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助産師、保健師と予防接種

2011-07-01 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
コメント欄にいただいたご指摘から、予防接種と助産師・保健師についてのお話。

ちなみに、まず「看護師」の免許をとりまして、「助産師」・「保健師」の養成課程を経てそれぞれの国家試験を受けることになっています。
(臨床で看護師をしなくてもこの2つの免許は取れます)

(市民の皆様には知られていないことですが)医療関係者は実はワクチンについてあまり勉強しないままその免許を取得しています

研修医にたずねると、「1コマくらいやったかなあ」。(看護学校も同様)

国家試験には「さて生ワクチンはどれでしょ」的な問題があるそうで、医学生や看護学生が、なんとなんと、ごろあわせて「ポリオといったら生だよねえ!」的暗記をしているのだそうです。

とほほ! いや、もっと大きく とほほ!

・・知識はそれはそれで勉強会などでおぎなえばいいのですが、中には消極的というより、「ワクチン?そんなものやめたほういがいいって」と否定派も。

“リテラシー”といえば、いろいろな意見を聞いて最終的に自分で判断・選択ねってことなんですが、最初に出会った医療者やかかりつけ(担当)の人に「いやーやめたほうがいいですよ」いわれる人たちも実際にはいるそうです。

第一印象はとても大事なわけです。

もともと「しません」と決めている親御さんもいます。
「予防接種は一つも、受けたことがなく、そして定期検診にも、行ったことがない」
「以前、保健所から、何故、受けないのか電話がかかって来たことがあり・・」
こちら
「子供の病気に関しては、予防接種や薬をむやみに使わずに、自然に感染し、自然に経過させることが一番の基本だと考えています」
こちら

ということで。

赤ちゃんを産む前に関わる医療者がカギだとおもい、助産師さんの読むメジャーといわれる医学書院の雑誌に予防接種特集を提案したのはそんなことからです。

なぜここからか?

コメントやメールに
「実は、助産師さんがやめたほうがいいというから予防接種を一切してこなかった。今からどうすればいいのか。間に合うんでしょうか。たくさんあるみたいですが」
という相談と質問もコンスタントにくるのです。

どうしてその助産師さんが反対しているのか、自分はさておき、クライアントにまでそういってしまうのか。

その方のケアを受ける親御さん全員がそう考えるとは思いませんが、今後も医療者のかかわりが原因で赤ちゃんが接種機会を逃すことがないように、まずは関係者啓発を、です。

「助産雑誌」2011年7月号

■日本の予防接種の現状と課題
■助産師に向けた予防接種の研修会を開催して
■妊娠・授乳とワクチン
■ワクチン接種において,妊産婦や,小児を育てる保護者に伝えたいこと
■オーストラリアで助産師による予防接種の指導を経験して
■性教育と思春期ワクチン

保健師さんは、保健所や母子保健関係で働く方は仕事として知っている人もいますが、産業分野など別領域の方はあまり詳しくないようです。

地域の保健師さんのアドバイスでは、「まずBCGを接種しましょう!」という説明が行われている地域があるらしく、2か月目から接種できる肺炎球菌やHib、B型肝炎ワクチンの話がそこで抜け落ちてしまう、という状況があります。

知識のある保健師さんでも、上司から「定期接種以外は積極的に説明しないように」と言われてしまっている人もいるそうです。
(こういったスタンスは公衆衛生学会などの流れなんでしょうか?)

これでは保護者に伝わらないわけです。

さて。どこからアプローチをしたらいいのか。医学生のみなさんもぜひ考えてください。
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2 コメント

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Unknown (琴子の母)
2011-07-08 08:56:51
私のブログでも紹介させて頂きました。

>さて。どこからアプローチをしたらいいのか。医学生のみなさんもぜひ考えてください。
---
私は医療の授業を義務教育で導入するのが友好的なのではないかと思います。
もう、私たち受ける側が先に勉強しておかないと、どこでどう情報を得て、勘違いしていくかもわかりませんので、先にしっかりと知っておくことが重要な気がしています。
助産師と予防接種 (ふぃっしゅ)
2011-07-08 09:27:16
こんにちは。助産雑誌、読みました。
助産師に関しては、オーストラリアのご経験を書かれた林先生の文中の「非科学的な信念や科学的ではあっても標準から逸脱した考え方はスタッフの共通言語とはなりえないし、そのような考えに基づいて医療行為を行うことは許されない。」という点に尽きると思います。
助産師の中にある自然志向の「思想」が、卒後も予防接種を正しく学ぼうという入口に立つことさえ妨げていると思います。
地域で新生児訪問に関わっている助産師が読むことを期待しつつ、かたや相変わらず「自然食品」「天然」「無農薬」「野菜中心」の食事を出している「助産院の食事」という記事が続いている雑誌なので不安も・・・。

自然志向の思想とは別に助産師が予防接種に関わりにくい点として、各自治体や病院間で実施方法があまりに多岐にわたっているので説明をしづらいということもあります。
予防接種の無料券を母子手帳とともに渡してくれる自治体もあれば、出産後の訪問時などに渡されるところもあります。またBCGの開始時期や方法(集団か個人か)も異なるので、結局は「保健センターに確認してくださいね」ぐらいしか言いにくいものがあります。
1年ぐらい前から記事の中にあるようなスケジュール表を印刷してHibなども退院時の説明で話すようにしていますが、このスケジュール表も母子手帳に添付されると助かります。

記事の「妊娠・授乳とワクチン」の中に分娩直後に接種が推奨されるワクチンも参考になりました。
妊娠初期検査で風疹抗体がIgG,IgMともに陰性の方がけっこういらっしゃいます。こういう方に分娩直後にルチーンに予防接種することも良いように思われたのですが、いかがでしょうか。

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