感染症診療の原則

研修医&指導医、感染症loveコメディカルのための感染症情報交差点
(リンクはご自由にどうぞ)

助産師 と 感染症

2012-05-20 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
NATROM先生のブログ記事が話題になっています。

記事の視点も素晴らしいのですが、なにせ扱っているエピソードがすごすぎます。

記事はこちら→2012-05-18 「非常に感染力の強い方のお産」を扱う助産師


「超」感染症関連なので、当ブログでも記事にすることにしました。


もうひとつ、HIV陽性の分娩を助産院が対応(2回とも水中出産)という話が紹介されているブログがあったので、別記事でHIVと母子感染の話題も扱いたいと思います。←ほんとかどうかは正直わかりませんが


感染症のコンサルや支援に関わる皆様にとって、シンプルなTake home messageです。

0)まず、「助産師」を理解しよう。

国家資格であり、「看護師」免許に加えて取得します。
短大や専門学校のあとに、「約1年間の助産師課程」(専攻科)等で学ぶ人と、大学の学部レベルでで教員免許のようにプラスαの単位や実習を経て受験資格を受けている人と、(最近は)大学院修士課程で2年かけて育てているところとあります。

1年間課程は、広尾にある日赤の助産師学校が歴史もあり有名。1年間にかかるお金は141万円
聖路加看護大学2年間で340万円)とか、天使大学2年間で246万円)が大学院で助産師教育をしています。

内科や外科で臨床経験を積んでから入る人と、ストレートに母性助産に進む人といます。話していて内科的なことや医療のジェネラルな問題の理解に乏しい・・と思ったらこの背景を思い出してください。

助産師免許を取得したあと、どうなるかといいますと、「大きな病院や個人病院の産婦人科等に勤務する助産師」になるひとと、病院の都合で看護職として配置される人といます。NICUで働く人もいます。

「開業助産師」は届け出が必要ですが、最低何年、何症例の経験、、、というような条件はないのだそうです。開業したければ開業できます。

開業している人も、助産院での分娩あるいは出張での自宅分娩介助あるいは、お産は扱わず母乳&育児相談(や、性教育)のみ対応している人もいます。
保健所に非常勤で所属して、新生児訪問や検診のお手伝いをする人もいます。

なので、「日本の助産師」とひとくくりにすることはムリがありますので、一般化するような語りには注意が必要です。NATROM先生のように事例ベースで論じるのがわかりやすいですね。

日本医師会とおなじようなかたちで、日本助産師会がありますが、入会率がどれほどで、開業が多いのか病院勤務が多いのか、地域事情もあるかもしれないので詳細はかかないでおきます。医師会と同じように、都道府県の助産師会もあります。

もうひとつ、全国助産師教育協議会という、助産師の質に関わる組織があります。

(1) 助産師教育の質の向上・環境整備に関する事業
(2) 助産師教育関係者のための研修事業
(3) 助産師教育機関相互の協力及び国内外の関連団体の協力と連携

がそのミッション。


ということで。目の前にいる、助産師さんはどんな人か。対象理解から始めてください。話してみないとわからない。


NATROM先生の記事をふまえてのTake home messege;

1)助産師(免許としては看護師免許が前提)の中にはB型肝炎とE型肝炎を正確に理解していない人もいる。チーム医療の際には、BとEの違い知っている?(感染ルートもちがうぜ)

2)劇症肝炎、とはどういったものか知らない助産師がいる。語る時は「劇症肝炎って知ってる?」ということからはじめないとまずい。

3)B型肝炎の検査の種類や結果の理解はすぐに共有できないかもしれない。抗原の種類や抗体との意味の違いなども時に解説が必要。

4)助産所用の、業務ガイドラインが存在し、そのコンプライアンスは人によるので、嘱託医を打診された場合は、危機管理として「最新版を読んでいるか?」とたずねるほうがよい。
助産所業務ガイドライン
(感染症のケアが必要な症例では助産所ではなく病院へ、となっている。グロブリンを自分で投与するのかという問題あり)

5)ワクチンについて理解していない(指導者レベルとはいえない)助産師もいる。目の前の人が最新情報を学んでいるのか、確認をしたほうがよい。
助産師 コアコンピテンシーから抜粋

-------------------------------------------------------------------------
実践の基準
助産師は,
2.1 妊娠の診断,妊娠期間を通して母子の心身の健康状態の評価を行い,正常に保つための助産ケアを行う。

2.2 安定した妊娠生活の維持に関する診断とケア,および女性の意思決定や意向を考慮した日常生活上のケアを行う。

2.3 妊婦や夫・家族への出産準備親準備教育の企画・実施・評価を行う。

2.4 妊娠経過に伴う正常からの逸脱徴候が発見されたら,医師や他の職種と協働して正常の妊娠経過をたどることができるように支援する。

2.5 流早産,胎児異常,子宮内胎児死亡,分娩進行中および出生直後の新生児の死亡などにより心理的危機に陥った妊産婦とその家族へのケアを行う。

2.6 分娩の開始ならびに分娩進行,母子の健康状態の診断を行う。

2.7 母子とその家族の分娩進行に伴うケアを行い,自然な経膣分娩の介助を行う。

2.8 異常発生時の判断と臨時応急の手当てを行う。また,他の医療施設への搬送の必要性を判断し適切に行動する。

2.9 産婦と分娩の振り返りを行い,産婦の出産体験がより前向きに捉えられるように支援する。

2.10 産褥経過の身体的観察と診断,および心理的・社会的側面の診断を行う。

2.11 産褥期の進行性変化や退行性変化を促し,褥婦のセルフケア能力を高め,育児の基本が習得できるように支援する。

2.12 家族が地域社会の資源や制度を理解し,活用できるように支援する。

2.13 新生児・乳児が母体外生活にスムーズに移行するための生理的適応に伴うニーズをアセスメントし,新生児の心身の健康を最大にするよう支援する。

2.14 女性とその家族が,乳幼児の成長発達に応じた適切な育児ができるよう支援する。

2.15 地域の母子の健康レベルに応じて,健康診査や相談,訪問を通して母子とその家族の健康維持を支援する

2.16 ハイリスク児の誕生から,乳幼児期(少なくとも出生後1年頃)まで,児の発達水準に対応した育児ができるように,医師や他の専門職種との協働において母親・家族を支援する。

2.17 出生前診断などの先端医療に関する最新の情報提供,検査時のケアおよび出生前診断の経過中の精神的支援を,医師や他の専門職種との協働において行う。
-----------------------------------------------------

助産師学校や教育課程で教えている内容がだいたい同じなのかどうかは調べていないのでわかりません。
卒業した人に聞くのがよい方法だと思います。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 診療報酬改定とHIV感染症... | トップ | Disclosure, Apology and Off... »
最新の画像もっと見る

毎日いんふぇくしょん(編集部)」カテゴリの最新記事