川奈まり子・現役熟女妻 奥まであたる・・・

　「川奈まり子・熟楽　またがる快感」（2000『川奈まり子・現役熟女妻　奥まであたる・・・』の2007年旧作改題版/製作：フィルムハウス/提供：Xces Film/監督：坂本太/脚本：有田琉人/企画：稲山悌二/プロデューサー：伍代俊介/撮影：創優和/照明：藤塚正行/助監督：高田宝重/編集：酒井正次/製作担当：羽生研司/監督助手：村石雅也/照明助手：岩田義郎/ヘアメイク：鷲野早苗/出演：川奈まり子・林田ちなみ・風間今日子・みなみたいらゆう・岡田謙一郎）。“熟楽”とは何々だよ、“熟楽”とは。その答へは、今作を観れば判る。
　買ひ物に出たカワナマリコ（川奈）は、憚ることもなく夫以外の若い男を連れ歩く、隣家に住むタカギカオリ（林田）の姿を目撃する。思はず気圧されてしまふマリコに対し、カオリは勝ち誇るかのやうな挑発的な笑みを見せる。その夜、仕事で戻れぬ筈の夫・ヒサシ（岡田）が不意に帰宅する。仕事に追はれるヒサシとの間に夫婦生活もままならぬマリコは、何かの弾みに繰り返し繰り返し淫靡な幻想に囚はれる。夫宛に届いた、マリコには見知らぬ名前である女の葬式の案内を手渡すと、ヒサシは遠い親戚の女だといふ。数日後、ヒサシはその女の遺児・クロカワミチヲ（みなみたいら）を、暫く面倒を見ることになつたと家に連れて来る。
　夫に構つて貰へず欲求不満を持て余す熟れ切つた人妻が、復讐を動機とした淫猥な姦計に絡め取られる。要はたつたそれだけの尺の都合か飛躍も大きい類型的なプロットを、余計な色気は出さずに、ズバ抜けた女優陣とソリッドな撮影とで一気に観させる。商業ポルノとしての即物的ながらも決定力あるエロさに徹した、潔い快作である。
　当時熟女方面トップ・ランナー（2004年引退）の川奈まり子、ノーブルさを持ち合はせつつも、一度持てるエロスを自ら解き放つた際の桃色の破壊力は正しく絶大。カオリに唆され、受験勉強中のミチヲに夜食を届けるといふ方便で、赤い扇情的な下着姿で画面奥からにじり寄つて来るショットには、思はずポール・ルーベンス的な羽目になつてしまふかと思つた。恣な快楽の追求に既に一線を跨いでしまつた高みから、何かとマリコに悪い風を吹き込むカオリ役の林田ちなみも、全てのスペックに於いて川奈まり子よりも一段下がるところまで含めて適役中の適役。風間今日子は、ヒサシの秘書にして不倫相手のマナベキョウカ。熟女ツートップが色気は抜群なもののオッパイは二人とも決して大きくはないところで、濡れ場の量感を担当。jmdbのデータからは今作の他に仕事も見当たらない、虚弱体質にした萩原聖人のやうなみなみたいらゆうも、川奈まり子を篭絡し得るタマにはまるで見えないながらに、仮面を被つた魔少年としての落差を一応は演じ切る。

　「どうぞ、このはしたないメス犬を。心ゆくまで辱め、弄んで、躾けて下さい。御主人様」。カメラ目線大写しでの、川奈まり子の見事な奴隷宣言で堂々と映画は締め括られる。一本の劇映画としてはプログラム・ピクチャーとしての要請に対する潔さの他には全ては商業映画として当たり前の水準に留まるながらに、エロ映画としては、紛ふことなき大傑作である。