船着き場の朝は、北西の風がやや強かった。
「風は大丈夫ですかね」
「多分、昨日ほどではないと思うよ」
「風が強くなければ大丈夫ですね」
「さあ、行ってみようや」
従兄弟の信司を乗せて出船。
信司は、2日後には仕事で、暫く釣りが出来なくなる。
「今日は、頑張っどね」
「前回取り逃がした大物を取りたいですね」
「頑張れ、風が有るから少し揺れるけど、頑張れよ」
ポイントに着くと、北西の風がやや強く潟からの波で船が揺られる。
「良い色しているね」
「上り潮が沖に出ているね」
0.8ノットくらいで、北東方向に船が流れていく。
「おおっ、来た!」
嬉しそうな信司の声が響いた。
「楽しめよ。ゆっくりやれよ」
上がってきたのは、良型のオオモンハタ。
続けて、40センチ近い真鰺も来た。
「良い感じの出足になったね」
自然と笑顔になる。
「今日は、寒いのでハタ鍋にしようかな」
信司と一緒に竿を出していた私にも、アタリが来た。
良型のオオモンハタ。
「今日は、ハタが調子良いね」
魚探には海底から5メートルほど浮き上がって、ベイトの群れが映っている。
「来た。信司来たよ」
私のジグに、大当たりが来た。
ドラッグが鳴り、ラインが出ていく。
親指を添えて、ラインの出を押さえに掛かる。
「よっしゃ、止まった。行くぞ!」
気合いを入れて、腹に力を込めてラインを巻き取る。
相手が再度、強烈に走った。
「あっ!!」
20号のリーダーがスパッと切られた…。
「何やったろかい…。口惜しいな…。腹立つね…」
やりようのない気持ちだが、逃げられた物はしようがない。
リーダーを結び直す。
その間、信司に気持ちの良いアタリが来た。
時折、ドラッグが鳴りラインを引き出されている。
「ドラッグを緩めにしています」
上がってきたのは、1.5キロクラスのアオハタ。
「黄色いけどアオハタ」
チョットした、オヤジギャク。
「良い型やね。久し振りのアオハタやね」
この頃に一旦止んでいた北西の風が、強烈に吹き出した。
「風が急に強くなってきたね」
風を避けようと、色々移動を繰り返すが、結局巧く風を避けられるポイントが見つからない。
「今日は、帰ろうか。残念だけど…」
「3月に帰ってきたら、直ぐに連絡しろよ」
「はい、直ぐに連絡します」
「その頃は、真鯛にイサキ、ハタ等々頑張って釣ろうや」
「今日は、残念です」
口惜しい気持ちを次に持ち越して、帰港した。
「北西の強風にやられた。口惜しい!」