母親は、可愛い色をした、小さな箱のふたを開けました。
私は、その小箱を見つめながら、
手を合わせて、お経を読み始めました。
5月25日に、嫁いだ娘さんをガンで喪った、檀家さんが、
「娘のために、お経をあげてください」と、私に言いました。
お葬式は、福岡で行いました。
けれど、実の親として、娘の生まれ育った家で、冥福を祈りたい。
親としての、自然な感情でした。
仏壇には、笑顔の写真。
そして、お骨を入れた、小箱がひとつ。
「お願いをして、分骨してもらいました」
分骨の是非は、私には言えませんでした。
お経の後、ご両親とお話をしました。
お父さんが、娘さんの最後を看取ったそうです。
「亡くなる前日まで、果物を食べていました。
おいしいって、喜んでくれました。
子供に戻ったように、お父さんって、甘えるんですよ」
それが翌日、目の焦点が合わなくなり、
気が付くと呼吸をしていませんでした。
酸素吸入をしたのですが、手遅れでした。
娘さんが入院をして、初めて病室に泊まった、お父さん。
娘さんの最後を、ひとり見つめていました。
「こうして少しずつ、娘のことを忘れていくのでしょうね・・・」
『そんなことはありません』
口からこぼれそうになる言葉を、私は飲み込みました。
その言葉に、込められた思い。
娘を喪った人にしかわからない、感情。
「決して弱音を吐かない娘が、
死ぬのが怖いって、泣きながら言った姿が忘れられない」
大切な子供。
仏壇に置かれた小さな箱に、私は万感の思いを込めて、手を合わせました。
私は、その小箱を見つめながら、
手を合わせて、お経を読み始めました。
5月25日に、嫁いだ娘さんをガンで喪った、檀家さんが、
「娘のために、お経をあげてください」と、私に言いました。
お葬式は、福岡で行いました。
けれど、実の親として、娘の生まれ育った家で、冥福を祈りたい。
親としての、自然な感情でした。
仏壇には、笑顔の写真。
そして、お骨を入れた、小箱がひとつ。
「お願いをして、分骨してもらいました」
分骨の是非は、私には言えませんでした。
お経の後、ご両親とお話をしました。
お父さんが、娘さんの最後を看取ったそうです。
「亡くなる前日まで、果物を食べていました。
おいしいって、喜んでくれました。
子供に戻ったように、お父さんって、甘えるんですよ」
それが翌日、目の焦点が合わなくなり、
気が付くと呼吸をしていませんでした。
酸素吸入をしたのですが、手遅れでした。
娘さんが入院をして、初めて病室に泊まった、お父さん。
娘さんの最後を、ひとり見つめていました。
「こうして少しずつ、娘のことを忘れていくのでしょうね・・・」
『そんなことはありません』
口からこぼれそうになる言葉を、私は飲み込みました。
その言葉に、込められた思い。
娘を喪った人にしかわからない、感情。
「決して弱音を吐かない娘が、
死ぬのが怖いって、泣きながら言った姿が忘れられない」
大切な子供。
仏壇に置かれた小さな箱に、私は万感の思いを込めて、手を合わせました。