A Challenge To Fate

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【翻訳】NECRONOMIDOLと日本のメタルの新たな方向〜ネクロ魔/Vampillia/OVUM/Looprider/Legion of Andromeda/pale

2017年05月21日 10時56分58秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


NECRONOMIDOL and New Directions in Japanese Metal
by Patrick St. Michel twitter @mbmelodies
from bandcamp daily May 18, 2017
translated by Takshi Goda under kind permission from author
live photos by Takeshi Goda

多くの点でNECRONOMIDOL(ネクロノマイドル、以下ネクロ魔)は日本の「女性アイドル」ーー若い女性が集団で踊りながら快活な歌を歌うJ-POPのいちジャンルーーの他のグループによく似ている。10代後半から20代前半の5人のメンバーで構成され、アイドルならではの若さを武器にしている。しかしネクロ魔は、友情と破局をテーマにしたアップビートなシンセ主導の典型的なアイドルソングは歌わない。ネクロ魔はメタル・グループなのだ。彼女たちは暗黒に手を差し伸べる。シンボルはスカルズ(骸骨)であり、音楽は暴力的なインダストリアルとメタルのスピード感を十分に持ち合わせている。

一方で彼女たちのライヴショーは典型的なメタルとは言えない。例えば、ステージにはギターもドラムもなく、その代わりにバックトラックにあわせて、5人のメンバーがユニゾンで踊り、歌い、時々血が凍るような叫びをあげる。表現方法は非典型的ではあるが、ヘヴィメタルの境界を超えた新しいサウンドを追求する日本のバンドはネクロ魔だけではない。彼女たちは大阪を拠点とするバンドVammplliaや東京のインダストリアルとメタルのフュージョン・ロッカーLegion of Andromeda、その他数多くのバンドを含むシーンの一部なのである。



日本のメタルバンドが、メタルというジャンルを音楽的にもビジュアル的にも、それまでにない新たな方向へ押し広げようとするのはこれが最初ではない。日本で最もビッグなメタルバンドのX JAPANは、シアトリカルな演劇性と過剰な化粧でリフを増強し、ビジュアル系というサブジャンルを創り出した。マキシマム・ザ・ホルモンのようなバンドはニュー・メタルの要素を組み込み、一方でBorisはドローンとシューゲイズを取り込んだサウンドで国際的な注目を集めた。最近では、BABYMETALの世界規模の成功の後を追うように、可愛らしいメロディーとハーシュ・ノイズを合体させた、ネクロ魔のサウンド・コンセプトに似たスタイルのアイドル・グループの人気が上がっている。

「たくさんのバンドが同じことをしています。もっとアングラでもっとサブカルな人達もいますが、殆ど露出されていません」とネクロ魔のメンバー瑳里(苗字は無い)は、この日1時間のライブをやる会場近くの練習場で言った。彼女はトレードマークの白塗りで、左頬にはプラスチックの蜘蛛を付けている。「私たちはアイドルだから、もっと簡単に先へ進めますし、私たちの音楽を幅広い人々に伝えることが出来ます」。ネクロ魔のサウンドには、突進するエレキギター、へヴィなドラム・ビート、そして随所にダークウェイヴ風のシンセがある。彼女たちの個性的なルックスとパフォーマンスにより、日本のアイドル音楽の中心の振付ダンスーーそれもネクロ魔の要素のひとつだがーーに馴染みのないファンをも魅了している。



日本で最初の「オカルト系」アイドル・グループと称するネクロ魔は、ピッツバーグ生まれのマネージャー、リッキー・ウィルソンが募集したオーディションにより2014年春に結成された。瑳里は白塗りペイントへの興味をステージで披露したいと思っていた。一方同期のメンバー柿崎李咲は別のアイドル・グループから来た。「(前の)グループは最初に考えていた通りに物事が進まなくて解散しました」と李咲は言う。「その後暫くアイドル活動を休止しました。でも考えてみたら、私はステージでパフォーマンスするのが大好きだし、まだ自分の望みをすべて達成してはいないと気付いたのです」。

2、3年後、ネクロ魔のオリジナルメンバーは瑳里と李咲の二人だけなったが、それは日本のアイドル・グループの運営手法に準じている(多くのグループで脱退するメンバーの「卒業」イベントが開催される)。現在のラインナップは、柿崎李咲、瑳里、夜露ひな、今泉怜、月城ひまり。このラインナップで、今年2月にダーク・メタルにインスパイアされた2ndアルバム『DEATHLESS』をリリースした。収録された楽曲は主に外部の作曲家が作ったが、そこにメンバー自身の意向が強く反映されているーーそれは他の殆どのアイドル・グループの創作プロセスとは明らかに対照的である。アルバムは死やギリシャ神話に多くの題材を得たヘヴィな歌詞に溢れている。それにも拘らず、アルバム全体は、キャッチーなフックとハイテンションなスタイルに貫かれている。



ネクロ魔だけが今の日本でメタルとポップの境界をなくそうとしている存在ではない。多くのバンドが、ストリングスをフィーチャーしたり、非メタル的なヴォーカルの反復を取り入れたりして、ジャンルを拡張している。「伝統と新しいものの境界は曖昧になっています」とメタル・インスト・バンドOVUMのリーダーNorikazu Chibaは言う。「本当に伝えたいことを昔より自由に表現することが出来ます」。たいてい小規模で薄汚い会場に集まるファンはメタルヘッズと一般のロックファンのミックスで、いずれも純粋なメタルバンドが好む古風な地下の会場を避けている。ネクロ魔の場合は、観客はモッシュピットで暴れたがる一群と、ヲタ芸に興じグループの曲にあわせフリコピするファンに別れている。

「メタル・ファンとアニメ・ヲタクはとても似ていると思います」とLoopriderの創設者のRyotaro Aokiは言う。「深くて幻想的な世界を心の中に創り出して、それが別の現実になるのです。メタルは世界の創造のようなものです。テクスチャーとアトモスフィアとストーリーを通してヘヴィネスを創り出せるのです」。

ネクロ魔はこのリストの他のバンドと同じく、日本でのメタルの意味の境界を拡張している。「アイドルの寿命は比較的短い」と李咲は言う。「でもネクロ魔として、私たちはやり続けて、ネクロ魔独自のジャンルを突き進みたいのです。自分たちだけのものにするのです」。
その気持ちを次のレベルへ引き上げる6つのグループを紹介しよう。

NECRONOMIDOL


『DEATHLESS』は1stアルバム『NEMESIS』よりも早いペースで制作された。「スケジュールはとてもタイトでした。歌詞とヴォーカルのメロディーがレコーディングの3日前に届いて、直ぐにスタジオ入りして録音しなければなりませんでした」と夜露ひなは言う。短期間の作業にも関わらず、アルバムは、シンセ・ポップ・ナンバー「Skulls In The Stars」から伝統的なメタル「End Of Days」まで、この5人組がこれまでリリースした中で、最も集中力があり自信に満ちた作品になった。

「(昨年のミニ・アルバム)『From Chaos Born』の時は、自分の意見を言いたいと思っても、言ってはいけないかなと思って黙っていました。聴き返してみて、やっぱり言うべきだったと反省しました」と柿崎李咲は言う。「『DEATHLESS』では、自分の意見を言う必要がある時は、言うようにしました」。

最新作に表現され、聴かせるのはテンション(緊張感)である。「ラウド・ミュージックを歌うアイドルの多くは、音楽に合わせた歌い方をしています。でもネクロ魔に感じるのは、ヴォーカルと実際の楽曲のサウンドとの間の多くのアンバランスーー良いアンバランスーーがあることです。不確実な感情、それを私たちは追求したいのです」と柿崎は語る。

NECRONOMIDOL - ITHAQUA



Vampillia


大阪出身のグループVampilliaはすべてをドラマティックに変えてしまう。ギタリスト、ヴァイオリニスト、ピアニストを含む10人を超えるメンバーを擁し、幅広いゲストを迎えて目紛しい創造活動をしている。これまでにエレクトロニクスのプロデューサーμ-Ziqや日本のノイズの先駆者Merzbowとコラボした。

Vampilliaは数多いスタイルを持っているが、メタルが彼らの発作的なサウンドの中心にある。例えば「Endless Summer」は、ピアノの爪弾きにあわせたスポークン・ワードのモノローグではじまり、突然激しいギターのフィードバックに突入し、ヴォーカルの叫びで頂点に達したあと、再び洗練されたパッセージへ戻る。Vampilliaの捩じれたストリングスにアクセントを置いたメタルへのアプローチは、最近の戸川純とのコラボレーション・アルバムに明らかに表現されている。大阪の彼らがこの日本のセレブ歌手のバック・バンドを務め、彼女の曲をドライヴするギターとヴァイオリンで再創造しているのだ。

戸川純 with Vampillia / わたしが鳴こうホトトギス / MUSIC VIDEO



OVUM


東京の4人組OVUMのリーダーNorikazu Chibaによると、2ndアルバムが出るまで多くの人は彼らを伝統的なポストロック・バンドと看做していた。「その頃から、サウンドによりヘヴィでよりアグレッシヴなアプローチを進めました」とChibaは言う。「今は自分たちのスタイルを“メタルよりのインスト・ロック”と定義しています」。ヨーロッパ・ツアーに刺激されたこの変化は、OVUMのギター・ディストーションとヘヴィ・ドラムの比重を増すことになった。昨年の雷鳴のようなアルバム『Nostalgia』と同胞の日本のバンドa picture of herとのスプリット・シングル「Cinder」で聴けるように。

「僕等はメタル的なアプローチをしているかもしれませんが、純粋なメタルバンドではありません」とChibaは言う。彼らは現在次のアルバムをレコーディング中。ハイライトはよりハードエッジなインストゥルメンタル・アプローチの自信に満ちた成長ぶりである。

OVUM - Cinder



Looprider


東京の4人組Loopriderは自らを特定のジャンルに限定しない。これまでの3枚のアルバムを通じて、シューゲイズとハードコアをその他のスタイルと融合してきた。「でもメタルはいつも頭の中にありました。リフが好きだし、大音量のディストーション・ギターも好きだし、自分自身の世界を創り出せるバンドが好きなんです」とバンドの創設者Ryotaro Aokiは言う。彼はBorisの大ファンでもある(「彼らは様々な異なるスタイルとジャンルを取り入れていますが、僕にとってはその多くがメタルとヘヴィ・ミュージックの基礎の上に築かれているのです」)。Loopriderの音楽はハーシュなスピード・ナンバーを集めたアルバム『Ascension』に代表されるようにしばしばメタルのテリトリーに入る。今年リリースしたアグレッシヴなギター中心のパッセージを多くフィーチャーした25分の長尺ナンバー『Umi』にも顕著である。Aokiが言うように、最新作をメタルと呼ぶのは言い過ぎだが、ヘヴィな要素は確かにある。

Looprider - "Mustafar"




Legion of Andromeda


この東京の二人組はインダストリアル・ミュージックとブラック・メタルを粉砕する境界線をぼかし、繰り返しを最大限に活用する。デビュー・アルバム『Iron Scorn』のライナーノートは「全体的な憎しみに満ちた残酷なほどヘヴィな7つのスラブ。世界は死に絶え人類はクソである」と記している。スティーヴ・アルビニが録音とミックスを担当した楽曲は、この記述にかなり忠実なサウンドを提示する。対抗できるのはGodflesh、アルビニのバンドShellac、そして日本のブラック・メタルとノイズの融合ユニットEndonくらいだろう。しかし二人のメタルをぶん殴るようなアプローチは、このリストの中でもっとも対立的なエントリーと言える。そのスタイルは彼らのインタビューにも及ぶ。「オレ等はどのシーンにもフィットしない」と彼らは言う。日本のメタルの状況を尋ねられると「クソだらけ」と答えた。

Legion Of Andromeda - Scourge Of Pestilence




pale


このリストの中で最も若いバンドpaleは2016年夏に結成された。それ以前に彼らは別のバンドで3年間一緒にプレイしていた。ヴォーカリスト Sakaguchi Junichiro, ギターのWatanabe Hirofusa、ベースのYoshida Kensukeの3人は大学の同じ音楽サークルに所属しており、お互い長年の知り合いである(ドラマーのOikawa Yukiは後に参加した)。今までに2月にデモEPをリリースしただけだが、その2曲は迫力に満ち、叫びに満ちたヘヴィなアプローチを提示している。彼らの曲はスタート/ストップの繰り返しで突進するのが常で、幾分静かなパッセージもあるが、すべてSakaguchiのしわがれた吠え声に貫かれている。デモの曲は5分に満たないが、短い時間に曲がりくねった展開が多数ある。彼らの存在は、若い世代がメタル・サウンドを進化させようとしていることを想起させる。

pale - (Demo EP) ( first demo album )


にっぽんの
メタルの世界の
レボルーション

6月13日 渋谷 WWW
NECRONOMIDOL
「SCREAMING FOR VENGEANCE」
ONE MAN TOUR 2017年
〜原点振り返りツアー〜
「BLOOD RED SKIES」
OPEN 19:00 / START 20:00
ADV. ¥2500 / DOOR. ¥3000

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