ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

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「天タマ」第33号(2000年10月 3日発行)

2007年08月04日 | 教科通信「天タマ」
「天タマ」第33号(2000年10月 3日発行)

         市立看護専門学校 哲学の教科通信


 前回の4限の授業では早速本題に入りました。今年度は、いま大
きな問題になっている医療事故から入ることにしました。こんな事
をどうして哲学でやるのかといったことはまあいいとしましょう。
それは終わってから考えればいいことです。

 第1回は、皆さんが医療事故についてどれくらいの事を知ってい
るか、考えているかをまとめてもらいました。読んでみて、やはり
学校の問題ほどレポートが具体的でないという印象を受けました。
学校には12年以上もいたわけですし、沢山の経験をしていろいろと
考えてきたのに、皆さんはまだ医療の現場に入ったとは言えない段
階だから、当然の結果だと思います。しかし、間もなくそこに入る
のですから、これからしっかり学び考えていきましょう。

   医療事故はなぜ起きるか

──実習に行って感じることだが、看護婦の不足と医師からの指示
表やカルテが読みづらいことだ。昼間、12時くらいのナースステー
ションは空である。看護婦は患者さんの食事介助へ行ったり、また
休憩時間の看護婦もいる。そのためナースコールが鳴り続いている
という状況を体験したことが何度かあった。

──実習に行った病院の場合は、夜勤時は50人の患者を2人の看護
婦でケアしている。

──私達は今この学校で、医療事故が起こらないように、点滴の際
は3回、薬品と患者名、処方箋をチェックするように教えられてい
る。また患者を移送するためにストレッチャーを使用する時、2人
で押すというように教えられてきた。

 しかし、いざ実習に行ってみたり、他の病院の状況を聞いてみた
りすると、学生時代に学んできたことをきっちりやっている病院な
ど滅多にない。多分、やりたくても忙しくて、そううまくできない
のではないか?

──9月の実習でのことだった。糖尿病の患者のインシュリン自己
注射を、患者は看護婦が見ている前でやっていたのだが、患者はイ
ンシュリンの単位を間違えて打っていた日が何度もあった。病棟の
方でそれに気づき、朝の申し送りでは婦長が注意を促していた。看
護婦は患者が分かっているものと思い込み、注射の方法しか見てい
なかったのである。

──患者の取り違え手術について、患者の顔を医師は覚えていない
のかと疑問に思った。手術をするのだから、医師はその患者を受け
持っていたと思う。それならば顔を見れば、その患者がどういう病
気で手術をするのかということは分かりそうなものである。分から
ないということは、その医師は患者を個人として見ているのではな
く、商品として見ているのではないかと思った。

 ★ 同感ですが、教育でも同じではないかと思います。生徒の名
前も覚えていなくてどうして教育が出来るのかと思います。成績を
付ける時も、名前を見たらその生徒の顔がパッと浮かんで、その生
徒の事を思い出しながらメッセージを書く、というのが理想だと思
いますが、かく言う私も、本校では毎年、どの組でも20人くらいの
生徒の名前しか覚えられません。大学では全員覚えてしまうことも
あります。

 それはともかく、医療事故の問題を学校の問題に拡大して考えた
人はいなかったようです。ここに書かれている患者と病院(医師)
の関係を、生徒と学校(教師)の関係に置き換えて考えて見て下さ
い。同じことが言えるのではないでしょうか。

 教育事故では身体的な命にかかわる事は少なく、精神的な命にか
かわることが多いという違いがあるだけではないでしょうか。こう
いうのも「医療事故を広い視点から考える」ことだと思います。

 看護婦も忙しいですが、医師も忙しいです。しかし、更に広く見
ると、日本では働く人の多くが働きすぎ(働かされすぎ)ていると
思います。看護婦の忙しさをその一例として考えるとどうなるでし
ょうか。

   医療事故の防止策

──その場にいる人の誰でも、おかしいと思ったら「おかしい」と
言えるような環境をつくる。又、看護婦を受け持ち制にするべきだ
と思う。

──看護婦には時間的なゆとりがほとんどない。1人で10人以上の
患者の看護をし、やらなければならない仕事は次から次と言ってい
いほどある。看護婦は疾病・治療・生活・心理のあらゆる場面で患
者をサポートしなければならず、その項目は 100以上にもなる。も
っと余裕をもって仕事が出来るように看護婦を増やしたり、日勤の
あとの深夜などというハードな仕事は出来るだけ避けてほしい。

──科によって看護婦の数を調節した方がいいと思う。脳外科や内
科を特に増やした方がいいと思う。

──どこかの病院では患者1人1人にIDカードを付けていて、そ
れには氏名・血液型・病名・年齢・性別などがインプットされてい
て、手術の時など、そのIDカードと手術患者が一致しないと手術
が行われないと聞いた。

──カンファレンスでは、日本とアメリカの違いにまで発展した。
医療事故を考える時、アメリカでは、起きてしまった事故を決して
そのままにしておかない。小さなミスでも開示し、公表して、何が
原因で起こってしまったのか、それに対しどう予防すべきかを考え
るという。反対に日本では、大きな事故なら開示せざるをえないが
、小さな事故なら病院内に隠しておく傾向があると思う。

   VTR「和敬塾」について

──和敬塾のビデオを見て、集団生活によるきずながよいなと感じ
た。また、自分と違う大学へ通ったり、進路の違う先輩や友人から
もアドバイスをもらうことができるというのに憧れた。同じ環境に
いる人からのアドバイスだとやはり狭い考えになってしまうので、
別の見方から見たアドバイスというのはよいと思う。みんな楽しそ
うでいいと思った。

──青春ていいな。学生時代ぐらいしかああいうことって出来ない
と思うので、私もあと1年半のうちにバカしたいって思う。

──寮生がとても楽しそうに見えた。私も高校の時、下宿しており
、あの寮生たちの気持ちはよく分かった。女の子5人での共同生活
だったが、皆でクリスマスパーティをしたり、徹夜で勉強したり、
語り明かしたり。友達と居て様々な悩みなども相談に乗ってもらっ
たり。友達の大切さをその3年間で気づけた。今でもその友達と遊
ぶと、家族のような感じで話す事が出来ます。今日のビデオを見て
、再び思い出しました。

 ★ VTRの和敬塾は今年も好評のようでした。ああいう生活な
ら充実した学生生活を送れるのではないかという意見が多かったで
す。しかし、もう少しよく見てください。あの中で4年生が1年生
の疑問に答えて、「大学で何人、授業に満足している人がいるか」
と言っていました。大学は勉強する所です。この点で満足していな
いのにどうして「充実した学生生活」と言えるのでしょうか。

 和敬塾は、そこに住む人にとって第2のサークルだと思います。
学生生活の意義をサークルに求めるしかない現状はやはり問題だと
思います。皆さんのようにレポートで寝る暇もないような学生生活
こそ本当だと思います。

   その他

──今日、初めて哲学の授業を受けて、短大で一般教養として哲学
を学んだ時よりも自分で考える授業で、途中でカンファレンスと全
然違うビデオを見て、楽しい授業でした。

 ★ 私は専門学校と大学とで教えてみて、大学というシステムが
今や完全に破綻していると思うようになりました。もし私が大学で
哲学の授業を受け持ったとして、本校でしているような授業ができ
るかと考えると、答えは否定的です。なぜか。生徒がクラス単位に
なっておらず、まとまっていないこと、選択制で人数が多いこと、
そもそも教室も大きくて一方的な講義をすることを前提にしている
こと、などによります。