碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

放送35周年、芸術祭大賞ドラマ『波の盆』をめぐって

2018年09月30日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム



西武スペシャル『波の盆』(日本テレビ系)が放送されたのは、1983年秋のことです。明治期にハワイ・マウイ島に渡った、日系移民1世が主人公のドラマでした。

移民1世はサトウキビ畑での過酷な労働に耐え、家庭を持ち、子どもたちを育ててきました。しかし1941年、日本軍の真珠湾攻撃により、その運命が大きく変わります。

また成人した2世たちは、アメリカ軍の日系人部隊として、ヨーロッパ戦線などで厳しい戦いを経験しました。

このドラマは、移民1世の老人である山波公作(笠智衆)が、妻ミサ(加藤治子)を亡くした新盆の日、その1日の物語です。

日本で亡くなったはずの四男・作太郎(中井貴一)の娘、つまり公作の孫だという若い女性・美沙(石田えり)が突然訪ねてきたことによって、公作の中で、自身が歩んできた「過去」と80年代の「現在」が交錯していきます。

脚本/倉本聰、演出/実相寺昭雄、制作/日本テレビ、テレビマンユニオン。この年の「芸術祭」大賞を受賞しました。


2列左から3人目が実相寺監督。
前列中央に笠さんと加藤さん、右端が碓井。



脚本家・倉本聰さんに訊く、ドラマ『波の盆』

今年は『波の盆』の放送35周年にあたります。また、演出した実相寺監督の13回忌でもあります。

脚本を書いた倉本聰さんに、あらためてこの作品についてうかがってみました。

――そもそも、ハワイの日系移民の話を書こうとしたのは、なぜですか。

「ハワイの日系移民に広島県人が多いのは前から知ってたんですよ。じゃあ、その人たちは故郷の広島に原爆を落とされたことをどう考えてるんだろうと気になっていました。それから終戦直後に進駐軍が入ってきた時、たくさんの日系2世が通訳でついてきた。あの人たちはどこから来たんだろうっていうのも頭の中にありましたね」

――撮影当時のハワイ州知事はジョージ・アリヨシ。2017年にはホノルル空港がダニエル・K・イノウエ(元米陸軍将校、上院議員)国際空港と名を変えました。ハワイと日系移民の間には長い、そして波乱の歴史があります。

「戦時中、米国本土では多くの日系移民が収容所に入れられました。ハワイでは収容所には行かなかったものの監視下に置かれた。それでいて日系2世は米国人だから、米軍人として戦争に参加したわけです。1世はつらかっただろうなっていう思いがあって、そこらへんが一番描きたかったところですね」

――シナリオを書き出す前、倉本さんはマウイやホノルルで綿密な取材を重ねていました。

「まだ移民1世も健在だったので、何人もの日系のお年寄りに会って話を聞いたし、1世が働いていたサトウキビ農園や、日系人の442部隊のことも調べていきました。
 ロケをしたラハイナ浄土院。住職にあたる原源照先生には本当にお世話になった。地元の日系の方々にもね。時期が違うのに盆ダンス(ハワイ流の盆踊り)や海に灯籠を送り出す精霊流しも再現していただいた。
 浄土院に行って一番衝撃だったのは日系移民が埋葬された墓地ですよ。砂地に埋もれたような墓石がみんな海の方、つまり西を向いていた。西方浄土とはいいますが、西の方角に日本があるからなんですよね。あれを見た時、書くぞ!と思いましたね」

――もう一つ、うかがいたかったのが、実相寺昭雄監督の演出についてです。というのも監督の興味の中心は映像美です。しかも極端なワイドレンズを使ったり、光と影のコントラストを強調したり。自分の美学にかなった絵を撮ることを最優先する実相寺演出と、人間を描こうとする倉本ドラマとは、もしかしたら逆の方向だったのではないかと、ずっと気になっていました。

「それは杞憂ですよ。実相寺演出、まったくOKでした。実相寺さんとはほとんど付き合いはなかったけど、作品は見てましたから。あの人は映像詩が作れる監督。だから話は僕が受けもって、映像は実相寺さんに任せると決めてました。ホン読みの時も実相寺さんは僕にやりたいようにやらせてくれたんです。ああ、分かってる人だなと思って、全面的に信頼しましたね」


「聖地巡礼」としてのマウイ島・ラハイナ浄土院

ドラマ『波の盆』の主なロケーションはハワイ・マウイ島で行われ、その重要なシーンはラハイナ浄土院というお寺で撮影されました。

公作がふと横を見るとミサが座っている。それは公作だけに見えるのですが、「あのころ、おまえはどう思うとったんじゃ」などと話しかけると、幻影のミサも返事をする。そんな倉本脚本らしいシーンを、実相寺監督がまさに光と影を生かして撮ったのも、この場所です。

現在も原源照先生ご夫妻が、日系人の心の拠りどころである浄土院を守っていらっしゃいます。『波の盆』に関する、いわゆる「聖地巡礼」という意味では、究極の聖地でしょう。

先日、ラハイナ浄土院を訪ね、原先生に倉本聰さんの「35年目の言葉」をお伝えすると共に、『波の盆』につながる方々のご供養をしていただきました。

放送から現在までの35年間に、主演の笠智衆さん、加藤治子さん、テレビマンユニオンの吉川正澄プロデューサー、吉川さんとTBSに同期入社だった実相寺昭雄監督、そして何人かのスタッフも亡くなりました。特に実相寺監督は、今年が13回忌となります。

現在、「実相寺昭雄研究会」のメンバーと、監督が遺した資料の整理と調査を行っています。先日も、『波の盆』のロケハンの際に監督が記した、詳細なメモが見つかりました。

マウイ島の各所を回って見たもの、現地の皆さんから聞いた話が、特徴のある達筆な字で書きこまれています。実際の演出に生かされた部分も多く、これから細かく分析していく予定です。

浄土院の境内にそびえる三重の塔も、鎮座する大仏様も、35年前と同じ姿で、そこにあります。そのことだけで、とてもありがたい。

あらためて、今後も『波の盆』研究を進めていくことを念じ、ラハイナ浄土院をあとにしました。合掌。


北海道新聞で、道内民放各局の動向について解説

2018年09月29日 | メディアでのコメント・論評



<平成流転 文化の30年>
放送編(下)収益確保へ自社番組競う

 平成の30年間で、道内放送界は曲がり角を迎えた。好景気で伸びた売り上げは、平成20年(2008年)のリーマンショック以降減少。NHKが目指す放送とインターネットの常時同時配信に、民放側は警戒感を募らせる。

 道内の民放テレビ局は、平成元年(1989年)10月、TVHが本放送を開始し、東京キー局の系列5局がそろった。好景気の中、道内5局の売り上げは平成8年度(96年度)、平成期最高の計658億円を記録する。

 だが、リーマンショック後、道内民放局の売り上げは減少する。平成29年度(17年度)は計571億円(平成17年度にSTVから分社したSTVラジオを含む)と、平成5年度(93年度)の水準(579億円)に戻った。複数の道内局は「国内全体で広告費が大きく増えない中、道内局も広告収入の確保が課題だ」と強調する。

■DVDも鉱脈に

 収入増を期待されるのが自社制作の番組だ。STVは情報ワイド「どさんこワイド179」や、バラエティー「熱烈!ホットサンド」などの自社制作番組と、キー局の番組がともに好調。高い視聴率に支えられ、平成29年度(17年度)の売り上げは道内民放最高の157億円だった。

 他局も特徴ある番組制作に力を入れる。UHBは平成29年(17年)5月から、他局がキー局の番組を放送する金曜午後7時に、自社制作のバラエティー「発見!タカトシランド」を放送して好評だ。HBCは「あぐり王国北海道NEXT」で道内農業を紹介、TVHは「けいざいナビ」で道内各地の経済の話題を取り上げている。

 さらにNHK札幌放送局も、金曜夜を地域放送枠として「北海道クローズアップ」や「北海道スペシャル」を放送する。
 番組の2次利用も大切な収入源の一つだ。HTBは「水曜どうでしょう」のDVD27作の累計出荷数が450万枚を超えた。アイドルグループ乃木坂46の橋本奈々未(旭川出身)が出演したUHBの番組「乃木坂46 橋本奈々未の恋する文学」(冬編、夏編)のブルーレイディスクとDVDの売上枚数は計1万5千枚だった。

■ネット配信警戒

 道内各局が番組制作を競い合う中、全国的にはテレビ離れが進んでいる。総務省の調査では、1日の平均テレビ利用時間(リアルタイム視聴)は平成29年(17年)に2時間39分で、5年前より25分減った。ネットは同年、1時間40分で5年前より29分増え、新聞(平成29年=10分)やラジオ(同11分)よりはるかに多く、テレビに迫りつつある。

 さらに、NHKは来年度中に放送とネットの常時同時配信を行う方針を示した。これに対し日本民間放送連盟(東京)は、NHKの常時同時配信が行われれば「民放、新聞、ネット動画配信などの民間事業と競合する可能性が高まる」と警戒する。道内局も「もしもNHKが常時同時配信をすれば、今後、テレビ視聴自体が減るなどの影響が出るかもしれない」と、NHKの動きを注視している。

 民放の常時同時配信について民放連は「現時点では事業性が見いだしがたい」としている。ある道内局は「視聴者のニーズがはっきりせず、費用に見合った収入が得られるかなど解決できていない課題がある」と慎重だ。(中村康利)

上智大・碓井教授に聞く 
制作力高め地域局の独自性/営業でも効果的


 道内民放各局の特徴や課題について、上智大の碓井広義教授(メディア文化論)に聞いた。

                  ◇

 一般に、地方民放局には、系列のキー局の番組を流すネットワークの機能がある。経営面で見るならば、キー局の番組を流して広告収入の一部を受け取っているのが楽といえば楽だ。しかし、それだけなら地方局の意味、価値は弱い。自社番組を制作し、制作力を高めることが重要だ。

 道内民放局は、キー局を除けば、大阪や名古屋の各局に次ぐ経営規模で、地方局としては比較的大きい。その中で特に夕方の大型情報番組を自社制作して放送し、それぞれ競い合っている。こういう熱気があるのが北海道の放送局の特徴だ。道外の地域と比べても高いレベルの番組が作られている。

 STVの「どさんこワイド」が、地域の情報ワイド番組の地盤を作った。このジャンルに他局が参入し、情報ワイド番組の放送時間も長くなった。視聴者から見れば、エンターテインメントとしておもしろく、役立つ情報を得られ、しかも各局から自分の見たい番組を選ぶことができる。

 道内各局はいい意味で地域情報を発信することを主眼に置いてきた結果、報道体制が充実し、地震、台風などの災害時に頼りになる情報源にもなっている。以前なら、事故や災害が起これば大半がNHKを見ていた。それが民放も速く正確に伝える努力をしており、どの局も遜色ないと思う。

 番組制作力をつけることは経営面でも大事だ。全国放送の広告主は大企業が中心だ。地方局の優れた番組は、地元のスポンサーが地域の視聴者に向けてCMを打つのに都合が良い。夕方の情報番組は、営業的にも局をリードする形になっている。

 国内の広告費は平成19年(2007年)に約7兆円だったのが、翌年のリーマン・ショック以降低迷し、平成28年(16年)は約6兆3千億円だった。その中で道内民放各局は番組の自社制作を含め、地域の放送局として生き残る努力をしており、健闘している。

 民放の経営は厳しいとはいえ、北海道で民放の統廃合がすぐに起こるとは考えにくい。生き残るためのポイントは、「この番組はうちでしか見られない」という、独自の内容で視聴者が見たいコンテンツを作り、発信できるかだと思う。


<道内の放送を巡る平成の主な出来事>

平成元年(1989年) 1月 昭和天皇逝去。テレビ各社は特別編成、民放はCM抜きで放送
          10月 TVHが本放送を開始。道内民放5局体制に
平成3年(91年)  10月 STV「どさんこワイド120」開始
平成5年(93年)   4月 NHK札幌放送局「北海道クローズアップ」開始
            7月 北海道南西沖地震で各局が速報
平成8年(96年)  10月 HTB「水曜どうでしょう」開始
平成9年(97年)  11月 HBCが拓銀経営破綻をスクープ
平成12年(2000年)1月 STV「1×8いこうよ!」開始
           3月 有珠山噴火で、各局が大がかりな取材体制
               BSデジタル放送本放送開始
平成15年(03年)  4月 HTB「イチオシ!」開始
               TVH「けいざいナビ」開始
平成18年(06年)  6月 道央圏で地上デジタル放送開始
平成22年(10年)  3月 HBC「グッチーの今日ドキッ!」開始
平成23年(11年)  3月 東日本大震災で、民放各局がCM抜きの特別編成で放送
平成26年(14年)  3月 NHK札幌放送局「ネットワークニュース北海道」を「ほっとニュース北海道」に改称
平成27年(15年)  3月 UHB「みんなのテレビ」開始
平成29年(17年)  5月 UHB「発見!タカトシランド」開始
平成30年(18年)  9月 HTBが本社を札幌市豊平区から同中央区に移転

(北海道新聞 2018.09.24)




秋学期「テレビ制作Ⅱ」、授業開始!

2018年09月29日 | 大学



夏の再来のような日差し

【気まぐれ写真館】 秋晴れの四ツ谷駅前

2018年09月29日 | 気まぐれ写真館
2018.09.28

デイリー新潮で、本田翼「ゲーム実況動画」について解説

2018年09月28日 | メディアでのコメント・論評


ゲーム動画で驚異的な数字
本田翼にYouTuberは戦々恐々

「○○好き」を公言しているのに実はニワカだった……という芸能人は多いけれど、少なくとも本田翼(26)に関してはガチだったようだ。

このたび開設したYouTubeチャンネル「ほんだのばいく」に動画が初投稿されたのは、9月22日のこと。25日現在で再生数は約215万回、いわゆる“ファン”の数の目安となるチャンネル登録者は73万人である。事前にテスト配信してYouTubeに登場することはアナウンスされていたとはいえ、これは驚異的な数字。21時におよそ2時間にわたって生配信を披露すると、視聴者は約14万人にも上った。今後は、不定期に動画を公開していく旨を明かしている。

現在、チャンネルに上がっている動画は上記のテスト配信を編集したもので、編集も本田自らが行ったという。注目すべきは、本田の顔出しはないという点。殺人鬼と鬼ごっこをするサバイバルホラーゲーム「Dead by Daylight」をプレイする本田が“ギャー”“やだやだ!”と叫ぶ声とプレイ画面だけの2分の動画が、上記の数字を叩き出しているのだ。

芸能人なんだし、YouTubeに登場すれば人気が出てあたりまえでしょ……と思うなかれ。

「タレントがゲームの実況動画に関わること自体はそう珍しくありません。今年3月にケイン・コスギ(43)が『League of Legends』をプレイ配信したのは話題になりましたし、HKT48の宮脇咲良(20)も半年前からYouTubeにチャンネルを開設しています。ケインはYouTubeではなくTwitchという配信サイトでの公開で、これは視聴者数が世界一の1万人を超えた。一方で宮脇は、これまで15本を『ちゃんねる宮脇咲良』に投稿していますが、100万回再生を超えたのはゲーム内のダンスを踊っている内容で、プレイ動画そのものはせいぜい70万回再生。もちろん十分すごいのですけれど、AKBグループで3番人気の宮脇が顔出し配信してこの数字ですから、本田がいかに人気かが分かるでしょう」(芸能記者)

その差はいかにして生まれるのか。

「やっぱり本当にゲームが好きか、だと思います。ケインや本田はまえまえからゲーム好きを公言していて、プレイからも本気っぷりが分かってくる。その点、宮脇は戦略的というか、仕事でやっている感があります。ゲームと仕事でいえば、『OPENREC.tv』なるゲーム配信サイトが、吉本興業や松竹芸能といった芸能プロと契約したと先月報じられました。今後は“ゲーム実況タレント”が増えそうです。人力舎もそのひとつ。本田と同じタイミングでドランクドラゴンの鈴木拓(42)が『スプラトゥーン』をプレイしていました。“土俵”が違うとはいえ、こちらの再生数は1万回台……」(同)

本田の所属するスターダストプロモーションも上記の契約を結んでおり、「ゲーム事業部」が発足。チャンネル開設には「そこの人に頼み込んで快諾していただいて叶いました」と経緯を明かしている。

芸能人は受注産業

こうした芸能人がゲーム実況につぎつぎと参入するこうした背景には、どんな事情があるのだろうか。

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)の分析は、

「なんといっても、ゲームをスポーツとして捉える『eスポーツ』の流行が背景にはあるでしょう。先のアジア競技大会でも種目になりましたし、東京五輪はともかく、ゆくゆくはオリンピックで採用される可能性もあります。プロのゲーマーが増えれば、同時に観戦もビジネスになるわけで、プロダクションが目をつけるのは納得です」

そこには、芸能界の構造も影響しているといい、

「基本的にタレントや俳優は『受注産業』。ドラマやCMなどのオファーを受けなければ仕事はありません。その点、ゲームの実況はオファーがなくても、自分たちが主体的に生み出せる仕事です。ですので、今後は仕事の少ないタレントのゲーム実況が氾濫する事態となるかもしれません。ただし、本当にゲーム好きかを見抜く目を視聴者は持っている。事務所に言われて動画を投稿したところで『ビジネスでやっているだけ』と炎上して終わるでしょうね。その点、本田さんの動画を見ましたが、彼女は本当に好きなものをやっている感じで、ある種の純粋さが伝わってきました。それが皆に受け入れられた背景にあるのでは」


女優として顔と名前が知られつつも、ゲーム実況できる程度にはヒマだったポジションも功を奏した……? それはさておき、これまでゲームYouTuberとして活動してきた人々は本田の登場に戦々恐々だという。

本田翼さん、堪忍してください。

先の本田の動画のコメント欄には、〈応援してます〉〈めっちゃ可愛くて草〉といったメッセージに混じって〈女性YouTuber完全に終了のお知らせです〉〈顔出しでやられたら女性youtuberは終わりですねw〉といった投稿が。

「すでに『本田翼さん、堪忍してください。』なんて動画も上がっています。投稿したのはある男性人気実況者で、内容はタイトル通りの嘆く自分を映したもの。要約すると、自分は10年間活動してきたが、本田に一発で視聴数記録が抜かれてしまったということです。まあこれは便乗したネタとしても、見栄えの良さで再生数を稼いできた女性YouTuberにとってみれば、本田翼という“プロ”に参入されては勝ち目はなく、このことを指摘する動画もまたYouTube上に散見されます。なにより芸能人が出てきたことでゲーム実況の世界にそれまでいなかった“一般人”が増え、これまで投稿者とファンが築き上げてきた文化が失われるのではと危惧する声もないわけではないのです」(ゲーム誌編集者)

そういえば、安易に「コミケ」に参入しようとして炎上した女優もいた。第一印象は好感触だった本田だが、界隈の人々との付き合い方はくれぐれも慎重に……。

(デイリー新潮 2018年9月26日)


碓井ゼミ、2018「秋学期」開始!

2018年09月28日 | 大学
2年生~院生まで全員集合

高橋克典主演「不惑のスクラム」が描く、男たちの事情と幸福

2018年09月27日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評



NHK土曜ドラマ「不惑のスクラム」
男たちの「人生のトライ」はいかに?

NHK土曜ドラマ「不惑のスクラム」の主人公は、かつて傷害致死事件を起こした丸川良平(高橋克典)だ。5年間服役して出所したが、仕事も家庭も失った自分に絶望していた。

河川敷で死のうとした際に出会ったのが、宇多津(萩原健一、好演)という初老の男だ。高校時代にラグビー部だった丸川は、宇多津が率いる草ラグビーチーム「大坂淀川ヤンチャーズ」に引っ張り込まれる。

このドラマの特色は、丸川だけでなくチームに所属する男たちにもしっかりスポットを当てていることだ。たとえば陣野(渡辺いっけい)は、会社では窓際部署に送られ、自己主張ばかりの若手社員に閉口している。13年前に妻が男と蒸発した家庭では、高校生の娘がろくに口をきいてくれない。

また宇多津の元部下である緒方(徳井優)は、ヤンチャーズの雑用を一手に引き受けているが、家では妻と介護を要する母親が待っている。彼らにとって週末のラグビーは日常を支える、心のオアシスのような存在だ。いや、そういう存在をもつ男たちの幸福を描くドラマだと言っていい。

一度は丸川の過去が明らかになったことでチームの和が乱れたが、再びスクラムを組むようになる。ところが先週、「誰ひとり、不要な人などいない」と言っていた宇多津が病没した。

精神的支柱を失った男たちの「人生のトライ」はいかに?

(日刊ゲンダイ 2018年09月26日 )

【気まぐれ写真館】 小雨の等々力

2018年09月26日 | 気まぐれ写真館
2018.09.26

書評した本: 川本三郎 『「それでもなお」の文学』ほか

2018年09月26日 | 書評した本たち


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


川本三郎 『「それでもなお」の文学』
春秋社 2160円

おもにこの5年間に書かれた文学作品についての文章だ。対象は自身が好きな作家と作品であり、そこには「生きる悲しみ、はかなさ」が描き込まれている。坂口安吾や林芙美子など「昔の作家」と、桜木紫乃や東山彰良といった「現代作家」が並んでいるのも著者ならでは。


本城雅人 『友を待つ』
東京創元社 1944円

困難と思われる取材対象に肉薄し、多くのスクープを放ってきた伝説の週刊誌記者、瓦間慎也。そんな男が女性宅への不法侵入と窃盗の容疑で逮捕される。真相を探ろうとする後輩記者たちは、過去におけるある官僚と瓦間の関係に注目する。緊迫の記者ミステリだ。


椹木野衣
『感性は感動しない
~美術の見方、批評の作法』

世界思想社 1836円

気鋭の美術批評家による初の書き下ろしエッセイ集だ。絵を鑑賞する際に大切なのは「なにかを学ぼうとしないこと」だと著者は言う。唯一無二の存在と存在の交錯であり、響き合うかどうかだと。この「絵をまるごと呑み込む」方法からユニークな椹木批評が生まれる。


(週刊新潮 2018年9月13日号)


原作を超えた独自の世界観「義母と娘のブルース」

2018年09月25日 | 「毎日新聞」連載中のテレビ評


綾瀬はるか主演「義母と娘のブルース」 
原作を超えた独自の世界観

7月に始まった夏ドラマが続々と千秋楽を迎えている。今シーズンの最大の特色は、いつも以上に「原作もの」が多かったことだ。

まず、いまや主流ともいえる漫画が原作の作品として「義母と娘のブルース」(TBS系)、「この世界の片隅に」(同)、「健康で文化的な最低限度の生活」(フジテレビ系)などがあった。

また原作小説を持つのが「サバイバル・ウェディング」(日本テレビ系)、「ハゲタカ」(テレビ朝日系)、「ラストチャンス 再生請負人」(テレビ東京系)などだ。

他には韓国ドラマを原作とする「グッド・ドクター」(フジ系)、同名の映画が原作だった「チア☆ダン」(TBS系)。さらにシリーズとして「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」(フジ系)や「遺留捜査」(テレ朝系)があった。

つまりゴールデン帯やプライム帯での純粋なオリジナルドラマは「高嶺(たかね)の花」(日テレ系)くらいしかなかったのだ。

ドラマの根幹は脚本にある。その脚本に書き込まれるのは人物像とストーリーだ。どんな人たちによる、どんな物語なのか。そこでドラマの命運が決まる。

原作がある場合、脚本家を含む制作陣はドラマで最も重要な人物像とストーリーをすでに手にしているのだ。あとは、どうアレンジしていくかについて悩めばいい。一方、オリジナルドラマは何もないところから人物も物語も生み出していく。それがいかに大変なことか。

日本では「原作あり」も「原作なし」も、ひとくくりに「脚本」と呼ばれている。

しかし、たとえばアメリカのアカデミー賞では、ベースとなる原作をもつ「脚色賞」と、オリジナル脚本の「脚本賞」はきちんと分けられている。脚本という形は同じでも、別の価値として評価されるのだ。

それらを踏まえ、今年の夏ドラマの中で突出していたのが、「義母と娘のブルース」だった。

1ページをきっちり8コマに分け、生真面目そうな絵柄の中に、くすっと笑えるネタを仕込んでいく桜沢鈴の原作漫画と、綾瀬はるかが主演したドラマは雰囲気も印象も、いい意味で別ものと言っていい。

脚本家、森下佳子が仕掛けた構成の妙と小気味いいせりふがあり、綾瀬が演じるヒロインの愛すべき、そして品のある変人ぶりがあった。しかも視聴者は笑いながら見ているうちに、夫婦とは、親子とは、そして家族とは何だろうと思いをめぐらせることができた。

そこにあるのは映画「万引き家族」をはじめとする是枝裕和監督の作品にも通じる“読後感”であり、原作を基調にしながら、それを超えたドラマ独自の世界観だった。

(毎日新聞「週刊テレビ評」 2018.09.22) 

週刊朝日で、芦田愛菜「朝ドラ」ナレーションについて解説

2018年09月24日 | メディアでのコメント・論評


石原さとみの最年少記録を更新 
芦田愛菜が朝ドラの語り

10月開始のNHK連続テレビ小説「まんぷく」の語り(ナレーション)を、女優の芦田愛菜が務める。NHKによると、「おばあちゃんから聞いた話を友達に教える」雰囲気の身近な語りがねらい。14歳の若さで全編通しての語り抜擢は史上最年少。「てるてる家族」での石原さとみの16歳を更新した。

『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』著者の田幸和歌子さんはこう話す。

「朝ドラの語りはとても大切な役割。表現力の高さや滑舌のよさだけでなく、朝の忙しい時間に家事や食事をしながらでも視聴者に内容を届ける、わかりやすさを求められます。愛菜ちゃんは、映画『ポケモン』や『怪盗グルー』シリーズの吹き替えなど、声の仕事の経験が豊富で評価も高い。本人は『シーンを壊さず、いい意味で存在感を消す』と言っていましたが、うまいけれども悪目立ちしない語りではないでしょうか」

まんぷくは、日清食品創業者の安藤百福夫妻がモデル。ヒロインを安藤サクラ、夫を長谷川博己が演じる。

「サクラさんは、キャラクター性が非常に高く、画面に出たときの強烈なオーラがある女優さん。そのオーラをいい意味で中和させてくれる、視聴者とドラマのインターフェースのような役割も(愛菜ちゃんは)果たすのではないでしょうか」

そう話すのは、上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)。碓井教授は、芦田と日清食品との奇縁について、こう続ける。

「2011年から、日清の『チキンラーメン』のCMに出演していました。ひよこの着ぐるみのかわいらしい姿が好評でしたが、今年はチキンラーメン誕生60周年。しかも、そのCMキャラ『ひよこちゃん』は、ひよこの世界と人間界をつなぐ存在でもあった。まさにドラマの世界と視聴者をつなぐ存在の語りと同じ。この二重、三重のリンクに、すごいな、NHK大阪放送局と感じました」

日清だけでなく、NHKとの縁も深い。

「11年の『江』で大河ドラマに出演、同年には『マル・マル・モリ・モリ!』で、『紅白歌合戦』にも鈴木福くんと一緒に出ました。14歳にして、NHKの3大看板番組を経験した女優さんになったとも言えます」(碓井教授)


演技だけでなく語りでも視聴者の心を動かしてほしい。(本誌・太田サトル)

(週刊朝日  2018年9月28日号)

【気まぐれ写真館】 今月も、千歳「柳ばし」で昼ごはん

2018年09月24日 | 気まぐれ写真館

柳ばし名物の「サルサDEチーズささみ定食」

HTB新社屋で「イチオシ!モーニング」

2018年09月24日 | テレビ・ラジオ・メディア






















2018.09.22

日刊ゲンダイで、大塚寧々「かつらCM」について解説

2018年09月23日 | メディアでのコメント・論評


自然体で好感度アップも…
大塚寧々“かつらCM”の残念な部分

「ねえねえ、前髪変えたでしょう?」

「えっ」

「うん、かわいいよね」

一見どこにでもありそうな女子トークだが、かつらメーカーのCMで人気女優のせりふともなれば、話は違う。8月からアートネイチャーの新CMキャラクターに起用された大塚寧々(50)。女性用ヘアエクステ「ビューティアップ」という生え際や気になる箇所にチョイ足しする増毛商品で、なんと大塚自らが体験する画像まで流れるのだ。

つい最近まで石野真子(57)が起用されていたことを考えると若返りを図った格好だが、「弊社の主力であるオーダーメードのウィッグとは異なり、40代後半から50代のより若い世代のユーザーが多い商品。同年代の大塚さんの起用はこれまで以上に共感と認知度が高まることを期待してのものです」(アートネイチャー広報部)。

ちなみに同社のオーダーメードウィッグのCMに出演する風吹ジュン(66)のように、実際に使用しているかどうかは未確認だというが、「商品に対する理解度の高さ」(同)が起用の決め手だという。

■商品情報の連呼は逆効果

かつてこの手の商品CMは高齢者向けのイメージが強く、“あの人は今”といったタレントが起用されていたが、それも昔。上智大学教授(メディア文化論)の碓井広義氏はこう言う。

「過度なアンチエイジングブームの揺り戻しもあるなかで、使い手の魅力を引き出すためのおしゃれグッズというポジティブなイメージが広く定着しつつある。しかも、女優がごく自然に体験するシーンは視聴者の共感を誘うものであり、大塚さん自身の看板に傷がつくようなことにもならないでしょう。むしろ、自然体の女優として好感度も上がると思います」

ただし、いただけない点があるという。

「CMの演出方法です。女友達と話していたのに突然、カメラ目線で視聴者に向かって『とかいいつつ』というせりふを1分程度の尺で4回も言わせるのはなかなか鬱陶しい。友達への発言は建前だけれど、視聴者には本音を漏らすという作り手の狙いでしょうが、続けて商品情報を連呼させるのは逆効果になりかねません」(前出の碓井氏)


大塚の毛量は増えて、好感度も上がったが、何でも盛ればいいってもんじゃない、か。

(日刊ゲンダイ 2018年9月20日)


23日(日)のTBSレビューで、ドラマ「ブラックペアン」伊與田プロデューサーと・・・

2018年09月22日 | テレビ・ラジオ・メディア




「TBSレビュー」
2018年9月23日(日) 
あさ5時40分〜6時

ブラック・ペアン〜医療ドラマのあり方



この10年間、日曜劇場には何人もの名医が登場した。

だが「ブラック・ペアン」の主人公渡海征四郎は過去のどの医師とも違う。

渡海は成功率100%の天才外科医だが性悪で金に汚い。「オペ室の悪魔」と呼ばれる一方、繊細な面を併せ持つ。実に捉えどころのない人物だ。

このドラマのパターンは、鳴り物入りの最新医療機器が通用せず窮地となったその時、満を持して主人公が登場、見事に患者の命を救うというものだ。

そこに視聴者は大いなるカタルシスを感じる。 日曜日の夜に相応しいワンパターン、賛否はあるだろうが…。

番組ではブラック・ペアンを例に医療ドラマのあり方について、またドラマにおけるリアリズムの描き方について探っていく。


<出演>
キャスター:
秋沢淳子(TBSアナウンサー)

今回の出演者:
伊與田英徳(プロデューサー)
碓井広義さん(上智大教授)

番組webサイトより