Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ミケランジェロ展

2013年10月06日 | 美術
 ミケランジェロ展。日本でミケランジェロ展が開催されること自体、――控えめにいっても――稀有なことだ。フィレンツェのカーサ・ブオナローティ(かつてのミケランジェロの住居。現在は美術館)の全面的な協力があって実現したもの。

 これは衆目の一致するところだと思うが、目玉は3点。一つは、いうまでもなく、ミケランジェロ15歳のころのレリーフ「階段の聖母」(チラシ↑に使われている作品)。美術全集に必ずといっていいほど掲載されている作品だ。でも、実物を観た感銘は大きかった。これは美しい。美しいと思った点を具体的に述べることがまだるっこいほど、パッと観て美しかった。

 あえていうなら、その繊細さ、立体感、大理石の色合い、といったことになるかもしれないが、ともかく写真で観るのとは大違いだ。これは実物を観るしかないと思った。

 実は、階段にいる子どもたちは、手すりで遊んでいると思っていたが、そうではなかった。階段は聖母の背後まで続いている横長のものだった。子どもが抱えている棒のようなものは、手すりではなかった。では、なにか。布を広げているところという説があるらしいが、はっきりしないそうだ。

 目玉のもう一つは「レダの頭部習作」。赤石墨で描かれたデッサンだ。その筆致の生々しさ、陰影の的確さ、今まさにミケランジェロの手が動いてこれを描いたような新鮮さがあった。

 展示作品の最後まで観て、もう一度この作品に戻った。夜7時半を過ぎていた。その部屋はガランとしていた。一人、この作品をじっと観ている人がいた。作品との距離は30センチくらいの近さ。なんとなく研究者のような気がした。敬意を表して、遠巻きに観るだけで、そっと立ち去った。

 もう一つはデッサン「クレオパトラ」。これもどの美術全集にも載っている。かねてから、なぜクレオパトラを描いたのだろうと思っていた。その直接の答えは得られなかったが、これはトンマーゾ・デイ・カヴァリエーリに捧げるための作品であったことを知った。カヴァリエーリは、当時57歳のミケランジェロが熱烈に愛した、若くて美しい青年だ。

 驚いたことには、この作品の裏面には別のデッサンが描かれていた。それは目をむき、口を開けた、破滅的な表情のクレオパトラだ。思わず顔をそむけてしまった。その脇には醜い老人の顔が描かれていた。カヴァリエーリにたいする愛憎の表れだろうか。
(2013.10.4.国立西洋美術館)

↓以上の3点は本展のホームページの「作品紹介」でご覧になれます。
http://www.tbs.co.jp/michelangelo2013/

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