A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【私のB級サイケ蒐集癖】第38夜:善男善女の不統一教会クリスチャン・フォーク~ザ・マイノリティ(少数派)/ザ・ヤング・フォーク(若者たち)

2022年07月28日 01時01分37秒 | 素晴らしき変態音楽


新興宗教団体関係のニュースを連日目にする。振り返ってみれば、今から40年前の1982年に入学した大学の新入生歓迎会で初めて知った言葉が「原理研」だった。先輩たちの話では「原理研」とは大学生活においては排斥すべき存在であり、「打倒原理研」「原研を打っ潰せ」と謳った立て看板やビラが校内のあちこちに掲示されていた。全共闘、革マル、中核派、赤軍派といった学生運動については知っていたし、学生寮の物置には赤ヘル、黒ヘル、トラメガ、スローガン入り垂れ幕などが残っていたが、80年代には過去の遺物のように思われた。それに代わって心ある大学生が戦うべき相手が「原理研」であり親団体の「統一教会」だったような印象がある。「反原理研」活動に青春を燃やす友人もいた記憶がある。その他にも、校内の銀杏並木の下で「あなたの魂を清めましょう」と近づいてくる「浄霊」という手かざし宗教もいたし、自転車に乗って「一緒に卓球をやりませんか」と爽やかに誘ってくるモルモン教の白人男性も出没した。バンド活動にしか興味がなく、いつも黒づくめの格好でギターを担いでいた筆者は、その手の勧誘を受けることは殆どなかったが、学内には他にも有象無象の宗教関係の誘惑があったに違いない。純真な大学生は新興宗教の格好のターゲットなのだろう。卒業後、90年代初頭に訪れた母校の学園祭では、オウム真理教が大教室を借り切って麻原彰晃の空中浮遊ビデオを上映していた。世間では合同結婚式や霊感商法で話題になった統一教会や東京ドームで生誕祭を開催した幸福の科学が話題になり、その挙句に1995年のオウム真理教の地下鉄サリン事件に至る。

筆者は胡散臭い新興宗教には近づかないようにしている一方で、結婚式はキリスト教、親の法事は仏教、初詣は神社という節操のない宗教観を持つありきたりな日本人の典型だと思う。しかし、外国へ行くと宗教観は大きく異なる。詳しく語るほどの知識はないが、欧米におけるキリスト教の影響の大きさは芸術文化の歴史を見れば明らかだろう。聖歌、賛美歌、宗教曲は言わずもがな、霊歌やゴスペルは教会の福音音楽がルーツだし、グラミー賞にはコンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック(CCM)というカテゴリーがある。60年代後半のサイケデリック時代にも神への信仰を歌うシンガーやグループが数多く存在した。新興宗教やヒッピー・コミューン思想に基づいたアウトロー的なバンドも少なくないが、現在クリスチャン・サイケ/クリスチャン・フォークなどと呼ばれるバンドの大半は、善き市民として生活する若者たちであり、敬虔なキリスト教徒だった。SEX, DRUGS & ROCK’N’ROLLの誘惑に屈しない(もしくは屈する手前の)純真な青少年少女たちが歌う神への祈りこそ、ケネディ大統領やキング牧師の暗殺や、ベトナム戦争泥沼化で病んだアメリカ合衆国の穢れた魂を清める浄霊の歌声なのかもしれない。

●ザ・マイノリティ The Minority『バッハからロックまで From BACH to ROCK』(Atlantis Records – CS-0678 / 1969)


リゾート地の水辺をバックに晴れやかな笑顔が並ぶジャケット写真だけで癒される。フロリダ州ウェスト・パーム・ビーチの第1バプティスト教会で結成されたゴスペルコーラス隊+ロックバンドの1stアルバム。ザ・マイノリティ(少数派)というバンド名は、自虐的な意味ではなく「真実への狭き道を見つける者は少数しかいない」という聖書の言葉に因んでいる。1967年夏に開催された「湖畔の教会(Chapel-by-the-Lake)」での「黄金海岸聖戦(Gold Coast Crusade)」というイベントで結成され、『俗な街の歌(Songs to the Secular City)』のレコーディングに参加。フロリダ州メルボルンからマイアミまで公演し、ユニークなフォーク・ロック・ビートのゴスペルを届けた。1968年夏には10の州とカナダをツアー。エレキギター、12弦ギター、ベース、バンジョー、ドラムからなるバンドと、高校生・大学生からなるコーラス隊による神を讃えるヴォーカル・ナンバーを収録。アルバム・タイトル通りビートの効いたロック・ナンバーとアカペラの賛美歌が混在する。「探せ、さらば見つからん」「歌え、祈れ、そして歩け」「彼は再生する」「彼(神)は私のすべて」といったタイトルからも信心深さが伝わってくる。特に「自由はただじゃない」と連呼する曲のパワーは、当時流行のファズ・ガレージロックを圧倒する魂のパワーを感じる。曲によってはトリオやデュオの爽やかなフォークソングもあり、アルバム全体を貫く陽気なポジティヴさが眩しい。


●ザ・ヤング・フォーク The Young Folk『若者たち The Young Folk』(Cuca Records - 6990 / 1969)


某レコードショップの格安コーナーで出会った1枚。針葉樹が生い茂る田舎道を横一列になって歩く男女5人の笑顔に魅了されて購入。男性二人が弾くフォークギターに乗せて歌う男女のコーラスハーモニーは、裏ジャケの野原で歌う写真通りの歌声喫茶ならぬ歌声ピクニック。A面はキングストン・トリオ、イアン&シルヴィア、ビング・クロスビーなどのカヴァー、B面は「生ける神」「主よ憐れみたまえ」「神に栄光を」「ホーリー、ホーリー、ホーリー」「偉大なるアーメン」といった賛美歌。メンバー写真も氏名も明記されているが、今となっては何処の誰か調べようがない匿名性、歌も演奏も特筆すべき個性はないが故の異物感、モノラルマイク一本スタジオ一発録りのナチュラルリバーヴの酩酊感。自主制作レアサイケに通じるオブスキュアな魅力を醸し出すカルト作品である。リリース元のCuca Recordsはウィスコンシン州ソーク・シティを拠点に1959年から70年代初頭に活動したレーベルで、地元のミュージシャンを中心に、ポルカや伝統ジャズ、R&Bやゴスペル、フォークやポップスのレコードを1000タイトル近くリリースした。そのカタログはウィスコンシン州の音楽史を記録した貴重な資料としてウィスコンシン大学マディソン校の音楽ライブラリーに保存されている。ザ・ヤング・フォークも地元で活動していたアマチュア・グループのひとつで、活動記念に制作したアルバムなのかもしれない。当時20歳前後だったとしたら現在70代の元メンバーは、今でも神に祈りを捧げながら、年に一回くらいこのレコードに針を落とすことはあるのだろうか。そう思うと愛おしさが増してくる。

信仰と
親交深め
進攻す



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灰野敬二と沖縄電子少女彩によるユニット・精魂(セイコ)ついに正式デビュー!7/29(金)アルバム『愉楽』リリース記念ライブ@小岩オルフェウスにて開催

2022年07月26日 01時11分45秒 | 灰野敬二さんのこと


ロスト・アラーフで1971年にデビュー以降、多岐に渡る活動で海外でも大きな評価を受ける灰野と、沖縄音楽を軸にエレクトロやノイズを取り入れた楽曲をパフォーマンスするミュージシャン・沖縄電子少女彩。2人は4月29日に東京・秋葉原CLUB GOODMANで開催された「GIGANOISE」で精魂として初のパフォーマンスを行った。灰野が民俗楽器の笛やパーカッション、彩がヴォイスとカリンバ、シンギングボウルで応える前半部は、ノイズ的爆音パフォーマンス中心のこのイベントに於いては、逆に<雑音>と見做されて然るべき異端空間を作り上げた。灰野がギターを手にした後半では、大音響の轟音が鳴り響いたが、それは些か緊張気味の彩のシンセと歌を包み込み、暗闇から曙光へと導く誘導灯の役割を担った。彩の目覚めのウィスパーヴォイスが次第に叫びへと変わり、ギターのフィードバックを突き抜けるエンディングは、ふたりがその場限りの<デュオ>ではなく「精魂(セイコ)」という<ユニット=バンド>を結成した意義を宣言するかのように聴き手の魂に反響を残した。


2022年4月29日GIGANOISE@秋葉原グッドマン

当初6月10日発売予定だったデビュー・アルバム『愉楽』が、大幅に遅れて7月29日リリースに延びた背景には、この作品に真剣に取り組む灰野と彩の間で何度にも渡る吟味・再考が重ねられたことが想像される。クレジットを見ると、灰野も彩もVocal(歌)とVoice(声)となっている。言葉にならない声、声にならない歌、歌にならない言葉、囁きと叫び、祈りと呪い・・。果たしてどんな<息の音(ね)>が収められているのだろうか。さらに楽器はパーカッション、民俗楽器の笛、ハーディガーディ、シンギングボウルといったアコースティック楽器が並んでいて、電気楽器はシンセサイザーのみ、エレキギターはクレジットされていない。<息の音>に多数の<生楽器の音>とひとつの<電子の音>がどのように絡んでいるのか想像するだけで興味は尽きない。灰野ファンにとっても彩ファンにとっても、新鮮な驚きを味わえる作品になっていることは間違いない。

『精魂(セイコ)/愉楽』
灰野敬二 & 沖縄電子少女彩
Keiji Haino & Okinawa Electric Girl Saya

1 : 吐息 
2 : 眼
3 : 心

Produce : Keiji Haino & Okinawa Electric Girl Saya
Executive producer : Hisashi Ikeda
Direction : Hajime Nakamura

灰野敬二 Keiji Haino:Vocal, Voice, Percussions, Ethnic Flute, Hurdy Gurdy
沖縄電子少女彩 Okinawa Electric Girl Saya:Vocal, Voice, Syhth, Singing Bowl

価格:2,500円(税別)
7/29から会場、通販、タワーレコード、ディスクユニオンで発売。


そして発売日当日に小岩オルフェウスにて精魂(セイコ)ワンマンライブが開催される。「アルバムリリース記念ライブ」と銘打っているが<なぞらない>ことを信条とする灰野のライブの常として、アルバム再現ライブになることは決してあり得ない。アルバムとして記録された音源はあくまで作品として完結したものであり、ライブ・パフォーマンスは現在進行形の生きた(=LIVE)行為として新しい世界を志向してこそ意味がある。ましてや精魂(セイコ)という新生音楽体が何をどのように創造していくのか、灰野も彩も含め誰にも分からいところに面白さがある。音響とライティングに定評のあるライブスペース・小岩オルフェウスでそんなスリリングな体験が出来る機会を魂の底から楽しみたい。



7月29日(金) 東京・小岩オルフェウス
精魂アルバムリリース記念ライブ

19:00open 19:30start
料金:前売3,500円 当日4,000円(+1d)
配信チケット2,750 円

出演:精魂(灰野敬二&沖縄電子少女彩)

予約:
・小岩オルフェウス tel 03-5622-3520
・沖縄電子少女彩Twitterアカウントhttps://twitter.com/Tincy_sayaからDM
・メール info@tincy.jp まで

配信チケット(視聴期限: 2022年8月12日(金) 23:59 まで)
https://twitcasting.tv/c:flowentertainment/shopcart/172994

週末は
小岩ホールで
精魂再生

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【モグモグライヴ情報】8/3(水)吉祥寺NEPO『Deep Science』~ジョコンダの憂鬱/YOSHIO(ケーナ奏者)/Marc Lowe/MOGRE MOGRU+7/30(土)阿佐ヶ谷2現場

2022年07月18日 00時45分47秒 | 素晴らしき変態音楽


新ライヴ決定!
2022年8月3日(水) 東京・吉祥寺NEPO
【Deep Science】

1F open 17:30
B1 open/start 18:30/19:00
adv/door ¥2,200(+1order)
streaming ¥1,000

〈出演〉
ジョコンダの憂鬱
“gioconda no yūutsu” iimprovisation performance with guitar solo. È una performance di improvvisazione con assolo di chitarra.『ジョコンダの憂鬱』インプロ ギター独奏


YOSHIO(ケーナ奏者)
ケーナ奏者。2013年アルゼンチンコスキン音楽祭出演 Quenista


Marc Lowe
マークロウ(Marc Lowe)はコンポーザー、電子音楽のミュージシャン、ギタリスト、シンガーソングライター(ボーカリスト)、ドラマー(中学生の時から)、そして映像作家。


MOGRE MOGRU
インプロビゼーション.アンビエントユニット モグレモグル.通称モグモグです。TANAO @inibura 剛田武 @mirokristel 黒い瞳 @hchernookij



〈チケット予約方法〉
・NEPOのHP予約
https://nepo.co.jp/contacts/index/1515?tab=booking
・各アーティストの取り置きも受け付けます。

<配信>
https://nepostream.myshopify.com
こちらの購入ページへ随時追加。

〈タイムテーブル〉
17:30 1F飲食スペース開場
18:30 B1ライブフロア開場

19:00-19:30 ①ジョコンダの憂鬱
19:45-20:15 ②YOSHIO(ケーナ奏者)
20:30-21:00 ③Marc Lowe
21:15-21:45 ④MOGRE MOGRU

夏休み
モグモグと一緒に
サウンド・ダイヴ

【朗報】ハシゴOK!7月30日(土)は阿佐ヶ谷に集合。


現場➀黒い瞳出演(19:30~)
TEN IMPROS@阿佐ヶ谷天
19:00 open/19:30 start /¥1,500+オーダー
出演:
▶纐纈淳也(g, syn, rhythm) +Dr.stutter (g)+黒い瞳(saw, toy instrument, etc)
▶瀬尾マリナ(vo)+中野渡拓実(ds) duo
▼o-jujazzpunx:ヤマナカジュンジ(g, sax) 菅原光則(ds) 柳原達夫(b)

現場②Tanao+剛田武=MOGRE MOGRU 2/3出演(20:30~)
盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 vol.41@阿佐ヶ谷TABASA
18:30 Open/Start/Charge 1,000YEN + 1 drink
出演:
LIVE : MOGRE MOGRU 2/3 (Tanao+剛田)
DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武
DJ Vaby a.k.a.大場弘規
DJ Athmodeus a.k.a.持田保
DJ Amy a.k.a. モリモトアリオミ
DJ Lézard Noir (from France)
VJ Qliphoth a.k.a.宇田川岳夫

*阿佐ヶ谷天からTABASAまでは徒歩3分!
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【地下音楽ライヴレポート】DIVE DEEP Vol.2~MOGRE MOGRU/Oriental Love/平岡俊之/NRYY@大久保水族館 2022.7.15 fri

2022年07月17日 01時43分40秒 | 素晴らしき変態音楽


MOGRE MOGRU presents
DEEP DIVE vol.2

2022.7.15 fri 東京・大久保水族館
Open 18:30 / Start 19:00
2,000 Yen +1drink

NRYY
平岡俊之
Oriental Love
MOGRE MOGRU



第2回目のモグモグ主催イベント『DIVE DEEP VOl.2』が大久保水族館で開催。外は大雨、魚や水棲動物の水槽に囲まれた地下ライヴハウスで、異端音楽の海に深く潜るという奇特なイベントに来場いただいたお客様に感謝します。前回はDJを交えたイベントだったが、今回は会場の都合もありライヴ演奏オンリーで約2時間半の濃厚な時間を過ごすことができた。アンビエント、シンセサイザー、ストレンジ音響、ギターノイズとスタイルは多岐に亘ったが、いずれも音の深淵を探るべく独自のスタイルを追求する音楽Future Diverであった。機会があれば再度共演を実現したいものである。

●MOGRE MOGRU+Oriental Love


一番手は主催のMOGRE MOGRU。ゲストにOriental Loveを迎えた4人編成で出演。黒い瞳、剛田、オリラヴそれぞれがエスニック楽器を使うこともあり、水中を漂うような朦朧としたリバーヴに包まれた演奏が大久保水族館の妖しい雰囲気にマッチした謎の民俗音楽団の様相を呈し、近未来的な吉祥寺NEPOとは異なるアジア風アンビエント演奏となった。


●Oriental Love


Oriental Loveのモジュラーシンセ演奏。今回はリズムのない完全即興演奏だった。複雑に絡み合った接続コードを差し替えるごとに変化するサウンドスケープが、媚薬のように魂の深淵に浸透し、深い酩酊感をもたらす。電子音楽、アンビエントドローン、テクノイズといったジャンル分け不能なマインドミュージックと呼ぶべきであろう。


●平岡俊之


ホラー映画やSF映画の効果音を生むために開発された鳥籠のような楽器ウォーターフォンによるエレクトロノイズ演奏。弓で擦ったりマレットで叩いたりして生み出す奇怪な反響音が、エフェクターで加工され、この世のものとは思えない不思議なサウンドに生まれ変わる。彼の時間だけ水族館が超自然現象研究所にワープしたような気がした。


●NRYY


15年くらい前は覆面ノイジシャンだったが、現在ノイズギタリストとして活動しているNRYY。強い意志に貫かれた爆音ギターは、灰野敬二やJOJO広重や大友良英を思わせるが、元々メタルバンドで活動していたというルーツに相応しく核心にはロックとブルースがある。話してみると80年代関西ハードコアシーンの面白い話が次々飛び出してきて興味深い。


●DIVE DEEP SESSION(MOGRE MOGRU+Oriental Love+平岡俊之+NRYY)


「水の中に潜るようなイメージ」というテーマで出演者全員のセッション。ステージに入りきれないメンバーは客席で演奏するというカオス状態だったが、演奏はカオスでありつつも、6つの音が邪魔をしないで重なり合い原初的な祝祭もしくは宗教儀礼音楽のような神々しさを生み出したようだ。後で録音を聴いてみてニューヨークのベテラン不定形騒音即興バンド、ノー・ネック・ブルース・バンド(NNCK)によく似ていることに気が付いた。新たなる変態音楽集団の誕生である。


次回『DIVE DEEP VOl.3』は8月~9月開催予定。

水族館
深く潜れる
面白さ


【イベント情報】盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 vol.41~日仏からゲストを迎え、7月30日(土)阿佐ヶ谷TABASAにて開催!
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【ロックのライヴ盤はLP2枚組で決まり!】キャロル/クールス/パンタ&HAL/ザ・スターリン

2022年07月14日 02時18分12秒 | ロッケンロール万歳!


最初に自分で買ったLPはジョン・デンバーの『ジョン・デンバー・ライブ(An Evening with John Denver)』だった。日本盤LP2枚組、1976年4月4日金沢・山畜片町店にて4000円にて購入。中学2年生になったばかりの筆者のこづかいは1か月1000円。おそらく貯めておいたお年玉をはたいて買ったのだろう。今ではハードオフのジャンクレコード・コーナーでよく見る安レコの代表格だが、当時聴いたときの感動は今でも心の中に刻まれている。A・B・C・Dの四面あるので、朝起きると今日はどの面を聴こうかと楽しみにして登校していた。学校が終わって家に帰り、居間の家具調ステレオのスイッチを入れてアームがレコードの端にゆっくり動いて針が盤面に降りるのを見ている時のドキドキ感は、他に比べるもののない至福の時間だった。流れ出すジョン・デンバーの明るい歌声は、遥かなるロッキー山脈やグランドキャニオンの青空へと連れて行ってくれた。ライナーノーツには湯川れい子さんが実際に観たステージの模様を詳細に綴っていて、ライヴの最初から最後まで一緒に観ている気分に浸ることができた。もちろん実際のライヴは2時間近くあるからLP2枚には入りきらないが、自分の部屋でライヴを疑似体験するには、LP1枚40分強じゃ物足りない。実際にその後ビーチ・ボーイズ『コンサート(Concert)』『ライヴ・イン・ロンドン(Live In London)』、ジョニー・ウィンター『ジョニー・ウィンター・アンド・ライヴ』『狂乱のライヴ(Captured Live!)』など、1枚もののライヴ・アルバムを買ったが、ジョン・デンバーのような濃厚なライヴ体験は出来なかった。

中学3年の時に東京へ引っ越してロック好きの友達に出会い、当時人気のハードロックのライヴ盤を聴かせてくれた。キッス『地獄の狂獣/キッス・アライヴ』、ディープ・パープル『ライブ・イン・ジャパン』、レッド・ツェッペリン『永遠の歌/レッド・ツェッペリン・ライヴ!』、すべて2枚組だった。LPの半分近くを占めるドラム・ソロは苦手だったが、やはりレコード2枚に亘ってたっぷり聴けるライヴ演奏は格別だった。筆者も廉価盤で再発されたグランド・ファンク・レイルロードの『グランド・ファンク・ライヴ・アルバム』2枚組を買った記憶があるが、すぐにパンクロックに衝撃を受けハードロックがダサく感じられるようになり、あまり聴かないうちに手放してしまった。

しかしCD時代に入ると1枚のCDの収録時間が長くなり、2枚組LPが1枚のCDに入ってしまうようになる。当時は「得した」と喜んでいたが、実際70分ノンストップで聴くことはなく、途中まで聴いて続きは明日、という感じで、LP時代の「今日は何面を聴こうか」と迷う楽しみがなくなってしまったのも事実。CDボックスでフルコンサート完全収録というのも何となく安易で食指が動かない。やはりロックのライヴ盤はLP2枚組に限る!と改めて実感している次第である。

そんなわけで最近聴いている日本のロックのLP2枚組ライヴ・アルバムを紹介しよう。

●キャロル『燃えつきる=キャロル・ラスト・ライブ!1975.4.13』


雨の日比谷野音で開催された解散コンサートのライヴ盤。70年代日本のロックの最高峰ははっぴいえんどでも裸のラリーズでもなく、ロックンロールの初期衝動をバンド・メンバー4人だけで発散し続けたキャロルなのではないだろうか。スタジオ盤もカッコいいが、灰になるまでロックンロールし続けるライヴ演奏を4面連続プレイすれば、心と身体を解放して、自由な世界へ羽ばたける気がする。


●クールス『ハロー・グッドバイ!』


キャロルの解散コンサートで親衛隊を務めたモーターサイクルチームのメンバーで結成されたクールス。1977年解散(舘ひろし脱退)コンサートのライヴ盤。アメリカのロックロールショーバンド、シャ・ナ・ナをモデルにした複数ヴォーカルによる賑やかなバンドサウンドは、『アメリカン・グラフィティ』の世界を彷彿させるロカビリー魂に溢れている。舘ひろし脱退後もバンドは続き、バラエティ豊かなロックンロール・ミュージックを追求している。


●パンタ&HAL『LIVE! TKOナイトライト』


頭脳警察解散後1975年にソロ・デビューしたパンタが77年に結成したロックバンド、PANTA&HALの1980年7月16日日本青年館でのライヴ盤。メッセージ性だけでなく音楽も重視するという構想のもとで結成されただけあり、フュージョンやワールドミュージックの要素を取り入れたサウンドは、頭脳警察のシンプルな曲想とはずいぶん異なるが、パンタの自己主張溢れる歌声はやはり魅力的。ライヴならではのアドリブや躍動感が80年代日本のロックの幕開けを告げる。


●ザ・スターリン『フォー・ネヴァー』


1985年2月21日調布・大映スタジオでの解散コンサートのライヴ盤。日本のパンクロックの草分けとして数々のセンセーションを巻き起こしたスターリンの集大成と言える長時間ライヴを収録。四つの面をアザラシ面、魚面、サル面、ブタ面と分けてあるのがレコードならではのこだわり。封入ポスターも嬉しい。映像もリリースされているが、音だけで聴くほうが遠藤ミチロウの歌の核心にある叫びを感じられるような気がする。

ロックなら
レコード2枚で
出してくれ



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【NTSラジオで放送中】デイン・ミッチェルの音響インスタレーション『ポスト・ホック』と灰野敬二がコラボレーション。

2022年07月11日 00時26分55秒 | 灰野敬二さんのこと


Dane Mitchell / デイン・ミッチェル
デイン・ミッチェル(1976年ニュージーランド生まれ)は、不可視の領域におけるエネルギーや力学について、芸術的、科学的、歴史的な観点から多様なリサーチを行っている。そこでは視覚と嗅覚の関係性がしばしば意識されるが、不可視の領域や記憶の古層にわれわれの意識を誘う「香り」を、彼は重要な“彫刻的素材”として捉えている。
2019年にニュージーランドの代表としてベニス・ビエンナーレに参加し、2018年には森美術館で個展を開催した。

Dane Mitchell _Post hoc_ NOWNESS


『ポスト・ホック(POST HOC)』(ラテン語で「この後」の意味)はベニス・ビエンナーレに出品した作品の核になるもので、AI (人工知能)によって400万個の言葉が読み上げられる音響インスタレーションである。読み上げられるのは絶滅した、消えた、消失した、そして取り消されたモノのリストである。すべて読み上げるには、1人8時間読み続けても6か月かかるという。

その膨大なリストは、ほとんど理解しがたいほど多岐にわたっている。:盗まれた美術品、昔の国歌、絶滅した鳥、絶版になったフィルム映画、恐竜、無くなった政党、検閲された展示会、閉局されたラジオ局、中断された科学論、失われた水域、廃刊になった新聞、禁止された・もしくは作れない色、絶滅した植物、失われた映画、以前に確認されていた星座、破壊された惑星、禁止されている芳香分子、歴史的紙幣、閉鎖した核兵器施設、破綻した銀行、崩壊したブラックホール、化石の鳥、紀元前の哺乳類、シンクホール、紀元前の昆虫、竜巻、紛失した文学作品、閉館または失われた図書館、破壊された美術品、元国立公園、紛失した古記録、(その他多々)。

このリストは失われたモノの一覧表だと考えてもいいだろう。リストは意図的に様々な分野に広がり、何をもって失われたというのだろうと、詩的にして主観的に思いめぐらせるようになっている。このリストは実際のところ断片的にしか経験することができない。前述したように、リストの何百万の消えていった見えないモノをすべて聞くには、1日8時間聴いても6ヶ月かかるのだから。この作品はすべてを百科事典的に収集しようという試みだが、すべてのデーターベースがそうであるように、現在進行形で発展しているリストが完成することはない。

この作品の意図は、世界はこの様に収集できるという西洋の認識論(的)な考え方を押しつけて、そしてモノに名前をつけるという行為自体が世界にある物に力と所有権を及ぼそうとしているという考えに対面させることだという。そして同時にモノに名前をつけるという行為が呪文のように働くことに強い興味を持つだろう。名前を口にすること、発声することによって、そのモノがこの現在の瞬間に呼び出されるかもしれない。(名前を言うことによって)このリストにある色々な種類のかつては現実の海を泳いでいたモノが一瞬不死身の力を得て、かつてそれが生命の一部だった事、そして我々の今の瞬間がそれらの上に成り立っているということを亡霊のように思いださせるのだ。

2021年8月1日から英NTS Radioで『ポスト・ホック』のエピソードが、毎日朝6時から1時間、週に7日間放送されている。毎月異なるアーティストが音楽を提供し、AIが読み上げる言葉のリストとコラボレーションしている。これまでAl Doyle with Max Eastley、 Hermione Johnson、Rosy Parlane、Rachel Shearer、Torben Tilly、Rob Thorne、Gillian Whiteheadなどが参加した。

1年間の『ポスト・ホック』シリーズの最後の月である2022年7月は灰野敬二による『“Caught in the dilemma of being made to choose” This makes the modesty which should never been closed off itself, Continue to ask itself: “Ready or not?”/「選ばされてしまう はめになる」 このことが もう閉じることが無かったはずの謙虚さに「もういいかい」と 自らに問いかけ続けさせる』と題されたポリゴノーラを中心とするパーカッションによる音楽作品とのコラボレーション。各エピソードで放送される楽曲のパートは毎日変化する。もちろん言葉のリストも一度として同じものはない。いわば31日間かけて31の異なる作品が放送されるマラソン・インスタレーションである。

放送されたエピソードはNTSラジオのアーカイヴで試聴可能。アーカイブされるのは放送の翌週なので、現在は1回目(7/1放送分)を聴くことができる。読み上げられるリストは「List Of Future Solar Eclipses(未来に起こる日蝕のリスト)」。

POST HOC W/ DANE MITCHELL & KEIJI HAINO 01.07.22
https://www.nts.live/shows/post-hoc/episodes/post-hoc-w-dane-mitchell-keiji-haino-1st-july-2022

POST HOC W/ DANE MITCHELL(これまでの全エピソードのアーカイヴ)
https://www.nts.live/shows/post-hoc

DANE MITCHELL / POSTHOC(ポスト・ホックの説明)
https://www.posthoc.xyz/post-hoc-venice

NTS RADIO LIVE(NTS生放送)
https://www.nts.live/
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【イベント情報】盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 vol.41~日仏からゲストを迎え、7月30日(土)阿佐ヶ谷TABASAにて開催!

2022年07月08日 00時21分13秒 | 素晴らしき変態音楽


盤魔殿 Disque Daemonium 圓盤を廻す會 vol.41

2022年7月30日(土) 阿佐ヶ谷TABASA

18:30 Open/Start
Charge 1,000YEN + 1 drink

LIVE : MOGRE MOGRU 2/3 (Tanao+剛田)

DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武
DJ Vaby a.k.a.大場弘規
DJ Athmodeus a.k.a.持田保
DJ Amy a.k.a. モリモトアリオミ
DJ Lézard Noir (from France)

VJ Qliphoth a.k.a.宇田川岳夫

灼熱の異端音楽祭、盤魔殿「夏の陣」開催。今回は久々にゲストを二人迎えて寝苦しい熱の夜を過激にヒートアップするラインナップでお届けします。フランスを代表するオカルト/リチュルアンビエント、アヴァンギャルド・レーベルAthanorレコードのオーナーであるDJ Lézard Noirことステファン氏が、2018年7月盤魔殿Vol.15以来4年ぶりに来日、知られざるダークアンビエント/ゴシック音楽を開示する。また名著『和ンダーグラウンドレコードガイドブック』の著者であり、異端のシンガーソングライターでもあるモリモトアリオミが2018年5月の盤魔殿Vol.13、2019年7月のVol.26に続きゲストDJとして3度目の出演。予想の斜め上を行く破天荒な選曲で驚かせてくれるに違いない。

盤魔殿DJは剛田、持田、大場という男気溢れる三人が三者三様、本領発揮の我儘プレイを展開する。盤魔殿の父、宇田川岳夫は今回はVJとしてオリジナルの映像曼荼羅で、会場をトリップさせる。
さらに前回のVol.40にも出演したインプロ・アンビエントユニットMOGRE MOGRUが別ユニット「MOGRE MOGRU 2/3」としてライヴ出演、熱帯夜をツンドラ地帯へワークさせる納涼アンビエントミュージックを聴かせてくれるに違いない。
もちろんいつものように、ここでしか手に入らない異端音楽ZINE『盤魔殿アマルガム』を来場者全員にプレゼント。

7月最後の土曜日の宵は、阿佐ヶ谷TABASAで異端音楽に酔い痴れましょう。

TIME TABLE
18:30 DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武
19:00 DJ Lézard Noir (from France)
19:30 DJ Athmodeus a.k.a.持田保
20:00 DJ Amy a.k.a. モリモトアリオミ
20:30 Live: MOGRE MOGRU 2/3 
21:00 DJ Vaby a.k.a.大場弘規


●DJ Necronomicon a.k.a. 剛田武

何故か気分はニュー・ヨーロピアン?ってことで、今宵は華やかなる欧州音楽の旅へとお誘いします。シャンソン、カンツォーネ、ロシア民謡、クラウトロック、ダッチ・サウンド、フレンチ・ムジークコンクレート、北欧ジャズ、東欧ノイズなど、欧羅巴ミュージックの深みにレッツ・ダイヴ!


●DJ Athmodeus a.k.a.持田保

マタンゴ化したレーニンが徘徊する絶海の孤島。その島では昼夜関係なくレーニンから生えたキノコをキメた各国の亡命者たちが酒池肉林のレイヴ・パーティーを繰り広げていた‼︎‼︎という物語のサウンドトラック的DJをリチュアル音楽とダブ的なアレで繋げていく予定!サマー・オブ・ソーシャリズム‼︎‼︎


●DJ Vaby a.k.a.大場弘規

6月とは思えない猛暑続きの今日この頃ですが、皆様に少しでも元気を出して頂きたく、今回は「Power Popから初期PunkにHardcore、更にはStraight Edgeまで!All 7inch Selection!!」をテーマとしヴァラエティに富んだ盤魔殿に相応しいマテリアルを皆様にお届け致します。何か終息し始めれば、新たな問題が勃発するようなご時世ですが、皆様が少しでもリラックス出来、元気になれる時間をお過ごし頂ければ幸いでございます。


●DJ Amy a.k.a. モリモトアリオミ

ポストパンク~ニューウェイヴの間にフォークが顔を覗かせる。


●DJ Lézard Noir (from France)

Dark ambient with gothic atmosphere


●MOGRE MOGRU 2/3

同日同時刻に同じ阿佐ヶ谷の別のライブハウス(天)にメンバーの黒い瞳が出演中・・・・。ということで今回はギターのTanaoと管弦楽器の剛田武のデュオ、モグモグ2/3で盤魔殿の宴を盛り上げます。アンビエントに限定せずに、この日だけの実験的なスタイルに挑戦。The Other Side Of MOGRE MOGRUを体験出来るのでお楽しみに!
 

●VJ Qliphoth a.k.a.宇田川岳夫
TouchDesignerとResolumeArenaを併用してサウンドとインタラクティブな動く映像と、絵画や映画の一部をカットアップコラージュした映像をブレンドしてお見せします。



盤魔殿
夏でも冬でも
関係ない

MOGRE MOGRU 20220702 grazin' in the sea – Kichijoji NEPO - Ending
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【ライヴ・レポート】Breeze Blow@Bitches Brew vol.2~sara (.es)/内田静男/建畠晢@白楽ビッチェズ・ブリュー 2022.7.1(fri)

2022年07月06日 00時34分14秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


2022.07.01 fri
Breeze Blow@Bitches Brew vol.2

act
内田静男 Shizuo Uchida, bass
sara (.es) , piano
建畠晢 Akira Tatehata, poetry



昨年10月8日以来9か月ぶりのsara(.es)の関東公演。横浜・白楽のジャズカフェ、ビッチェズ・ブリューでの2回目のソロ公演である。前回のソロ公演は、初めて弾くビッチェズ・ブリューのアップライトピアノに不思議なパワーを感じて、新たな弾き方に目覚めたと語っていた。
【地下ジャズLive Report】“Breeze Blow” ~ sara (.es ドットエス) + 建畠晢 @白楽Bitches Brew 2021.10.8 fri

ゲストに前回も共演した詩人の建畠晢と、故・橋本孝之とデュオでUHとして活動していたベーシスト内田静男を迎えた今回の公演は、音楽・美術関係者を中心に満席の盛況。和やかな雰囲気の中、大阪から同行したギャラリーノマルのプロデューサー林聡の紹介で演奏がスタートした。

●sara Solo


ボヘミアンな衣装でリラックスした感じでピアノに向かったsara。話しかけるような優しいタッチで微細な音色を奏でる。指が鍵盤を撫でるように動くと、ピアノもその動きに波打つような音色で応える。次第にアクションが激しくなり、腕を鍵盤の下に伸ばしピアノのボディを叩いて反響させたり、身を反らしてペダルを踏みしだき鍵盤を乱打する。前回”変な子・変わった子”だったアップライトピアノは、saraの一挙一動に歓びの声をあげるように、最高の音を生み出そうとしているように思えた。このピアノとの一体感。saraの演奏には、楽器や場所を巻き込む“.esマインド”が溢れ出していた。

●内田静男+sara Duo


内田静男とsaraは、2021年夏以降トリオで1回、デュオで2回共演している。二人とも橋本孝之の演奏パートナーだったという共通点はきっかけに過ぎず、共演する二人の間には.esともUHとも異なるプレイヤー同士の新たな共感が生まれている。弱音・微音・物音・楽音に関係なく、音と音が拡散と収縮を繰り返す演奏は、「即興」という使い古された言葉が持つ本来の個と個の在り方を詳らかにする、原初的なパワーを感じさせた。

●建畠晢+sara Duo


大阪のギャラリーノマルでも共演を重ねてきた詩人と音楽家の邂逅は、前回よりも鋭さを増した、あたかもつむじ風のような凝縮された時間を生みだした。建畠の詩に現れる言葉遊びのような言語感覚が、saraとピアノの共感反応の隙間に入り込み、別の宇宙にワープさせるSF映画の一場面を幻視した。窓辺を飾る花模様の電球や三日月型の反射板の悪戯かもしれないが、音に起因する瞑想旅行ではないと果たして言い切れるだろうか。

音の宇宙への小旅行を終えた清々しさが、熱帯夜の寝苦しさを忘れさせてくれた。

ピアノ弾く
姿を見下ろす
金の月

sara (.esドットエス) Solo Piano Improvisation “Esquisse” 2022/02/19 Gallery Nomart

【即興音楽Disc Review】sara (.es) / Esquisse~Piano Improvisation~白い羽根のように重力から解き放たれたピアノ作品。
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【ライヴ・レポート】MOGRE MOGRU/海の上のプールサイド(duo set)/ヌルオ the 部族×タダフジカ/DISCO WITCH@吉祥寺NEPO 2022.7.2(sat)

2022年07月05日 00時31分17秒 | 素晴らしき変態音楽


2022月7月2日(sat) 東京・吉祥寺NEPO
【grazin'(in the sea)】

open/start 18:00/18:30
adv/door ¥2,200(+1order)
streaming ¥1,000

〈出演〉
MOGRE MOGRU
海の上のプールサイド(duo set)
ヌルオ the 部族×タダフジカ
DISCO WITCH

吉祥寺NEPOのブッキング・イベント『Grazin'(放牧)』の特別企画。”Grazin' in the Sea=海の中で放牧”とはブッキング担当者が<海に潜る>イメージで集めた対バン・イベントとのこと。我々MOGRE MOGRUにとっては我が意を得たりという好企画で、出番がトリということで気合が入る。実際5日連続35℃超えの猛暑日続きで、ライブハウスに来るより本当の海に泳ぎに行きたくなるような炎天下の中、吉祥寺駅から徒歩15分の井の頭自然文化園の外れの地下未来派ベニューNEPOまで汗をかきつつお越しいただいた観客の皆さんは異端の避暑音楽を堪能していただけただろうか。

●DISCO WITCH


MOGRE MOGRUのギタリストTanaoの轟音アンビエント・ギター、礼拝の物音ノイズ・ギター、Oriental Loveのモジュラーシンセの電子音が絡み合う爆音トリオ。結成当時はDISCO BITCHと名乗っていたが、イタリアに同名バンドがいることが判明したためDISCO WITCHに改名したという。いずれにせよ、ディスコで踊ることは出来ないドローンノイズの三重奏を聴かせる異端派である。表情豊かなサウンドスケープは、シューゲイザー系アンビエントやエレクトロニカに通じる。


●海の上のプールサイド(duo set)


海の上のプールサイドは5人組ロックバンドだが、今回はサトウ(vo/gt)とチャーリー(key)でのデュオ編成で出演。初の試みだという。PCからビートトラックを流す曲もよかったが、サトウがギターを置いてヴォーカルに専念し、艶のある伸びやかな歌声で少しさだまさしを思わせるレトロなメロディを歌った3曲目が特に気に入った。バイオリンを入れたらカッコイイと思ってそう伝えたら、すでにバンドにバイオリニストがいるという。いつかバンド編成でも観てみたい。セトリ:1.羽化 2.飛ばない鳥(新曲) 3.裸足 4.二つの太陽 5.風船


●ヌルオ the 部族×タダフジカ


ソロやユニットで色々なパフォーマンスをするヌルオ the 部族とギタリスト&シンガーのタダフジカのデュオ。男と悪魔の物語を描く講談調のステージは想定外の面白さ。手慣れた演奏も流石というしかない。現代の地下音楽=NEO UNDERGROUNDシーンが異能のパフォーマーの宝庫であることを確信させてくれるステージだったが、筆者は次の出番のためのメイクをするため後半を観れなかったことが悔やまれる。



●MOGRE MOGRU(モグレモグル)


モグモグ4回目のNEPOライヴ。密林をテーマにしたオープニングから、黒い瞳のポエトリーリーディング⇒ミュージカル・ソー/バイオリン/E-BOWギターのドローン三つ巴、後半はゲストにOriental Love(パーカッション)を迎えたミニマル・インプロを展開。轟音ギターのカタルシスへ突入。リズムを導入したことで、これまでになく躍動的なプレイになった。音だけ聴くと深海に潜った先に逆光のカタルシスの覚醒が待っていたという趣向だが、KKK(クー・クラックス・クラン)を思わせる白い修道士のコスチュームが悪魔的な儀式性を醸しだす暗黒の異世界への旅だったかもしれない。

MOGRE MOGRU 20220702 grazin' in the sea – Kichijoji NEPO - Ending


▼黒い瞳ファン向けサービス動画(笑)
MOGRE MOGRU 20220702 grazin' in the sea – kichijoji NEPO - Hitomi Special


吉祥寺NEPOの幻想的なビジュアルライティングは深く潜るイベントにピッタリだ。

海の中
放牧された
異端音楽

▼MOGRE MOGRU次回ライブは、名前からして深く潜るのにピッタリの”大久保水族館”にて、異端音楽ソロアーティスト3組を迎えてのモグモグ主催イベント!


MOGRE MOGRU presents
DEEP DIVE vol.2


2022.7.15 fri 東京・大久保水族館
Open 18:30 / Start 19:00 *当初の告知から30分早まりました
2,000 Yen +1drink

NRYY
平岡俊之
Oriental Love
MOGRE MOGRU
詳細⇒【モグモグ主催イベント第2弾決定!】MOGRE MOGRU presents『DEEP DIVE vol.2』7月15日(金) 大久保水族館~NRYY/平岡俊之/Oriental Love
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【JazzToyko#291更新】ニック・ダンストン『蜘蛛の季節』~カリヤ・ヴァンデヴァ―、キム・ドヨン/ハイパー能『菖蒲冠(あやめこふふり)』~桜井真樹子、灰野敬二

2022年07月04日 00時30分32秒 | 素晴らしき変態音楽

Photo by 船木和倖 Kazuyuki Funaki

音楽情報サイト「JazzTokyo Jazz and Far Beyond」の最新号が公開された。剛田武は以下の記事を寄稿した。

●ニック・ダンストン / 蜘蛛の季節

#2188 『Nick Dunston / Spider Season』『ニック・ダンストン / 蜘蛛の季節』

変則トリオが紡ぐ雑踏の中の環境音楽。
彼らが吐き出す三つの音の蜘蛛の糸の絡み合いが、雑踏時代の人類と音楽の関係を再定義する兆しになれば是幸いである。


●ハイパー能「菖蒲冠(あやめこふふり)」 

#1221 ハイパー能「菖蒲冠(あやめこふふり)」

伝統と革新、自然と芸術が共存するハイパー・アートの極み。 
犬の吠え声や野鳥の鳴き声が演奏・歌唱と共存し、芸術と自然がひとつになれる理想的な環境である。

「菖蒲冠(あやめこうふり)」作品 解説インタビュー その1 「能」とは?「ハイパー能」とは?


作曲と
即興と能
いとおかし

委嘱作品『カウントダウン・メルトダウン』 桜井真樹子


Tyshawn Sorey and Do Yeon Kim | Improvisation: Duo
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