橋長戯言

Bluegrass Music lover, sometimes fly-fishing addict.
橋長です。

EHAGAKI #301≪人間は考えるアホである≫

2015年03月25日 | EHAGAKI

 

お世話になります

今週あたりが桜も見頃でしょうか
新たな門出の春ですが、少し振り返って
2010年 筒井康隆 著「「アホの壁」を最近になって読みました

アホの壁 (新潮新書)
筒井 康隆
新潮社

いわずと知れた 養老孟司 著「「バカの壁」を意識して書かれたタイトルであることは解かります

バカの壁 (新潮新書)
養老 孟司

新潮社

「人間の器量」というタイトルで、新書の執筆を求めて来た新潮新書編集部に対し、このタイトルで切り返そたそうです

まず この本がとりあげる「アホ」の定義は

ユーモアやギャグやナンセンスには文化的価値が伴い、時には芸術性を持つことだってある ここで言う「アホなこと」とは、文化的価値など皆無のつまらない物言いのことである

序章  なぜこんなアホな本を書いたか
第一章 人はなぜアホなことを言うのか
第二章 人はなぜアホなことをするのか
第三章 人はなぜアホな喧嘩をするのか
第四章 人はなぜアホな計画を立てるか
第五章 人はなぜアホな戦争をするのか
終章  アホの存在理由について

今回は「第四章 人はなぜアホな計画を立てるか」を取り上げてみます


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

なぜこんなアホな本を書いたのか

「バカの壁」がベストセラーになったので、二匹目の泥鰌を狙ったのであろう、と言われればそうだとしか言いようがなく、「二匹目の泥鰌を狙うアホ」という項目を立てて自らを槍玉にあげ、謝罪するしかない
しかし、二匹目、三匹目は「いる」とも言われている

さまざまな計画の失敗例は、成功例と並べる形で各種HOW TO本に詳しいが、多くは企業向けで、アホな計画を立てるに到った人間心理までは述べていない
元コカ・コーラ社長 ドナルド・R・キーオの「ビジネスで失敗する人の10の法則」は、ある程度成功している企業と経営者に役立つように書かれたので本書と重なる部分が多い

法則1 リスクとるのを止める(もっとも重要)

法則2 柔軟性をなくす

法則3 部下を遠ざける

法則4 自分は無謬(※むびょう)だと考える ※理論や判断にまちがいがないこと

法則5 反則すれすれのところで戦う

法則6 考えるのに時間を使わない

法則7 専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する

法則8 官僚組織を愛する

法則9 一貫性のないメッセージを送る

法則10将来を恐れる

法則11 仕事への熱意、人生への熱意を失う

いずれもタイトルをみただけで解説なしに理解できる法則である

以下 「ああ、あれのことだな」と頷けるようなお馴染みの事例を

 

1.親戚友人を仲間にするアホ

※これも解説不要、テレビドラマによく出てくるヤツで、その顛末も想像通り

 

2.正反対の中をとるアホ

デザイン案を2~3提案、決定権をもつ重役なり部長が言う「このデザインのこの部分を右、こっちのデザインのこの部分で左側をつくってくれ!」
二つの案をくっつければよさが倍になるだろう、という営業あがり?の素人の考え

提案側はそれではダメと解っているので一生懸命説得を試みる

しかしこの手の偉い人は、一旦言い出すと意見を撤回しない、まして部下が同席していた場合などさらに強気になってしまう
これは本来、徹底して避けなければならないことは確か。マルクスとマクルーハンの論理の中をとったらどうなるか?
まぁ、今では共産主義と資本主義が併存している国家もあるが

 

3.成功の夢に酔うアホ

脳内物質のドーパミンは中枢神経系に存在していて、刺激を受けると作動する

自分の計画が成功した時の夢に酔っている人間はこのドーパミンが作動し続けている状態にあり、その刺激とはまさに成功した時の夢そのものである

こういう状態の人間は、おのれの計画のすばらしさに有頂天であり、そこに何らかの欠陥があることなどは想像すらしない。
大脳にしてみれば、本来ならセロトニンというドーパミンの作動を抑止して興奮を沈静化させる化学物質を作用させるべきところだが、何しろ成功した夢というのは脳にとっても快感なので、ついそのままにしてしまい、逆に不快を惹き起こすような、万一失敗したら?などという想像はさせまいとする

こういう人間は一度や二度失敗してもまた繰り返す
「あの人はいつも大きいことばかり言って、、、」バーのマダムが顔をしかめて吐き捨てるように言うが如き

 

4.よいところだけを数えあげるアホ

成功の夢に酔うアホよりほんの少し理性的な人、計画に多少の不安はあるが自分を納得させたい気持ちからその不安を追及せず、いいところだけを何度も数え上げそれらを帳消し自己満足する

そしてこういう人たちに限って、結果が満足のいくものでなかった時ですら、まだよかったことのみを数えあげたりする

 

5.批判を悪意と受け取るアホ

成功の夢に酔っていたり、よいところだけを数えあげる人は、計画の不備や欠点を他人から指摘されると腹を立てる
そうした不備欠点こそ、自らがうすうす気づいていながら眼をそむけているのである
本来そうした批判は、自らの計画に対して自ら行うべきものであって、その怠慢まで非難されているように思えてさらに腹がたつ

むろん怒っている本人にそのような自省はない

不備も欠点も無意識の中に追いやって、今やそんなモノはないという信念を抱いているからであり、それが現実的には少しの指摘で脆くも崩れ去ってしまうようなヤワな計画であるからこそ、その確信はいやが上にも頑強なのである

だから指摘された理由を他の理由にすり替えるのであり、あいつはおれに悪意を持っているのだ、失敗させようとたくらんでいるのだ、、、、

そして指摘した者に対して嘲笑を返す お前には関係ないことだと言い放つ 計画に一枚かんでいる人物であれば遠ざける

気をつけねばならないのは、こういうアホは失敗した時ですら、以前批判した者を腹立ちまぎれに失敗の原因にしてしまうことがある
あいつが悪い、あいつに邪魔された、それはもうアクロバット的な論理でもって他人に責任を転嫁する
こういう能力では天才的であり、突然アホではなくなるのだ
もしかするとアホな計画を立てる補償としてそのような才能を持っているのかもしれない

 

6.自分の価値観にだけ頼るアホ

「あの人に住宅の設計を頼むと窓ばかりの家にするから、家具の置き場がなくて困る」といわれる建築設計士は、採光だけにこだわりを持っているのであろう
こだわりがひとつかふたつというのでは、明らかにプロとしての才能に欠けている

例えばある思想に感銘を受けて、すべてをその思想で割り切ると、視野の狭窄に陥りやすい
社会主義リアリズムを凡庸な作家が書く、登場する政治家や会社の社長や重役、金持などわすべて悪人、労働者はみな善人というのではすぐ読者に飽きられてしまう
よほどしっかりした社会的良識がないと失敗する

 

7.成功した事業を真似るアホ

『国家の品格』を超す三百万部を突破させた『女性の品格』は、柳の下の二匹目の泥鰌が一匹目よりも大きかった好例だが、その後に出た品格本は四年間で百数十冊を数えた

ここまでくると思考停止も甚だしく、もはやアホの行為と言って差し支えなかろう

『離婚の品格』 『遊びの品格』 『男の品格』 『猫の品格』 『教師の品格』 『会社員の品格』 『校長の品格』 『薄毛の品格』 『名将の品格』 『横綱の品格』 『プロ野球の品格』 『母の品格』 『学生の品格』 『官の品格』 『地方の品格』 『弁護士の「品格」』 『文章の品格』 『杖の品格』 『名古屋の品格』 『下着の品格』 『夫婦の品格』 『女の子の品格』 『男の子の品格』 『英語の品格』 『家づくりの品格』 『親バカの品格』 『エースの品格』 『韓国の品格』 『銀行の品格』 『飲んべえの品格』 『女体の品格』 『老いの品格』 『老舗の品格』 『後継者の品格』 『親の品格』 『恋の品格』 『自分の品格』 『病院の品格』 『朝めしの品格』 『県民の品格』 『腐女子の品格』 『父親の品格』 『恋の品格』 『花嫁の品格』 『会社の品格』 『月イチゴルフの品格』 『教育の品格』 『子供の品格』

これで約三分の一 品格もへったくれもあったものではない

※エノケン全盛時代、地方の劇場に「エノケソ」という芸人が居たそうです

 

8.専門外のことを計画するアホ

成功した事業を真似る、素人ほどそれを真似るのは簡単だと思ってしまう、困難さ、苦労、特殊な能力を要求されることなど知らないから、自分や親戚友人を仲間にしてやってしまう 
アマチュアなので素人でも出来ると懸命に言い聞かせながら

「あんなのは誰にでも出来る」という科白は、本来ならその難しさを知っているプロの口からは出ない筈のものである

 

9.少ない予算で格好だけつけるアホ

高度成長下の1970年 大阪万博 各団体による各パビリオンはそれぞれ面白い工夫を凝らすことにしのぎを削った 一流のデザイナーに依頼し科学者を顧問にし、各国は自国料理のレストランを開いてその味を競った
結果、六千四百万人という目標を大幅に上回る入場者数で大成功となった

次いで1981年の神戸ポートアイランド博覧会の成功によって地方の博覧会がブームになり、バブル景気で地方の活性化を謳う自治体と広告代理店の思惑が一致し、全国各地の多くの博覧会が成功した

この時期、北海道で開催された「世界・食の採点」の大失敗は語り草となっている
道庁主催も協賛会社が集まらず、財団をつくって借金したものの、入場料が高いだけで目玉の展示もなく、九十億円もの赤字を出してしまった

何も面白いものがない、子供が喜ぶ展示が皆無だというので大失敗に終わったのが2009年の「横浜開国・開港博」である
超低予算でやれることが何もなく、唯一の目玉がでかい機械仕掛のクモのみで、しかも会場の外からも歩く姿が丸見えというのでは、入場者が少ないのはあたり前である 予想していた四分の一というなさけない数で、二十五億円もの赤字を出してしまった
どちらも官主催の博覧会であったが「少ない予算で恰好だけつけるアホ」は誰かといえば、北海道の場合は誰の言うことも聞かず自分の考えを押し通した知事、横浜の場合は施工業者に少ない予算を丸投げし、任期途中で辞任した市長であろう

 

■ ■ ■ ■

 

具体的に特定の人の顔を思い浮かべてしまいます

いやいや 自分のことを無意識の中に閉じ込めてはいけませんね
自分にこそ、手厳しく真摯に受け止めなくてはなりません


私自身、2004年に失敗についてこんな文章を書きました
最後に自戒の念をこめて

 

■ ■ ■ ■

 

≪経験を殺す≫2004.3.10

コトを始める前の常套句に「経験を活かして云々・・・」という言葉があ ります そして失敗します

国家 会社 学校に至るまで組織に失敗はつきものです その失敗の基本 が“個人の失敗”です “個人の失敗”が協力しあうと-1-1=-2ではなく-10にも-20にもなり恐ろしい負のパワーが生まれます


        ?  ?  ?  ?  ?

ではどうすれば見事な失敗が出来るのか

 まずコミュニケーションは禁物です 相談や報告 日常の連絡は成功につながってしまいます ビジネスにおいては常に供給側の視点をもつ必要が あります 自信を持つことも不可欠です 自分や現状に満足することが安定的で継続可能な失敗を生みます 自分の言葉が何者にも変えがたく安らげるのです

 “気づいたこと”を心の中にしまい様子を見る
そうすることによってより大きな失敗を体感できます しかもその失敗は自分ではなく他人がしてくれます 判断に迷った時は必ず安全策をとり動かないことが大切です  但し積極的に動くことによって発生する失敗は見事なものでそのダメージは計り知れないものがあります
 しかし積極策は成功に結びつく場合も多く確実に失敗する為には従来の経験を活かした安全策をとるべきです

小さな間違いを育み より大きな失敗に成長させたいものです 

        ?  ?  ?  ?  ?

「経験を活かして」とは 今迄の失敗の経験を活かすというのが本意なのでしょうか “経験を殺す”ことも“見事な失敗”に巡り逢わない為には 必要なんでしょうね
LS HAGAKI Vol.53 ≪経験を殺す≫2004.3.10


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ということでした

誰にでもある「アホ」の部分 上手にお付き合いしたいものです


                         ではまた

 


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