感染症診療の原則

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診療報酬改定とHIV感染症検査 

2012-05-20 | HIV:誰に検査をすすめるか
6月の初めはHIV検査啓発週間となっています。季節イベントです。

6月の間に、いつもは週1回だけの検査が2回になったり、平日昼間しか検査しない保健所が、このときは週末や夜間検査をしたり、1週間結果をまたなくてはいけない通常検査じゃなくて、15分で判定できる(検査を受けた人へ結果返しはだいたい1時間後ですが)「迅速検査」をしたりもします。

なぜ6月かといいますと、12月1日が世界エイズデーで、その半分、6月、です。日本独自です。(有病率が日本より高い他の国はもっと頻繁に、女性とHIV、高齢者とHIVとか複数複合的イベントを展開中)

医療関係者の皆様。すでに日常の会話から消え、印象もなんだかわからんよ、的に言われるHIV感染症ではありますが、ハイリスク層での伝播は深刻で、1人あたり1億円ちかい医療費がかかるといわれていますので、早期診断・予防啓発へのご協力をよろしくおねがいします。

これまで、医師から問題指摘されていたのは、「(よくわかっていない審査委員が地域にまだ生息しているため)保険で切られる」ということでした。

ばんばん全員にルチンのスクリーニングをする際の「スクリーニング」と、1次スクリーニングのELIZAやpA法の「スクリーニング」を理解していないことが原因のようなのですが、これに対して各方面から問題指摘があり、このたび、下記の様に文章がかわり、医師はオーダーをどうどうとしやすくなりました。


医師が必要、と判断すれば(その根拠があれば)通るというわけです。
あとは、地域の審査員の頭の中を昭和から平成に変えるだけです。変えてください。よろしくお願いします。


J-AIDSというメーリングリストで広島の高田先生が今年の診療報酬改定のなかでのHIV検査関連の解説をしてくださっています。

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「間質性肺炎、 後天性免疫不全症候群の疾病と鑑別が難しい疾病が認められる場合 や HIVの感染に関連しやすい性感染症が認められる場合既往がある場合 又は 疑われる場合で  HIV感染症を疑う場合は、本検査を算定できる。」

つまり、「性感染症がある」だけではなく「性感染症の既往がある」と「性感染症が疑われる」が加わり、HIV検査の適応範囲が広くなったと言うことです。

これまでは例えば、HIV感染者の配偶者など、他の疾患がないときは「HIV感染の疑い」という病名では保険請求できませんでした。査定減となっても文句は言えなかったのです。(実際には私たちの場合、査定されたことはありませんが) 典型的には現在無症状で梅毒反応だけが陽性の場合、保険診療で「HIV感染の疑い」で検査をすることは保険適応になったのです。
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高田先生は このメーリングリストJ-AIDS の管理人で、中四国地方のエイズ診療を支えてこられた医師です。


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診療報酬点数表Web 医科 2012
https://sites.google.com/a/mfeesw.com/2012ika/
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[告示] 診療報酬の算定方法
18 HIV-1,2抗体定性、HIV-1,2抗体半定量、HIV-1,2抗体定量、HIV-1,2抗原・抗体同時測定定性、HIV-1,2抗原・抗体同時測定定量 127点
33 HIV-1抗体(ウエスタンブロット法) 280点
36 HIV-2抗体(ウエスタンブロット法) 380点
39 HIV抗原 600点

D027 基本的検体検査判断料 604点

[通知] D012 感染症免疫学的検査
https://sites.google.com/a/mfeesw.com/2012ika/t/rui/2/03/1/1/d012-gan-ran-zheng-mian-yi-xue-de-jian-zha

(9) 診療録等から非加熱血液凝固因子製剤の投与歴が明らかな者及び診療録等が確認できないため血液凝固因子製剤の投与歴は不明であるが、昭和53年から昭和63年の間に入院し、かつ、次のいずれかに該当する者に対して、「17」のHIV-1抗体「18」のHIV-1,2抗体定性、半定量又は定量、又はHIV-1,2抗原・抗体同時測定定性又は定量を実施した場合は、HIV感染症を疑わせる自他覚症状の有無に関わらず所定点数を算定する。
ただし、保険医療機関において採血した検体の検査を保健所に委託した場合は、算定しない。
ア 新生児出血症(新生児メレナ、ビタミンK欠乏症等)等の病気で「血が止まりにくい」との指摘を受けた者
イ 肝硬変や劇症肝炎で入院し、出血の著しかった者
ウ 食道静脈瘤の破裂、消化器系疾患により大量の吐下血があった者
エ 大量に出血するような手術を受けた者(出産時の大量出血も含む。)

なお、間質性肺炎等後天性免疫不全症候群の疾病と鑑別が難しい疾病が認められる場合やHIVの感染に関連しやすい性感染症が認められる場合、既往がある場合又は疑われる場合でHIV感染症を疑う場合は、本検査を算定できる。


(10) HIV-1抗体及びHIV-1,2抗体定性、半定量又は定量、HIV-1,2抗原・抗体同時測定定性又は定量
ア 区分番号「K920」輸血料(「4」の自己血輸血を除く。以下この項において同じ。)を算定した患者又は血漿成分製剤(新鮮液状血漿、新鮮凍結人血漿等)の輸注を行った患者に対して、一連として行われた当該輸血又は輸注の最終日から起算して、概ね2か月後に「17」のHIV-1抗体、「18」のHIV-1,2抗体定性、半定量又は定量、又は「18」のHIV-1,2抗原・抗体同時測定定性又は定量の測定が行われた場合は、HIV感染症を疑わせる自他覚症状の有無に関わらず、当該輸血又は輸注につき1回に限り、所定点数を算定できる。
イ 他の保険医療機関において輸血料の算定又は血漿成分製剤の輸注を行った場合であってもアと同様とする。
ウ ア又はイの場合においては、診療報酬明細書の摘要欄に当該輸血又は輸注が行われた最終日を記載する。

(11) 「18」のHIV-1,2抗体定性、半定量又は定量は、EIA法、PA法又は免疫クロマト法による。

(42) 「37」のサイトメガロウイルスpp65抗原定性は免疫染色法により、臓器移植後若しくは造血幹細胞移植後の患者又はHIV感染者又は高度細胞性免疫不全の患者に対して行った場合のみ算定できる。ただし、高度細胞性免疫不全の患者については、当該検査が必要であった理由について、診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

(44) 「39」のHIV抗原は、HIV感染者の経過観察又はHIV感染ハイリスク群が急性感染症状を呈した場合の確定診断に際して測定した場合に算定する。

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過去のブログ記事 「HIVを発症するまで気づいてもらえない」


HIV検査の説明資料、結果の説明資料、陽性の場合のエイズ診療拠点病院への紹介のしかたなどのかかれた、検査担当者向けの資料は研究班のHPに掲載されています。

多忙な現場でつくらなくても、コピーすればOKになっています。

先日、最新版(平成23年度の取り組み)が郵送されてきたので、そのうちニューバージョンになるのでしょう。


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