「お上人さん、24日に草刈をします」
そう檀家さんが言ったのは、つい先日のことでした。
草刈に来られるのは、おひとりです。
集合は、午前9時。
私は、前日の夜に、お菓子、冷たいお茶、ポカリスエット・・・などの準備をしました。
これで、準備万端。
草刈り機は、自分のを使われるとのこと。
私は、早めに床につきました。
今日は、曇り空。
草刈り機を車から降ろした檀家さんが、下の畑へと降りていきました。
私は、家に戻りました。
しばらくすると、チャイムが鳴りました。
「草刈り機のエンジンがかからないので、お寺の草刈り機を貸してください」
「いいですよ」
私は、小屋から草刈り機を出しました。
けれど・・・エンジン音がきこえてきません。
心配になって、畑に行くと、悪戦苦闘の檀家さん。
「エンジン・・・かかりませんか?」
私は、スターター・ケーブルをひきました。
響き渡る、エンジン音。
ホッとして、家の中へ・・・。
「僕も、何かしなくていいの?」
申し訳ない・・・ですよね。
軍手をはめて、草取りをしました。
普段、グータラしているもんだから、腰が痛い。
「檀家さん・・・いつまで草刈をするのだろう?」
心の中で、ささやく声がしました。
檀家さんのところへ行くと、お昼のお弁当を広げていました。
「時間は、たっぷりありますからね」
冷や汗の私・・・。
午後も、草刈をするのですね。
私は、カマをもって、草刈を始めました。
境内は、草ぼうぼう・・・。
草だらけの、境内。
これじゃ、お寺に人が来ないわけだ。
でも・・・暑い。
額を流れる、汗。
ダラダラと流れ落ちる、汗。
「・・・まだ、終わらないの?」
「無理をしなくていいですよ」
もうやめましょう・・・という言葉を飲み込んで、私は檀家さんに言いました。
「もう少し・・・」
元気いっぱいの、檀家さんの声。
カマを持つ手が、痛い。
膝も、痛い。
トゲが刺さった、指も痛い。
もうろうとする、意識。
お願いします。もう終わりと、言ってください
私は、本堂に向かって、祈りました。
そんな時、ふと手が止まりました。
「・・・花壇に、ひまわりが育っている」
たくさん巻いた、ひまわりの種。
もう、咲かないと思っていたのに・・・。
流れ落ちる、汗。
まとわりつく、蚊の大群。
そんな喧騒が消えて、一瞬の静寂が訪れました。
「生きていたんだね・・・」
私は丁寧に、周囲の雑草を取り除きました。
もうすぐ、色鮮やかな花が、境内を包みます。
オレンジ色の、花。
空には、虹の橋が架かっている。
「もう、終わりましょうか」
檀家さんの声を遠くに訊きながら、私は薄緑の葉っぱに、そっと触れました。
そう檀家さんが言ったのは、つい先日のことでした。
草刈に来られるのは、おひとりです。
集合は、午前9時。
私は、前日の夜に、お菓子、冷たいお茶、ポカリスエット・・・などの準備をしました。
これで、準備万端。
草刈り機は、自分のを使われるとのこと。
私は、早めに床につきました。
今日は、曇り空。
草刈り機を車から降ろした檀家さんが、下の畑へと降りていきました。
私は、家に戻りました。
しばらくすると、チャイムが鳴りました。
「草刈り機のエンジンがかからないので、お寺の草刈り機を貸してください」
「いいですよ」
私は、小屋から草刈り機を出しました。
けれど・・・エンジン音がきこえてきません。
心配になって、畑に行くと、悪戦苦闘の檀家さん。
「エンジン・・・かかりませんか?」
私は、スターター・ケーブルをひきました。
響き渡る、エンジン音。
ホッとして、家の中へ・・・。
「僕も、何かしなくていいの?」
申し訳ない・・・ですよね。
軍手をはめて、草取りをしました。
普段、グータラしているもんだから、腰が痛い。
「檀家さん・・・いつまで草刈をするのだろう?」
心の中で、ささやく声がしました。
檀家さんのところへ行くと、お昼のお弁当を広げていました。
「時間は、たっぷりありますからね」
冷や汗の私・・・。
午後も、草刈をするのですね。
私は、カマをもって、草刈を始めました。
境内は、草ぼうぼう・・・。
草だらけの、境内。
これじゃ、お寺に人が来ないわけだ。
でも・・・暑い。
額を流れる、汗。
ダラダラと流れ落ちる、汗。
「・・・まだ、終わらないの?」
「無理をしなくていいですよ」
もうやめましょう・・・という言葉を飲み込んで、私は檀家さんに言いました。
「もう少し・・・」
元気いっぱいの、檀家さんの声。
カマを持つ手が、痛い。
膝も、痛い。
トゲが刺さった、指も痛い。
もうろうとする、意識。
お願いします。もう終わりと、言ってください
私は、本堂に向かって、祈りました。
そんな時、ふと手が止まりました。
「・・・花壇に、ひまわりが育っている」
たくさん巻いた、ひまわりの種。
もう、咲かないと思っていたのに・・・。
流れ落ちる、汗。
まとわりつく、蚊の大群。
そんな喧騒が消えて、一瞬の静寂が訪れました。
「生きていたんだね・・・」
私は丁寧に、周囲の雑草を取り除きました。
もうすぐ、色鮮やかな花が、境内を包みます。
オレンジ色の、花。
空には、虹の橋が架かっている。
「もう、終わりましょうか」
檀家さんの声を遠くに訊きながら、私は薄緑の葉っぱに、そっと触れました。