真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「看護婦日記 獣じみた午後」(昭和57/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:黒沢直輔/脚本:宮田雪/プロデューサー:村井良雄《日本トップ・アート》/企画:進藤貴美男/撮影:水野尾信正/照明:加藤松作/編集:奥原茂/録音:伊藤晴康/美術:金田克美/音楽:津島利章/助監督:甲斐八郎/監督助手:加藤文彦/色彩計測:高瀬比呂志/製作担当:鶴英次/出演:風間舞子・美保純・山地美貴・白山英雄・村尾幸三・江角英・川村真樹)。事実上、配給に関しては“提供:Xces Film”か。デビュー作でもないのに、ポスターでは何故か美保純に(新人)特記が。
 後に閉鎖された病棟旧館である旨が明らかとなる廃屋、看護婦の磯貝直美(山地)を助手に研究を続ける橘病院院長・橘俊一郎(江角)が、夢の再生装置“ドリームリング"を完成させる。完成したのも本当に束の間、嵐に伴なひ停電したかと思ふと、矢継ぎ早な次のカットでは何故かいきなり俊一郎と直美が並んで首を吊つてゐる、何だこの超展開。俊一郎の縄は解け、半死半生の状態で落下した俊一郎の掌から、太目の指輪大のドリームリングが転がる。一方直美の首から外れた、何の変哲もない赤い鈴が二つ繋がれただけの貧相なネックレスを抜いてタイトル・イン、実に奇天烈なアバンではある。
 満月の夜、榊原玲子(美保)と順(村尾)のカップルが、寒い寒いといひつつ青姦に戯れる。ところが、目の前に下りて来た大きな蜘蛛に「ワァオ!」と順がノスタルジックな悲鳴を上げた弾みで玲子が膣痙攣を起こし、二人は当然繋がつたまゝ橘病院に搬送される。簡単な、といふかより直截には適当なロールシャッハ・テストを経て、橘病院の女医・秋月亜矢子(風間)は玲子にセックス恐怖症の診断と、一週間の入院治療を言明する、因みに順は入院拒否。如何にも妖しげな催眠治療室、亜矢子に診察を施される玲子を、ガラス越しの別室から俊一郎の妻で病院理事長の郁子(川村)と、医師の桂木(白山)が胡散臭げに見下ろす。そんなこんなで満を持して登場する、ドリームリングの使用法が無駄に煩雑。リングに指を通すのではなく、亜矢子いはく“女は子宮で夢を見る"だとかいふことで―ほんなら何か?男は玉で見るのか―ドリームリングをまづ玲子の膣内に入れる。続いて、ただの鈴にしか見えないが、直美の形見の首飾りの鈴を片方更に玲子の膣内に設置。残るもう片方を亜矢子が鳴らすと、玲子の観音様の中で発生する鈴同士の共鳴がドリームリングを起動する。何を食つて生きてゐたら斯くもやゝこしいシークエンスを思ひつけるのか、清々しく理解に苦しむ。案の定郁子と桂木は男女の仲にあり、玲子の夢―挙句に淫らなものばかり―を映像化出来るところまでは兎も角、効果の有無は猛烈に微妙な催眠治療が続く中再び橘病院旧館、実は俊一郎は正気を失つた状態ではあれ生きてゐた。学会でドリームリングを発表するには俊一郎に回復して貰はねば手も足も出ない桂木―と郁子―は、どうやら俊一郎と相性のいいらしい亜矢子に命運を委ねる。
 精神医療を、フロイトやユングも為し得なかつた地平に到達させる画期的な新技術、ドリームリングを軸に巻き起こる大騒動。とかいふと、まるでナベシネマのやうな昭和57年ロマンポルノ。ピンクよりは数倍潤沢であるのは堅い普請にも支へられ、果たして如何程のファンタスティックが繰り広げられるのか期待したものだが、蓋を開けてみると、全方位的に甚だ中途半端でちぐはぐといふ印象が兎にも角にも強い。ファンタジーにしては、渦巻く愛憎が徒に重く物騒。淫夢描写の牧歌的なまでのダサさは夢の不条理に免じさて措くにせよ、サスペンスにしても全篇を通して脇がグッダグダに甘い。一部始終の隈ない無造作さも兎も角、玲子を事実上橘病院に囚はれた順が、中央図書館にて催眠術に関し付け焼刃を紐解く件。カット尻にはわざわざ『変装の技術』表紙まで抜いておきながら、騒がしい順を注意する、これ見よがしに見切れるグラサン+マスク男は一体何者なのか。大体が、自分達ではドリームリングの原理を理解してゐないにも関らず、郁子と桂木が俊一郎を始末しようとしたところから話が通らない。一応SF風味に幕は開いておいて、オカルトに着地する結末は、ある意味時代が偲ばれるいい加減さといへるのかも知れないが、底を抜くにもほどがある。クライマックスにはとりあへず大火を燃やしておけといふ半ば確信犯的な映画術は、別の意味で鮮やかだ。いはゆる珍作の部類に、端的には含まれよう一本。尤も、ミニシアターでの特集上映には恐らく採り上げられないであらうかういふショッパイ作を、成人映画館で観ることにはそれはそれとしてそれなりの趣がなくもない、上澄みを掠め取るばかりぢや詰まらんぜ。

 ところで、ドリームリングで女の夢を見る際の段取りはひとまづ判つた。問題は、男に対してはどうするのか。指輪のやうに棹に嵌めるには、蝶番で輪が割れる構造を採用してゐたとしても、明らかに径が細過ぎる。そんなものを巻かれては、圧迫されて怖い夢しか見れないぞ。え、尿道に(;´Д`) 無理無理無理無理!


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