橋長戯言

Bluegrass Music lover, sometimes fly-fishing addict.
橋長です。

EHAGAKI#411≪意識を意識せよ≫

2021年05月23日 | EHAGAKI

お世話になります

COVID-19にはくれぐれもご用心下さい
ウイルスそのものも当然ですが
そこから発生する分断にも油断出来ません

意見が違うから、と言っても敵ではありません
分断という短期的な病魔は、大きな脅威
くれぐれもご用心下さい

さて、最近は図書館のヘビーユーザーになりましたので
ベストセラーと言われる本もよく見ます
(読んでます、とは言ってません)

以前このEHAGAKIでも取り上げた
人類の過去を描いた「サピエンス全史」
未来を描言いた「ホモ・デウス」
そのユヴァル・ノア・ハラリの
新刊「21 Lessons」では、現在を描いています

宣伝文句には

ついに人類の「現在」を問う!

とあり、かなり大げさ
「全米が泣いた」的ではありますが
そこが図書館の良いところ、ひとまず借りてみる
「ホモ・デウス」は借りた後、電子版を買いましたが
今回の「21 Lessons」は多分買いません

今回のお題は「意識を意識せよ」であります

参考図書)
◇21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考
ユヴァル・ノア・ハラリ:著、柴田裕之:訳
河出書房新社 (2019/11/19)



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

◆人間の意識
 についての研究開発はほとんど行なっていない

私たちは生き物としての長期的な必要性ではなく
経済制度や政治制度の目先の必要に即して
さまざまな能力の研究開発を行なっている

上司は
迅速に電子メールに返信することを望んでいるが
私が食べ物を味わい堪能する能力には関心がない

その結果
私は食事中でさえメールをチェック
それとともに自分自身の感覚に注意を払う能力を失っていく

経済制度は私に
投資ポートフォリオを拡大し多様化するように圧力をかける

思いやりを拡大し多様化するように促す動機は与えてくれない

だから私は
株式取引の神秘を理解しようと奮闘するものの
苦しみの深い原因を理解するための努力はしない

この点で

◆人間は家畜に似ている

私たちは品種改良によって
膨大な量の乳を出す従順な雌牛を誕生させた


そうした牛は、乳量以外の点では
野生の祖先にはるかに劣る

彼らは俊敏性の点でも
好奇心の点でも才覚の点でも
祖先に及ばない

私たちは今
膨大な量のデータを生み出し
巨大なデータメカニズムの中の


◆効率的なチップとして機能する従順な人間
 を創り出そうとしている

「データ雌牛」が
人間の潜在能力を最大限に発揮することはありえない

人間の潜在能力の全貌は想像すらできない
なぜなら
人間の心について解っていないから

にもかかわらず
私たちは人間の心の探究にはろくに投資せず
ネット接続の速度とビッグデータアルゴリズムの
効率を上げることに専心している

気をつけないと


◆ダウングレードされた人間が
◆アップグレードされたコンピューターを誤用して

自らとこの世界に大惨事をもたらすことになる



◆吉報がある

今後数十年間は、AIが意識を獲得して人類を奴隷にしたり、
一掃したりする本格的な悪夢は無さそうである

アルゴリズムが
意識的に私たちを操作し始めることはありそうにない

アルゴリズムが
意識を持っことはない

我々は知能と意識を混同しがち

AIが人間の知能を凌ぐには
意識を持たなくてはならない、と思い込みがち

AIについての映画や小説は
例外なくコンピューターやロボットが
意識を獲得する奇跡的な瞬間を中心に展開する

その瞬間から
人間の主人公がロポットと恋に落ちたり
ロポットが人間を皆殺しにしようとしたり
その両方が同時に起こったりする

しかし
現実は、AIが意識を獲得すると考える理由はない

なぜなら


◆知能と意識はまったくの別物だから

知能とは
問題を解決する能力を指す
意識は
痛みや喜び、愛、怒りといったものを感じる能力を指す

両者を混同しがちなのは

人間や他の哺乳動物では
知能と意識が切っても切れない関係にあるから

哺乳動物はモノを感じることによって
ほとんどの問題を解決する

ところが
AIはそれとはまったく違う方法で問題を解決する

高度な知能へと至る道はいくつかある
意識を獲得する段階は、そのうちの一部にすぎない

飛行機は
羽毛を持つようにはならなかったが
それでも鳥より速く飛ぶ

AIは感情を持たないまま
哺乳動物よりも上手に
問題を解決するようになるかもしれない

人間の疾患を治療したり
人間のテロリストを識別したり
人間の配偶者を推薦したり
人間の歩行者だらけの通りで乗り物を誘導したり
その為には
人間の感情を正確に分析しなければならない

それは
自らはまったく感情を持たないままでも出来る


◆アルゴリズムは

喜んでいるサルや怒っているサル
恐れているサルの異なる生化学的パターンを認識する為には
感じる必要はない

しかし
独自の感情を発達させるのが
「不可能ではない」ことは言うまでもない

不可能だと言い切るほど
私たちはまだ


◆意識についてよくわかっていない

三つの可能性を考察

1.意識は有機生化学と結びついており
非有機的システムに意識を持たせるのは不可能である

2.意識は有機生化学とは関係なく、知能とは結びついており
AIは意識を発達させられる
一定以上の知能を持つ為には、意識を発達させざるをえない

3.意識は有機生物学とも高度な知能とも結びつきはない
したがって
AIは意識を発達させるかもしれないが
必ずしもそうするとはかぎらない
まったく意識を持たないまま、超知能を持ちえる

現時点でこれら3つの可能性のどれ一つとして排除できない

さらに
「意識」についてわずかしか知らないからこそ
AIに意識を持たせられるとは思えられない

したがって
AIには途方もない力があるにもかかわらず
当面はその使用は
ある程度まで人間の意識に依存し続けるだろう



◆何が危険か

私たちがAIの開発に多くを投資し
人間の意識の育成を顧みなければ

非常に高度なAIが
「人間の生まれつきの愚かさ」を助長するだけになるかも


◆存在意義の喪失

私たちは今後数十年間に
AIの反乱に直面することはなさそうだが

AIは
私たちの情動的なスイッチの入れ方を
母親よりもしっかり心得ている

その超人的な能力を使い
自動車であれ
政治家であれ
まるごと一つのイデオロギーであれ
私たちの心の奥底にある恐れや憎しみを利用する

SF作品では
炎と煙に包まれた劇的な大惨事
という破滅的な結末になりがちだが

現実は
マウスのクリックひとつがもたらす
平凡な破局に直面するかもしれない

私たちを待ち受けている危険は
デジタル独裁国家だけではない

社会的セーフティネットと経済的平等がなければ
自由主義は意味がない

だが
ビッグデータアルゴリズムは
自由を消し去り
かつてないほど不平等な社会も生み出しかねない

あらゆる富と権力が
ほんの一握りのエリートの手に集中する

一方で
ほとんどの人が搾取ではなく
それよりもはるかに悪いもの

すなわち
「存在意義の喪失」に
苦しむことになるかもしれない

そのような結果を避けるには
AIの改良に投入するのと、同じだけの資金と時間を

「人間の意識の向上」

に注ぎ込むのが賢明だろう


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


ということでした

恐ろしい今
もっと恐ろしくなる未来?

昨年から締めのご挨拶に書いている
「心の栄養補給」がいかに大切であるか
ということでしょうか

厳しい時は続きます
皆様におかれましても
心の栄養補給は怠らない様、ご自愛下さい


ではまた