OGUMA    日々軌 小熊廣美の日々新

規格外の書家を自認している遊墨民は、書は「諸」であるという覚悟で日々生きている。

気楽に綴らせていただきます。

2016年07月09日 | 文化・芸術
上野の国立博物館内の九条館で青磁輪花茶碗「鎹」と「馬蝗絆」を観る。
展覧会の記者発表の特別公開であった。

うり二つ、美しい双子である。
子は鎹(かすがい)である。そうつくづく思う方も多いのではないだろうか。
そういう家庭内の話しではなく、もともとは東山御物の話である。

二つとも、茶碗にひびが入り、金継ぎをする。その継ぎ方が、銘「鎹」はその名のままに、ひびに対して三つの鎹と口縁を金継ぎして成る。
かたや銘「馬蝗絆」は、底近くが円くひびが入った。そこに、五つの鎹型に金を継ぐ。その中の一つはL字型になっている。

10月18日からはじまる「禅―心をかたちに」東京展で、この「鎹」は出る。「馬蝗絆」は国立博物館蔵ながら出ない。一緒にみられたらいいと思うのだが、そうならないので、このままお付き合いいただきます。

今回の「禅」展は、東京では最大の規模らしいのですが、禅は不立文字。といいながら、禅は日本の文化のいたるところに入って行った。
私には禅はぜんぜん関係ない! と言ったって、二つも「ぜん」が入っている、か。

今回、禅宗の系譜と展開をみながら、絵画、書、仏像、工芸をみ、座禅、四ツ頭茶礼、写禅語などの関連イベントも多く予定されている。
10月29日30日には、鎌倉大座禅会として、建長寺、円覚寺で、大規模なイベントもある。
最古の茶礼ともいわれる四ツ頭茶礼は会場の東博で11月12日予定。これは気になるが、私の関係するイベントが重なる可能性がある。
ここの読者はどちらを優先してくれるであろうか? 

鎹と馬蝗絆に戻ろう。
今回の禅と茶の湯では、織田信長の弟、織田有楽斎に焦点をあてている。
有楽斎がもともと所持していたのが、この「鎹」と「馬蝗絆」で、有楽斎の孫の代になって、形見分けして、散逸?とか、家康の母のその父である水野忠政のところへとか、東博のきれいな学芸員さんの話を聞きもらした…。

そして、江戸時代になって豪商の角倉家へ。幕末の弘化3年は1846年、鎹は平瀬家へ。馬蝗絆は三井家へ。
現在、鎹は愛知のマスプロ美術館蔵。馬蝗絆は東博へ寄贈され現在にいたる。

昭和26年には武者小路千家でこの両腕が並げられたことがあったという。それ以来?

銘「鎹(かすがい)」はそのままわかる。銘「馬蝗絆(ばこうはん)」は、大きないなごに似ているから馬蝗。絆は、五つの鎹の金継ぎを五つのいなごとしての「絆」なのか?
この馬蝗絆は、底近くが円くひびが入ったわけだが、これは、寒い朝、熱いお湯を注いでひびが入ったのではないかと言われているそうな。


13世紀、中国は南宋時代、青磁の名品が生まれた。
茶の湯の文化は、禅の教えと共に、唐物文物も多く請来し、この青磁の名品の物語も生んだ。
銘「雨龍」の青磁も出る。天目茶碗もでる。
茶人にとっては、まだまだ気になるものがある。

でも、禅は、すくなからず、みなさんの身体に入り込んでいるのだろう。
コメント
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