百休庵便り

市井の民にて畏れ多くも百休と称せし者ここにありて稀に浮びくる些細浮薄なる思ひ浅学非才不届千万支離滅裂顧みず吐露するもの也

【【宮沢賢治/詩と絵の宇宙展】【新見美術館】 H26.2/22】ふらりデッパリ備忘録(17)

2014-02-25 20:07:26 | 日記


 本展示会初日、賢治さんの 7歳下の実弟 清六さんのお孫さん S39年生まれ【宮沢和樹】さんの ギャラリートーク & 講演会 が持たれるとの由。同一県内とはいえ かなり遠い 斜め対角地点間移動となるも 予約。案じていましたが、かなり冷えたものの 絶好の日和の下、早朝から いそいそ 出掛けたのであります。


終始 笑みを絶やさず ユーモアを混じえ穏やかにお話しなさる 和樹さんのトークは、人を惹きつけて止まない たいそう面白い 興味深いものでありました。以下 その内の数点ばかり、老生手持ちの資料等を混じえ ご紹介申し上げたいと存じます。

        宮沢和樹 さんです。快く応じて下さいました。ありがとうございます

          別会場での講演会、終了後 しばらくして撮らせていただきました

まず 賢治さんは、一見 暗いというイメージを持たれてしまうのですが、対外的な実際のヒトトナリは、そんなことは一切なく、面白いことを言って周囲を笑わすのが好きな とても明るい、そして何よりも アタラシモノズキ な人であったとのこと。その一例が 賢治さん像として定着している 凶作を憂いているとされる下の写真。

和樹さんによりますと、賢治さんは ベートーベンが もう大好きでありまして、ベートーベンに成りきっている写真を撮りたいと(今で言えばコスプレ、さすが 一世紀近く 時代を先取りされています)思い、当時のことですから 野外撮影は それはそれはタイヘンなことであったのですが、写真屋の息子である友人に頼み 撮ったとのこと。そういえば 楽聖そのもの であります。

次に「雨ニモマケズ」の詩、どの段落も 賢治さんの 心からの惟(おも)いが満ち満ちているのでありますが、特に重要なキーワードを 論(あげつらう)となれば、心服している「法華経」の観点からも、それは「行ッテ」ではないだろうか と。「雨ニモマケズ手帳」には、詩のすぐ後に「南無・・行菩薩」が 4行、すなわち「行」という字が 四つ書かれているし、「東ニ・・」「西ニ・・」「南ニ・・」には「行ッテ」があり、「北ニ・・」には 付いていないのですが、その前のページに 赤鉛筆で大きく「行ッテ」と書かれており、文脈から推すれば これは「北ニ・・」にも 必ず付けるんだ という意思表示ではないだろうか と。
このお話し、そして「イク」にも「オコナウ」にも同じ漢字を振り向けた イニシエの日本人の 心眼・慧眼 に、老生 甚く感銘を受けた次第であります。
  

それから「ヒドリノトキハナミダヲナガシ」の「ヒドリ」は「ヒデリ」の間違いと考えるのが妥当であろうが、「日雇い人夫に出る」ことを当地では「ヒドリ」と呼ぶとのこと。これにも老生、そのコトバの重層性に および 農民の厳しい生活振りが思い起こされ、ジーンときたのであります。

次に この石碑に刻まれている「雨ニモマケズ」の詩。オイラはこの日、和樹さんのお話を伺って 初めて はっきりと 後半部分の「野原ノ松ノ林ノ蔭ノ・・・」から刻まれているのだと認識するに至ったのであります。それは、現地では 何が刻まれているか 全く判読できなくて、当然「雨ニモマケズ・・・」が最初から書かれているのだろう、そういえば【林風舎】さんに飾ってあった拓本は「野原」から始まっていたなぁと、今になって思い起こせるぐらいでありますが、

そしてここからが 初耳のことであります。実は この石碑を造るにあたっての当局から高村光太郎さんへの依頼状に記された詩文が 原文と違っており、完成後 何年も経って修正彫りを加えている とのことであります。で 家に戻り 花巻で買ってきた本を眺めてみますと、このような記述がありました。



 万が一にも 誤解を受けないよう 言い方をよく吟味し 質問すればよかったなぁ との ホロニガイ想いは 残しておりますが、とまれ、敬愛する賢治先生に また一歩 近づけた たいへん楽しい 嬉しい一日でありました。
 なお 上載写真は、老生が写したもの、および 老生所有の 平成9年【宮沢賢治イーハトーブ館】さん発行【生誕100年記念特別企画展図録 拡がりゆく賢治宇宙】、平成6年【(財)宮沢賢治記念会】さん発行【宮沢賢治】、「雨ニモマケズ」手帳摸本 の一部を撮影したもの、小さい2枚のベートーベンさんの写真は ネットから転載させていただいたもの であります。


 < 追伸 >
 和樹さんと 少しの時間ですが オハナシすることができました。「【菅原はじめ】さんから 聞いております。彼女たちが しっかり留守を預かってくれるから、こうして安心して外に出られます」と。はじめさん、言って下さっていたんですね。嬉しかったです。
 


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【 詩人【天野 忠】さん 】10... | トップ | 【知名オーディオさんの作品... »

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事