遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

米は酒の命なのに!

2008-09-09 22:05:02 | 
清酒3万本に使用、回収へ=「辰之巳」から原料購入-熊本の酒造会社(時事通信) - goo ニュース
鬼ころしなどの銘柄のお酒に三笠フーズの関連会社から購入した米が使われていたそうだ。鬼ころしは美少年酒造の出している普通酒クラスの銘柄。熊本の美少年は九州屈指の銘酒であります。美少年の大吟醸ってすんごく美味いよ。鬼ころしという名前のお酒は日本各地にありますが、熊本の鬼ころしは美少年酒造です。熊本という土地は清酒醸造に使う黄麹を培養できる南限に位置します。また、そもそも清酒醸造は温帯の醸造酒で最も低い醸造温度を要求するので、温かい九州ではなかなか難しいんですな。しかし、熊本という土地の冬はけっこう寒いのと水がいいってことで、美味しい清酒を醸すことが出来るのでしょう。この蔵を三笠フーズなどというしょーもない会社のために無くしてはいけません。日本の醸造文化の大きな危機であると思います。

「薩摩宝山」を自主回収 汚染米購入(西日本新聞) - goo ニュース
芋焼酎なんだから米の汚染は関係ないという誤った認識がありますが、どんな焼酎も基本的に1次醗酵では米を使います。米麹なんです(麦を使うケースもありますが)。芋で造った麹を使った焼酎もありますが、技術的に手間暇かかってますんでそれならそれで宣伝しているはずです。

さて、上記のニュースで出てくるカビ毒についても説明しておきます。ここで問題なのはアフラトキシンっていう毒素でして、Aspergillus flavusが産生します。昔、アフリカから輸入したナッツ類が汚染されてまして騒ぎになりました。この毒は肝臓ガンを誘発しまして、熱処理でも全く毒性を失いません。ダイオキシンよりも怖いんだよ。分類上、flavusが麹カビAspergillus oryzaeとそっくりなのが大問題。形態学的に強いていえば、分生子(無性胞子)にある突起がちっと違う。はっきり言って、アフラトキシンを造るかどうかクロマトグラフィーで見分ける方が早い。まあ、とりあえずナッツを買ってきてカビが生えてたら食うなっ。

今日の話題が熊本の焼酎の話なんで球磨焼酎を飲んでいます。ちびちび飲みながら土佐のじいちゃんの話を思いだしました。生前、彼は焼酎の密造を国税に見つかって、高松まで罰金を払いに行かされたことがある。土佐のじいちゃんは孫のうちの2人が醗酵工学で博士号をとるなんて想像してなかっただろうなぁ。俺はあの世でじいちゃんに密造焼酎の作り方を教わるつもりだ。そこまで国税は追っかけてこないだろうからね。(笑) こうして生きてる間にいろんなお酒を飲みながら手土産の酒をいろいろと選んでる次第であります。贈り物を選ぶって楽しい作業なんだ。今夜のお酒も美味いよ。


本日のお酒:菊水 純米吟醸 + 熊本米焼酎 球磨の急流
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする