日 | テレビ・ラジオ・メディア













【気まぐれ写真館】 北の街も炎天下

2018年07月31日 | 気まぐれ写真館
札幌市中央区

日刊ゲンダイで、NEWS小山「キャスター」についてコメント

2018年07月30日 | メディアでのコメント・論評


未成年飲酒のNEWS小山慶一郎
10月改編でキャスター降板も

未成年との飲酒で6月7日に活動自粛を発表した「NEWS」の小山慶一郎(34)が、10月改編で「news every.」(日本テレビ系)のキャスターを“降板”することになりそうだ。

小山は6月27日には芸能活動を再開。「MUSIC FAIR」(フジテレビ系)、「NEWSな2人」(TBS系)の自粛前に行われた事前収録番組に次々と出演し、20日には、NHKの「ザ少年倶楽部プレミアム」(BSプレミアム)でテレビ本格復帰を果たした。

今はメインキャスターを務めている日テレの「news every.」の復帰がいつになるのかに注目が集まっているが、ひっそりと番組から姿を消すかもしれない。わずか20日間の謹慎で小山を復帰させたジャニーズ事務所の対応には、非難が殺到。ネット上には「早い」「ふざけるな」という声が寄せられた。

「小山の復帰に批判的な意見が目立つのは、事務所の“復帰ありき”の姿勢があからさまだからでしょう。8月11、12日にはNEWSの15周年記念コンサートがあるため、そこから逆算して復帰時期をはじき出したとしか思えません。NHKやTBSが次々と小山を番組復帰させる中、ペンディングしている日テレの姿勢は評価に値します」(マスコミ関係者)

日テレはジャニーズのタレントを16年連続で「24時間テレビ 愛は地球を救う」に起用し続けてきた。ドラマやバラエティーでもブッキングしている。それでも、今回はこのまま小山を降板させる判断を下す可能性もあるという。

「未成年と飲酒した人物にメインキャスターを続行させるのは不適切ではないか、という声が報道局を中心に上がっているのです。番組スポンサーからも『夕方のニュースの顔にはふさわしくない』と復帰には慎重です」(日テレ関係者)

「news every.」のホームページには依然、キャスターとして小山の写真と紹介文が掲載されている。日テレに小山の復帰について問い合わせると、「今後の出演について、決まっていることはありません」(広報部)と回答があった。

上智大の碓井広義教授(メディア文化論)がこう言う。

「コンプライアンスに厳しい時代です。一歩間違えると厳しいバッシングを受けることになりかねません。日テレが小山氏の番組復帰に慎重になるのも当然です。その上で、10月改編での降板は区切りがいいし、悪目立ちしないので、十分にあり得ると思います」


身から出たサビとはいえ、キャスター復帰はなさそうだ。

(日刊ゲンダイ 2018年7月30日)


HTB北海道テレビ「イチオシ!モーニング」

2018年07月29日 | テレビ・ラジオ・メディア
2018.07.28






















<ときどき記念写真> HTBの屋上で

2018年07月29日 | テレビ・ラジオ・メディア
今年9月に移転するHTB 電波塔もこの夏まで

HTB北海道テレビ「イチオシ!」

2018年07月28日 | テレビ・ラジオ・メディア
2018.07.27










【気まぐれ写真館】 札幌 気温31℃

2018年07月28日 | 気まぐれ写真館
2018.07.27

脚本家・倉本聰の新作『やすらぎの刻(とき)~道』とは!?

2018年07月27日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


脚本家・倉本聰が取り組んでいる
新作ドラマ『やすらぎの刻(とき)~道』とは!?

脚本家・倉本聰さんが現在、『やすらぎの郷』(17年、テレビ朝日系)の続編となる『やすらぎの刻(とき)~道』(19年4月から1年間の放送、同)の執筆に取り組んでいます。しかも、この新作で描かれるのは、老人ホーム「やすらぎの郷」の“その後”の物語だけではありません。

筆を折っていた主人公、脚本家の菊村栄(石坂浩二)が発表のあてもないまま、“新作ドラマ”を書き始めます。菊村の頭の中だけで作られていく物語であり、倉本さんはこれを「脳内ドラマ」と呼んでいます。『やすらぎの刻~道』では、やすらぎの郷の現在だけでなく、この脳内ドラマも映像化されていくのです。

物語は昭和11年から始まります。主人公は山梨の山村で生まれ育った少年。昭和10年生まれの倉本さん本人より、ちょっと年上ですね。この設定について倉本さんに問うと、「元々20歳だった徴兵年齢がどんどん下がり、最後は17歳までいった。終戦の時、僕は11歳で召集の恐怖はなかったけれど、2、3歳上の人たちにはあったはず。その一番怖いところに差しかかる年代を題材にしたかった」。

また脳内ドラマには、物語上の重要な場所として満州が出てきます。

「満州では開拓民が集団自決したり、ソ連兵にひどい目に遭わされたりしました。その末裔が日本に逃げてきて山奥の村でひっそり暮らしている。そういう女性を、たとえばマヤ(加賀まりこ)にやらせてみたい」と倉本さんは言います。

前作の『やすらぎの郷』では、姫こと九条摂子(八千草薫)が亡くなり、及川しのぶ(有馬稲子)は認知症となって去り、三井路子(五月みどり)もスタッフと結婚していなくなってしまった。さらに井深涼子役の野際陽子さんも逝去しました。

しかし、脳内ドラマにはこうしたメンバーもキャスティングされていきます。なにしろ脚本を書いているのは菊村なので、配役のイメージも自由自在なのです。視聴者は、親しんできた懐かしい人たちと、前作とは違った形で再会できるかもしれません。

倉本さんによれば、『やすらぎの刻~道』のキーワードは、「原風景」です。「子供の頃に遊んで帰った、田舎のどろんこの一本道がある。やがて舗装されると人々が町へと出ていく。故郷は過疎になり、道にはペンペン草が生えてくる。それが登場人物たちの原風景。いつかそこに帰っていきたいという老夫婦を書きたい」そうです。

場所も時代も違う2つの物語が同時進行して、しかもそれが入れ子細工になっていく。通常のドラマとは大きく異なっており、いわば新たなドラマの形の提示だとさえ言えるでしょう。

1年間、毎日放送される帯ドラマですから、全体で約250本。83歳の現役作家による、文字通り命がけの挑戦です。

<ときどき記念写真> 春学期「期末試験」終了!

2018年07月27日 | 大学
試験が終わったゼミ生が「おつかれさまです!」

ドラマ「高嶺の花」の今後 野島伸司の“仕掛け”に期待

2018年07月26日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



日本テレビ系「高嶺の花」
脚本家・野島伸司は何をどこまで
描こうとしているのか

「また変わったことを始めたなあ」というのが第一印象だ。石原さとみ主演「高嶺の花」(日本テレビ系)である。

主人公の月島もも(石原)は華道家元の長女。実力と美貌の持ち主だが、婚約者の二股が判明し、結婚式当日にご破算となる。大きなショックを受けたももが出会ったのは、いわゆる3髙でもイケメンでもない、小さな自転車店の店主・風間直人(峯田和伸)。果たして高嶺の花は地上の花となるのか、という展開だ。

ももは直人やその仲間たちに、自分はキャバ嬢だと嘘をついている。石原のハイテンションなキャバ嬢ぶりは、凜とした次期家元の姿との対比も鮮やかで、その演技は自在な振れ幅を見せている。

このドラマでは、ももの今後が気になるのはもちろんだが、予想以上に直人という人間が興味深い。性格は温和で優しい。誰にでも親切。20年も介護してきた母親(十朱幸代)をみとったばかりだ。

しかし、直人は単なる「いい人」なのか。何しろ脚本が野島伸司である。直人の「無垢なる魂」をてこにして、人間の本性を暴くような仕掛けが待っているのではないかと期待してしまう。

さらに「家元」という背景の設定にも不穏なものを感じる。家元制は天皇制に通じているからだ。まさに高嶺の花の方々の結婚問題がワイドショーをにぎわせる昨今、野島は何をどこまで描こうとしているのだろう。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」 2018年7月25日)

【気まぐれ写真館】 炎天下

2018年07月26日 | 気まぐれ写真館
ソフィアタワー

4月~6月期の連ドラで「熱かった男」たち

2018年07月25日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム


4月~6月期の連ドラで目をひいた、
とても「熱かった男」たち


● テレ東「宮本から君へ」の池松壮亮さん

懐かしいタイトル。テレビ東京系のドラマ25「宮本から君へ」です。新井英樹さんの原作漫画が「モーニング」に連載されていたのは1990年代前半。まだバブルの余韻も残る時期に、汗くさくて泥くさくて暑苦しい新人営業マンの物語がヘンに新鮮でした。

主人公は文具メーカー「マルキタ」営業部の宮本浩(池松壮亮)。仕事も恋愛も不器用で、力が入りっぱなしの空回りが続きます。仕事では結果が出ないし、受付嬢の美沙子(華村あすか)との恋愛も一筋縄ではいきません。

しかしドラマの後半戦に入って、宮本は俄然仕事に燃え始めました。ライバル会社の益戸(浅香航大)や仲卸会社の島貫部長(酒井敏也)といった立ちはだかる壁の存在が効いて、一気に「仕事ドラマ」としてヒートアップしていったのです。

中でも、かつて原作でも話題となった名場面「怒涛の土下座」は迫力満点でした。必要な見積りを書いてくれない島貫に対し、街中で土下座する宮本。歩み去ろうとする島貫の前に回り込み、土下座を繰り返す姿は、はなはだみっともなくて、とてつもなくカッコよかったです。

アスファルトの路面にこすりつける宮本の頭は、仕事上の失敗を反省した丸坊主。原作通りとはいえ、またそれが俳優としての“仕事”とはいえ、電気バリカンで自分の髪の毛を刈り込んだ池松さんの役者根性に拍手です。その熱は最終回まで途切れませんでした。

● 日テレ「正義のセ」の安田顕さん

「正義のセ」(日本テレビ系)の主演は吉高由里子さん。近年は翻訳家(朝ドラ「花子とアン」)や脚本家(日テレ系「東京タラレバ娘」)などを演じてきたわけですが、今回は検事でした。ヒロインの竹村凜々子は下町の豆腐屋で育った庶民派で、融通がきかない上に感情移入も激しい女性です。

原作は阿川佐和子さんの同名小説ですね。阿川さん初の小説「ウメ子」は坪田譲治文学賞受賞作品ですが、主人公のウメ子はいつも勇敢な行動で周囲を驚かしてばかり。そんな少女が、正義感いっぱいの大人になったのが凜々子だと思えばいいのです。当初「検事に見えるかな?」と心配した吉高さんも、回を重ねるうちに凜々子をすっかり自分のものにしていました。

毎回、様々な案件を扱ってきました。たとえば女子高生に対する痴漢事件では、凜々子は被害者に取り押さえられた男(東幹久)を起訴しますが、別に真犯人がいたことが判明。つまり冤罪です。しかし粘りの捜査の結果、男は他の女子高生(AKB48の向井地美音)を狙ったことがわかります。

自分を責めて、一度は検事を辞めようかと悩んだ凜々子を、「あなたはいつも被害者のために闘っています」と言って励ましたのは事務官の相原(安田顕)でした。このドラマでは、安田さんの功績がとても大きかったと思います。時々パターンに見えてしまうこともある、吉高さんの表情や台詞回しを補う、よく効く解毒剤みたいな役割を果たしていたからです。

ふだんは、この変わり種の検事にやや手を焼きながらも、正義を全うしようとする凜々子を大事なところでしっかり支えてくれた相原。安田さんは、表向きこそクールに、冷静に行動しようとする相原を、その表情の変化で感情を熱く表現していました。いい脇役は、主役を盛り立てながら、きちんとその存在感を示すもの。今回の安田さんが、まさにそれでした。

書評した本: 倉本 聰 『「北の国から」異聞』 

2018年07月24日 | 書評した本たち


倉本 聰 
『「北の国から」異聞 
  ~黒板五郎独占インタビュー!』

講談社 1512円

倉本聰脚本『北の国から』(フジテレビ系)の放送が始まったのは1981年。東京から故郷の北海道・富良野に2人の子供を連れて戻ってきた黒板五郎(田中邦衛)が、廃屋となっていた実家で暮らし始める。

以来、『北の国から2002遺言』までの約20年、視聴者は黒板一家を遠い親戚か知人のように見守り続けた。

まず内容が重層的だった。家族の危機と再生の物語というだけでなく、仕事、子育て、高齢化社会、地域格差といった多様なテーマが盛り込まれていた。まさに“社会の合わせ鏡”としてのドラマだったのだ。

あれから16年。黒板五郎は生きていた。80歳を超えた今も富良野で独り暮らしだ。突然訪れた大新聞の論説委員が、五郎の近況と当時の話を聞きたいとお願いする。

「でも、それってフィクションじゃん」と思う人が大半かもしれない。しかし東京から富良野に移住してきた倉本にとって、五郎はもう一人の自分だ。『北の国から』はドラマの形を借りた一種のノンフィクションであり、そこで描かれる人間の姿や社会の実相もリアルなものだった。

このインタビューには北海道の自然との格闘、純(吉岡秀隆)の恋人だったシュウ(宮沢りえ)との温泉混浴など、『北の国から』の秘話が満載だ。

だが、それ以上に耳を傾けたいのは五郎が時折り語る体験的哲学だろう。五郎いわく、「“便利”ちゅうのはオイラの考えでは人間がサボルちゅうことだ。そいでサボリ代にいちいち金を払う。これが現代の文明社会だ」。

またいわく、「知識と金で、前例にならってつくるのが作。金がなくても智恵を使って、前例にないものを産み出すのが創」。8歳の螢(中嶋朋子)は、既にひとりで創をやっていた。

83歳になった倉本は現在、来年4月から1年間放送する新作『やすらぎの刻(とき)~道』(テレビ朝日系)を執筆中だ。前例のないドラマをつくる「創」の挑戦を続けている。

(週刊新潮 2018年7月12日号)