hiyamizu's blog

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白石玄『たてがみを捨てたライオンたち』を読む

2021年01月21日 | 読書2

 

白石玄著『たてがみを捨てたライオンたち』(2018年9月30日集英社発行)を読んだ。

 

吉田伸子氏の「小説すばる」の書評 (太字化と改行は私)が要領よく解説してくれているので、そのまま引用する。

 

物語を動かしていくのは、三人の男たちだ。
 出版社に勤める直樹は、身重の妻・可南子が激しい悪阻に悩まされており、積極的に家事を引き受けることで、妻の辛さに寄り添っている。そのことを可南子は評価してくれるものの、直樹自身は、仕事ではぱっとしない自分にどこか苛立ちを抱えている。
 大手の広告代理店に勤める慎一は、二年前に妻のと別れて以来、独身に戻ったタワマン暮らしを謳歌するどころか、自分でも原因が分からない空疎さを抱えている。唯一つるんでいる〝連れ〟は、数年前に飲み会で知り合って以来親しくしている弟分のようなフリーライターの須田ぐらい。
 市役所に勤務する幸太郎は、二年前に年上の彼女に手酷く失恋して以来、その傷を埋めるかのようにアイドルにハマっている。精神的にもハードな日々の業務からの逃避と、リアルではイケてない自分から束の間目をそらすための「オタ活」は、幸太郎にとっての〝避難場所〟でもある。

 25歳の幸太郎、30歳の直樹、そして35歳の慎一、と三人の年齢設定と、それぞれの背景が絶妙だ。典型的な非モテ系の幸太郎、とりたててイケてもいないけれど、イケてないわけでもない既婚者の直樹、そしてバツイチで地位もカネもあるモテ系の慎一。一見、共通項がなさそうに見えるこの三人だが、実は抱えている問題の根っこは同じで、それが本書のテーマにもなっている。

 彼らに共通しているのは、〝男性性に対する座りの悪さ〟のようなものだ。妻に対する気遣いはほぼ満点、母親からも「ホントに優しい子に育った」と言われる直樹だが、仕事の面では今ひとつ。花形の出版部から、社内では二軍扱いの雑誌部に配属替えになったこともあり、家庭を犠牲にしてもばりばりと仕事をこなす、いわゆる〝デキる男〟への憧れが、心の奥に巣くっている。

 幸太郎は、小学生時代から〝キモメン〟扱いされてきたことに加え、生まれて初めての恋が、手酷い失恋に終わったことから、女性に対して幻想=一方的な夢しか抱けない。それが大人になりきれないからだとわかってはいるものの、かといってそんな自分を変えることもできない。

 三人の中ではもっとも恵まれているように見える慎一でさえ、妻の本当の気持ちと、自分の愚かさ──男であることの優位性を信じて疑わなかった──に気づくことができたのは、離婚後二年経ってから、ようやくだった。
 本書は男子の自分探しの物語、ではない。そこが本当に素晴らしい。本書は「人間性探しの物語」なのだ。そこにあるのは、女性、男性問わず、自分と向き合って生きることへの、揺るぎない肯定である。

 

初出:「小説すばる」2017年9月号~2018年2月号、「ライオンのたてがみは必要か?」を改題。

 

白岩玄(しらいわ・げん)
1983年、京都府京都市生まれ。

2004年「野ブタ。をプロデュース」で第四一回文藝賞を受賞しデビュー。同作は第一三二回芥川賞候補作となり、テレビドラマ化される

他の著書に、『空に唄う』『愛について』『R30no欲望スイッチ――欲しがらない若者の、本当の欲望』『未婚30』『ヒーロー!』、本書『たてがみを捨てたライオンたち』。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

読みやすい文章、話でスイスイ読めるのは評価する。
しかし、男のプライド、沽券(古い?)にこだわるというテーマだけで最後まで押し通すのは無理がある。短編で十分だと思う。

 

非モテ系、普通、モテ系の3人の男性が登場するが、モテ系のモテモテの場面が少ないので、普通とゴチャゴチャになりそうになる。

 

 

 

 

 

コメント
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