大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 4月4日 ナースコール

2014-04-04 18:43:52 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 4月4日 ナースコール



 俺は施設で働いてるのだが、1ヶ月程前に精神疾患と診断されてるお婆さんが入所してきた。
お婆さんと言っても、まだ60代の後半で頭もしっかりしているようだ。
受け答えもかなりしっかりしているし、その他これといって問題のある人には見えなかった。
他の職員たちも、あのお婆さんが精神疾患と診断されているのが嘘のようだと話してた。
 その人が入所したのは、午前中だった。
その日、俺は夜勤で、その人から深夜2時頃にナースコールがあり訪室してみると、

「 間違えました、ごめんなさいね。」

とだけ言われた。
排泄だけは軽介助の必要な人だったから排泄かと思ったのだが、違ったらしいのですぐに退室する。
 すると、10秒もしないうちに、またナースコールが鳴った。
そのときは、たまたま近くにいた職員が対応してくれたのだが、俺も近くにいたから話し声は聞こえてきた。
 俺は廊下にいて、扉は閉まっていた。
静まり返った深夜だから、部屋の前にいると中の会話も聞こえてくる。
 職員がお婆さんに話し掛けている。

「 どうかしましたか?」
「 あの・・・、先程来られた方は、男性ですか?」
「 ○○(俺の名前)さんですか?
ええ、そうですよ。
それが、どうかしましたか?」
「 ここには、怖い方がいるんですね。
あの方、顔が2つ付いてますよ。」
「 ・・はい・・・・?」
「 整った顔立ちの、綺麗な女性の顔がありました。
私、あの方が怖いんです。
目を見たら、とって食われそうな。」
「 ○○さんは、男性ですよ?
なにかの見間違いでは?」

そこに、突然のお婆さんの大声が響いた。

「 ですが、あの女性は、今もこの話を盗み聞きしてるんですよ!?」

俺はその声に驚いた。
 うちの施設は、扉に窓はない。
外に誰が立ってるか分からないはずなのだ。
中にいた職員すら、その話を俺が立ち聞きしていたことに気付いていなかったので、外に出たときに俺がいることに驚いていた。
 その日は、俺は深夜3時から休憩だったから、その後はお婆さんと朝まで関わらなかった。
朝に会ったお婆さんは、特に変わった様子はなく、俺と会っても普通に接してくれた。
俺は深いことは考えないようにして、その日は帰宅した。

 二日後、出勤してみると状況が変わっていた。
そのお婆さんは、次の日も深夜1時以降になるとナースコールを押して、

「 部屋の中に人がいて眠れない。」
「 天井から、こちらを見てる方がいるから落ち着かない。」

などと、訴えてくるらしい。
 入所後、1ヶ月が経つが、未だに深夜にナースコールと不気味な訴えが続いている。
そして、俺が訪問すると必ず、

「 大丈夫です、ごめんなさい。」

と断られてしまうのだ。
でも、直ぐにまたナースコールが鳴り、他の職員が対応すると、

「 さっき来た女性が怖い。」

と言っている。
 そのお婆さんが、本当に精神疾患なのか、もしくは見えないものが見える人で、精神疾患と誤認的に診断されるのか分からない。
一刻も早く、俺がお婆さんに怖がられない日が来ることを祈ってしまう。









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