真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「美脚教師 開いて悶絶」(2010/製作:幻想配給社/提供:オーピー映画/脚本・監督:友松直之/撮影:飯岡聖英/助監督:安達守・西村済/撮影助手:宇野寛之・宮原かおり/メイク:三沢友香・江田友理子/スチール:山本千里/制作担当:池田勝/編集:酒井編集室/ダビング:シネキャビン/現像:東映ラボテック/タイミング:安斎公一/出演:横山美雪・しじみ・山口真里・石井亮・原口大輔)。友松直之とされる脚本と、ポスターには普通に名前の載る、なかみつせいじと堀本能礼が何故か本篇クレジットから脱けてゐる謎仕様。
 パソコン教室講師・貝原淑子(横山)と、住宅メーカー営業の彼氏・浜口弘志(石井)の睦事に連動させて、淑子の授業が地元ケーブルTV局の取材を受けた際の模様が、少々荒らしすぎのビデオ撮りにより交互に差し挿み込まれる。生徒にはリストラ中年の山田康夫(なかみつ)、子育てが一段落したので、再就職を希望して職業訓練を受ける人妻の石井明美(山口)。そして何を目的に来てゐるのかよく判らない、タレント志望の小山沙織(しじみ)らがゐた。こゝでひとつ、形式的な部分に関して立ち止まらざるを得ないのが、幾ら配役上の方便とはいへ、山口真里が38といふのは些かどころでなくあんまりだ。確かデビュー時には女子大生であつたやうにうろ覚えるので、さうなるとせいぜい三十前後であり、実際その辺りにしか見えない。そして実質的にも、文字通りのイントロダクションに主演女優の絡みと、同時進行させる各登場人物の紹介とを配した構成は麗しく順当なものとはいへ、カットの変り際を主にそこかしこで、素頓狂なSEを矢鱈と鳴らしてみせる悪弊には閉口するばかり。本来ならばスマートに磐石な筈の開巻が、妙に散らかつてしまふ要因にほかならないやうに思へる。友松直之作を観てゐて躓く時と特に気にはならない時とがあるのは、現に使用不使用の別なのか、単なる偶さかか個人的な映画に引き込まれるれないによるものなのかは今後のテーマとさて措き、現時点では憚りながら覚束ない。閑話休題、教室に、沙織を連れ戻しに来た柄の悪い高校時代の元カレ・ケンジ(原口)が乱入、教室は騒然となる。公開順に、幾分粘着質ではあれ堅気のサラリーマンを演じた「移り気若妻の熱い舌技」、その名の通りアキバ系のボンクラ学生に扮した「最後のラブドール 私、大人のオモチャ止めました。」(共に2010)に続き、今作の原口大輔は、スカジャンとジャラつかせた装身具の似合ふヤンキー青年を綺麗に好演。役に応じてまるで違へてみせる佇まひには、演技者としての高いスキルを窺はせる。近年弱体化著しいピンク若手男優部にあつて、貴重かつ強力な戦力といへよう。叶ふならば、余所の組でもガンガン観たい。再度閑話休題、新潟から上京した沙織は、ひとまづ昔のよしみでケンジの部屋に転がり込む。ところが干渉的な態度に業を煮やし、元カレの下を飛び出して来たものだつた。そんな沙織が、あらうことか生き別れた義理の妹を騙り淑子の部屋に現れる。淑子にとつては薮から高層ピルが突出たやうな話で、当然発生する押し問答の最中、元々その日淑子宅で自慢の手料理を振舞ふ約束の浜口も合流。淑子と沙織が、キャット・ファイト感覚の取つ組み合ひを披露する一幕も経て、一旦浜口は退場。その夜無理矢理割り込んだ風呂にて、沙織は自らが淑子の父親が再婚した相手の連れ子であるとかいふ事実を明かす。義母―沙織にとつては実母―と折り合ひが悪かつた淑子は、全寮制の高校に入つたまゝ実家を離れ現在に至る。といふ説明原理が一応与へられはするものの、淑子が沙織と対面した上でその人とまるで気づかないといふのは、流石にスラップスティック調の段取りとはいへ無理も大きい。兎も角といふか兎に角といふべきか、沙織が淑子と同居した上で教室にも通ふ新生活。授業中の沙織は後方から覗き見たPC画面に、山田が淑子に逢瀬を求めるメールを送信し、受け取つた義姉も義姉で、満更ではない以上の風情であるのを看て取る。授業終了後、淑子が落として行つた携帯を渡し損ねた沙織は、仕方なく当初予定に従ひ、冒頭ケーブル局番組を制作したレオーネならぬ「ネオーレ映像」に社長、兼プロデューサーの辻(堀本)を訪ねる。ところで久し振りに観た堀本能礼は、森山茂雄の「ワイセツ和尚 女体筆いぢり」(2007/主演:野々宮りん)以来。とりあへずの写真撮影と称して、辻が言葉巧みにでもなく強引に沙織と事に及ばうとする中、元カノを探し教室に入れ違ひで再度姿を現したケンジに、明美は俄に接近を図る。
 手放しの大美人・横山美雪と、今をときめく低予算映画界のマドンナ・しじみ(ex.持田茜)といふ超攻撃的な2トップの背後に、安定感抜群の山口真里がドッシリ構へる。限りなく完成形に近い三本柱がそれぞれ咲き誇る、正しく銀幕を飾る何れも充実した濡れ場濡れ場で尺を繋ぎつつ、フと冷静になつてみると、詰まるところは浜口が“義”姉妹丼を達成する以外にはさしたる展開に欠く点に首を傾げかけてゐると、「わいせつ性楽園 をぢさまと私」(2009/主演:水無月レイラ)にも似た強引な落とし処に、不意を撃ち抜かれる。仮に、観客を油断させるところまで計算した上での、お話の薄さだとすればお見事と頭を垂れるほかないが、文字通りの力技で捻じ込むやうに着地させた姉妹のドラマはそれなり以上に力を有する反面、山田の尺八ルネッサンスは純然たる豊潤な枝葉にせよ、折角辻が十全に提出し得たかに見えた、“自分勝手”といふテーマの軸は完全に等閑視された印象は拭ひ難い。あるいは入念なミスディレクションなのか、一見姉妹愛に彩られた感動系の結末は、精神の平定を失した狂気も微妙に匂はせる。淑子が明後日に入れ込むのは勝手だが、そこは男目線としては、浜口は普通にドン引くか、少なくとも不安を覚えるところではあるまいか。あるいは、さうしたカットの有無から、真意を逆算するのも可能なのか。沙織が姉の男を寝取つた浜口と、淑子は淑子で山田との、二つの情交をカットバックで併走させる友松直之が近作多用する手法も、シンプルに見飽きたものか、求心力ないし統合力は些か甘い。期待が上がつてゐる分、覚束なさも否めない一作ではあるが、そんな中一際光つたのは明美が、直截にはケンジを喰つてしまふシークエンスに於ける山口真里。全盛期の風間今日子をも凌駕せん勢ひの、頗る扇情的であるのと同時に重量級の迫力を轟かせる。この人は出演作の幅広さまで含め、現役最強の三番手の座に、ぼちぼち手が届くのではなからうか。


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