碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

<2019年11月の書評>

2019年11月30日 | 書評した本たち

 

 

<2019年11月の書評>

 

松本一弥

『ディープフェイクと闘う~「スロージャーナリズム」の時代』

朝日新聞出版 1760円

スロージャーナリズムとは、「ゆったりした時間軸の中で問題を深く掘り下げてく」報道を指す。それがフェイクの時代への対抗策だと著者は言う。なぜヘイト表現が横行するのか。なぜ大統領の「つぶやき」が世界を翻弄するのか。メディア不信を押し返す論考だ。(2019.09.30発行)

 

原 武史『「松本清張」で読む昭和史』

NHK出版新書

今年生誕110年を迎える松本清張。その作品をテキストとして、「昭和史」を解読していくのが本書だ。占領期の闇に迫る『日本の黒い霧』。格差社会を背景とした『点と線』。そして高度経済成長の暗部を描く『砂の器』。歴史家、思想家としての清張が甦る。(2019.10.10発行)

 

丸々もとお、丸田あつし『日本夜景遺産 15周年記念版』

河出書房新社 2860円

夜景評論家と夜景フォトグラファーによる究極の「夜景大全」だ。自然夜景、施設型夜景、ライトアップ景など多彩な美しさを堪能できる。香港やモナコと並ぶ「世界新三大夜景」の長崎・稲佐山も、「アゲハチョウの夜景」青森・釜臥山も陶然とする眺めだ。(2019.10.30発行)

 

田中 聡『電源防衛戦争~電力をめぐる戦後史』

亜紀書房 1980円

いまだ全貌が見えない関西電力のスキャンダル。そもそも電力はいつから「利権ビジネス」となったのか。発電所から左翼勢力を排除した田中清玄。原子力発電を強行する正力松太郎と中曽根康弘。権力、金、暴力が支配する驚きの内幕は、電力版「黒い報告書」だ。(2019.10.07発行)

 

カル・ニューポート:著、池田真紀子:訳

『デジタル・ミニマリスト~本当に大切なことに集中する』

早川書房

「一億総スマホ中毒」の時代。便利な道具を使うのではなく、道具に使われているのではないか。行為依存と疲労感。特にSNSには「より大事なこと」から注意をそらす力があると著者は言う。本書は、テクノロジーを活用しながら主体性を失わないためのヒントだ。(2019.10.15発行)

 

小谷野敦『哲学嫌い~ポストモダンのインチキ』

秀和システム 1650円

突然乱入して斬りまくる、小谷野流〝道場破り〟の一冊だ。今回の相手は哲学。それは学問ではなく、文学ではなく、宗教でも精神分析でもないと容赦ない。しかし、取り上げられた古今東西の文献の「読み方」は独自で興味深く、哲学講談として大いに楽しめる。(2019.10.15発行)

 

小須田 健『哲学の解剖図鑑』

エクスナレッジ 1760円

神社、お寺、戦争などを、絵とコンパクトな文章で解説してきたシリーズの最新刊。男と女、自由、幸福、正義などについて、古今東西の哲学者たちがいかに考えてきたのかを展望できる。カントもヘーゲルもフーコーも、どこか親しげに感じられる異色の哲学入門書だ。(2019.10.07発行)

 

山森宙史『「コミックス」のメディア史』

青土社 2640円

電子コミックスの売り上げが、紙のコミックスのそれを上回ったのは2年前だ。そもそもコミックスは書籍なのか雑誌なのか。また読み物なのか商品なのか。さらに受け手の経験としては読書なのか消費なのか。モノとしての戦後マンガの歴史と実相が見えてくる。(2019.10.23発行)

 

青柳英治、長谷川昭子『専門図書館探訪』

勉誠出版 2200円

専門図書館は、特定の分野について知りたい人の駆け込み寺だ。野球殿堂博物館、神戸ファッション美術館、日本カメラ博物館、日本海事センターなど様々な施設が、ユニーク資料や情報を一般公開している。知られざる〝宝の山〟にアクセスするための必携ガイド本。(2019.10.25発行)

 

町田哲也『家族をさがす旅~息子がたどる父の青春』

岩波書店 2310円

現役証券マンにして作家でもある著者。父の緊急入院によって異母兄の存在を知った。かつて映画界にいたことを手掛かりに、父のき日の足跡をたどり始める。交差する病状と探査行。理屈ではなく自分に繋がる父。家族とは何かを問う、異色のノンフィクションだ。(2019.10.24発行)

 

田尻久子『橙書店にて』

晶文社 1815円

著者は熊本市にある書店の店主だ。小ぶりな店だが、渡辺京二は常連客だし、村上春樹の朗読会も開かれる。何より「みょうなか本ばっかり置いとるけん、つぶれんごつ買わんといかん」と立ち寄る町の人たちが素敵だ。優しい時間が流れる本屋から生まれたエッセイ集。(2019.11.10発行)

 

内田樹、平川克美『沈黙する知性』

夜間飛行 1980円

小学校以来60年のつき合いが続く2人の最新対話集だ。社会、知性、自由、グローバルといった話題が展開されるが、村上春樹と吉本隆明をめぐる話が特に熱い。「ありえた世界」を想像させる村上。知識人と大衆の中間にいた吉本。身体性が共通するキーワードだ。(2019.11.11発行)

 


週刊朝日で、NHK大河「沢尻エリカ」騒動について解説

2019年11月30日 | メディアでのコメント・論評

 

 

NHK大河「沢尻エリカ代役」

川口春奈に決定の舞台裏

 

11月16日朝の、女優・沢尻エリカ容疑者の突然の逮捕劇によって、CM放送中止、楽曲出荷停止など各方面に大きな衝撃が走った。なかでも最も逮捕の影響が懸念されていたのが、斎藤道三の娘でのちに織田信長の正妻となる帰蝶(濃姫)役で出演予定だったNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」だ。21日夕方、NHKは帰蝶役を女優の川口春奈に変更すると発表した。

川口は、ドラマ「ヒモメン」「イノセンス 冤罪弁護士」や映画「一週間フレンズ。」、「クノールカップスープ」のCMなどに出演する人気女優。沢尻より9歳若い24歳の女優の抜擢(ばってき)となった。

沢尻容疑者は出演クレジットでは女性の一番手、事実上のヒロイン扱いだ。クランクインは6月で、すでに10話ぶんの撮影が進んでいたという。放送開始の1月まで時間がない中で時代劇初挑戦となる川口に白羽の矢が立った。

この起用について、ドラマ評論家の吉田潮さんは、

「顔や名前も知られていて、実績もそれなりにある。『若い』という声もあがるかもしれませんが、相手役の染谷将太さんとの並びを考えると、しっくりくるのではないかとも感じます。出演者変更が発表されたということは放送も間に合うということでしょうから、いろいろよかったのではないでしょうか」

織田信長役の染谷は27歳。出演者の変更で、帰蝶の役どころも変わってくるだろうか。吉田さんは言う。

「もともとNHKが沢尻容疑者でどんな帰蝶を目指していたか気になるところですね。川口春奈は『ヒモメン』でのコメディー系の演技がよかったので、相手を振り回すような帰蝶というのもよさそうな気がします」

代役発表前日の20日にはNHKの木田幸紀放送総局長が定例会見の場で沢尻容疑者逮捕と「麒麟がくる」について、「出演者の方もスタッフも絶対口にしないですが、ショックだと思います」と語っていた。

出演者に薬物検査の義務づけも必要なのではという問いに対して、

「所属事務所を通して事前に確認しているが、こういうことが起きている。さらに対応を検討していく必要がある」

と答えた。

「これは相当ピリピリしていたことを裏づける発言だという気がします。ピエール瀧さんの時にはそんな発言はしていませんし今回の騒動の大きさが如実に表れているという気がします」

と芸能評論家の三杉武さんは言う。

放送中の大河ドラマ「いだてん」でも、出演者のピエール瀧=麻薬取締法違反(使用)罪で有罪判決=が逮捕され、急きょ代役をあてた。今回も剛力彩芽、のん、満島ひかり、蒼井優、貫地谷しほり、杏……沢尻容疑者の逮捕後から、大河の代役として、各マスコミやネット上ではさまざまな名前があがり、盛り上がりをみせていた。

この騒動をポジティブにとらえるのもいいのではないかと、上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は言う。

「『いだてん』の場合は放送開始後の騒動が続いたかたちですが、今回は役どころが大きかっただけに、放送開始後の逮捕だった場合、本当に取り返しのつかない事態に陥る可能性もありました」

川口春奈をむかえ、「麒麟がくる」はリスタートする。碓井教授は言う。

「沢尻容疑者の騒動によって、次に放送される大河ドラマが『麒麟がくる』という作品で、日本のほとんどの人が、信長の正妻役が沢尻エリカから川口春奈という女優に代わったことを認識した。それは確かなんです。ここからは前向きにとらえ、制作陣と出演者たちみんなが、放送開始にむけて団結していけるのではないでしょうか」

沢尻容疑者の捜査の進展とともに、大河ドラマ「麒麟がくる」の今後の撮影状況もおおいに気になる出来事となりそうだ。(本誌・太田サトル)

(週刊朝日  2019年12月6日号)


「ドクターX」を支える、定番だからこその新規性

2019年11月28日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

シリーズ6弾「ドクターX」を支える

定番だからこその新規性

 

2012年に始まった「ドクターX~外科医・大門未知子~」も、今期で第6シリーズとなる。いかなる場合も最後は天才外科医の活躍で大団円。それは視聴者も承知の上だが、以前と変わらないだけでは飽きてしまう。

基本的な世界観は維持しながら、常に意外性を盛り込んでいくことが肝心だ。このシリーズはその努力を忘れていない。

第4話では有名陸上選手の「滑膜肉腫」に対処しながら、同時に外科部長・潮(ユースケ・サンタマリア)の母親(倍賞美津子)が、「認知症」ではなく「水頭症」であることを突き止めた。

また先週の第6話。難病である「後腹膜原発胚細胞腫瘍」の少女を登場させたが、本命の手術は売名のために少女を支援していた青年実業家(平岡祐太)の「肝細胞がん」のほうだった。

いわばストーリーの2車線化だ。ある患者の難しい手術が見せ場と思わせて、途中から別の患者のもっと困難な現場へと移っていく。高速道路で一気に追い越し車線に入っていく感じだ。

しかもこの回の大門は、少女の腫瘍摘出と左肺下葉切除という2つの手術を連続で行ったことで、盟友である麻酔医・城之内(内田有紀)と対立してしまう。制作陣は「神の手」を支える女神、城之内との関係を揺さぶることで見る側に緊張感を与えたのだ。定番だからこその新規性。それがこのドラマを支えている。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2019.11.27


受賞相次ぐ、黒木華主演『凪のお暇』の人生リセットパワー

2019年11月26日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

受賞相次ぐ、

黒木華主演『凪のお暇』の

「人生リセットパワー」

 

今年7月から9月まで放送されていた、TBSの金曜ドラマ『凪のお暇(なぎのおいとま)』が、最近、いくつものドラマ賞を獲得しています。

第17回「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」では、最優秀作品賞だけでなく、中村倫也さんが助演男優賞、三田佳子さんが助演女優賞をそれぞれ受賞。

また第102回「ザテレビジョンドラマアカデミー賞」でも最優秀作品賞のほかに、黒木華さんが主演女優賞、高橋一生さんが助演男優賞、そして坪井敏雄さんをはじめとする演出陣が監督賞を受けました。

まさに今年の夏ドラマ、いや今年のドラマ全体を代表する1本となったわけです。

11月24日(日)の朝に放送された『TBSレビュー』で、この作品について話をさせていただきました。それをベースに、あらためて、『凪のお暇』というドラマの魅力を振りかえってみたいと思います。

『TBSレビュー』では、まず、MCの豊田綾乃アナウンサーから、このドラマの特徴を問われました。

黒木華さんが演じた凪は、28歳で無職、彼氏なし、そしてお金なしというヒロインでした。

「空気を読む」ことに疲れた彼女は、自分の周りにもいそうだったり、もしくは自分のことかもしれないと思える「普通の女性」だったのです。そんな彼女が、これからどう生きていくのかを見せてもらった。それが一番の特徴でした。

次に、このドラマを担当した、中井芳彦プロデューサーにインタビューしたVTRが流されました。

「これまでも、人生をリセットするという話はあったけれども、そこ(リセット)だけを切り取ってドラマにしたものはあまりない。地味な話で、劇的なことが起きるわけではないが、(ヒロインが)成長する物語を作りたかった」のだそうです。

「人生リセット」というテーマについて言えば、ふと「これまでとは違う、別の人生にチャレンジしてみたい」と思うことは、私も含め、誰にでもあるのではないでしょうか。でも、そう簡単には出来ません。このドラマには、そのヒントが散りばめられていたのです。

また視聴者に対する街頭インタビューでは、「主人公は空気を読むことに疲れていたが、今の時代、共感する人が多かったと思う」とか、「あそこまで全てを断ち切るのは、自分には無理かも」といった意見が並んでいました。

人がストレスを感じる、その「大元」ということでは、なんといっても人間関係が大きいと思います。このドラマは、そこから逃げるのではなく、「お暇」という形をとったところが秀逸でした。

抱えている課題や問題は一旦脇に置き、それまでの自分、それまでの対人関係などと、時間的・空間的な距離をとってみる。そんな「自分を見つめ直すプロセス」を描いていったからです。

中井プロデューサーも、「もう28歳と、まだ28歳の間で揺れている感じを面白く描きたかった。揺れたり迷ったりしている方が人間っぽい。今まで生きていた自分を肯定しながら、次の目的地を目指す旅だったと思う」と語っていました。

そういえば、かつて白石公子さんが書いた本に、『もう29歳、まだ29歳』というタイトルがありましたね。「もう28歳、まだ28歳」という中井Pの言葉は、このドラマ全体を見事に象徴しています。

『凪のお暇』では、まさに「揺れている28歳、迷っている28歳」がきっちりと描かれていました。人ってすぐには変われないし、主人公もすぐには変われませんでした。

しかし、本来の自分、素の自分というものに「気づくこと」、「気づけたこと」が大きかったのではないでしょうか。気づくことで少しずつ主人公が変わり、周りも(あの慎二やゴンさえも)変わっていく。気づくことで生まれる「人生リセットパワー」。このドラマの醍醐味・おもしろさはそこだったと思います。

番組の最後に、豊田アナから、ドラマ『凪のお暇』が今後のテレビドラマに示した可能性について尋ねられました。

このドラマは、普通の人の、いわば「挫折と再生の物語」です。一般的には、どこか重く暗くなりそうなものですが、『凪のお暇』は、それをユーモアも交えて明るく、そして日常的な物語として描いていました。その部分がドラマの可能性を広げてくれたと思うのです。


【気まぐれ写真館】 「三島由紀夫」没後49年の命日 合掌

2019年11月25日 | 気まぐれ写真館

秋天 2019年11月25日 


【気まぐれ写真館】 来月は、もうクリスマス

2019年11月24日 | 気まぐれ写真館

日比谷 2019


24日、TBSレビューで「凪のお暇」について話します

2019年11月23日 | テレビ・ラジオ・メディア

豊田アナと(今回はスタジオではなく、MAルームで収録)


TBSレビュー 

2019年11月24日(日)

あさ5時40分〜6時00分



凪のお暇

〜ありふれた日常を描いて〜


7月から9月にかけて放送された

金曜ドラマ「凪のお暇」を取り上げます。

このドラマは、

空気を読むことに疲れ、

すべてをリセットするという

思い切った行動に出た28歳の女性を取り巻く日常を描き、

新しいタイプのドラマとして

多くの人から支持を得ました。

評価された理由を探り、

テレビドラマの可能性を探ります。


<出演>
碓井広義さん(上智大学教授)
中井芳彦(TBS制作局 プロデューサー)

キャスター:
豊田綾乃(アナウンスセンター)

 

番組サイトより


ホームドラマの形した哲学ドラマ「俺の話は長い」

2019年11月21日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

生田斗真「俺の話は長い」

ホームドラマの形した哲学ドラマ


今期、水曜ドラマ「同期のサクラ」と並ぶ、日テレの新機軸といっていい。生田斗真主演「俺の話は長い」のことだ。 

確かに主人公の岸辺満(生田)は起業に失敗した後、6年も無職を続けている。就職活動はせず、時々小さなバイト(草野球の審判とか)をする程度。自分には「働かなくていい才能」があると主張する堂々のニートだ。

この満が、とにかく、よくしゃべる。もともとは実家で喫茶店を営む母親(原田美枝子)と2人暮らしだったが、姉(小池栄子)が家のリフォームを理由に夫(安田顕)や娘(清原果耶)と共に転がり込んできた。突然5人家族となった岸辺家の居間で交わされる雑談。満は、どんな話題でも滔々と持論を展開していく。

昔見た映画のタイトルが思い出せない時、「スマホで検索すれば」と提案されると、「最短時間、最短距離で歩く人生に、おもしろい木の実は落ちていないよ」と説く。

またハロウィーンに便乗しようとする商店街の人たちに、「世間の浮ついた波にのみ込まれて、本当に残さなくちゃいけない祭りや花火大会が廃れていく」とクギを刺す。その言葉には独特の説得力があり、聞く側もふと我に返ったり自問したりするのだ。

物事の本質を問うという意味で、満は一種の「哲学者」かもしれない。ホームドラマの形を借りた「哲学ドラマ」。やはり新機軸だ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2019.11.20


言葉の備忘録116 食べたいものは・・・

2019年11月20日 | 言葉の備忘録

 

 

食べたいものはその日に、

見たいものはその週に、

行きたいところはその月に。

 

「暮しの手帖」96 2019年10-11月号


復活ドラマ『まだ結婚できない男』の明日はどっちだ!?

2019年11月19日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

復活ドラマ『まだ結婚できない男』の

明日はどっちだ!?

 

長い年月を経て、かつてのヒット作の続編を世に送り出す。それが「復活ドラマ」です。

阿部寛主演『結婚できない男』(関西テレビの制作、フジテレビ系)が放送されたのは 2006年。もう13年も前になります。

ライブドアの堀江貴文社長が逮捕され、トリノ冬季オリンピックが開催され、オウム真理教事件の麻原彰晃の死刑が確定し、安倍晋三内閣が発足し、さらに年末には地上デジタル全国放送が始まりました。

応援していた日本ハムファイターズが日本一になったことを除けば、あまりパッとしない年でしたね(笑)。

2006年、主人公である建築家の桑野信介(阿部)は40歳の独身男でした。「高身長、高学歴、高収入」ではありましたが、かなり独善的かつ偏屈な性格の持ち主です。言わなくてもいいことを、すぐその場で口にする皮肉屋でもありました。

13年後の復活となった『まだ結婚できない男』ですが、53歳の桑野はちっとも変わっていません。というか、「変わってもらっては困る」のが、このドラマなのではないでしょうか。

自分の事務所を持ち、マンションで一人暮らし。クラシック音楽をフルボリュームで流して指揮者の真似事をするのが趣味です。独善・偏屈・皮肉も相変わらずで、外では「一人しゃぶしゃぶ」を味わい、家では指揮棒を振って一人悦に入る。

本人は変わっていませんが、周囲には変化がありました。かつて関わりのあった内科医の早坂夏美(夏川結衣)は弁護士の吉山まどか(吉田羊)に。

隣人の女性も、田村みちる(国仲涼子)から戸波早紀(深川麻衣)になりました。そこにカフェの雇われ店長、田中有希江(稲森いずみ)も絡んできています。

この女性陣との関係なのですが、うーん、ドラマは中盤まできているのに、見ていて、どうもイマイチしっくりきません。いや、それぞれ魅力的な女性なのですが、ややもすると夏美(夏川)やみちる(国仲)を懐かしく思ったりして・・・。

その原因をシンプルに言えば、当時は桑野が夏美と結婚してもおかしくなかったからではないでしょうか。最終的にはダメでしたが、少なくとも可能性は十分にありました。また桑野の価値観や女性たちとの距離感のズレから生まれる笑いを楽しむことも出来ました。

ところが、かつての『結婚できない男』全編を見てきた視聴者は、すでに知ってしまったのです。桑野が「結婚できない男」なのではなく、潜在的に「結婚したくない男」だということを。

そして13年たった桑野を見ても、「まだ結婚できない男」ではなく、「まだ結婚したくない男」であることが明白です。

さらに国勢調査によれば、2010年に20・1%だった、男性の50歳時の「未婚率」は、2015年には23・4%。それから4年たった現在は、もっと上昇しているはずです。つまり、13年前と比べて、桑野はどんどん「普通の人」になっているのです。

そうなると、まどか(吉田)も、早紀(深川)も、有希江(稲森)も、一種の背景へと後退し、今回の続編で楽しむべきは、桑野の「変わらなさぶり」一本勝負ということになります。

「もう少し早く続編を見たかった」というのは、無い物ねだりになってしまうでしょう。あの13年前のような「盛り上がり」を求めるのは難しいかもしれませんが、阿部さんの怪演、いえ快演のおかげで、十分楽しめる作品であることに変わりはありません。


【気まぐれ写真館】 見上げれば、天女!?

2019年11月18日 | 気まぐれ写真館

日本橋2019


気鋭の女優たちが、いい味出してる「秋CM」とは!?

2019年11月17日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

西野七瀬に桜井ユキ。

気鋭の女優たちが、

いい味出してる「秋CM」とは!?

 

西野七瀬、必殺の「ネイティブ関西弁」炸裂!

今年4月から9月まで放送されていた、ドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)。

マンションで起きた連続殺人の黒幕が、西野七瀬さん演じる女子大生、黒島沙和だったのは、なかなか衝撃的でした。清楚(せいそ)なイメージの西野さんと「衝動を抑えられない殺人鬼」のギャップが大きかったからです。

そんな西野さんが、経済産業省「キャッシュレス・ポイント還元事業」のCMに登場しました。

パン屋さんの店先で、美味しそうなパンを物色中らしい。と思って見ていると突然、「クリームパン、めっちゃ買うたろ!」、「カレーパンもいかなあかんな!」と関西弁でハシャギまくるではありませんか。

この「いかなあかんな」のニュアンスがハマっているし、何より、「関西弁」があまりに自然かつリアルで、二度びっくりです。

思えば、西野さんは大阪出身。流暢な関西弁も当たり前なんですね。しかし、見る側の思い込みを突き崩す、その意外性が笑いを誘うのです。また見慣れた西野さんとのギャップが楽しくて、「関西弁女子」がチャーミングであることを再発見したのでした。

桜井ユキ、しっとりと演じる「家族の物語」

結婚披露宴のテーブルに、意外なチーズケーキが出てきます。しかも、それは新郎が慣れ親しんできた、亡き母(寺島しのぶ)の手づくりの味でした。新郎は驚きます。

すると新婦(桜井ユキ)が立ち上がり、語り始めます。「結婚式には出られませんが、あなたに一つ、お願いがあります」という書き出しの手紙に、レシピが添えられていました。そのチーズケーキは、幼い頃から息子が何かで頑張った時、母が必ず作る「ご褒美」だったのです。

東京ガスのCM「家族の絆 母のチーズケーキ」編。母親役の寺島さんの淡々とした演技は、例によって拍手するしかありません。一方、出ている時間は短いのに、見る側に強い印象を残す、新婦役の桜井さんも只者ではありません。

7月クールの主演作『だから私は推しました』(NHK)は、第17回コンフィデンスアワード・ドラマ賞の優秀作品賞を受賞。桜井さんは、地下アイドルを応援することで、徐々に自分を解放していくアラサー女子を好演していました。今回演じている、しっとりした新妻は、桜井さんのポテンシャルの高さの証左でもあります。

息子の妻へと渡された一皿のバトン。そこに込められた母の思い。そして大事に受け取った、新たな娘。深まる秋にふさわしい「家族の物語」です。


11月16日 「実相寺昭雄DAY&NIGHT」開催!

2019年11月16日 | 映画・ビデオ・映像

 

高円寺シアターバッカス

「実相寺昭雄DAY&NIGHT」

 

*11/16 参加決定!!!
柴俊夫氏(主演・万城目淳役)

11/16 JR山手線/京浜東北線 一部区間運休
どうぞお気をつけてご来場ください。

ウルトラ世代が最初に見つけたスタークリエイター!映画人としても、デビュー作でロカルノ映画祭最高賞を受賞の快挙!映画とオペラをともに手がける、稀有の日本人演出家!巨人・実相寺昭雄の足跡に迫る特別企画がスタートします。(協力:実相寺昭雄研究会)

vol.1は実相寺ワールドの源流ともいうべき「ウルトラQ」初の映画化作品「ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説」(1990年)を上映!

バブル終焉期、紆余曲折を得て、実相寺昭雄&佐々木守コンビに委ねられた傑作TVシリーズ「ウルトラQ」の映画化。そのとき、監督・実相寺昭雄は何を考え、何を作品に刻み込んだのか?


長年名コンビとして実相寺作品を支え、今作品でも撮影監督を務めた中堀正夫氏他、当時を知るゲストとともに、映画を読み解き、考え、語り合う一日です。実相寺昭雄ファン、ウルトラファンのみならず、若きクリエイター必見の企画がスタートします!

「実相寺昭雄Day&Night」vol.1
2019年11月16日(土)

13:00〜「ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説」(上映のみ)
15:30〜「ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説」
17:45〜 トークセッション(サイン会/写真撮影付き)
中堀正夫氏(「ウルトラQ ザ・ムービー 星の伝説」撮影監督)
堀内正美氏(俳優・浜野哲史役)
*参加決定!!!
柴俊夫氏(主演・万城目淳役)
20:00〜 懇親会(ゲスト/関係者参加します)

 参加料
  13:00〜/15:30〜上映のみ参加 ¥1,500-
  15:30〜上映&トークセッション参加 ¥4,000-
  20:00〜懇親会 ¥4,000-


言葉の備忘録115 なんかやろうと・・・

2019年11月15日 | 言葉の備忘録

 

 

「なんかやろうと思ったとき、

   お金がないことに負けたらあかん」 

 

朝ドラ「スカーレット」深野心(イッセー尾形)

 

 


「ミス・ジコチョー」 現代社会を反映する失敗学の物語

2019年11月14日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 


NHK「ミス・ジコチョー」

現代社会を反映する失敗学の物語

 

起きてしまった失敗の本質を検証し、失敗をどうやって今後に生かしていくかを検討するのが「失敗学」である。ドラマ10「ミス・ジコチョー~天才・天ノ教授の調査ファイル~」の見どころは、物語にこの失敗学を導入していることだ。

主人公は東京第一大学工学部教授の天ノ真奈子(松雪康子)。本来の専門は工学だが、「失敗学」の提唱者でもある。あらゆるジャンルが対象となる失敗学を武器に、さまざまな事故調査(ジコチョー)に挑んでいく。

これまでに化学工場の爆発事故、ライブハウスでの火災事故などを扱ってきた。真奈子は現場の状況や関係者を調べ直すことで、過去に起きていた小さな失敗に着目し、そこから新たな大失敗の原因に迫っていく。必要なら海外での実証実験もいとわない。

第一に、この真相解明のプロセスが、見る側の予想を超える展開となっているのが見事だ。失敗から目を背けたり、隠そうとしたりする組織が、より大きなダメージを受ける事例が増えている現代社会を反映している。

次に松雪康子の好演。シャープな輪郭にメガネが似合い、クセのあるキャラクターをさらりと、そして見せ場ではキリリと演じている。

このドラマは八津弘幸(「陸王」他)らの脚本家によるオリジナル・ストーリー。先週からの医療事故編も「ドクターX」にケンカを売りそうな迫力だ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!2019.11.13