真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「男漁りの透け襦袢 仏前で…して。」(2001『浴衣未亡人 黒い下着の誘惑』の2008年旧作改題版/製作:フィルムハウス/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:有馬千世/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:小野弘文/編集:フィルムクラフト/助監督:城定秀夫/監督助手:下垣外純/撮影助手:宮永昭典/照明助手:平岡えり/ヘアメイク:河村知也/スチール:本田あきら・加藤章/録音:シネキャビン/効果:梅沢身知子/タイトル:道川タイトル/現像:東映化学/出演:時任歩・里見瑤子・林由美香・岡田智宏・千葉誠樹・坂入正三)。
 二百五十年の伝統を持つ、日本舞踊室生流。第二十六代宗家代理の室生冴子(時任)が、名取の日下部理絵(里見)に稽古をつける。冴子の夫にして二十六代宗家(遺影すら登場せず)は一年前に死去、冴子の義姉・尚美(林)は理由は明示されないが生前の宗家から破門。サラリーマンの職も持つ義弟・博之(岡田)は、資質は申し分ないものの室生流を継ぐ意思を見せず、女盛りの肉体を侘しく独り慰めながらも、冴子は健気に伝統の流派を守り抜くべく孤軍奮闘してゐた。とはいへ弟子は次々に尚美の下へと去り、けふも、稽古後に理絵は踊りを止める旨を告げる。冴子は理絵と交際中である博之との仲を心配するが、理由に関しては口を噤んだ。理絵は、博之が兄嫁の冴子に寄せる想ひを知つてゐた。ところで浴室での冴子の自慰を覗く博之が沸き起こる欲情を催す表情が、まるで今にも吹き出しかねないやうにしか見えない辺りは、岡田智宏一流だ。一方、室生流後援会長の黒部和行(坂入)が、二十六代宗家に貸した金の催促を冴子に迫る。実は、黒部は尚美と通じてゐた。尚美は色仕掛けで黒部を操ると、冴子を退け室生流を自らの手中に収めることを目論んでゐたのだ。利子と称して黒田に無理矢理抱かれた冴子は、一月以内に博之を翻意させ、室生流を継がせるといふ無理難題を呑まされる。呆然と亡夫の墓参りに訪れた冴子は、かつての恋人・堤邦彦(千葉)と再会。その後室生と結婚した冴子に対し、堤は尚美と結婚、今は尚美の経営するクラブのバーテンダーに納まつてゐた。
 エロドラマ、もといメロドラマとしての舞台作りは磐石に纏まつてはゐるのだが、要らぬ横好きと、選りにも選つてクライマックスでの致命的な釦の掛け違ひとに、木端微塵になつてしまつた一作。まづは兎にも角にも、全篇を通して蔓延する臭さとダサさが、嫌な意味で堪らない。博之が心の中では冴子の方を向いてもゐると知りながら抱かれる理絵は、よせばいいのに事の最中に、「人を愛して、一番哀しいことつて判る?」。無言の博之に対し続けて、「目の前にゐるのに、見詰めて貰へないことだよ・・・・!」。一言で片付けるが、やかましいよ。今回坂本太の企図したところと、坂本太が求められてゐるところとが、綺麗に乖離してゐる。絡みに、どうでもいい台詞なんて邪魔なだけだから。黙つてオッパイを揉め、おとなしく腰を振れ、気をやれ。堤と尚美の、別れの件も酷い。開店前の店で待ち伏せた尚美は、渡りに船と思へなくもない離婚届を、自ら堤に突きつける。但し、条件がふたつあるといふ。ひとつ目は、この場で尚美を抱き、満足させること。ひとまづ事後、堤からふたつ目を訊ねられた尚美は、「今直ぐここから出て行つて」。何だそりや、もう少し何とか別の落とし処があるだらう。下手糞なカッコつけが、てんで形になりはしない。挙句に出て行けと吐いた尚美からさつさと退場しては、取り残された堤もそれは途方に暮れるほかなからうに。堤の立場に立つならば、この女が何をいつてゐるのか全く判らない。冴子が堤を捨て室生と結婚したのは、手篭めにされたからであつた。とかいふ事実が明らかになつた後では、その上で何故にこの期に冴子が室生流のために粉骨砕身するのかも、矢張りまるで頷けない。
 リアルタイムのm@stervision大哥の足跡を、臆面もなくトレースしてのけるが根本的に出鱈目なのが、致命的にも締めの濡れ場。博之が意に染まぬサラリーマン稼業に身をやつし室生流を継がないのは、その場合、冴子が室生家を離れ姿を消すのを恐れてゐたからであつた。その真意を知つた冴子が、あらうことか、博之が室生流を継ぐのを条件に、一度限りと身を任せるなどといふのは一体全体何事か。それでは黒部を篭絡する尚美と、遣り口が何ら変りはしない。ヒロインが敵役と同じ低みで勝負してゐては、メロドラマとして凡そ成立を果たせまい、同じ穴の狢にもほどがある。一方エロドラマとしては、時任歩×林由美香×里見瑤子。面子自体には基本的に一切遜色はないながら、どうせ脚本が破綻してゐるのだからこの際演技力など度外視してのけると、オッパイの大きな飛び道具が一人欲しかつたやうな気持ちは残る。


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