大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道245

2009-07-18 21:45:45 | E,霧の狐道
 俺は看護婦さんに連れられ、通路をトイレに進む。
俺は通路を進みながら、車椅子を後ろで押している看護婦さんにちょっと訊いてみた。

「 あの~、さっき誰かエレベーターで上に上がって行かなかったですか?」
「 さっきって、今のさっき?」
「 そう、俺たちが通路を来た、ちょっと前・・・。」
「 う~ん、奥の部屋に書類を取りに行ってたから・・・。
 戻って来たら、あなたの足の先と車椅子が扉の隙間から見えたのよ。
 他にも、ウロウロしている人、いるの?」
「 ううん、そうじゃないんだけど・・・。」

“これは見ていないな”と俺は思った。
 トイレに到着したので俺は言った。

「 自分で行けます。」
「 そう・・・。」
「 動けなかったら中から呼びます。」
「 じゃ、ここで待ってるから。」
「 ハイ。」

 俺はトイレの入り口のドアを押し開け中に入った。
看護婦さんはトイレの入り口で俺を待っている。

“ ま、寝る前だからオシッコをしておこう・・・。”

よいしょっと便器の前に立つ。
でも、あまりオシッコは出なかった。





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霧の狐道244

2009-07-15 19:43:02 | E,霧の狐道
 龍平は一人でエレベーターに進み、壁にある上マークのボタンを押した。
そして、振り返って、俺に向かって右手の親指を立ててニコッとした。
俺も右手の親指を立て、それに答えて頷いた。
 看護婦さんは、“オヤスミの挨拶”が終わったと判断して俺に言った。

「 じゃ、行くわよ!」
「 うん。」

俺は諦めて病室に戻るしかなかった。
 看護婦さんは俺の車椅子の向きをクルッと変えた。
そして、車椅子の後ろを押しながら3階の通路をトイレに進む。
俺は車椅子に座ったままで、体を捻って後ろを見ることは出来なかった。
 後ろで、“チーン”とエレベーターが到着する音がした。
龍平はエレベーターに乗り込んで屋上に行くだろう。

「 あっ!」
「 どうしたの?」
「 いや、ちょっと思い出したことがあって・・・。」
「 何を?」

俺はこの場を誤魔化した。

「 いいです。
 明日でも出来ることだし・・・・。」
「 そう・・・?」

でも、俺は心の中で“シマッタ”と思ったのだ。

“ 龍平にお守りを渡しておくべきだった!”

追い駆けて行った龍平が、無事に帰って来れるとは限らない。
 でも、もう手遅れだ。
看護婦さんに“持って行け”とも頼めない。
成り行きは龍平に任せるしかない。




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霧の狐道243

2009-07-12 19:46:29 | E,霧の狐道
 俺たちは、そっとナースステーションの前を通過しようとした。
そのとき、突然、声が響いた。

「 コラッ!
 あんた達、何してるの!」

当直の若い看護婦さんが、ナースステーションの扉から首を出した。
龍平がそれを見て言った。

「 しまった、見つかった。」
「 あ、龍平、こんな夜中に何をしてるの?
 もう、患者を連れて!」
「 あ、中田さん、あの、こいつがオシッコに行きたいって言うから・・・。」
「 トイレは、こっちじゃなくって、向こう。」

看護婦さんは、エレベーターと反対方向を指差した。
龍平は、なお抵抗して言った。

「 いや、5階のトイレに行きたいって、こいつが言うから・・・。」
「 何、訳の分からないこと言ってるの。
 龍平は、早く自分の部屋に帰りなさい。
 私がこの子をトイレに連れて行くから!」
「 でも・・・。」
「 院長に言い付けるよ!」
「 あ、それは止めて・・。」
「 じゃ、早く行きなさい。」
「 あ~、しょうがないな。
 じゃ、貴志、後は任せとけ!」
「 何のことよ。」
「 いや、こっちの話や。」




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霧の狐道242

2009-07-09 19:05:26 | E,霧の狐道
 俺は龍平に車椅子を後ろから押され、通路をドンドン進む。
車椅子の車輪が回転しながらカラカラと鳴る。
閉じられた病室の扉が後ろに流れて行く。
 俺と龍平は非常灯の薄暗い明かりの中を、真っ直ぐな通路を疾走した。
通路の突き当たりにエレベーターがあるのだ。
遠くにエレベーターの階の表示が光っている。
階の表示の数字は見えないが、表示板の右端で光っているから、たぶん5階だ。
もう、表示はその位置で停止している。
 龍平はそれを見て言った。

「 たぶん屋上やな。」
「 そう思う。」

こう言う場合、相場は屋上か地下と決まっている。
 この病院の建物は5階建てで、エレベーターは5階止まり、屋上に上がるには別に階段を上がらなければならない。
龍平が、それを知らない俺を見て言った。

「 屋上に行くには、5階から階段を上がるんやが・・・。」
「 そう・・・。
 車椅子だし・・・。
 階段、上がれるかな・・・?」
「 まあ、行けるとこまで行こか。」
「 うん。」

 俺と龍平はエレベーターに徐々に近付いた。
エレベーターの手前の通路右手には、ナースステーションがあり、明かりが通路に漏れている。
 龍平が車椅子を進めるスピードを緩めた。
そして、小さい声で俺に言った。

「 看護婦、うるさいねん。」
「 うん、分かる。」

エレベーターに乗り込むには、ナースステーションを無事通過しなければならない。
夜中にウロウロすると、即刻注意されるのだ。




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霧の狐道241

2009-07-05 19:55:43 | E,霧の狐道
 龍平はベッドからサッサと降りて扉に向かった。
俺は体を思うように動かせず、ベッドでモタモタしていた。

「 遅い!」

扉を半分開けて俺を待っていた龍平が、痺れを切らして様子を見に通路に出て行った。
 俺は痛みをこらえながら、大急ぎで車椅子に乗った。
そして、龍平が開けた扉の隙間から、必死で通路に出ようとした。
でも、車椅子がゆっくり閉まって来た扉に引っ掛かって前に進めない。

“ ガタッ、ガタッ。”

右手で車輪を動かして、前後に行ったり来たりする。

「 くそ~っ!」

通路から龍平の声がした。

「 何してんにゃ、もう、はよせェ~!」
「 車椅子、引っ掛かった!」
「 もう、手間の掛かるやっちゃなァ!」

龍平が戻って来て、引っ掛かっていた扉を大きく開いた。
そして、素早く扉の隙間から車椅子の後ろに回り、車椅子を病室から押し出した。

「 よし!出たぞ!!」

 車椅子ごと押し出された俺は、通路をキョロキョロ見たが人影は無い。
非常灯が暗く点いている通路が左右に伸びている。

「 いないぞ!
 どっちに行けばいい?」
「 エレベーターや。」
「 エレベーター?」
「 そうや。」
「 上、下?」
「 上や。
 エレベーターで、上に行ったんや。
 俺が通路に出たとき、姿はもう見えへんかったけど、エレベーターの数字が
 上に上がって行くのが見えたんや。
 だから、エレベーターや。
 エレベーターに行くで!」
「 分かった!」





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霧の狐道240

2009-07-01 18:35:44 | E,霧の狐道
 俺は山本爺のベッドを見た。
山本爺の体はベッドにあることが、布団の膨らみから分かる。

「 山本爺、どうなったのかな?」
「 布団、捲って見よか。」
「 ちょっと、怖いな。」
「 そうやな、白目剥いてたりして・・・。」
「 それって、スゴク怖いな。」
「 そやな、止めとこか。」

俺たちは布団を放置することに決めた。
それから、俺は女の子の言葉が気になった。

「 特別な日って、何かな?」
「 分からん・・・。」

そう言い終ると、龍平が病室の扉を指差して、突如言い放った。

「 わい、ちょっと見て来るわ!」

俺もそれに続いた。

「 俺も行く!」

半透明な山本爺がとても気になる。



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