「ユーゲント」第07号(1999年07月28日)
ドイツ語教室の教科通信
いつもは前期に2回、アンケートを取って、皆さんの意見を聞くのですが、今年は3回となりました。今回、通読してまず印象に残った事は、アンケートに対する皆さんの取り組みがとても熱心になったということです。
内容も豊かになりましたし、何より分量的にいままでより沢山書いて下さるようになりました。皆さんが「このアンケートは書くに値する」と判断した結果だと思います。嬉しい事です。「落ちついた対話」路線はまず第1の成果を挙げました。
纏め方としては、今回は、皆さんへの問題提起を多くするという方針にしました。夏休みに、友だちと、そして何よりも家族と話し合って下さることを希望します。
演劇大会について
- 中学の頃は少しは会話とかをやったけど、高校の英語は受験のためだけだったので、あまり楽しさを感じなかった。だから私は演劇大会はとても意義があったと思う。みんなの会話を聞いて、笑うところがあったりして、あの時の授業は楽しかった。内容はあのくらいでちょうどよかったと思う。
★ 全体に好評でした。「又やりたい」という意見は人文のクラスに多く、工学部では「もうやりたくない」という意見もかなりありました。クラス全員の顔を見ることが出来た、分量が多かった、全員が同じ文だったので終わりの方はマンネリ化した、大会そのものより準備に意義があった、次はアドリブを入れたい、などの意見がありました。
「和敬塾」のビデオについて
──やはり男はいい。女には絶対できない盛り上がりだと思う。私はもともと集団生活が好きで、片山寮などにも入りたかった性質なので、和敬塾にはとても憧れる。
けれど彼らには自分の時間があるのだろうか、という疑問が湧いてきた。片山寮にはプライバシーがない!と知り合いがよく言っている。しかし、ともかく彼らは自分のやりたいことを見つめ、考え、実行している。
──自分は寮に入っているが、人生について相談したことがない。何日間もかけての体育大会があるのは楽しそうだ。
★ ああいう生活はしたくない、という意見ももちろん何人かありました。
6月に宿題を多くし、7月は少なくする方針について
★ 支持率が高かったようです。7月はやはりレポートや試験が多いようです。6月攻勢は辛かったという人もかなりいました。
──6月は、大学の行事やサークルのコンパなどが終わり、ふと気が抜ける時期で、宿題が適度にあったのはよかったと思う。7月は試験等もあるし、宿題が少ないのはありがたい。
フレッシュマン・セミナーについて
少数ながら先生が話すだけの授業とかもあったようですが、多くは「誰かが調べてきて発表し、それについて皆が質問、意見を出す」というゼミだったようです。もちろん議論の盛り上がった所とそうでない所とがあったようです。
どこかに見学に行ったゼミもあるようです。これは始めて知った事ですが、抽選漏れでゼミに参加できない人もいたようです。このゼミには皆が参加できるようにするべきだと思います。
──人文学部法学科のN教官が開いた「知的探究の方法」というのに参加しました。内容は、現代社会の問題についてのディスカッション。ダイオキシンごみ問題、原発、食糧問題などを、各人が調べてきて、話をしました。
先生は毎回、新聞のコピーを持ってきて、それについて話をしました。とても興味深い話ばかりで、良い授業だったと思います。とても面白かったです。
──討論のセミナーで未修外国語について話し合った。そこで出た内容は、未修外国語を1~2年やった程度では言葉の理解は難しい。更に英語の理解は中高とやりつづけたにもかかわらず出来ていない所からみても、更に未修外国語を学ぶより英語を完璧にする方が好いという結果だった。
★ 未修外国語を肯定する意見はなかったのですか。先生の意見は? 授業方法やクラスの人数の点は問題になりませんでしたか。
アンケートについて
──前期の最後の授業の中で授業に対する評価を提出するのがありました。選択式・匿名のものです。アンケートの内容が授業に反映されるのは嬉しいことですが、これは対話ではなく、先生の意見の聞けない一方的なものでした。
昨年、浪人して予備校に通いました。そのとき講師に対する評価をアンケートとして提出しました。予備校の講師というのは評価が待遇に影響するそうで、講師は生徒の反応には敏感でしたが、人気取りに気をつかわなければならないのか、授業態度を注意するのも大変そうでした。一方的な評価を第三者が見て更に評価する制度というのは、このようにご機嫌取りを必要としてしまうのではないかと思います。
牧野先生のアンケートのように、対話であることが本当の意味でより良い授業のためになるのだと分かりました。昨年は「アンケートによる授業評価」自体を疑問に思いましたが、それが「一方的なアンケート」に対する疑問に変わりました。
★ アンケートの種類にはそのほかにもいろいろな分け方があって、先生が自分で取るものと経営者とか学校とかが取るものと生徒が作成するものとの違い、講師の待遇と直結するか否かの違いもあると思います。生徒の授業態度を注意しにくくなるようなのは、やはりどこかおかしいと思います。
──アンケートの記名・匿名の問題ですが、今では教官の意見に大体賛成します。しかし、忘れないでいただきたいのは、匿名の意見を単なるトイレの落書き呼ばわりして捨ておかないで欲しいということです。
最近話題になった東芝批判のホームページ問題で、ネット上の論議についてやはり某有名キャスターがのたまわっておりました。しかし、東芝は結局折れざるをえない程の反響を巻き起こしたのは事実ですし、その議論の中では冷静で適格な意見を述べておられる方も多くおられました(もっとも、それ以上に聞くに耐えない悪口雑言を並べている輩も多数いましたが)。
大切なのは、広く意見を聞く姿勢だと思います。言葉を生業としている人はとかく、匿名の意見=低俗な論議→聞く価値なし、としてしまうフシがあるように思えてなりません。
方向性は違いますが、上記の話題はたくさんの示唆を私たちに与えてくれていると思います(ちなみに、私はこの話題を一歩引いた姿勢で観察していたので、東芝派でも会社員派でもありません)。
★ 静岡大学ではアンケートを取る教師は少なく、「学生による授業評価」は制度化されていません。あなたは、アンケートを取らない教師に匿名で「アンケートを取って欲しい」と言いましたか。学長に匿名で要望書を出して「『学生による授業評価』や教科通信を制度化して欲しい」と言いましたか。
また、あの東芝問題になぜ「一歩引いた姿勢で観察した」のですか。あなたの親やこれまでの先生はそういう態度でいいと教えたのですか。どっちがどう正しいかと考える場合にのみ、人間の思考力は高まるのではありませんか。
大切なのは広く意見を聞く姿勢だけではないと思います。意見を言う人に対して甘やかさない態度も大切だと思います。
考えて欲しいこと
前回と今回のアンケートの中に、教科通信(Jugend)を毎回出して欲しいとか、もっと多く出して欲しい、という要望がありました。これは大切な問題を含んでいると思います。
まず、アンケートを取ることと教科通信を出すことは良い事である、あるいは「先生はそうあるべきである」ということは前提します。すると、それを例えば月に1回のペースで行っている先生に向かって「毎回やって欲しい」と言うのは正しいでしょうか。
私は正しくないと思います。なぜなら、その前にまず、それを行っていない先生に、「アンケートを取って欲しい」とか、「教科通信を出して欲しい」と要求する方が先だと思うからです。あるいは学長に要望書を出して、「アンケートや教科通信を制度にして欲しい」と言うのが正しい態度だと思います。
しかし、多くの人はそうは言わないで、既に行っている先生に「毎回出して欲しい」といった要求をします。何故でしょうか。人間の中には、「言いやすい人に言う」という傾向があるからだと思います。しかし、これでは世の中はよくならないと思います。「言うべき人に言う」というのが、公正な態度ではないでしょうか。
ちなみに、フレセミについての文の中で、「ここで教科通信が出ていたら、もっと充実したと思う」という趣旨の事を書いている人は一人もいませんでした。少し想像力に欠けるのではないでしょう
か。
夏休みの宿題について
これについては2つの問題を提起したいです。
第1は、「ドイツ語の授業で日本語の小説を読む宿題を出すのは適当か」ということです。3人の人が疑念を表明しています。宿題をした上で、秋に皆さんの意見を聞きますから、宿題はやって下さい。私の立場は「この授業は大学教育の一環としてのドイツ語教育である」ということです。
第2の問題は「夏休みの宿題が多すぎるか」です。2つの意見を紹介します。
──生徒の意見をもっと聞き入れて欲しいです。先生にとって都合の悪い事でも、ちゃんと聞いて下さい。あと、宿題を減らして欲しいです。先生に取っては最小限でも、私にとっては多すぎます。大学生はヒマだと言われていますが、そこまでヒマではありません。ドイツ語を押しつけるのではなく、もっと興味が持てるように考えて欲しいです。
──今のところ他の授業では宿題は出ていません。牧野先生のこの授業ではそこそこの分量が出ていますが、自分にとってはとてもよかったと思います。そうでなければ、夏休みは勉強をしないかもしれないからです。今後もこの方針は変えずにいて下さい。
これらの意見についての講師の考え
(1) 「生徒の意見を聞き入れて欲しい」という言い方は「原理的に」間違っていると思います。それは「対話」ではなく「強要」です。皆さんの意見は全部、2度以上読んで、考えています。教師には生徒の意見を聞き、考える義務はありますが、聞き入れる義務はないと思います。
(2) 勉強については、人間はA・B・Cの3種に分類できると思います。
A・宿題がなくても自分でどんどん勉強する人。
B・宿題があればやる人。
C・宿題があってもやらない人。
Aは変わり者、Bは凡人、Cはろくでなしだと思います。人間はほとんど皆Bです。Bだからこそ、「先生に引っ張ってもらおう、宿題を出してもらおう」と思って学校に来ているのです。
人によって違うのは、「どの程度の宿題ならやれるか」です。そこで、私は「上」の人に合わせ、「上」の人を出来るだけ伸ばす方針を取っているのです。
その他
──ビデオ大好きです。先生の授業は1時間半あるように思えません。他の授業はたいてい50分で限界です。組み合わせからくるメリハリと切替えのうまさだと思います。ビデオもその1つとしていいと思います。
★ 秋には別の休憩も考えたいと思います。
──アンケートと「ユーゲント」とで、大学にはあまりない先生との会話が出来ていると思う。
──「ユーゲント」を読んでいると、ドイツ語の勉強以上のことを学んでいるような気がします。
──「ユーゲント」の最後にドイツの諺などを書いてくれたらよいと思う。(考えてみます)
──今まで教科通信をこんなにひんぱんに出してくれる先生はいなかったので、新鮮味があっていい。
──独検3級を取ったら、企業で使えるものなのでしょうか。
★ 3級ではまだ難しいでしょうが、3級になれば1人で勉強できると思います。
──今まで僕は単に日本を嫌い、外国にあこがれているような人間だった。しかし、静岡に来て、いろいろな人に出会い、外人とも話し合って、日本人には見えない好い所が分かって、とても良い刺激になった。これからは日本全土を見て、なぜ自分が日本が好きになれない日本人だったのかを考えてみたいと、最近は思っています。
──先生は毎週、引佐町からやって来るのですか。だとしたら交通手段は何ですか。いなさ牛乳はおいしいですね。小学5年生の時に観音山〔少年の家〕で飲んで感動しました。
★ 今は、たいてい、来る時は新幹線で、帰りはハイウェイバスです。わが家は観音山の麓にあります。観音山には運動のためによく登ります。6キロくらいの水を背負って登って頂上で捨てます。往復2時間ちょっとです。
──もうすぐ夏休みです。先生はどんなことをするつもりですか。私はよく学びよく遊んで充実した夏休みにしたいと思います。
★ 最近は、学校のある時は授業の準備で忙しく自分の仕事が出来ません。夏休みはヘーゲルの『精神現象学』の翻訳を続けます。ドイツ文法の研究もしたいです。畑の仕事もあります。大前提は健康の維持で、これが今やとても大変です。
楽しみは14日の袋井の花火大会です。子供や友人や元・現生徒などが来てくれるのも楽しみです。そうそう、最近買ったパソコンでビアボイスの練習をして、秋からは使えるようになりたいです。
若い頃は7月末の試合の後、1週間くらいアルプスを歩いたものです。信州の学生村に勉強に行ったこともありました。大学1年の時は北海道の家庭学校〔教護院〕で1か月近く過ごしました。
Ich wuensche Ihnen schoene Sommerferien! (どうぞ素敵な夏休みを!)
ドイツ語教室の教科通信
いつもは前期に2回、アンケートを取って、皆さんの意見を聞くのですが、今年は3回となりました。今回、通読してまず印象に残った事は、アンケートに対する皆さんの取り組みがとても熱心になったということです。
内容も豊かになりましたし、何より分量的にいままでより沢山書いて下さるようになりました。皆さんが「このアンケートは書くに値する」と判断した結果だと思います。嬉しい事です。「落ちついた対話」路線はまず第1の成果を挙げました。
纏め方としては、今回は、皆さんへの問題提起を多くするという方針にしました。夏休みに、友だちと、そして何よりも家族と話し合って下さることを希望します。
演劇大会について
- 中学の頃は少しは会話とかをやったけど、高校の英語は受験のためだけだったので、あまり楽しさを感じなかった。だから私は演劇大会はとても意義があったと思う。みんなの会話を聞いて、笑うところがあったりして、あの時の授業は楽しかった。内容はあのくらいでちょうどよかったと思う。
★ 全体に好評でした。「又やりたい」という意見は人文のクラスに多く、工学部では「もうやりたくない」という意見もかなりありました。クラス全員の顔を見ることが出来た、分量が多かった、全員が同じ文だったので終わりの方はマンネリ化した、大会そのものより準備に意義があった、次はアドリブを入れたい、などの意見がありました。
「和敬塾」のビデオについて
──やはり男はいい。女には絶対できない盛り上がりだと思う。私はもともと集団生活が好きで、片山寮などにも入りたかった性質なので、和敬塾にはとても憧れる。
けれど彼らには自分の時間があるのだろうか、という疑問が湧いてきた。片山寮にはプライバシーがない!と知り合いがよく言っている。しかし、ともかく彼らは自分のやりたいことを見つめ、考え、実行している。
──自分は寮に入っているが、人生について相談したことがない。何日間もかけての体育大会があるのは楽しそうだ。
★ ああいう生活はしたくない、という意見ももちろん何人かありました。
6月に宿題を多くし、7月は少なくする方針について
★ 支持率が高かったようです。7月はやはりレポートや試験が多いようです。6月攻勢は辛かったという人もかなりいました。
──6月は、大学の行事やサークルのコンパなどが終わり、ふと気が抜ける時期で、宿題が適度にあったのはよかったと思う。7月は試験等もあるし、宿題が少ないのはありがたい。
フレッシュマン・セミナーについて
少数ながら先生が話すだけの授業とかもあったようですが、多くは「誰かが調べてきて発表し、それについて皆が質問、意見を出す」というゼミだったようです。もちろん議論の盛り上がった所とそうでない所とがあったようです。
どこかに見学に行ったゼミもあるようです。これは始めて知った事ですが、抽選漏れでゼミに参加できない人もいたようです。このゼミには皆が参加できるようにするべきだと思います。
──人文学部法学科のN教官が開いた「知的探究の方法」というのに参加しました。内容は、現代社会の問題についてのディスカッション。ダイオキシンごみ問題、原発、食糧問題などを、各人が調べてきて、話をしました。
先生は毎回、新聞のコピーを持ってきて、それについて話をしました。とても興味深い話ばかりで、良い授業だったと思います。とても面白かったです。
──討論のセミナーで未修外国語について話し合った。そこで出た内容は、未修外国語を1~2年やった程度では言葉の理解は難しい。更に英語の理解は中高とやりつづけたにもかかわらず出来ていない所からみても、更に未修外国語を学ぶより英語を完璧にする方が好いという結果だった。
★ 未修外国語を肯定する意見はなかったのですか。先生の意見は? 授業方法やクラスの人数の点は問題になりませんでしたか。
アンケートについて
──前期の最後の授業の中で授業に対する評価を提出するのがありました。選択式・匿名のものです。アンケートの内容が授業に反映されるのは嬉しいことですが、これは対話ではなく、先生の意見の聞けない一方的なものでした。
昨年、浪人して予備校に通いました。そのとき講師に対する評価をアンケートとして提出しました。予備校の講師というのは評価が待遇に影響するそうで、講師は生徒の反応には敏感でしたが、人気取りに気をつかわなければならないのか、授業態度を注意するのも大変そうでした。一方的な評価を第三者が見て更に評価する制度というのは、このようにご機嫌取りを必要としてしまうのではないかと思います。
牧野先生のアンケートのように、対話であることが本当の意味でより良い授業のためになるのだと分かりました。昨年は「アンケートによる授業評価」自体を疑問に思いましたが、それが「一方的なアンケート」に対する疑問に変わりました。
★ アンケートの種類にはそのほかにもいろいろな分け方があって、先生が自分で取るものと経営者とか学校とかが取るものと生徒が作成するものとの違い、講師の待遇と直結するか否かの違いもあると思います。生徒の授業態度を注意しにくくなるようなのは、やはりどこかおかしいと思います。
──アンケートの記名・匿名の問題ですが、今では教官の意見に大体賛成します。しかし、忘れないでいただきたいのは、匿名の意見を単なるトイレの落書き呼ばわりして捨ておかないで欲しいということです。
最近話題になった東芝批判のホームページ問題で、ネット上の論議についてやはり某有名キャスターがのたまわっておりました。しかし、東芝は結局折れざるをえない程の反響を巻き起こしたのは事実ですし、その議論の中では冷静で適格な意見を述べておられる方も多くおられました(もっとも、それ以上に聞くに耐えない悪口雑言を並べている輩も多数いましたが)。
大切なのは、広く意見を聞く姿勢だと思います。言葉を生業としている人はとかく、匿名の意見=低俗な論議→聞く価値なし、としてしまうフシがあるように思えてなりません。
方向性は違いますが、上記の話題はたくさんの示唆を私たちに与えてくれていると思います(ちなみに、私はこの話題を一歩引いた姿勢で観察していたので、東芝派でも会社員派でもありません)。
★ 静岡大学ではアンケートを取る教師は少なく、「学生による授業評価」は制度化されていません。あなたは、アンケートを取らない教師に匿名で「アンケートを取って欲しい」と言いましたか。学長に匿名で要望書を出して「『学生による授業評価』や教科通信を制度化して欲しい」と言いましたか。
また、あの東芝問題になぜ「一歩引いた姿勢で観察した」のですか。あなたの親やこれまでの先生はそういう態度でいいと教えたのですか。どっちがどう正しいかと考える場合にのみ、人間の思考力は高まるのではありませんか。
大切なのは広く意見を聞く姿勢だけではないと思います。意見を言う人に対して甘やかさない態度も大切だと思います。
考えて欲しいこと
前回と今回のアンケートの中に、教科通信(Jugend)を毎回出して欲しいとか、もっと多く出して欲しい、という要望がありました。これは大切な問題を含んでいると思います。
まず、アンケートを取ることと教科通信を出すことは良い事である、あるいは「先生はそうあるべきである」ということは前提します。すると、それを例えば月に1回のペースで行っている先生に向かって「毎回やって欲しい」と言うのは正しいでしょうか。
私は正しくないと思います。なぜなら、その前にまず、それを行っていない先生に、「アンケートを取って欲しい」とか、「教科通信を出して欲しい」と要求する方が先だと思うからです。あるいは学長に要望書を出して、「アンケートや教科通信を制度にして欲しい」と言うのが正しい態度だと思います。
しかし、多くの人はそうは言わないで、既に行っている先生に「毎回出して欲しい」といった要求をします。何故でしょうか。人間の中には、「言いやすい人に言う」という傾向があるからだと思います。しかし、これでは世の中はよくならないと思います。「言うべき人に言う」というのが、公正な態度ではないでしょうか。
ちなみに、フレセミについての文の中で、「ここで教科通信が出ていたら、もっと充実したと思う」という趣旨の事を書いている人は一人もいませんでした。少し想像力に欠けるのではないでしょう
か。
夏休みの宿題について
これについては2つの問題を提起したいです。
第1は、「ドイツ語の授業で日本語の小説を読む宿題を出すのは適当か」ということです。3人の人が疑念を表明しています。宿題をした上で、秋に皆さんの意見を聞きますから、宿題はやって下さい。私の立場は「この授業は大学教育の一環としてのドイツ語教育である」ということです。
第2の問題は「夏休みの宿題が多すぎるか」です。2つの意見を紹介します。
──生徒の意見をもっと聞き入れて欲しいです。先生にとって都合の悪い事でも、ちゃんと聞いて下さい。あと、宿題を減らして欲しいです。先生に取っては最小限でも、私にとっては多すぎます。大学生はヒマだと言われていますが、そこまでヒマではありません。ドイツ語を押しつけるのではなく、もっと興味が持てるように考えて欲しいです。
──今のところ他の授業では宿題は出ていません。牧野先生のこの授業ではそこそこの分量が出ていますが、自分にとってはとてもよかったと思います。そうでなければ、夏休みは勉強をしないかもしれないからです。今後もこの方針は変えずにいて下さい。
これらの意見についての講師の考え
(1) 「生徒の意見を聞き入れて欲しい」という言い方は「原理的に」間違っていると思います。それは「対話」ではなく「強要」です。皆さんの意見は全部、2度以上読んで、考えています。教師には生徒の意見を聞き、考える義務はありますが、聞き入れる義務はないと思います。
(2) 勉強については、人間はA・B・Cの3種に分類できると思います。
A・宿題がなくても自分でどんどん勉強する人。
B・宿題があればやる人。
C・宿題があってもやらない人。
Aは変わり者、Bは凡人、Cはろくでなしだと思います。人間はほとんど皆Bです。Bだからこそ、「先生に引っ張ってもらおう、宿題を出してもらおう」と思って学校に来ているのです。
人によって違うのは、「どの程度の宿題ならやれるか」です。そこで、私は「上」の人に合わせ、「上」の人を出来るだけ伸ばす方針を取っているのです。
その他
──ビデオ大好きです。先生の授業は1時間半あるように思えません。他の授業はたいてい50分で限界です。組み合わせからくるメリハリと切替えのうまさだと思います。ビデオもその1つとしていいと思います。
★ 秋には別の休憩も考えたいと思います。
──アンケートと「ユーゲント」とで、大学にはあまりない先生との会話が出来ていると思う。
──「ユーゲント」を読んでいると、ドイツ語の勉強以上のことを学んでいるような気がします。
──「ユーゲント」の最後にドイツの諺などを書いてくれたらよいと思う。(考えてみます)
──今まで教科通信をこんなにひんぱんに出してくれる先生はいなかったので、新鮮味があっていい。
──独検3級を取ったら、企業で使えるものなのでしょうか。
★ 3級ではまだ難しいでしょうが、3級になれば1人で勉強できると思います。
──今まで僕は単に日本を嫌い、外国にあこがれているような人間だった。しかし、静岡に来て、いろいろな人に出会い、外人とも話し合って、日本人には見えない好い所が分かって、とても良い刺激になった。これからは日本全土を見て、なぜ自分が日本が好きになれない日本人だったのかを考えてみたいと、最近は思っています。
──先生は毎週、引佐町からやって来るのですか。だとしたら交通手段は何ですか。いなさ牛乳はおいしいですね。小学5年生の時に観音山〔少年の家〕で飲んで感動しました。
★ 今は、たいてい、来る時は新幹線で、帰りはハイウェイバスです。わが家は観音山の麓にあります。観音山には運動のためによく登ります。6キロくらいの水を背負って登って頂上で捨てます。往復2時間ちょっとです。
──もうすぐ夏休みです。先生はどんなことをするつもりですか。私はよく学びよく遊んで充実した夏休みにしたいと思います。
★ 最近は、学校のある時は授業の準備で忙しく自分の仕事が出来ません。夏休みはヘーゲルの『精神現象学』の翻訳を続けます。ドイツ文法の研究もしたいです。畑の仕事もあります。大前提は健康の維持で、これが今やとても大変です。
楽しみは14日の袋井の花火大会です。子供や友人や元・現生徒などが来てくれるのも楽しみです。そうそう、最近買ったパソコンでビアボイスの練習をして、秋からは使えるようになりたいです。
若い頃は7月末の試合の後、1週間くらいアルプスを歩いたものです。信州の学生村に勉強に行ったこともありました。大学1年の時は北海道の家庭学校〔教護院〕で1か月近く過ごしました。
Ich wuensche Ihnen schoene Sommerferien! (どうぞ素敵な夏休みを!)